■「できること」と「どれだけできるか」【アンチウィルスソフト】

artc20061201今回、アンチウィルスソフトの話が半分を占めますが、決してウィルスがテーマではありません。 ましてや、メーカーが「性能の低いものを隠して売る」ことを辛口に記事にしているのでもありません。 私たちが「当たり前」だと思っていたことが実は違うという「思い込み」について、考えてみました。

 

家電量販店の売り場はアンチウィルスソフトの花盛り

年末のこの時期になると、恒例のものがいくつもあります。
クリスマス、大掃除、年賀状。
季節の節目としての行事が並びます。

そして、なぜか家電量販店のパソコン売り場に行くと、アンチウィルスソフトの花盛り。年賀状ソフトともに商品棚を埋め尽くします。

家の大掃除と同じ時期にパソコンも大掃除をする人が多いのでしょうか。
一度、この時期にアンチウィルスソフトを買うと、更新が一年のものが多いためにこの時期に他のソフトも検討するからなのでしょうか。

パソコンウィルスが最初に発見されたのが1980年の初期と言われています。
当時のウィルスの大半がネットではなく、フロッピーディスク経由でした。

しかし、現在ではウィルスはパソコンに限らず、携帯電話向けのものも出回っています。ネットにアクセスするものには、すべてウィルスの危険と隣り合わせといってもいい時代になりました。

一方で、いつものことながら
「自分だけは大丈夫」
という根拠のないパソコン・ユーザーもおり、アンチウィルスソフトを利用していないユーザーが約3割に達するというデータもあります。

その7割のアンチウィルスソフトを利用している人でも「パターンファイル(定義ファイル-後述します)」について

●知らない 29%
●名前だけ知っている 36%
●名前と内容を知っている 35%

そして、上2つの約7割の人はパターンファイルを

●自動で毎日更新する 48%
●自動で2~3日ごとに更新する 25%
●手動 16%
●していない 6%
●わからない 5%

という結果が出ています。
「自動で毎日更新する」人たちは、ネットに接続するたびに更新していると理解すれば、「ちゃんとした対策をしている」人は約7割ということになります。
しかし、残り3割はきちんとした対策ができていないことになるのです。
すると、アンチウィルスソフトをそもそも利用していない3割とあわせると、実に約半数の人たちが対策をしていないことになる。

ウィルスの被害を具体的に説明

さて、ここからは、初心者向けにウィルスについて簡単に説明します。

ウィルスの中身はコンピュータ・プログラムです。エクセルやワードのようなパソコンを動かすソフトの仲間です。
違いはエクセルが人間にとって「メリットをもたらすソフト」であるのに対して、ウィルスは「デメリットをもたらすために作られたソフト」だという点です。

例えば、ウィルスはハードディスクの内容をすべて破壊したり、パソコンを起動させなくしたりします。
仕事のファイルはもちろん、家庭内のパソコンにある大切な思い出のデジカメ写真や恋人とのメールのやりとりなどの記録がすべて失われてしまいます。

中には、パソコンのメールソフトを自動的に操作して(もちろん所有者の承諾なしに)、自分自身を勝手にばらまく輩もいます。
こうなるとやっかいです。

ウィルスに感染した当人が無責任で、そのためにとばっちりを受けるのが、当人のパソコンの住所録に自分のアドレスが登録されている場合です。
メールアドレスが迷惑メール業者の手に渡ることも珍しくありません。
そうなると、自分のところに迷惑メールが殺到するハメになります。

なぜ、こんなソフトを作るのでしょうか。
よく言われているのは

「愉快犯」
「自分の技術の誇示」

です。

世間を騒がせるのが自分だということで、自己満足の世界に浸る。
これこそが、ウィルスを作る人たちの動機だという訳です。
実際、憎い相手のパソコンのハードディスクをメチャクチャにするならまだしも、不特定多数のパソコンに被害を与えても、ウィルスの開発者にとって何の得にもなりません。

しかし、最近は状況が変わってきました。
ウィルスの技術を使うと、様々な情報を盗んだりネットを攻撃できることが分かってきたからです。

例えば、キーロガーと呼ばれるソフトがあります。パソコンの操作を全て記録するソフトです。
そもそも、これが作られた目的は教育用や調査用でした。

例えば初心者のパソコンの操作を記録できれば、どこで迷ったのか、どんな失敗をしたのかがすべて分かります。ビデオで画面をずっと記録するよりも正確です。

マイクロソフトなどのソフトメーカーはエクセルやワードの開発や改善をするのに、モニタに対してキーロガーをインストールしてもらい、その記録を分析することでメニューの位置を変えたり、新しい機能やコマンドを増やしたりするのに活用しています。

このこと自体は「メリットをもたらすソフト」です。
しかし、これを悪用することは簡単です。
例えば、ネット銀行やネット證券の ID とパスワードを記録する。これは、キーロガーの技術です。そして、それをパソコンの所有者に無断でネットを通じて集めてくる。これはウィルスの技術です。

先日第一次判決が出たウィニー向けのウィルスが良い例です。このウィルスは、ウィニーに感染すると個人パソコンの中身を2ちゃんねるに公開してしまう。
2ちゃんねるが「大量の人々が見るところ」なだけに、一気に被害が広がります。

新聞を騒がしているように、企業や国の機密資料が漏れるならまだしも会員情報などの私たちの個人情報が筒抜けになります。その中にクレジットカード情報や住所、電話番号が入っていることもあれば、大変な被害になります。

また、プライベート写真が流出することも良くあります。
家族のスナップでも流出されれば本人にとってはイヤなものですが、恋人や夫婦の愛の営みを写した写真やビデオが出回ることも少なくありません。
つい最近も国税局の若手職員が同僚とおぼしき女性数人との寝室での写真がウィルスで漏れて、大騒ぎになり、自主退職にまで追い込まれた実例がありました。

ウィルスにかかったパソコンを所有していた男性は自業自得ですから仕方がないとはいえ、そこに写った女性たちは「迷惑」という言葉では言い表せないほどの被害を受けることになります。
ネットに一度でも出回ってしまうと永遠に消えることはありませんから、整形するしか、今後の人生を平穏に過ごす方法はない。

中には、どう調べるのか、そういった写真とともに、その女性の本名と住所、そして自宅を記した航空写真までご丁寧に同梱してあるものまで出回る始末です。

これらの情報流出はウィニーに感染するウィルスが有名ですが、ウィニーが入っていないパソコンだからといって安心できません。
ウィニーがなくても、同様の働きをするウィルスが既に出回っているからです。

これらのソフトは詳しい人たちの間では「スパイウェア」と呼ばれ、ウィルスやスパイウェアを総称して「マルウェア」と呼ばれますが、私たちに馴染みがないので、ここではすべてを「ウィルス」と呼ぶことにします。
ちなみに「mal-」という接頭語は「悪」という意味があります。決して「○」ではありません。

今回の記事のテーマはウィルスではありません

長々とウィルスの話をしてきました。
そして、これからもウィルスの話が続きます。
しかし、今回のテーマはウィルスソフトではありません。

ウィルスソフト、USBハブ、乾電池、デジタル一眼レフの4つの話を通じて訴えたいことはひとつです。

「できること」と「どれだけできるか」

をきちんと理解しないと、賢い買い物はできない。
それが今回のテーマです。

話をウィルスに戻しましょう。

こんな危険な存在の侵入を防いだり、発見して駆除するのがアンチウィルスソフトです。

日本で最も売れているのが「ノートン」。
元々が、マッキントッシュのディスク管理ソフトなどのユーティリティを作っていた会社でしたが、アンチウィルスソフトを開発してから大きく成長しました。
いまでは売上げの大半がウィンドウズ用のアンチウィルスソフトです。

次に売れているのが「ウィルスバスター」。
第3位は「マカフィー」。
これら「御三家」で9割のシェアを占めます。

それまで第4位だったアンチウィルスソフトが一気に躍進し、現在第2位に着いています。
1,980円ソフトで有名なソースネクストのアンチウィルスソフト「ウィルスセキュリティZERO」です。

元々、このソフトは1,980円で売られていました。
そこに、2006年11月に価格を改定した新しいバージョンを発売したのが原因です。

知らない人にちょっと説明します。
アンチウィルスソフトの販売方法は他のソフトや商品と大きく違う点があります。
それは、期間限定商品という点です。

テレビやクルマは買ってしまえば、壊れない限り使えます。
しかし、アンチウィルスソフトはクレジットカードのようなものです。期間限定のサービスです。
ただ、クレジットカードは期間延長でも延長のための手続きにお金はかかりません。そのまま放っておけば新しいカードが手元に届きます。
しかし、アンチウィルスソフトはわざわざお金を払って、更新手続きをしないといけません。

どういうことか。
ウィルスは次々と新種や亜種が生まれます。
一説によると1日に数100種類ものウィルスの新種・亜種が作られるといいます。
アンチウィルスソフトは商品には販売時点で分かっているウィルスに関する情報しか入っていません。買ったままでは新しいウィルスを発見することができないのです。

それに対応するため、各社は「パターンファイル(ウィルス定義ファイル)」と呼ばれる、新ウィルスの特徴が記述されているファイルを毎日ネットで配布しています。
アンチウィルスソフトはそれを自動的に受信して新種ウィルスからパソコンを守るというわけです。
一時間ごとにパターンファイルを更新するアンチウィルスソフトもあるくらいです。

最近は「ウィルスらしい怪しい動きをするソフトを発見し、パターンファィルに登録されていない新しいウィルスを発見する技術(ヒューリスティックエンジンと呼ばれます)」も生まれています。しかし、これはあくまでもパターンファイルが対応するまでのつなぎです。

そんな主役のパターンファイルがなくてはアンチウィルスソフトがないのと同様のハダカの状態といってもいい。
その「最新パターンファイルを使う権利」が1年間なのです。

ウィルスセキュリティZEROはこの課金方法を改め、テレビやクルマと同じ方法にしました。
正確に言えば「新しいウィンドウズ(ビスタ)が続くまで」という期限付きですが、ウィンドウズのバージョンは10年近くは続くのが普通なので、「10年間の有効期限」です。

ウィルスセキュリティZEROは価格が安くなった他に2つのメリットがあります。
更新手続きはネットに接続して申し込む必要があります。これがちょっとした面倒です。
また、私のように死んでもネットでクレジットカードを使いたくない客は店頭でパッケージを新たに買い、更新手続きをする必要があります。
その手間を10年間省いてくれるのです。

2つ目のメリットは、メーカーは更新期日が迫ってくると、私の友人のような誤解によるウィルス被害を避け、メーカーとしては売上げを上げるために、頻繁に「更新期限が迫っています」警告を出すようになります。下手をすると一日に数回出ることもある。

これがまたわずらわしいのなんのって。アンチウィルスソフトメーカーを呪いたくなりますが、どのメーカーでも事情は同じ。
それが10年間なくなるだけでも平穏な気持ちでパソコンを使える。

現在、4強に混じって、一太郎のジャストシステムからロシア生まれのカスペルスキー・アンチウィルスが発売され、ドイツからはG Data、その他パンダ、F-Secureなどが参戦し、アンチウィルスソフト市場は元気いっぱいです。しかも、本家本元のマイクロソフトがアンチウィルスソフト「Windows Live OneCare」を2007年初頭に発売するとなっては、いやがおうにも注目を集める市場となっています。

衝撃的な事実を発見してしまった

さて、私ははウィルスセキュリティを使っていましたが、警告の煩わしさがあって、つい先月、ウィルスセキュリティZEROが発売された途端、飛びつきました。
仕事に使うデスクトップパソコンではありません。1ヶ月に2~3回しかネットに接続しないノートパソコン用と自宅のパソコン用です。

「まさか『安かろう、悪かろう』ではないのだろうけど、ネットに頻繁に繋がないパソコンに、年間5,000円も使うのはもったいない」と思っていたからです。
ソースネクストの1,980円ソフトは機能限定が多いけれど、他の市販ソフトと機能の質は変わらなかった経験があったのも安心できた理由です。

仕事に使うデスクトップパソコンはさすがに低価格ソフトでは心許ないので、ノートンを使っていました。
特に根拠があったわけではありません。なんとなく「安いのはちょっと不安かな」程度の理由でした。

そんなこんなしているうちに、あるパソコン雑誌を見てびっくりしました。
PC Japan(ソフトバンク)2006.12号の特集に「アンチウィルスソフトの性能比較」があったからです。

ウィルスソフトのウィルス検出率を掲載していたのです。
そこで私が見たものは、ウィルスセキュリティZEROが半分しかウィルスを発見できていない事実でした。

▼雑誌 PC Japan(ソフトバンク)2006.12号37,024個のウィルスのうち、いくつを発見できたのかをまとめたもの。

順位 検出率 ソフト名 検出数 未検出
ウィルス数
1位 100% ソフトA 37,020 4
2位 100% ソフトB 37,013 11
3位 100% ソフトC 37,008 16
4位 98.1% マカフィー2007 36,325 699
5位 95.6% ノートン2007 35,386 1,638
6位 95.4% ウィルスバスター2007 35,320 1,704
7位 93.9% パンダ 34,773 2,251
8位 56.0% CA 20,737 16,287
9位 49.4% V3 18,272 18,752
10位 41.3% ウィルスセキュリティZERO 15,285 21,739

このメルマガで特定の商品を推奨すると誤解されてもいけないので、100%を発見できたソフト名は伏せておきます。

これを見ると、御三家のノートン、マカフィー、ウィルスバスターは95%以上のウィルスを見つけています。

ところが、「値段が安いから8割くらいの性能でも仕方がないかな」と薄々思っていたウィルスセキュリティZEROが、50%にも満たない検出率なのにはショックを隠せませんでした。

私のノートパソコンや自宅のパソコンには、ウィルスがザルのように入り込んでいたことになります。
そして、私のパソコンに2万個ものウィルスがうようよ棲息している…

私のノートパソコンは1ヶ月に2~3回くらいしかネットにつないでいないし、37,000個ものウィルスの危機にさらされていたわけでもないでしょうから、そんな棲息しているとは思えませんが…いや「思いたくない」のが本音です。

【注】後日、100%の検出率のアンチウィルスソフトでチェックしてみたところ、幸いなことにウィルスはゼロでした。正直「どれだけ発見されるのかな、ワクワク」と結果を見守っていたのですが、ちょっと拍子抜け(^^;

他にないものかと、ネットを探してみました。
こういった検出率テストがすでにありそうです。
すると、出てきました。

まずは、日経パソコン。
これによると、性能は以下のとおりです。

雑誌 日経パソコン 2006年11月13日号

検出率 ソフト名
100.0% ウイルスバスター2007トレンドフレックスセキュリティ
100.0% ノートン・インターネットセキュリティ2007
100.0% マカフィー・インターネットセキュリティスイート2007
99.6% キングソフトインターネットセキュリティ2007
81.2% ウイルスセキュリティZERO

ここでも、ウイルスセキュリティZEROは最下位。さすがに予想どおりの8割の検出率でしたが、無料ソフトの中国産キングソフトインターネットセキュリティより性能が低いのにはびっくりです。

1円当たりのウィルス検出数

続いて、このページ。

▼HP ナスカ(無料掲示板サービスサイト)

検出率 ソフト名
100.0% ソフトC
98.8% キングソフトインターネットセキュリティ2006+
98.2% マカフィー2006
96.9% ノートンアンチウィルス2006
96.6% ウィルスバスター2006
94.4% NOD32
63.1% ウィルスセキュリティ2006

ここでもウィルスセキュリティ2006(ZEROの前バージョン)が検出率が大幅に低い63%。

ネットを見ていると、様々なアドバイスの中に

「セキュリティソフトは必ず入れておいてください。ただし、ウィルスセキュリティ以外でね」

といった書き込みをよく見かけましたが、まさに納得。

ノートンもウィルスバスターも検出率は悪くないのですが、漏れたウィルス数1,700個をどう見るかで判断が変わります。
検出率トップのソフトAは1万円。ノートンやマカフィーの2倍の価格ですが、1,700個のウィルスがゼロになることをどう見るかで同じく判断が変わります。

ちなみに、検出率が一定以上で、コストパフォーマンスが一番高いのが、

「1本で3台までインストールできて、ノートンやマカフィーと変わらない価格」

のウィルスバスターでした。
普通のユーザーにはこれで十分でしょう。

さて、くだんのウイルスセキュリティZEROですが、あながち悪いとばかり言えません。
ウイルスセキュリティZEROは圧倒的に価格が安いのです。10年使うとすれば年間390円。
対して、ウィルスバスターが年間3,683円(3年有効版を年間に計算したもの)。

すると、1円当たりのウィルス検出数は

●ウイルスセキュリティZERO 39.1個/円
●ウィルスバスター 9.6個/円

となり、ウイルスセキュリティZEROの方が約4倍もお得です。

もし、3台のパソコンに入れるとすると、ウイルスセキュリティZEROは266円(3台用の価格で計算)、ウィルスバスターは年間1,228円ですから、1円当たりのウィルス検出数は

●ウイルスセキュリティZERO 57.5個/円
●ウィルスバスター 28.8個/円

となり、両者の差は縮まりますが、それでもウイルスセキュリティZEROの方が約2倍もお得です。

これらの記事が刺激したのでしょうか。2006年12月にウイルスセキュリティZEROがヒューリスティック・エンジンを追加するなど、機能強化を予告しています。
これでどれだけ性能がアップするのか見物です。

ウィルスに1回でも引っかかれば、仕事の情報やプライベート情報が漏れて、被害は膨大になるのであれば、コストは無視してでも性能の良い方を選ぶべきでしょう。

一方、ウィルスに引っかかってもウィンドウズの再インストールで済むのであれば、コストの安い方を選択するという決断もあながち間違いではありません。

私の場合で言えば、ノートパソコンには多少なりとも仕事のデータが入っています。
ハードディスクの中身が消される程度なら、デスクトップには常に最新のデータが入っているので問題ありません。しかし、これがネット経由で外部に漏れるとなると信用問題です。その被害は数百万円、数千万円に登ることもあり得ます。

年間たった1,000円をけちったために、数百万円の危険を冒すのは割に合わないという計算になります。

検出率トップを総なめしたソフト

話をウイルスセキュリティZEROからちょっと離れると、興味深いことがわかります。
ソフトCが3つのテストのうち2つも上位3位内に入っているのです。
しかも、その2つのテストで100%という検出率。

以下のテストはアメリカでのものです。

▼ウィルス専門サイトwww.virus.gr(日本語版はニュースサイト)
★は日本で一般的に売られているもの。森がつけました。

順位 検出率 ソフト名
1位 99.6% ★ソフトC
2位 99.6% Active Virus Shield by AOL version 6.0.0.299 (無料ソフト)
3位 96.9% ★ソフトB
4位 96.6% BitDefender Professional version 9
5位 96.0% CyberScrub version 1.0
6位 95.8% eScan version 8.0.671.1
7位 95.6% BitDefender freeware version 8.0.202 (無料ソフト)
8位 95.6% BullGuard version 6.1
9位 95.5% AntiVir Premium version 7.01.01.02
10位 95.1% ★Nod32 version 2.51.30
13位 93.0% ★マカフィー version 10.0.27
14位 91.8% ★マカフィー Enterprise version 8.0.0
22位 83.2% ★ノートン Professional 2006
25位 82.2% ★パンダ 2007 version 2.00.01
27位 80.9% ★ウィルスバスター(英名PC-Cillin 2006 version 14.10.1051)

アメリカのサイトなので日本では馴染みのないソフトが並んでいます。また、インド産ウィルスセキュリティも、PC Japanでトップを占めたソフトAもリストにはありません。アメリカでは売られていないのでしょう。

これを見ると、ノートン、ウィルスバスター、マカフィーの御三家は「まあまあ」といった評価。それよりも無料ソフトの方が検出率が高いのに驚かされます。

そして、ここでも顔を出しているのがソフトC。
紹介した4つのテストで共通しているのが、ソフトCの検出率が圧倒的に高い事実です。

調べていくうちに、びっくりしたのがこのソフトCです。
ソフトCは単体でも売られていますが、実は他社にウィルス検出のエンジンを販売しています。

雑誌PC Japanで100%の検出率を誇り、約37,000個のウィルスのうちたった4つしか見逃さなかったソフトAの特徴はソフトCのエンジンと無料ソフトであるavast!の2つを組み合わせている点です。

同様に100%の検出率を誇るソフトBもソフトCのエンジンと自社オリジナルエンジンを搭載した「ダブルエンジン」。

そして、アメリカサイトの第2位につけているAOLの無料ソフトのエンジンにはソフトCのものを使っているのです。
ソフトCは事実上アンチウィルスソフトのトップを総なめにしているものでした。

アンチウィルスソフトは検出率も大事ですが、スピードも重要な要素です。
ノートン2006年版が仕様変更で前年度版よりパソコンが重くなったのが大変不評で、最新の2007年版では動作が軽くなるように改善しています。
NOD32はパソコンが軽快に動くとの評価が高いソフトです。

ダブルエンジンを採用しているソフトAはパソコンが重くなるという報告もあります。
これは、ソフト自体が重いだけではなく、パソコンのメモリをどれだけ占有しているかにもよります。

例えば、インストールしただけでアンチウィルスソフトはメモリを消費します。ネットやメールを受信するたびにウィルスをチェックする常駐プログラムがあるからです。

例えば、メモリの占有は次のとおりです。

●マカフィー 219MB
●ウィルスバスター 148MB
●ソフトA 70MB
●ノートン 16MB

普通、私たちのパソコンのメモリは512MBですが、ウィンドウズXPは300MBを使います。つまり、200MBしか残っていないのに、マカフィーはそれだけでメモリを使いきってしまう。
エクセルやワードはメモリの代わりにハードディスクをメモリ代わりに使うようになるので(SWAPと呼ばれます)、動作が遅くなるというわけです。

従って、ウィルス検出率だけなく、動作が軽いかどうかをアンチウィルスソフトの選択の条件に入れる人がいても不思議はありません。

ただ、見方を変えるとこうなります。
パソコンが遅くなるのなら、早いパソコンに買い換えれば解決可能です。今時、Core2DuoE6300という、従来のペンティアムの2倍の早さのCPUの価格はかつてのペンティアムと変わらない価格(24,000円程度)で買えてしまいます。
新しくパソコンを買い換えても、安いものなら8万円でCore2DuoE6300の最新パソコンが買える。

メモリが足りないのであれば、もう1枚512MBのメモリを買い足しても5,000~6,000円程度で済んでしまう。
つまり、「アンチウィルスソフトの動作の軽さ」はお金で解決できます。

しかし、ウィルス検出率はお金だけでは解決できません。
完全を期するとすると、ダブルエンジンならぬトリプルエンジン、クワトロエンジンを自分でやれば一番です。
しかし、1台のパソコンに複数のアンチウィルスソフトは入れることができません。
そうなると、手動でダブルエンジンにしないといけません。

つまり、こんなことを毎回(例えば1週間に1回)やらないといけないのです。気の遠くなるような話です。

●ノートンでウィルス検出をする
●ノートンをアンインストールし、ウィルスバスターをインストールする
●ウィルスバスターでウィルス検出をする
●ウィルスバスターをアンインストールし、マカフィーをインストールする
●マカフィーでウィルス検出をする
……

最新パソコン8万円+メモリ1.5GB+アンチウィルスソフト1万円でも高々10万円で済んでしまいます。
個人にとってはちょっと痛い支出ですが、プライベートなデータが破壊されたり、ネットから流出してしまうとお金に代えられない被害があれば、10万円なら出せない金額ではない。
もちろん、私のようなビジネス用途ならなおさらです。

USBハブの小さな規格

さらに3つの事例をご紹介します。
パソコンの周辺機器であるUSBハブ、乾電池、そしてデジタル一眼レフです。

つい先日、こんな経験をしました。
私のウィンドウズマシンはUSBが購入したときから動作が不安定でした。
マウスのような電気を食わないものは普通に動くのですが、マイクロディスクのような、ちょっと電力が必要なものは、本体のUSB端子を使ってもディスクを認識しないことが良くあるのです。

ところが、面白いことに電源アダプタを使うUSBハブ(セルフパワードといいます)を使うと安定します。ちなみに、USBハブとはUSBの二股コードのようなもので、コンセントの数を増やすようにUSBのスロットの数を増やす装置です。

ところが、ちゃんと動くUSBハブでも2つ以上の周辺機器を繋げるともうアウトです。スロットは4つあるので最大4台まで繋げることができるはずなのですが。

もっと困るのがマックと大容量USBメモリとの相性です。
USBハブに繋げると一旦は認識しますし、読み書きもできます。
しかし、一度でも外してしまうと、再度繋げてもウンともスンとも言わなくなるのです。それを回避するには、再起動するしかありません。
USBメモリを使うたびに再起動するのでは仕事になりません。

こういう場合はメモリスティックの要求する電気容量が供給できていないのを疑うのがその筋の常識です。USBメモリは容量が大きくなればなるほど、電気容量が多くないと動作しないからです。

しかし、私が買った商品は電源アダプタタイプ。これ以上電気容量を増やす術はありません。しかも、USBハブは新品です。
パソコンに詳しい友人に聞いても原因はわからずじまい。

ある日、家電量販店に行ったときのことです。
何か良い方法はないかと陳列を見ていました。
パッケージデザインには「一度に繋げられる数」や「マグネット付き」、はたまた「スリムなオシャレタイプ」などなど、今の私にはどうでも良いキャッチフレーズが並んでいます。

仕方がないので、まず現在使っている同型の製品のパッケージを手に取り、規格表を確認し、他の商品との比較をしてみました。

「1スロット当たり電源供給500mA」はどの商品も同じ。

ところが、小さな文字で書かれた規格に唯一違いがありました。
「1.3A(アンペア)」が現在使用しているもの。別な製品では「2.3A(アンペア)」や「2.6A(アンペア)」がちらほら。
これの意味するところは私には分かりません。

しかも、小さな文字で「仕様」の欄に書いてあるだけ。商品によってはそんな情報すら書いていません。ネットで調べても細かい規格まで書いていないメーカーがほとんどです。
値段は100円くらいしか違わない。

でも、なんとなく電気容量に関することだということだけは理解できます。
失敗しても2,500円損するだけだから、とりあえず買ってみようと、2.6Aのものを買いました。

会社に戻り、マックに繋げてみるとUSBメモリを認識します。
ここまでは、今までと何ら変わりません。
ところが、一回USBメモリを抜いて、再度繋げてみると…な、なんと認識するではありませんか。
ウィンドウズでもまったく問題なく3台までの周辺機器が繋げられます。

涙が出るほど嬉しくなったのですが、よくよく考えたら当たり前の話です。
USBハブとはそもそもUSBメモリを認識する「機能」を持つ商品だからです。

乾電池競争の発端は雑誌ダイム

乾電池の話に移りましょう。

年間16億個も出荷されていると言われる乾電池は、今でこそ

●マンガン
●アルカリ
●オキシライド

などの使い捨てや

●ニッケル水素
●リチウム

などの充電タイプといった、様々な種類のものが売られています。

そして、同じアルカリ電池でも「20%寿命がアップ」やら「スタミナ」やら、性能が表示されるようになっています。

しかし、かつては同じアルカリ電池ならどこのメーカーでも寿命は同じだと思われていました。今でも、そう思っている人は少なくありません。

いや、根拠はありません。なんとなく、私たち消費者は「アルカリなんだから、同じでしょ」という認識しかありませんでした。

それを覆したのが、雑誌ダイムです。
色々と調べても資料が見つからなかったので、記憶で恐縮ですが、雑誌ダイムは10年ほど前に

●乾電池による性能比較

を記事にしたことがありました。

今でこそ、雑誌ダイムはちょうちん記事満載の…もとい、商品カタログ誌ですが、当時はそんな冒険的な企画もあったのです。

実験は玩具などに乾電池を入れて、どれだけの時間動くかというものでした。
そして、その記事で判明したのは読者の常識を覆す事実でした。
なんと、寿命が最も長いのと短いのとで2倍近い差があったのです。

読者もびっくりしましたが、もっとびっくりしたのが乾電池メーカー。
白日の下に性能が晒されてしまったからです。
そこから乾電池の寿命競争が始まったという訳です。

同様のことは、最近話題の一眼レフタイプのデジカメにも言えます。
以前、過去記事で紹介したように、デジタル一眼レフには、ピントが合わない機種がたくさん存在します。いや、ほとんどの商品がそうであると言ってもいい。

キヤノンの20D(30D)という中級機種が、写す対象の色によってピントが合わないという症状が一部のマニアで話題になりました(D20はマニアかプロしか使わない機種ですから当然ですが)。

具体的に言えば、青い対象物や青い光が含まれる太陽光(屋外)ではビントが合いますが、赤い対象物や赤い光が含まれる電球(室内)ではピントが合わないという症状です。
数千円の安っぽいカメラではありません。20数万円もするカメラです。

「できること」と「どれだけできるか」

これら4つの事例を並行に並べました。
バラバラの印象があります。
しかし、共通点があります。

それは、「できること」と「どれだけできるか」はまったく別物だという点です。そして、私たちは「こういうのは当たり前だ」で商品を判断しています。
それは決して悪いことではありません。
いちいち、全部調べていたのでは時間がいくらあっても足りないからです。

「テレビは番組を写すのは当たり前」
「自動車はブレーキを踏んだら止まるのが当たり前」

しかし、まだまだ、そうではない商品もたくさん存在します。
例えば、アンチウィルスソフトはウィルスを発見して駆除するのが当たり前だと思っていたら、実はそうではなかった。

「USBハブにUSBメモリを突っ込んだら読み書きができるのは当たり前」
「カメラなのだから、ピントが合うのが当たり前だ」

と思い込んでいたら、
有名なキヤノンですら、そうではなかった。

私たちは、商品を選ぶ時にイメージや外観(デザインなど)、そして価格で選ぶことが多いものです。
また、一方、機能で商品を選ぶことも良くやります。

iPodのような携帯オーディオ機器は収納できる曲数で選んだりします。
また、最近の携帯電話は、カメラの画素数、ブラウザの有無、高速通信の有無や性能、音楽配信、おさいふケータイなどの決済機能で選ぶこともあります。

もちろん、それは大事なことです。
しかし、
「できること」と「どれだけできるか」はまったく別物です。

例えば、携帯電話で

「ネットを観ることができる」

のであっても

「ホームページ1ページが表示されるのに10分もかかる」

のでは、使い物になりません。

ワンセグ携帯が話題ですが、電池が長続きしないために5分しか見ることができないのであれば、「見られない」のと一緒です。

アンチウィルスソフトは長らく、機能の競争でした。

●ウィルス駆除
だけでなく
●迷惑メールの排除
●スパイウェアの発見・駆除
●ネット詐欺対策(フィッシング詐欺対策)
●個人情報漏洩防止
●不正アクセス対策

などなど

「豊富な機能」

を売りにしていたし、また私たちの多くは、それらの機能が「ある、ない」で判断していたからこそ、メーカーも機能強化(この場合は、機能の数を増やすこと)に努力をしていました。

しかし、その間隙を縫って、機能の数の見かけだけを揃え、機能の「質」はおざなりになっている商品も出現します。
外部に漏れることはないため、堂々と

「こんなにたくさんの機能が入って、半額以下」

のような商売の仕方が通ってしまう。

アンチウィルスソフトだけではありません。
商品の多くはまだまだそういった

「わかりやすい部分だけに焦点を絞り、中身は問わない」

ものがあります。

それをどう見分けていくのか。
私たち消費者の永遠の課題なのかも知れません。
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