■激安、お値打ち、妥当価格、お手頃価格は違うのか【価格戦略-サルにもわかる基礎マーケティング6】

artc201211012理論編の記事が続きますが、ごカンベンを。
今回は「シンプルマーケティング」でも対象テーマにしなかった価格戦略のお話です。
価格観調査手法の「PSM分析」はシストラットの公式ページでもトップクラスのアクセス数を誇ります。
ただ、手法なのでメルマガのテーマには細かすぎます。そこで、価格戦略を取り上げることにしました。
ハゲ防止にも役立ちます…たぶん(^^)v

つれづれなるままに価格戦略のお話

商品をいくらの価格にするか。
本来は大変悩ましい課題です。
安くしすぎると利益がなくなります。
高くしすぎると買う人が少なくなる。

現在のほとんどの業界では競争相手がいますから、相場に合わせれば大体の価格はつけられます。
普通の清涼飲料水で千円の値段はまずありえないし、ソーセージ300gを20円で売るわけにもいかない。
私たちは「このスペック、内容ならこれくらい」という価格は想像がつきます。だから、価格付けで実務担当者が悩むことも少ないのが現状です。

一方で、こんな議論はあちこちで見かけます。

「画期的な商品だから3割くらいは価格を高くしたい」
「1割くらいは価格を安くしないと、売上げを伸ばすのは厳しい」
「競合商品が値下げしてきた。我が社も対抗すべきか?」

結局、確固たる判断基準がないので、なあなあになってしまうのが実情です。
第一、価格変更は経営に直結するので、そうそう簡単に変えられない。

その割に実用的な価格戦略や価格理論が少ないのがマーケティング担当者の悩みです。決定打だというものがない。

そこで、価格理論をつれづれなるままに紹介するのが今回の記事です。

市場で求められる価格設定はバカにならない

古典的な「市場価格主義」。
市場でこれだけの価格が求められているのだから、その価格に見合った商品を作りなさい価格付けの手法です。
「言うは易く行うは難し」「机上の空論」の代表選手のような言われ方をすることが多いのも、この手法です。

しかし、自分の努力不足を棚に上げずに真剣に取り組むことで、この手法で成功した事例はいくつもあります。

artc20130912例えば、最近、話題になっている「500円ピザ」。
吉野家が新しい業態として、今年10月にオープンした「ピッツァナポレターノカフェ」をはじめ、渋谷に350円ピザのナポリスがすでに開店。
カフェのおつまみで良いのなら500円ピザは渋谷に5~6軒あります。

今までの主流である宅配ピザが2千円以上し、レストランでのピザも千円程度の価格であることを考えると破格です。

でも、宅配ピザの原価は10%~20%。1枚200円~400円です。
一方、普通の飲食業の原価は中華で30%、フレンチで40%。それ以上だとコストが高すぎてやっていけないと言われます。
その差に目をつけたのが低価格ピザです。

宅配ピザは暴利をむさぼっているわけではなく、宅配の人件費を合わせると標準的な30%~40%の原価です。だったら、宅配の人件費分をなくしてしまえばいい。
1枚200円の原価のピザが原価40%だとしても500円の売値でもやっていけるのです。

同様のことはメガネや生花でも言えます。
メガネの年間商品回転数はたったの3~4回転。つまり、1つのメガネが仕入れてから売れるまで4ヶ月もかかる。ほとんどお金を寝かしているようなものです。
だったら、普通の雑貨の標準である月1回程度の商品回転数にしてやれば、安くても利益が出る。
格安メガネチェーンは仕入れたらすぐ売れる売れ筋のメガネだけに絞って、品揃えをすればいい。

生花は売れ残るとしおれてしまうので、売り物にならなくなる。売値にはその「リスク代金」も上乗せされているので、高くなる。
だったら、これも売れ筋だけに絞ればいい。

大量に作る代わりに商品のバリエーションを少なくすることでコストダウンをはかる100円ショップやユニクロもその仲間です。
マクドナルドをはじめとするチェーン店の多くもここに入ります。

ただし、これらの手法は新しい業態で実施できる方法です。
利益を稼ぐ構造自体を変えることで実践できる。
でも、乳製品、飲料、テレビメーカーがやろうと思っても、生産システムを変えないとなかなか実現しにくい。
「机上の空論」と言われてしまうのは、メーカー自身の怠惰な発想だけでなく、そのせいもあります。

上下20%で考えれば悩みでハゲない

さて、それでは、従来のシステムで値付けを考える際にもっとも簡単で有効な方法はないのでしょうか。

新製品や既存商品の価格づけで最も多いのが「競争相手がいる。いくらにすればいいのか」です。
競争相手がまったくいない業界はそうそうないし、とんでもなく高い価格をつけられる画期的な商品はそうそう出現しない。
従って、価格づけでもっとも頻繁に見かけるのは「競争相手を意識した価格づけ」です。

さて、いくらにするかは新製品のスペックや競争相手より自社が強いか弱いか。その程度はどれだけなのか等、様々な要因が重なり合って決まります。
様々な要素を考えすぎて悩むと頭がハゲます。

そこで、シンプルな割に効果が高いのは、私独自の考え方の

「価格比20%理論」

です。

人は20%の違いまでは「似たような価格」だと感じ、それを外れると「高い」「安い」と思うのが「価格比20%理論」です。
普段1,000円の商品が1,150円に上がっても大して気にとめないけど、1,210円になると急に高くなったと感じる。

逆に、1,000円が850円(15%減)に下がっても同じくらいの価格感覚(似たような価格)なのに、790円(21%減)になると、途端に安くなったと感じる。
これを応用したのが「価格比20%理論」です。

「価格比20%理論」で多くの価格の悩みが消えます。

●競争相手より高級感やワンランク上の印象をつけるなら、20%以上価格を高くしないと説得力に欠ける
(逆の場合は20%以上安くしないと、低価格のイメージが出ない)

中途半端な価格上昇だと、いくら「高級なんです」と訴えても「品質も似たようなものだろう」と思われてしまいます。
逆に、中途半端に値下げをしても、生活者からは「似たような価格(安く感じない)」だと思われてしまい、メーカーが期待するほど売れないだけでなく、利益が減ってしまう。

●値上げをしたいなら、一気に20%以上上げてはいけない。
例えば、15%の値上げを2回に分けた方が売上げに対するダメージが少ない。

上記が理解できれば、理由は説明不要でしょう。
例を上げます。
2012年8月にたこ焼きチェーン銀だこが33%の値上げをしたことがありました。
8個500円を6個500円に値上げしたのです。

案の定、売上げが減りました。2ヶ月もしないうちに10月に値下げしました。6個500円が8個550円、6個450円になりました。
結局、33%値上げ→10%値下げ(6個)・18%値下げ(8個)と乱高下し、最初の金額からは10%(8個)しか値上げしていないことになってしまいました。

artc20131001値上げも値下げも中途半端な稚拙な例です。
稚拙と言えば稚拙でしたが、大企業でも同じような失敗は良く見かけます。
価格づけはそれだけ難しいということでしょうし、それをバックアップする理論も手法も数少ないという証でもあります。

別な例ではマクドナルドの月見バーガーがあります。

2004年 190円
2005年 220円 (15.8%)
2008年 270円 (22.7%)
2009年 290円 (7.4%)
2012年 320円 (10.3%)
2013年 360円 (12.5%)

2008年に22.7%の値上げをした以外はすべて20%以内に収めています。
月見バーカーが高くなったとネットで騒がれている割に、実売が落ちないのはそのせいです。

ただし、マクドナルドがちゃんと「価格比20%理論」がわかっているかというと、はなはだ疑問です。
2013年11月1日(あと数日後です)にマックポークが久々に復活しました。
しかし、その価格は衝撃の150円。100円マックだったのだから、みんなの記憶には残っている。それを一気に50%も値上げしたのですから、売れ行きのほどは期待できません。

●特別キャンペーンなどの販促価格では20%以上安くしないと効果がない
(逆に言えば、半額にしなくてもいい)

これも例を上げます。
マクドナルドが2001年、ハンバーガー半額キャンペーンを実施して客が殺到したことがありました。しかし、利益悪化で日本でのマクドナルドの立役者、藤田田氏はこれら一連の値下げ施策が原因で追放されました。

それまでのマクドナルドの価格戦略はきれいなものでした。
1994年のバリューセットは540円から400円、26%の値下げ。
ビッグマックセットは790円から600円、24%の値下げでした。
「20%以上安く」することで、「はっきりと安くなった」イメージを植え付け、かつ利益も担保できる賢い価格設定でした。
結果は、ご記憶のとおり大ヒットで客数も売上げも伸びました。

ところが、その後がいけません。
2000年に130円のハンバーガーを65円、160円のチーズバーガーを80円、240円のフィレオフィッシュを120円に値下げしたのです。3品とも半額です。
確かに客足は伸び、競合他社だけでなく牛丼業界もあおりを食らって400円を280円に値下げするなど、社会現象ともなりました。
しかし、2002年にはマクドナルド創業以来の赤字転落。

販促キャンペーンで来店客数を増加させるなら、半額はやりすぎです。
20%引きで十分効果があります。
半額にするともっと客数は伸びますが、コストがかかりすぎるのです。
客数とコストのバランスが最も良いのが20%引きなのです。

逆に言えば、値引き販促キャンペーンで20%未満は「大して変わらない」と効果が薄い割に、値引き原資が重くのしかかるという訳です。

もっとも、マクドナルドの場合は別な意図がありました。
藤田氏が当時発言していたのは「ハンバーガー市場はこれ以上、同業の競争相手とケンカしても意味がない。コンビニのおにぎり市場などの『昼飯市場から売上げを奪う必要がある』」でした。
ただ、限度というものがあったことを忘れてしまったようです。

●「価格比20%理論」は心理学

実は「価格比20%理論」は価格理論ではなく心理学です。

「人は基準の20%以上でないと知覚できない」

がベースとなっています。

ノートパソコンやスマートフォンの液晶サイズ、パスタのゆで時間、飲料の容量など、数値化できるものならほとんどすべてに使える考え方です。

面白い例として「色彩」も同じ価格比20%理論が当てはまります。
色は彩度と明度で決まります。
そのどちらか一方が20%以上、または両方組み合わせて20%以上の違いではじめて「違う色」だと認識されるという訳です。
デザイナーにそういう知識がある人は多くないですが、ほとんどのデザイナーは経験則で知っています。

価格についてはダイエーの実験で証明されたことがあります。
同じ野菜を日を変えて値段を上げたり下げたりする。
すると、20%上げると一気に売上げ個数が減り、20%下げると一気に売上げ個数が増えることが分かったのです。

ちなみに、価格比20%理論は「隣り合わせでの比較」では意味がありません。価格比20%理論は「記憶(イメージ)がベースになっている」からです。
隣り合わせだと「記憶ではなく事実」になってしまうので、違いが20%未満であっても高いものは高い、安いものは安いことが明白になる。
ネットで月見バーガーやグラコロが「こんなに高くなった。ふざけんな!」と騒がれるのも、記憶に基づくのではなく価格変遷のリスト(隣り合わせの事実)があったからです。

逆に言えば「20%未満しか差がない商品は、競争相手と隣り合わせて比較させると有効」でもあります。
5.4インチのスマートフォンが「大画面だ」と言いたいならば、店頭の陳列で4.5インチや5インチのスマートフォンの隣に並べると「ほほう、確かに画面が大きい」と消費者に思ってもらえます。

店頭で双方を離して陳列してしまうと比較がイメージになるので、「なんだ、『大画面だ』と言っても、大して変わらないじゃないか」と思われてしまう。

心理的サイフ

2番目の価格づけの考え方を紹介しましょう。

「千円の商品は高いか安いか?」

普通はこんな質問をされても答えようがありません。
千円のスマートフォンはとんでもなく安いですが、千円のコーラはとんでもなく高いからです。

私たち人間には「相場感覚」があります。

「時計ならいくらが相場」
「清涼飲料水ならいくらなら許せる」
「ラーメンは1杯いくらなら許容範囲」

などです。

そして、その相場が大きくずれた時に「高すぎる」「安すぎる」と感じます。
多くの業界ではすでにある商品の価格が「相場」になりますから、普段は意識しなくてもかまいません。

しかし、相場感覚は時代とともに変化します。
また、人によって感覚が違います。

時代性は例を挙げれば簡単に理解できるでしょう。
100円ショップが文具の価格の相場を崩しました。
牛丼業界が従来の和風ファーストフードの相場を崩して久しい。
古く昔は、つぼ八や養老乃瀧が居酒屋の価格相場を崩し、現在では290円居酒屋の金の蔵がその急先鋒です。

artc20131002人による相場感覚の違いはちょっと説明が必要です。
私はクルマ好きではないので、400万円も500万円もクルマに出費する人の気持ちは分かりません。でも、電子機器好きなのでトータルで200万円かかっても大して気にとめません。

逆に、クルマ好きの友人は400万円のクルマを買ったために毎日カップラーメンで過ごしても気にならない。一方、電子機器に200万円もかける私を「変なヤツだ」とからかいます。

これを心理的サイフと呼びます。
つまり、私は電子機器に対する心理的サイフは大きいけれど、クルマに当てる心理的サイフは小さい。友人はその逆です。

この例では「好きかどうか」でお金の出し方が違う例です。
しかし、もうひとつ基準があります。

後輩の加藤くんは肉が好きです。和田くんも大好き。ここまでは「好きかどうか」でいえば、2人とも同じお金の出し方をするはずです。

加藤くんは「肉が好きだから」お腹いっぱいに食べられれば幸せです。安い肉でも高い肉でも変わりません。
一方の和田くんは「肉が好きだから」、肉の質にうるさい。安くて固い肉なんて食えないといつも文句を言っている。彼にとって、肉の量は関係ないからです。

ここでの心理的サイフは「肉の量」「肉の質」のどちらに重点を置いているのかを考えなければなりません。

現実的には3段階以上のことを考えて価格付けを行う必要はありません。細かすぎても企業が対応できないし、生活者も混乱するからです。「肉の質と部位と焼き加減と付け合わせやソース」に心理的サイフがあるといっても、やり過ぎです。

昔、自動車メーカーがこれをやり「少量多品種生産主義」をあげたところ、マツダ・ファミリアだけで140種類ものタイプができあがり、利益率が低下。1台のファミリアを売って1万円しか利益がなくなってしまったことがありました。

なにはともあれ、心理的サイフの考え方がわかれば、価格はすべての人にとって安いか高いかを議論しても意味がないことが理解できるでしょう。

自社商品のターゲットとなる消費者が安いと思うか高いと思うか。
これさえ気にしていればよいのです。
いくら、ターゲット以外の人たちが「高い」と言っても気にすることはまったくありません。

絶対価格表示と相対価格表示

価格の表示の仕方には2種類あります。

絶対価格表示「▼▼円」と
相対価格表示「●●%引き」

です。

artc20131003どちらが良いのでしょうか。
法律上、相対表示価格をすることはありませんが、販促キャンペーンなどではまだ健在です。

結論からいうと「絶対価格(▼▼円)は詳しい客(イノベーター)向け」「相対価格(●●%引き)は一般客(フォロワー)向け」です。

商品に詳しい生活者(イノベーター)はスペックも価格も、そしてそのバランスも頭に入っています。
従って、「▼▼円」と聞くだけで「相場より高い安い」が瞬時に判断できます。

一方、一般客(フォロワー)は知識がないので「●●%引き」の方が安いことが理解できます。

だったら、詳しい客でも「●●%引き」でいいのではないかと思われるでしょう。
ご明察です。
結局、詳しい客(イノベーター)はどんな価格表示でも対応できてしまいます。
一方、一般客(フォロワー)は「●●%引き」でしか判断できない。

ということは「専門店」の演出をしたい場合は、絶対価格表示「▼▼円」で表示するのが有効だということが分かります。
「専門店」だけど、「一般客も欲しい」という店は、相対価格表示「●●%引き」で表示すれば良い訳です。

余談ですが、キャバクラなどの風俗業界では客の知識に関係なく

「3千円(30%)引き」より
「8千円ポッキリ」

の方が圧倒的に客の誘引効果があります。

前者では元々の価格がわからない(表示と違う場合も多い)から、3千円くらい値引きされてもとんでもなく高い値段を請求されるかも知れない。だから、客は警戒する。
後者は手持ちのサイフと相談できるので、安心できます。

場の価格-コンビニと百貨店の場の魔法

コンビニには3,500点~5,000点の商品があります。
私たちの生活を支える商品が一杯です。
でも、よくよく見ると、一部の例外を除いて3千円以上の商品は置いていません。
家庭用ゲームをコンビニが扱っていたことがありました。今と違って様々なラインナップを揃えていたものです。当初「コンビニで初めての高額商品の扱い」ということで、流通業界で話題になりました。

一方、百貨店には数十円の商品はほとんどありません。数百円の商品も数えるほどです。

業種が違うので当たり前に見えます。
また、それぞれの位置づけが、コンビニは普段の生活商品(最寄り品と呼ばれます)、百貨店はわざわざ買う商品(買い回り品と呼ばれます)を扱うのだから、売り場面積を有効に使うなら、それぞれの特徴の商品を扱うのは理にかなっているように見えます。

それらの理論は正しいけれど企業側の論理です。
客が買ってくれれば、コンビニだって5千円の最寄り品を扱ってもいいではないですか。
百貨店だって、買い回り品ばかりを売っているわけではないではないですか。食品売り場は最寄り品売り場のハズです。

実は、生活者が原因なのです。
生活者はコンビニでは単価の高い商品は買わない。
生活者は百貨店では安い商品を買わない。
だから、自然とコンビニも百貨店も価格帯を分けているのです。

どういうことか。
これを私は「場の価格」と呼んでいます。
客が一旦コンビニに入店すると頭のスイッチが「低価格帯モード」に入ります。
要するに「高いものは買わないぞ」モードになる。
なぜか。コンビニは「さっと入って、さっと出る」お店だからです。じっくりと検討して商品を買う場ではないからです。
だから、数千円の高額商品は目にも入らない。入っても、買う気にならない。

一方、百貨店は「高価格帯モード」スイッチが入ります。
だから「せっかく来たのだから、安いものは買いません」モードになる。
コンビニの逆です。生活者は百貨店をじっくり検討して買う場だと思っている。その日は買わなくても何回か来店して、ようやく買う商品を決めることだってあります。

同じ人間がコンビニに入店して2千円以上の商品は買わないのに、隣の百貨店では2千円以上の買物しかしないのです。

「場の価格」は同じ店舗内でも発生します。
スーパーにはいくつかの売り場の種類があります。

●定番の棚:普通の商品棚です。
●特売の棚:定番棚の端や棚の合間のワゴンスペース
(専門用語で「エンド」や「アイランド」と呼ばれます)

定番の棚で1個89円の商品があります。
特売スペースでは同じものが3個パック298円で売られています。
3個パック1個当たりの値段は99円ですから、定番の棚の方が安い。
ところが、売上げは特売スペースの方が多いのです。

「定番の棚は高い。特売スペースは安い」という意識の刷り込みと、1個当たりの価格計算をしない主婦の組み合わせで、こういう現象が起きるのです。
これも「場の価格」の一種です。

ワイン販売の妙味-彼はいかにしてトップセールスマンになったのか

artc20131004価格付け理論とはちょっと違いますが、面白い心理テクニックを使った例を紹介します。
ある営業マンは企業向けにワインを販売しています。
といっても、業務用ではなくあくまでも個人向けです。
職場に出かけ、終業後にワイン試飲会を開催し、その場でワインを売るビジネスです。

さて、彼はいくつかの価格帯のワインを用意します。
千円、3千円、5千円、1万円の4種類です。

まず、千円のワインを試飲してもらいます。
今時のワインですから千円でもなかなかおいしい。みんな楽しそうに首を縦に振っています。
次に、3千円のワインを飲んでもらいます。これもおいしい。
続いて5千円、1万円のワインを飲んでもらう。
さすがに1万円のワインは質がよいのでかなりおいしい。けれど、値段が高すぎるのでみんな躊躇します。

普通の営業マンなら、ここで

「さあ、みなさんどれにしましょうか?」

と販売にかかります。
すると、千円のワインが一番売れて、次に3千円が売れます。

彼は違いました。

「1万円のワイン、いかがでしたか?おいしいですよね。
最初に飲んだ千円のワイン、どうでしたか?
あれもおいしかったですよね。自慢のワインですから。
それでは、もう一度その千円のワインを飲んでみてください」

1万円のワインを飲んだ直後です。
千円のワインなんてまずくて飲めたものではありません。
かくして、千円のワインはほとんど売れず、3千円と5千円が売れるのです。
もちろん、総売上は彼の方が何倍も上です。

前述の「値上げをするなら、20%未満の値上げを繰り返せ」は心理学でいう「フット・イン・ザ・ドア法則」です(最初に小さなお願いをして、それを繰り返せば大きくなる心理。直訳は「ドアに靴を挟む(ことで閉め出されない)ですから、かなり強引な営業マンのイメージですが)。

彼のケースはその逆の「ドア・イン・ザ・フェイス法則」の応用です(最初に無理なことを要求し、わざと断らせてから小さいことを受け入れさせる)。
価格はあくまでも顧客心理との組み合わせで考えることが必要なのです。

見せ筋価格-アンカリング効果

ワインのケースを詳細に説明すると、彼のやり方は「ドア・イン・ザ・フェイス法則」と行動経済学でいうところの「アンカリング効果」との組み合わせです。
アンカリング効果とは「最初に提示された数字が常に人の基準となる心理」のことです。
ルーレットで勝手に決めた数字を元にして(みんな見ています)、「国連に参加している国のうち、アフリカの国の数の割合はルーレットで出た数字より上か下か」と聞きながら具体的な数字を尋ねます。

すると、ルーレットで10(%)と出たグループは低い数字、50(%)と出たグループは高い数字を言うのです。
参加者にはルーレットで出た数字なので、適当なことは分かっています。
でも、その数字に引きずられる。

これを価格づけに応用すると「見せ筋価格」になります。
パソコンで「29,800円」と広告で強調すれば、「パソコンなのに安い」とのイメージがつきます。実際、オプションをつけたり性能の高いCPUのバージョンが10万円以上であっても、です。
その結果、多くの場合で最も安いモデルより上の価格帯のモデルが売れ筋になります。

逆に、価格が高い口紅の隣に中間価格、低価格の口紅を陳列しておくと、高級感が演出できますし、中間価格帯が安く感じます。

さて、価格理論として大切なのは、冒頭の「価格比20%理論」との組み合わせです。
それぞれの価格帯の商品を用意する時には、「20%以上価格を離す」ことが重要になるのです。

例えば、良い例は次のようなケースです。これなら、アンカリング効果が発揮します。

●9,800円、11,900円(9,800円の21.4%高い)、14,900円(11,800円の25.2%高い)

悪い例はこちら。中間価格帯が中途半端なので、9,800円に売上げが奪われてしまう。アンカリング効果が発揮できないのです。

●9,800円、10,900円(9,800円の11.2%しか高くない)、13,900円(10,800円の27.5%高い)

競合価格-何と比べるかによって価格は上げられる

artc20131005冒頭で「値上げをするなら20%未満を繰り返す」ことが大切だと説明しました。
ただし、さすがに上限というものがあります。

14%の値上げを2回繰り返せば30%の値上げができます。
でも、競争相手の商品と品質が変わらないのに、30%も値上げしてしまったら売上げは下がります。
当たり前のことです。
でも、やり方によっては、売上げを上げることができます。

銀だこの例を再度上げましょう。
関東でのたこ焼きはスーパーのフードコートで8個で350円から400円です(関西では250円から300円くらいですが)。
一方、お祭りという付加価値がある露天屋台では8個で500円が統一価格。
座って食べるお好み焼き屋のたこ焼きは700円から1,000円ほど(関西風をうたっている店では280円なんてところもありますが、例外です)。

こんなに価格の幅が広いたこ焼き業界ですが、銀だこの価格感はどんなものでしょう。
フードコートを基準にすると25%から43%も高く感じます。
お祭りの露天屋台を基準にすると同額。
座って食べる店を基準にすると29%から50%も安く感じます。

すると、銀だこが、どの業態に属するのかで8個500円は高いか安いかの判断が変わります。
ましてや、6個500円に最終的に値上げできるのかどうかも変わるのです。
それを意図的に操作すれば…価格を上げても大丈夫ですよね。

「買わない理由」で「価格が高いから」は気にするな

心理的サイフの続きです。
アンケート調査で「この商品を買わない理由」を聞くことがあります。
(私自身は、このたぐいの質問は戦略立案の参考にならないので、ほとんど実施しません)
ほとんどのケースで「価格が高いから」の項目がトップ3に入ります。
激安のはずの100円ショップですら「価格が高い」と言う輩(回答者)がいます。

そこで、商品が売れない時に多くの企業が検討するのが「値下げ」です。
呪文のように、何かあると「安くしないといけない」呪縛に縛られます。
定価を下げなくても、営業の現場で「報奨金」「リベート」「キャンペーン」などの名目で、スーパーに安く卸す。それを原資にお店が安売りをするわけです。

しかし、下手な値下げは企業体力を蝕みます。
特売ばかりやっていると、定番の棚の商品が売れなくなります。特売を待てば安く手に入るから、わざわざ高い定番の棚の商品は買わずに我慢する。あるいは、特売の時にまとめて買って置いておく。
「定番のスペースはショールーム」と揶揄される商品は数多いものです。
インスタントコーヒー、醤油を代表とする調味料など、枚挙にいとまがありません。

この現象をちょっとひるがえって見てみます。
そもそも、「価格が高い」と感じる一定数の人がいるのは当たり前なのです。
心理的サイフで説明したように、ひとつの商品に対する価値のとらえ方は人それぞれだからです。

無理に「生活者全員から適正価格だ」と思ってもらう必要はありません。
アンケート結果で価格が高いと思う生活者がトップ3に入るのは当たり前。いや、むしろ、10%しかいないなら、それは「価格を低くしすぎた結果」だと思わないといけません。

「そうは言っても売上げが下がるのを指をくわえてみている訳にはいかない。
実際、競合ね値段を下げている。特売をすると売上げ『数量』は上がるし、特売を止めると売上げが下がるのだから、防衛策でもあるんです」
が企業側の言い分です。

そう。値下げの多くは企業間の競争です。
いや、もっと正確にいいます。
「品質に差がない商品の顧客の奪い合い」が値下げ圧力になる。
要は、自分たちでつぶし合いをしているだけです。

小売りもバカではありませんから、メーカーを煽ります。

「●●社が▼▼を特売するたみいだけど、■■さん、どうします?」

営業マンは自分の成績に関わるから「それなら、大陳かチラシ協賛で」と自社製品を値下げする。
生活者も「品質が同じなら」価格が安い方が良いので売上げを奪われてしまう。

それなら、品質を上げればいいだけです。
「品質が同じだ」と思われているなら、「品質が違うのだ」と思ってもらえれば解決です。

「メーカーの苦労も知らないで、コンサルタントごときが勝手なことを言うな」と言われそうです。いえ、言われたこともあります。
しかし、本気に品質を上げる努力をしている既存商品がどれだけあることか。
いや、「商品の質を上げることで、商品を育てる」意識があるメーカーがどれだけいるのか。

狩猟型と育成型:価格と品質Value for Money-1

前章からの続きです。

「商品を発売して、売れなかったら引っ込める。
売れたら売れたで品質改善はせずにそのまま。
売れなくなったら別な売れ筋商品を代わりに作る」

こんなことを堂々と胸を張って

「うちの業界は特殊なんです。『狩猟型ビジネス』なんです」

と解説するメーカーがいかに多いことか。

artc20131006それらの業界のほとんどが、「(本当の)狩猟型市場」ではありません。
単に、今までのやり方を肯定しているだけに過ぎません。努力するのが面倒だから、いまのやり方の言い訳を探しているだけです。

ファッション業界は長らく「狩猟型ビジネス」の典型だと言われてきました。
季節ごとに新デザインを用意し、売れ残ったらセールでさばく。その繰り返しが数十年続きました。

そこに穴を空けたのがユニクロです。
ユニクロは単に安い商品を売っているだけではありません。
ヒートテックはブレイクする前に何回も毎年品質改良を重ねてきましたし、現在でもその手はゆるめていません。
ブラカップ付きキャミソールもバストをしっかり支える構造になるまで、改良を重ねてきました。

ユニクロは「狩猟型ビジネス」の他のアパレルメーカーとはまったく手法が違う「育成型ビジネス」です。

菓子業界は一時期「ひと蒔き15億円の業界」と言われ続けていました。
新製品を15億円分つくり、アイドル広告を流し、在庫がなくなったらその商品は終わり。次年度は別な商品名で同じ事を繰り返す。そのうち、「15億円売れればヒット」だったものが、10億円になり、5億円に減少。どんどん矮小化していったのです。

そんな中、ポッキーは「育成型」の商品です。
同じブランドで話題性のある限定商品を出したり、高級路線を試したり。
今では当たり前に実施されている菓子のマーケティングも、一昔前までは
「菓子業界の特殊性を知らない人がなんか言ってる」
程度にしか受け止められていませんでした。

今まで狩猟型しかやってこなかったメーカーがいきなり育成型にしようと思ってもノウハウがない。
勢い、「ブランドを育成する」と社内の企画書に書いても、どうすれぱ良いのか分からず、実行が伴わないケースが多発します。

生活者は「頭でも消費する」:価格と品質Value for Money-2

さらに話を続けます。
実は、「商品の質を上げる」のは物理的でなくてもかまわないのです。

競争相手に引きずられた値下げがエスカレートすると、

「値下げする必要がない=品質が明らかに高い」

商品すら値下げしないといけない気がする。
ヨーグルト市場で明治ブルガリアが半分近くのシェアを持っているのに値下げする。
即席みそ汁であさげが半分近いシェアを持っているのに、低価格品に合わせて値下げするなどが良い例です。

本来なら、41.7%以上のシェアを持つ商品は圧倒的に強いので、画期的な品質の新製品が出現しない限り、値下げにつられる必要はまったくありません。

理由は簡単です。

「品質が同じようなものだと思っている生活者が、低価格品を買っているだけ」

だからです。

それなら、価格を下げるより(消費者が思っている)価値を上げる方が実(み)になります。

飲料は売上げを上げるのがとても難しい業界だと言われます。特に、長年市場にある既存商品では5%の成長すら困難です。
ところが、キリン午後の紅茶が「実はヘルシー」キャンペーンで売上げを2割上げたことがあります。
また、三ツ矢サイダーが「水を磨いている」キャンペーンで売上げを3割上げたことがありました。現在では、当時と比べて2倍の売上げ規模に成長しました。

成功の理由は簡単です。

「(元々持っていた)価値を知らせる/思い出させる=価値を上げる」

ことができたからです。
商品を変更したり改善したりした訳ではありません。
元々あった価値を最も忘れているのは生活者ではなくメーカー自身なのです。

面白い例をもうひとつ。
ある外食チェーン店のメニューブックのデザインとコピーを変えたことがあります。
料理メニューは変えません。料理名も変えません。もちろん、値段も変えなければ、セット価格も同じです。

さて、変える前のメニューをアンケート調査にかけたところ、セット価格のコーナーに視線が集中したり、「値段が高すぎる」という意見(苦情)が大半の回答者から上がってきました。

改善版では、セット価格への視線はほとんどなくなり、「値段が高すぎる」という意見が10分の1に減りました。
そして、「次に食べたくなる料理メニュー」の数が1.5倍に増えたのです。

artc20131007同じやり方で、売上げを一気に伸ばした餃子専門店が関西にあります。
ジャズが流れるカフェ風の「餃子屋本舗」です。
私の友人である若干26歳の元ミュージシャン(店主の息子さん)が私のアドバイスを受けて、メニューブックのデザインを一新。
場末のスナックのような古ぼけたまんまの入り口ですが、今では、週末には行列ができるほどの人気です。

価格は品質のひとつ:価格と品質Value for Money-3

artc20131008価格は生き物です。不思議なことも起きます。
バブル時代、ある宝石店が100万円の宝石が売れないので、やけくそで300万円に値上げしたら、飛ぶように売れたという逸話があります。
あるテレビ局の通販事業部が間違えて、ジャガイモの価格を5倍に表記ミスしたところ、注文が殺到したことがあります。

なぜ、こんなことが起きるのでしょうか。
本来、価格は安ければ安いほどいいと思われています。
なのに、むしろ高い方が歓迎されている。

実はテレビ通販会社は慌てて価格を修正し、注文した人たちに謝罪連絡をしました。その時の生活者の回答はこうでした。

「そんなに高いジャガイモならおいしいハズだと思って注文した」

普通、生活者にとって価格は品質を吟味した結果です。
原因ではありません。
価格は普通なら結果ですから、こうなります。

「北海道産なら値段がちょっと高いハズだ」
→「100円なら安いぞ」
→「500円かぁ、ちょっと手が出ないな」

それが、価格が産地などのような他のスペックと同等に扱われている。

「北海道産ならおいしいハズだ」
「手作り、無農薬ならおいしいハズだ」
「少量生産なら、手がかかっているのでおいしいハズだ」

と同じ系列で

「価格が高いならおいしいハズだ」

と判断されてたのです。

その理由は

「生活者は商品知識が低い場合は、価格も品質を判断する規格のひとつである」

からです。

逆に考えれば分かりやすい。
商品知識が豊富な人なら

「その産地でこの量なら、値段はこれくらいだ」

という相場感覚がかなりハッキリしています。

それと外れた場合は

「高すぎるから買わない」
「安すぎるから何かあると疑う」

ことができます。

知識が少ない人はそれができない。だから、価格を判断基準にしがちなのです。

なぜ、そういうことが起きるのか。
理由の一つは、昔と違って野菜の出来の良さを判断する技術が生活者になくなったからです。
昔は、主婦になる技術の一つが、野菜や魚の生鮮食品の質を見極めることでした。
おいしいものを選ぶ知恵です。

その師匠が八百屋さん、魚屋さんの店主たちでした。
彼らは良い商品を見る目を養うコツを教えてくれる。
加えて、料理法や保存法のベネフィット側面も教えてくれた良い先生でした。

しかし、スーパーが発達した結果、先生がいなくなった。
その結果、産地などの情報で品質を担保するようになります。
また、「チキータ(バナナ)」「コシヒカリ(米)」「桃太郎(トマト)」のようにブランドをつけることによって「品質を担保する」ようになりました。
その結果、「主婦であってもジャガイモに関する知識が高くない」のが背景にあります。

もうひとつの理由は、心理学の話なので、割愛します。
ヒントは「シスレスワイトの結論心理」です。メルマガ記事の「プロダクトコーン理論」を参照してください。

その他の価格にまつわるお話

紙面が尽きたので、タイトルを列記するだけにしました。
いずれの項目も狭い話で、現在、価格戦略で定番がなく、細かい戦略理論が跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)していることを表しています。

●「いいものを安く」と「安くていいものを」はなぜ前者の方が好かれるのか

●端数298円の価格訴求力はどれだけ強いのか

●マジックプライス(その価格になると一気に普及する価格)とは

●スキミングプライシング(価格)とペネトレーションプライシング(価格)

●P&Gの価格戦略はかなり高度

●キャプティブ価格は消耗品で儲けるやり方

●「訳あって安い」で安売りのイメージをつけなかった無印良品

●返金保証は意外に安上がり

●ど下手な携帯価格プラン

PSM分析

artc20131009最後に価格付けをする手法を紹介します。
といっても、詳細はシストラットのサイトに書きましたし、調査手法ですから技術的な話になってしまい、メルマガの趣旨としてはなじみません。
従って、リンクだけを貼っておきます。

【PSM分析-シストラット公式ページ】

この記事の延長として、ちょっと補足するだけにしましょう。
PSM分析とはある商品について、生活者が考える4つの価格感を見つけるための手法です。
この手法では「最低価格」「最高価格」「妥協価格」「理想価格」がわかります。
メーカーはその中から自分の目的に応じて価格設定をすれば良いのです。
安く見せたいなら「最低価格」、高級品として位置付けたいなら「最高価格」といった具合です。
PSM分析の基本的な考え方は前述した「価格の相場観」と「心理的サイフ」です。

PSM分析を実施した企業で不満を持つ人たちにいくつかの典型的なパターンがあります。
最後にパターン紹介とコツをお話しして、この記事の〆としましょう。

●自分たちの業界が正しいと思っているパターン

ファッションや数万円の高額商品を扱う企業に多いパターンです。
「PSM分析を実施した。でも、『高すぎる』と出た。
この前出した新製品が大ヒットしたのに。これはPSM分析が使えない手法だからだ」

よくよく聞くと「大ヒット」は「今までの、その業界での大ヒット」でした。
前述したお菓子業界のようなものです。長い歴史の中で、小さなヒットを自己弁護のために「ヒットした」と言い張るあまり、自分自身をもごまかしてしまう。

●全体しか集計していないパターン

このパターンもよく見かけます。
「PSM分析を実施した。もっと安くしろという結果が出た。
でも、十分、売れているのに安くする必要なんてない。PSM分析は使えない」

上記のパターンとよく似ています。でも、高額商品ではなく数百円の少額商品だったりします。

よくよく聞くと、集計は調査対象者全体しかしていません。
要するに、その商品に興味がある人もない人も全部一緒くたくにしているだけ。そりゃ「もっと安くしろ」という結果が出るのは当たり前です。
興味がない人はいくら安くしたって買いません。
私たちにも経験があるでしょ?タダでもいらない商品が。

こういう場合は、消費者を分類することが大切です。
私がよく使うのは

▼イノベーター度によって3つのグループに分ける方法

です。その他考えられるものに

▼現ユーザー、潜在ユーザー、非ユーザー
▼自社商品ユーザー、他社商品ユーザー
▼ヘビーユーザー、ミドルユーザー、ライトユーザー

などがあります。
デモグラフィック(性・年令、独身や既婚など)で生活者を切るのが有効な業界はそれでもかまいません。

本当のValue for moneyとは

価格理論の話を紹介してきましたが、最も大切な「価格と価値」の話に大きくスペースを割きました。サブタイトルにもさりげなく、唐突に入れました。

Value for moneyの翻訳は「お値打ち価格」「お手頃価格」などと紹介されています。「お得です」「安いよ」のニュアンスがある。でも、私には違和感があるのです。
本来は「Value(価値)」があって、それを説明する「for」がついたフレーズです。「●●価格」というように「価格」が主役の言葉ではありません。

だから「お値打ち価格」は「Money for MORE value」または「Value for LESS money」でなければなりません。

でも、「Value for money」なのです。

「価格が高くても、それに見合った商品の価値」
「価格が安ければ、それに見合った商品の価値」

これが本来の「Value for money」です。

前者は日本では「高いけど価値あり」。もっと簡略化すれば「一流品」です。
そして、後者は「安いなり」。簡略化すれば「二流品」「大衆品」であることを忘れてはいけません。
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