■必ず失敗するマーケティング用語集【マーケティング】

artc20080115今回は用語集です。「マーケティング版 ビアスの悪魔の辞典」を目指して失敗したので、書き直しました。 パロディの代わりに「よくある失敗」の森解説バージョンを肩の力を抜いて、お楽しみ下さい。

今回は用語集を記事にしてみました。
個人的には、用語集は好きではありません。
私は、ひとつひとつの言葉の意味だけでなく、その背景にある考え方が分かっていないと、物事は理解できないからです。

例えば、英語で「must」は「しなければいけない」という意味ですが、「have to」や「should」とどう違うのかは、辞書だけではわかりません。

その反動のせいか、「ピアスの悪魔の辞典」のようなシニカルなものが大好きでした。
お気に入りはこれ。

「平和とは、国際関係で、戦争と戦争の間のだましあいの時期」

そこで、まずは「マーケティング版悪魔の辞典」を書き始めたのですが、ほぼ1本書き終えて分かったのは

「私にはパロディ精神と文才がない」

という冷酷な事実でした(^^;

なので、全面的に書き換えたのが今回の記事です。
シニカルというよりは、長年コンサルタントをしていて見聞きする

「良くある間違い」

を中心に用語集を作ってみました。

かといって、パロディは元ネタがわからないと笑えませんから、【まじめな解説】も付け加えておきました。

いつもとは違う記事ですが、お楽しみ下さい。

■戦略・戦術

【まじめな解説】
実は、森がいまだにちゃんと解説できないマーケティング用語(←まじめな解説です)。

「戦略」は全体計画、「戦術」は現場での活動と言われたりするが、現場だって計画は組むわけです。
第一「戦略的活動(Strategic Application)」は、戦略に基づく必要があるものの、戦術の代表的な施策である販促キャンペーンだったり取扱店拡大活動だったりする。

というか、「戦略に基づく必要がある」活動以外は本来はムダなことで、やるべき施策ではないはずなので、原理的にはおかしいことになってしまう。
誰か、教えてぇ。

【森流定義】
(1) 戦略とは、戦術ではないもの。
戦術とは、戦略ではないもの。

(2) それをつければ見積もりが数10%アップしたり、本の価値が上がる魔法の単語。
「戦略的分析」「物語マーケティング戦略」「感性マーケティング戦略」などがある。

(3) 実例
新宿歌舞伎町のおさわりパブで、次のような「店づくり」を考えることを「戦略」と呼ぶ。

●どんな女性従業員を揃えるか。胸の大きい女性ばかりにするか、美人を揃えるか、それとも会話が上手い女性にするかを決める

●普通の店にするか、女性の名前を「いくら」や「赤貝」のように寿司のネタにして、ショータイムには「回転寿司」のように客を次々と回るような、ちょっと変わった趣向の店にするかを決める

そして、次のような「日々の営業活動」を「戦術」と呼ぶ。

●女性従業員がお客さんにまた指名してもらうためには、どういったサービスをしなければならないか。誕生日などに営業の電話をかけて店に誘うなどのコツを伝授する

●割引サービス券を発行する

■消費者

【まじめな解説】
商品を買ってくれる人たち。
「人は消費するだけではなく、生産もするではないか」と、どうでもよいツッコミが常に入る用語。

【森流定義】
消費するだけで、生産をすることがない人たち。
普通は、この世にあり得ない。
仕事をしていない人だって、笑顔で周りを幸せにすることができる。これを「生産」と呼ばずに何を呼ぶのか。

■生活者

【まじめな解説】
消費者と同じ意味。
ただし、「消費」という一側面だけでなく、「人は生活している。ひとつひとつの場面で商品企画や広告企画を考えよう」という意味が込められた用語。

【森流定義】
消費者と同じ意味。
森は多用していますが、よくよく考えると、人は全て生活しているのであるから不思議な用語でもあるが、人は全て消費もしているので、当たり前とえば当たり前か…とも思うのです。

■ターゲット設定

【まじめな解説】
「買って欲しい人」を決めること。
世の中に商品が溢れているので、メーカーが苦肉の策で「一点突破」を狙ったもの。
実際に「誰に買って欲しいか」を決めない商品は売れないことも多いので、マーケティングでは「基本中の基本」として誰もが知っています。

【森流定義】
(1) 「メインターゲット 20代女性、サブターゲット 20代男性、30代男女、サードターゲット 40代以上の男女」とわざわざややこしく分解した文章のこと。

同時に、技術革新のインパクトが強いので、あえてターゲットを設定しないと、広告代理店から「ターゲットがないと広告が作れません」と広告代理店の力不足を素直に暴露してしまう危険な言葉でもあります。

(2) 「買ってくれなくていい」人を定義すること。
上司から「お前は売る気がないのか」と叱られるので、ほとんど理解されない定義です。

■イノベーター

【まじめな解説】
ヒット商品を最初に買う人たちのこと。
決して女子高生やオタクではない。

【森流定義】
「イノベーター理論」はそれをややこしく、そして長ったらしく解説したもの。
新書にするには丁度いい長さ。ただし、行間が広かったりページ数が少ないとの批判も浴びがち。

■プロダクトコーン理論

【まじめな解説】
森が提唱した商品の定義。
「規格」「ベネフィット」「エッセンス」の3つで構成される。

この理論が、単なる商品要件のチェックリストで終わらなかったのは、プロダクトコーン理論とイノベーター理論が絡み合い、未来予測ができたりターゲット設定が容易になるためです。

外人に説明した時「理屈は分かった。でもなぜ『コーン』なのか」と聞かれて即答できなかった苦い経験がある。
(なんとなく、規格が広くてエッセンスが狭いイメージがあるではないですか。理由はあくまでも「なんとなく」なんです)

CornとConeが混同されるが、Cornはとんがりコーンに代表される「とうもろこし」で、Coneは三角錐(すい)。お線香の三角錐をイメージすれば良い。

【森流定義】
元がシンプルなだけに「田崎バージョン」とか「桃バージョン」とか、個人が色々と変えた亜種が存在する理論。

ただ、筒状にして名前を変えただけの某広告代理店の「エセ・オリジナル理論」だけはいただけない。日本最大の広告代理店なんだから、もうちょっとプライドを持ちなさい。

■4P戦略

【まじめな解説】
マーケティングの神様、フィリップ・コトラーが提唱した戦略のチェックポイント。うらやましいが、決して、エッチ系用語ではありません。
製品戦略(Product)、価格戦略(Price)、流通戦略(Place)、コミュニケーション戦略(Promotion)の4項目からなります。
つまり、戦略を考える時は、この4つをもれなく考えましょうねという理論です。

【森流定義】
本家本元のフィリップ・コトラーが「4Pは消費者のことを考えていなかった。反省して4Cにする」と言い始めました。
しかし、マーケティングでは生活者のことばかりを説明する言葉なので、企業側の視点で分かりやすく整理された4P戦略は貴重な存在。なので、森は「古い時代の理論だよ」と批判されつつ、あえて4P戦略をよく使います。

■ネーミング

【まじめな解説】
商品名をつけること。
「商品名には意味のあるネーミングをつけるべし」と吹聴するコンサルタントも多いですが、実のところコダックなど、まったく意味がない言葉をネーミングするケースも多々あります。

【森流定義】
シストラット(Systrat)は音だけで決めてしまったので、社名の由来を聞かれると困ってしまう。なので、後付で「システマチック(SYSTematic)、ストラテジー(STRATegy)、つまり『構造的戦略』の略です」と、それっぽく説明しています。

それに輪をかけように「ロゴにある3つのSは『構造(Systematic)』『戦略(Strategy)』そして『成功(Success)』を意味しています」などと追加すると説得力倍増となります。
本当は知り合いのデザイナーで、たばこのサムタイムライトなどをデザインした人に頼んで、夕食とキャバクラ1回分のギャラで何十も出してくれた案の一つを選んだだけです。

■調査(消費者調査)

【まじめな解説】
新商品開発や既存商品の売り上げ向上のために、生活者の意見を聞くアンケートや座談会(グループインタビュー)のこと。
お客さんの意見を聞かないのは暗闇を突っ走るのと同じなので危険です。かといって、下手な調査だと偏った意見しか吸い上げられないこともあるので、やらない方がマシだったということもよくあります。

【森流定義】
(1) 大企業にとって、やらなければ不安で、やったらやったで報告書を本棚に収めて終わった気になる消費者意見の収集活動。
最初は結果を参考にしようと思っているが、日々の業務に追われているとすっかり忘れていることが多い。

(2)「消費者の意見」としてグラフや数字が並ぶものの、「本当にそんな人がいるの?」と、誰も見たことがないような人物像が描かれる報告書が出てくるもの。

(3) 見よう見まねで作ったアンケート質問でも結果が数字やグラフになるので、なんだかすごいことを発見した気になる情報収集活動。

「どうすれば僕のことが好きになってくれますか」という質問に対して、
「(1) 優しい人なら、
(2) 年収1,000万円以上なら、
(3) 身長175cm以上なら、
(4) 正直な人なら」
の4つの選択肢しかないアンケート用紙を作る。その結果、女性回答者から
「(1) 優しい人」
が70%でトップになり、「優しい人になれば」世界一モテる男になれると信じ込むような人が続出する。

(4) 知ってることしか出てこない消費者意見の収集活動。でも、コンサルティング会社からは「知っていることが確認できただけも大切なことです」と説得されて「そんなもんかなぁ」と渋々納得されられる。

(5) 実現不可能な商品案しか評価されない消費者意見の収集活動。
「音質がステレオ並で、テレビのようにスムースな画像が見られ、ネット接続がサクサクして、軽さ30gで、連続待ち受け時間3000時間、しかも価格は2000円を切る携帯電話」がヒットになるとの報告書が上がって来ても、企業は誰も反論できない。いや、やる気が出ない。

主に、アンケートに代表される「量的調査」と座談会に代表される「質的調査」に分類される。

【参考用語】調査報告書、量的調査(アンケート調査)、質的調査(グループインタビュー)、ネット調査

■商品開発

【まじめな解説】
商品を作ること。
一般には工場や研究所で試作品を作ったりするイメージが強いのですが、本来は製品そのものだけでなく、デザイン、ネーミング、ターゲット、セールストーク(コンセプト)などの「企画」を含んだ作業を指します。
製品は技術者がメインの研究開発部が担当し、商品はマーケティング担当の商品企画部が担当します。

【森流定義】
(1) 中身は同じでデザインとネーミングを変えた商品を「新商品」として作ること。
「孫にも衣装」理論とも呼ばれる。

(2) コンサルタントや広告代理店が、不振の既存商品の売上げを上げる方策を考えるのが面倒なので、なにかすごいことをやってのけそうな期待感を出すために提案する企画のこと。

■広告(テレビ)

【まじめな解説】
いわずとしれたテレビで流される広告。
広告はテレビ、ラジオ、新聞、雑誌の「マス4媒体」と、交通広告、屋外看板などの「準マス媒体」に分かれます。また、媒体の性質によって、テレビとラジオを「電波媒体」、新聞と雑誌を「平面媒体」と区分することもあります。
広告クリエータは特にテレビを「ムービー」、雑誌、新聞を「スチール」などと呼ぶこともありますが、一般人が使うとみっともないので要注意です。

なお、企業では「広告宣伝部」といった部署名を多く見かけますが、現代のマーケティングでは宣伝という言葉を単独で使うことはありません。

【森流定義】
(1) 15秒や30秒のタレント・プロモーション・ビデオ。

(2) 「テレビ広告の時代は終わった」と言えば注目を浴びて本が売れたり仕事が取れる、かわいそうなスケープゴート。

(3) 森は「腐っても鯛」と呼ぶが、冷静に考えると、「腐ってしまった」ことには変わらないマス媒体の王者。

類似用語【タレント広告】の項を参照のこと。

■タレント広告

【まじめな解説】
タレントの持つイメージと売りたい商品のイメージを重ねてもらえるために作る広告の一形態。
若々しいイメージを出したい商品の場合は若い人に人気のあるタレントを使い、親しみやすい商品イメージをつけたい場合は国民的アイドルを使う、といった具合です。

タレントを使うとインパクトがあるので覚えてもらいやすい、中小企業でも大企業っぽく見えるという理由でタレントにすることもあります。

タレントを使うと絵コンテの段階から所属事務所のツッコミが入り「あれもダメ、これもダメ」と意図した表現ができないので、有名タレントの起用を嫌うスポンサー企業もいます。

【森流定義】
(1) スポンサー企業の寄付を利用して所属タレントを売り出す広告を作ること。
巨額の寄付に対する感謝の気持ちとして、その企業の商品をタレントが使っているように見せかけてあげるのが慣習となっている。

(2) そのタレントのファンにしか売れないように商品販売数を制限するための広告。
すでに100万人に愛用されている商品に10万人しかファンがいないタレントを使ったりする。
また、長澤ますみが「たくさん」の広告に出演していることを知っている一般人は多いが、すべての商品やスポンサー企業の名前を上げられる人は、ファンクラブの会長と所属事務所以外ほとんどいない。

■調査報告書

【まじめな解説】
読んで字のごとし、調査結果をまとめた報告書。
パソコンがない時代は鉛筆と定規でひとつひとつのグラフを手書きで作っていたので、時間がかかったものでした。その後、プロッターのようなグラフ作成専用機が利用されましたが、ペンが乾いてかすれたりと面倒でした。

現在ではエクセルのデータをボタン一つでグラフに整形する自作ソフトを利用する調査会社も多く、人海戦術中心の調査会社で大幅なコスト削減策が進んでいます。

【森流定義】
(1) 調査会社と呼ばれる民間印刷局が発行する、1ページ当たりの価格が1万円札紙幣よりも高価な私設紙幣の束。

(2) マーケティング担当者が「仕事をやっている」ことの証明書や踏み絵。
立派な背表紙の報告書を書棚やキャビネットに並べると、インテリア代わりになり、業界専門の平凡社百科事典に早変わりする。

(3) 「Research, fuck it (調査?知るか、そんなもん)」と最後の最後でデータを無視する外資系企業もあるが、そういったところは大抵、年間調査費は合計で軽く10億円を超えたりもする。

■多変量解析

【まじめな解説】
統計学の手法のひとつ。因子分析やクラスタ分析が代表です。
定量調査で普通のクロス集計では解明できない複雑なものを解析するために使われます。
例えば、商品AとBを一緒に買う人と、商品BとCとDを一緒に買う人500人のデータを見ながら、人間が一つ一つ分類していくのでは時間がかかりすぎます。多変量解析では一瞬で分類してくれます。

元々が工場や研究開発分野で使われていた手法ですが、アンケートにも使われるようになりました。
最近は学生でも統計ソフトの使い方を勉強するし、パソコンの性能が上がったので身近な存在になりました。森が若い頃は電卓で数日かけて計算したり、当時のパソコンを三日三晩走らせてようやく結果が出るほど大変な作業でした。

林理論(I類やIII類など)は林教授と日本専売公社(現JT)の共同開発です。昭和40年代の当時、大型コンピュータを導入している企業が少なかったせいです。そのおかげか、JTには今でも大学教授並の知識と経験を持つ社員がたくさんいるとか。

【森流定義】
「『多』くの」「『変』な理屈で」「報告書のページ『量』を稼ぎ」、きれいで立派なバインダに報告書を綴じる方法を説いた伝統的な作法。

新入社員が適当な質問番号をパソコンにサイコロを振って入れても、それっぽい結果が出てくるので、別名「チンチロリン解析」とも呼ばれる。

■インターネット・マーケティング

【まじめな解説】
インターネットの世界で通用するマーケティング手法。
マーケティングというとメーカーのために開発された手法が多く、ネットビジネスでは使えないという理由で、独自の手法が編み出されました。

こういったケースは昔から多く、百貨店マーケティングやダイレクト・マーケティング(ダイレクトメールを使った販売手法)などが存在します。

ただ、普通のマーケティングは約50年の歴史で世界で1年あたり100万人が考えたものがまとまった(50年X100万人=述べ5,000万人)のに対して、例えば百貨店マーケティングは20年の歴史で5万人しか考えていない(20年X5万人=述べ100万人)ので、まだまだ成熟しているとは言い難いのも確かです。
「自分の会社や自分の業界は特殊なんだ」と誰もが思いたいので、これからも永遠になくなることはないでしょう。

【森流定義】
「従来のマス・マーケティングは終わった」と勝手に定義してくれて、葬式を出してくれる親切な人々が主張する手法。

■差別化

【まじめな解説】
競争相手の商品と違う点。色が違っても、形が違っても他者と異なれば、それは「差別化」と呼ばれます。
商品が溢れている現在、消費者の目に止まるために絶対に必要なものですが、あくまでも手段です。なのに、これが目的になってしまうと、「インパクト重視」という旗頭の下、奇抜な広告や商品が登場して、売上げ面で目を覆いたくなる惨状が待っています。

【森流定義】
他商品と違うことを強調するあまり「我が社の商品は他社よりビタミンCが10ミリも多い」と宣伝すること。1000ミリでも1010ミリでも、「どっちも少ない(多い)」とは口が裂けても言わないのがお約束。

【関連用語】■市場細分化

■市場細分化

【まじめな解説】
市場をいくつかのグループに区切って商品を開発したり、広告を作ること。
「男性向け」「女子高生向け」といった消費者のタイプで分けたり、「ファミリーカー」「ワゴン」「高級タイプ」「普及タイプ」など、商品の種類で分けたりします。

なぜ、わざわざこんな面倒なことをするのでしょうか。
商品が溢れかえっている現在、「誰でも好かれる」商品は「誰にも好かれない」商品になりがちです。そのため、対象となるサブ市場ごとに考えた方がヒットすることが多いからです。

【森流定義】
(1) ヒット商品が出ないことの言い訳に使う便利な理論。
用例として、「マスの時代は終わったので、市場を切り刻んで、小ヒットの積み重ねでないと売上げは伸びない」などのように使われる。

(2) 自社のシェアが有利になるまで市場を切り刻みすぎて、全体の1%しか大きさがないのに「我が社はこの市場ではトップである」と自己満足に浸る理論。

用例として、「6時間再生で、本体重量が80~90グラム」MDプレーヤー製品群で、●●県●●村でトップのシェアを取ったと宣言される。

【特別メモ】
市場細分化するには「区切る目安」が必要ですが、それをちゃんと記述している書籍がないのが混乱の原因となります。
対象となる生活者の数が100万人を下回るようなら、刻みすぎと言えます。

人口を数えるのが面倒なら、市場規模を計算することでも大まかな目安になります。つまり、数百億円程度の市場なら20%が細分化の限度、1,000億円を越えれば7%が下限値です。通常は、10%から30%の市場規模に区切るのがもっとも成功するラインです。

ただし、こんな実例(イギリスのレストラン)はシャレとして十分インパクトがあるので合格です。

「世界最大のフィッシュ&チップス専門レストラン」

(フィッシュ&チップスはほとんどイギリスにしかなく、かつ店の99.9%がテイクアウト専門店なので、レストラン自体が存在しない。従って、ちょっと大きい専門レストランを作ればすぐに世界最大になる)

■マーケティング

【まじめな解説】
「商品を売る仕組み」のこと。
本来「良い商品」を「多くの売り場に並べて」「広く消費者に知らせれば」商品は売れるので、マーケティングなんぞいらないと森は思っています。

マーケティングは「良い商品がどんなものか、わからなくなった(ある人には良い商品が他の人にとっても良い商品とは限らない)」り、ある商品が売れない理由と解決策を探るためにあるものです。

【森流定義】
(1) セールスをかっこ良く言い換えたもの。

(2) エクセルでグラフを作ってカラープリンタで出力すること。

(3) 「マーケティングではヒット商品は作れない」という真実を借りて、「生活者の意見を聞くことはプロとして敗北を意味する」と思いこんでいる人が嫌うもの。
「消費者は俺たちが引っ張っていくんだ」という愚民思想が最大の特徴。

ちなみに、古い人たちはマーケッティングと「ッ」を一文字アクセントに加えることが多い。

■企業イメージ調査

【まじめな解説】
企業に対する消費者のイメージを調べるアンケート調査。
企業イメージが良ければ商品も売れるという理論に基づいています。
その後「メセナ活動(企業の社会貢献)」や「CI(企業イメージアップのための社名変更や会社の目指す方向の宣言などを実施します。
最近は、企業価値の指標の一つとしても使われます。
「一流」「研究開発に熱心な」「親しみやすい」などの言葉に当てはまるものを回答させる形式が多いのが特徴です。

【森流定義】
「一流」や「親しみ」は (結果ではなく) 原因だと力説する調査。
この説に従って言えば、「一流」イメージは「品質の良い商品を出し続けた」結果、出来上がったイメージとは捉えない。また、「親しみ」イメージは、我々の身近でいつもその会社の商品を見かけるからこそできあがったものとは考えない。

そのため「A社は『一流』『親しみ』の評価が他社より低いので、これを上げる必要がある」と報告書には書かれるが、「上げるためにはどんなことをすべきか」についてはまったく言及しない。
通信簿をもらっても「どうしたら成績が上がるか」が分からないのと同じ。

そこで、企業は「一流」や「親しみ」をテーマとする広告を作ろうと躍起になるが、それで企業イメージが上がった試しがない。

我々生活者は単なるイメージ広告を見るだけで、「あ、この会社は一流なんだ」と錯覚すると誤解されている。

【特別メモ】
調査すべてに言えることですが、原因と結果を混同するのは大きな間違いです。
企業イメージ調査では特にその間違いを犯しやすいもの。

■コンセプト

【まじめな解説】
「どんな商品かを(数行から数10行の文章で)定義すること」を言い換えた言葉。
転じて「どんな広告なのかを定義すること」を「広告コンセブト」などと呼びます。
商品の生い立ちから販売までの過程での憲法のようなものと考えれば分かりやすいでしょう。これを定義しておかないと、たくさんの人たちが関わる商品開発や広告開発で混乱します。

例えば、デザイナーはおしゃれな商品だと思ってデザインを作っているのに、セールス部隊は「職人の技が光る高品質な商品」として売ると、商品の性格がばらばらになってしまって、たくさんの商品が溢れかえる中で目立たなくなってしまうからです。

【森流定義】
ホイチョイ・プロダクションの名作まんが「きまぐれコンセプト」の省略形。
白クマ広告社や荒鷲エージェンシーという架空の広告代理店マン達が繰り広げるボケと突っ込みの世界を描いた4コママンガ。ホイチョイの代表、馬場氏は律儀な方で、もう20年以上も欠かさずアイデア一杯の年賀状をくれる。

あのまんがの内容の95%は実話に極めて近い「本当の広告代理店とクライアントの世界」を描ききっていることを知っている一般人は少ない。森も当時、販売促進課長(広告宣伝も担当していた)を勤めていた時、課員全員に教科書として配布したことがある。

「私をスキーに連れてって」「彼女が水着に着替えたら」などの映画製作を手がけたり、「東京いい店、やれる店」などのガイドブックを執筆したりと活躍している。絵だけを見るなら、テレビ番組雑誌「テレバル」の広告に出てくるまんがはホイチョイの手によるもの。

■ニッチ戦略

【まじめな解説】
ニッチとは「すき間」のこと。つまり「すき間戦略」ですが、語感がかっこわるいので、元の横文字を残しただけです。
マーケティング用語でカタカナが並ぶのは森は好きではありませんが、仕方がないところもあります。というのも、企業が社内でモチベーションの上がらないような用語を使うと、やる気がなくなって、売れるものが売れなくなることもあるからです。

かといって、カタカナを使うと偉そうな感じがする、説得力があると思って乱用するコンサルタントがいるのも、また事実です。

もっとも、どう言い換えても「すき間」は「すき間」なので、やる気がなくなるのは変わらないとも言えます。地元では大きな企業なので「俺たちは大企業の戦略しかやらない」と勘違いなプライドが強い企業ほど、その傾向が強いものです。

【森流定義】
ハッカ(メンソール)の「ニッキ」がなまったもの。
スースーする(市場の)隙間に商品を突っ込むこと。

大塚グループがその応用を得意とする戦法。好例がポカリスエットやカロリーメイト。
その周囲にはほとんど自分の商品しかないから市場シェア100%になる。商品ではなくその市場の広告すると、市場が大きくなるとともに自分の商品も大きくなり、気がついたらトップのまま市場を独占していたことになる。

大塚方式は大量の広告費がかかるが、一般的にはひっそり密かにおいしい汁を吸いながら、時代の風の流れが自分に吹いて来るのを待つことが多い。

ただ、ニッチのつもりが大企業にバレてしまい、アイデアをかっ去らわれて、全国展開と大量の広告であたかも先陣企業が真似をしたように疑われることがあるのが欠点。その代表に「エバラ浅漬けの素」がある。

【特別メモ】
ふざけた説明ですが、「ニッキ」以外は正しい解説です。

■ミート戦略

【まじめな解説】
トップ企業が下位メーカーとわざと同じことをすること。ミートは「meet」のことで「会う、合わせる」意味。「ジャストミート」のミートと同じです。
下位メーカーと同じような商品をぶつけたり、同じような広告を作れば、トップ企業の方が有利になるからです。
古くはニッカ・ウィスキーに対するサントリーや、「マネシタ」と揶揄されながらも松下電器が得意とした戦略。

ただし、下位企業が上位企業と同じことをするのはミート戦略とはいわず、単なる「物まね」です。

【森流定義】
出会い系サイトでいかにすれば若くてきれいでスタイルの良い女性に会えるか(meet)を「このとおりやれば成功する」と解説した定価1万円もする情報ビジネス。つまり「模倣」が大事だと説いたもの。

ただし、この戦略は誰にでもできる訳ではない。
豊富な経済力と、相手の女性の心理を見極める頭脳、そして、「マーケティングセンス」がなければ成功しない。

その条件を持たない男は別欄の「チャレンジャー戦略」や「ニッチ戦略」などの奇策を取るしかない。

また、ミートホープ事件がきっかけで「偽装」を意味することが近年わかってきた。

■チャレンジャー戦略

【まじめな解説】
下位企業がトップ企業と違う商品を開発したり、違う広告を作ったりすること。
ただし、違う点の程度の差によって、「チャレンジャー戦略」と「ニッチ戦略」に分かれます。
生活者の主要ニーズが3つあるとすると、すべてを外すのが「ニッチ戦略」、そのうち1つか2つを外すのが「チャレンジャー戦略(側面攻撃)」です。

例えば「早い、安い、うまい」が牛丼の主流ニーズだとすると、各戦略には次のような違いがあります。

▼「早い、うまい、健康によい」【側面攻撃=3つのうち2つは主流】
▼「メニューが豊富、健康によい、作りたて」【ニッチ攻撃=3つのうち全部主流から外す】

【森流定義】
市場シェア2%の企業がシェア40%のトップ企業に対して、玉砕覚悟で勇猛果敢にチャレンジする戦法。
「命知らず」「良くやった」「男気がある」と周囲から賞賛を浴びるが、ほとんどの場合、本当に玉砕する。

■トップ企業

(1) 気持ちに余裕があるので、失敗が少ない企業
(2) 「業界の常識」を作った企業
(3) 「トップ企業にどうせ勝てない」と他社に思わせた企業は「ガリバー企業」と呼ぶ
(4) まれに「没落企業の過去の栄光」のこと
(5) 下位企業でないこと

■下位企業

(1) 気持ちに余裕がないので、失敗が多い企業
(2) 「業界の常識」に縛られた企業
(3) 「トップ企業にどうせ勝てない」と自縛した企業は「負け犬企業」と呼ぶ
(4) まれに「トップ企業の通過点」のこと
(5) トップ企業でないこと

■没落企業

「今までのお客様●●万人」や「販売総数、地球●周」と広告で歌っている企業のこと
逆な言い方をすれば、それしか訴えるものが残っていない企業のこと。

■プロダクト・ライフサイクル

【まじめな解説】
商品カテゴリーや個々の商品の誕生から葬式までを、いくつかの段階で区切る考え方。
おぎぁと産まれてよちよち歩きの幼児までの段階は「導入期」。ティーンエージャーから結婚するくらいまでを「成長期」。子供が産まれ、巣立つまでを「成熟期」。それ以降を「衰退期」と呼びます。

ライフサイクルとは元々「人生の段階」という意味ですから、それを商品に当てはめたネーミングです。

古典的なマーケティングでは「だからどうした」の解説がないので、知識としてはあるものの、実務で使われることはほとんどありませんでした。また、それぞれの段階の見分け方を明記した書籍がなかったので、使いづらいといった評価もありました。

森もメーカー時代、同じ不満を持っていたのですが、実のところ意外に使えることを発見し、長年実務に応用しています。森の書いた「シンプル・マーケティング」はプロダクト・ライフサイクルを使いこなす解説が書いてある珍しい書籍でもあります。

【森流定義】
売上げが止まると、「成熟期に入った(だから、売上げが伸びなくても自分の達の責任ではない)」と言い訳をするための便利な理論。
それぞれの段階の定義がはっきりしていない一方、誰もが一応は聞いたことがある理論なので、「そうなのか」と納得してしまう魔力を秘めています。

家庭内普及率13%が約10年続いたパソコン業界が「パソコンは成熟期に入った」と悲観的だったが、1995年のインターネット・ブーム、ウィンドウズ・ブームで結局現在の70%になったことは、「都合が悪いことは忘れる」法則に従って、業界の誰もが「そんなこと言いましたっけ」ととぼけているのは、心理学上の人間の記憶のメカニズムです。

現在では、iPodを代表とするデジタル携帯プレーヤーについて、あるマイナーなメーカーが「成熟期」だと雑誌DIMEで堂々と発言しています。ちなみに、デジタル携帯プレーヤーは成熟期からほど遠い普及率30%程度だと言われています。
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