■万物皆是我師也-風俗産業から私たちが学べること【風俗】

39【ご注意】一部の読者の方々、大変お待たせしました。
今回の記事はストレートに性風俗産業・風俗業界をテーマにしています。
社会通念上はおよび法律上、不適当な表現は避けたつもりですが、テーマがテーマだけに「性」に対して抵抗がある読者の閲覧はオススメしません。


■風俗産業は不況に強い業種…だったはずなのに

今回ばかりは不況に強いと言われる家庭用ゲーム市場も冷え込んでいます。
ハードだけでなくソフトも売れない。ミリオンセラーの少なさが不振を象徴しています。
今回のテーマである風俗産業も長らく「不況に強い」と言われてきました。
しかし、その風俗産業すら青息吐息です。

ある日、友人と話していたときのことです。
「森さん、最近、風俗行ってますか?」と聞かれました

最近もなにも、私は風俗どころかキャバクラすらほとんど行きません。2年に1回行けば良い方です。それも、友人のつき合いで行く程度。

「それがね、30分で3,900円という激安風俗店があるんですよ」
「へ?」

その金額がどれほど安いのかくらい、私にも分かります。
つき合いで行ったことがあった店々は60分18,000円前後だったので、その3分の1にも迫る勢いです。

「なんで、そんなに安いの?
不況だから風俗産業も厳しいとは聞いていたけど…」
「わかりません。でも、そんな値段ですからきれいな子はいませんよ。普通にどこにでもいる20代の女の子たちです」

いやぁ、それでも安いでしょう。
教えてもらった店名を頼りにHPにアクセスすると「30分3,900円」の文字が躍っています。
俄然興味を持った私は他の店も調べてみました。
すると出てくるわ出てくるわ、激安店が。

面白くなった私ですが、妻帯者ですから店に行くわけにも行きません。
風俗好き、風俗ライター、風俗誌記者、風俗業界カメラマン、風俗の女性従業員に友人がいるので、機会がある度に色々と話を聞くことにしました。すると、かなり面白い構図が見えてきたのです。

江戸時代の庶民の記録をあさるのが好きで、自然と遊郭などの知識も増えた私です。また、若いとき(昭和50年代)は随分お世話になった業界です。でも、現在の風俗産業を把握するには彼らの知恵と知識、そして経験を借りるのが一番です。

この記事はカタチこそ私が書いたものですが、彼らの協力なくしては完成しませんでした。彼らの血と汗と涙、そして風俗産業とそこで働く男女に対する彼らの愛情が、この記事からにじみ出てくれれば、こんなに嬉しいことはありません。

なお、現存している店については店名の公開は控えました。
私は各店の販売促進をするつもりがないからです。
それぞれ特徴のある店ですからネットで検索すれば簡単に見つかるかも知れませんが、あくまでもご利用は自己責任でお願いします。

風俗産業は市場規模5兆円、女性従業員(素人の援助交際は除く)は全国約5万人と言われる一大産業です。
半ば地下経済といえども、マーケティングとして無視できない規模です。
しかし一方で、30代男性で風俗経験がある人は40%しかいない。

そんな風俗産業から、一般ビジネスが学ぶことが出来るのか。
最後は読者の判断にお任せするとして、筆を進めることにしましょう。

本記事タイトルの「万物皆是我師也(ばんぶつ、みな、これわがしなり)」は私の座右の銘です。
作家の吉川英二氏が著作「宮本武蔵」のセリフとして「我以外皆我師」としたもので、禅語の「万象皆師」から来ています。

「どんなものであっても、世の中のすべての事柄から学ぶことができる」

がその意味です。

■風俗産業の定義と分類

まずは風俗の現状を整理しましょう。
行政の基準ではゲームセンターも風俗業ですが、ここでは性風俗を「風俗」と呼びます。中でもヘルス系とよばれるジャンルに焦点を当てます。ソープなどの本番系、素人援助交際系、ピンサロ系、ストリップなどの視覚系は除外します。

世界中でヘルス系が最も発達しているのは日本です。
海外ではストリップと本番系風俗の2つしかない国がたくさんあります。
アメリカの「マッサージ店」はヘルス系ですが、日本からの輸入業態です。

もっとも、日本でもヘルス系風俗は歴史が浅い業態です。
昭和33年以前の文献に登場する遊女たちはすべて本番系でした。
yotaka江戸時代の本番系で最も値段が安かった夜鷹【注1】は現在の価格で2,000円程度だったので、ヘルス系が入り込む余地がなかったとも言えます。

【注1:夜鷹(よたか)】ゴザを持って柳の下で手拭いをくわえている絵を見たことがある人も多いでしょう。道ばたでゴザをしいてサービスをします。後期には掘っ立て小屋を作り、その前で客を引くスタイルに変化しました。
ただし、特殊な事情の女性がほとんどでしたから、完全なニッチ、例外です。

ヘルス系の元祖は昭和33年に施行された売春防止法の翌年に、東京銀座に登場したトルコ風呂「東京温泉」だと言われます。しかし、トルコ風呂は早々とオスペから本番への道を辿り、現在のソープとなったため、ヘルス系から脱落しました。

その後、昭和47年にピンサロが初めて登場。
続いて、昭和52年に現れたマントル(マンションで営業するトルコ)、ホテトル(ホテルに派遣するトルコ)が繁華街に店を構えた業態がヘルス店と呼ばれるようになり、実質的な原点となりました。

現在、東京都では原則、店舗型を廃止したため、90%以上がデリバリー型です。
店舗内で接客する店舗型は都内には30店あまりしか残っていません。

主な風俗地域は池袋約200店、新宿100店、渋谷100店、五反田80店です。皆さんのイメージが強い新宿は意外に店数が多くありません。池袋が風俗激戦区です。
首都圏で働く女性従業員は約1万人強と推定されます。池袋には毎日1,000人の女性従業員が出入りしている計算になります。
ちなみに、都内には年末になると1日の実出勤数100名を越える大規模店が2店舗あります。
通常規模店の出勤数が10名から20名なので、その巨大さが想像できることでしょう。

■30分3,900円のデリヘル

まず、この記事を書くきっかけとなった「激安店」の代表例をご紹介します。
この店は1万円を大幅に下回る「30分3,900円」のデリバリー型風俗店です。
この店は他の激安店・低価格店のような人妻店ではありません。18才から実質20代後半までの若いギャル系の女性従業員が働いています。

風俗誌記者に聞いてみました。

「かなり繁盛しています。
激安ですから、女性従業員はお世辞にも美人とはいえませんが。
でも『安かろう悪かろう』では、今時の風俗店は潰れます。
この店も、サービスや接客はまともです。

数年前は総額2万円の店でも若い子のサービス地雷が当たり前。タメ口をきく、客の前で平気で携帯電話を触ってるなんて娘も多くいたことから考えると雲泥の差です。

若い子が多いと言いますが、一日に7~8人も客をこなさないといけないので、若くなければ身体が持ちませんよ」

その系列店で働いた経験がある女性従業員に話を聞くことができました。
年齢は21歳。ちょっとぽっちゃりしていますが、渋谷でよく見かけるギャルの一人です。

「お客さんからのクレームが3件以上来ると下手をするとクビになるんです。だから、接客やサービスは手を抜けません。

30分コースは前後のシャワーや着替えの10分間を2回差し引くと、実際のプレイ時間は10分程度しかありません。
急ぎすぎると事務的になるし、ゆったりし過ぎるとプレイ時間がなくなってしまう。
接客はサービスより難しいです」

ちなみに、60分コースだとプレイ時間は40分程度に伸びますから、値段は2倍でもプレイ時間は4倍に増えることになります。

「なぜ激安店にいるの?
あなたならかわいいから、他の普通店に行けばもっと稼げるんじゃないかな?」と私。
「最初に入ったのがこの店で、激安店って知らなかったんです。
というか、風俗の相場自体知らなかった(笑)
他店に移ると常連さんをイチから作らないといけないじゃないですか。
私はそこそこ稼げるこの店で十分満足でした」

お店こそ差別優位性のとんがった存在ですが、働いていた彼女は至って普通の子でした。「本当に普通の子が風俗に勤めているんだなあ」と感心するくらい普通です。

■普通の風俗店の相場観は

冒頭でいくら「安い」とびっくりしていても、普通の風俗店の相場を知らないとピンと来ない読者もいることでしょう。
そこで、簡単に解説します。

現在の風俗店の主流は60分で17,000円~20,000円です(店舗指定ホテル代含む。池袋価格を標準とした)。
この価格帯の風俗店が最も多いということです。
前章の「30分3,900円」は60分換算すれば8,800円ですから通価格帯の半分以下です(レンタルルーム代金含む)。

しかも、普通の風俗店には30分コースはありません。
せいぜい45分コースがあるくらいですから、激安店は総額でいえば「平均相場の1/4の金額」なのです。

元々、普通店の相場自体、リーマンショックをきっかけに下がっていました。
リーマンショック前後で比較すると下落率はほぼ20%です(ホテル代含む。池袋価格)。

リーマンショック前 20,000円~25,000円
リーマンショック後 17,000円~20,000円
前後の比率 15%~25%

しかも当時は激安店がほとんどなかった時代ですから、客の選択範囲ということで比較するとショック後の下限値がさらに下がります。

リーマンショック前 20,000円~25,000円
リーマンショック後 4,900円~20,000円
前後の比率 75%~25%

現在の居酒屋とよく似た構造です。
居酒屋でも客単価が高いところはありますが、激安居酒屋が登場したおかげで一品300円以下の居酒屋の選択肢が豊富になりました。
それと風俗業界が同じ構造になったのです。

ちなみに、女性従業員の手取金額を比較するこうなります。

リーマンショック前 8,000円~10,000円
リーマンショック後 4,000円~9,000円
前後の比率 50%~10%

面白いことに、こちらは高い方では10%程度の下落率で済んでいます。
リーマンショック前では女性の手取り分が平均相場50%だったのが、ショック後では60%になっているからです。つまり、店側は女性従業員への手取りは極力下げないようにしているのです。
その分、風俗店が経営努力をして、値下げ額の多くを負担しているということです。

なぜか。
風俗店の商品は女性従業員ですから、値下げ分を負担させてしまうと質の良い女性従業員が確保できないからです。

風俗店のビジネス構造はこうです。
人気嬢がいれば、その嬢目当てに客からの予約電話が集まります。
その嬢の予約が一杯になっても、「他の嬢でいいか」と客が妥協するので、「店としては」売上げの確保ができます。
「妥協して指名した嬢」の質が高ければ、その嬢にも継続指名のチャンスができ、ひいては店の売り上げにも貢献します。

しかし、人気嬢がいないと客は最初から他店を選択肢として考えるので、予約電話そのものがなくなってしまいます。他の店に客を取られる訳です。
同時に、人気嬢以外の女性従業員の質が悪ければ、客は段々と店から離れていってしまいます。
かくして、品質の担保、他店との人気嬢獲得合戦という側面からも、女性従業員への給料は下げることができないのです。

当然と言えば当然ですが、風俗業界でも品質は最重要課題です。
普通に売られている商品の戦略と同じです。
ロコモーティブアイテム(機関車の動力車両のように、他の車両を引っ張る商品)があるブランドは姉妹品全体の売上げを上げる効果があるのです。

そして、いくら価格を下げたくても(客が分かってしまうような)質の低い材料を使う訳にはいかない。客離れが起こるからです。

そうやって冷静に見ていくと、風俗業界だからといって特殊な点は多くありません。
例えば、プロダクトコーン理論では時代とともに
●規格
●ベネフィット
●エッセンス
の順にヒット商品が移行しますが、風俗業界でもイメージから規格に移っていった歴史があります。単なるおもしろネーミング(例えばパイパニック)から、サービス内容を細かく記述するなどの例がそうです。

また、普通の業界では差別優位性のない商品は価格競争に巻き込まれ、販売中止の憂き目にあいます。
風俗店でも事情はまったく同じです。
実際、上記の主流価格帯での閉店が最も多く、高級店と格安店に二極分化しています(高級とはいっても、ホテル代込みで22,000円程度です。それ以上だと特殊なサービスをする店になります)。

それでも、風俗に詳しいburt氏は現状にびっくりします。
なぜなら、現在の風俗の価格は彼の主張である

「主流風俗の値段、初任給1/7の法則」

を大幅に下回っているからです。
彼曰く

「その法則は江戸時代から続いていた真理だった」

といいます。

【注】冒頭の夜鷹は主流ではありませんから、この法則は当てはまりません。

2012年の初任給は20万4780円です。彼の法則で計算すると風俗の適正価格は約3万円に相当します。
非合法なので、あからさまには言えませんが、現在の相場とほぼ同じです。
彼の主張はなかなか合っているようです。

35年前。私の初任給は約10万円。1/7で1万4,300円。そのころのソープの相場が1万5千円でしたから、彼の主張する金額そのままです。

大切なのは、彼の次の指摘です。
burt氏がいうにはこの法則が崩れたケースが過去に2回だけあったとのこと。
1つは吉原の遊郭の平均価格が上昇しすぎた時。花魁の一晩の価格が150万円なんて時代です。大衆クラスの「梅」遊女でも3万5千円の頃です。

もうひとつは昭和時代の高級ソープが思いの外好評で、乱立したために平均価格が異様に上がった時だといいます。昭和50年頃、1万5千円が相場だった頃に3万円のソープに客の行列ができたエピソードは有名です。

かくして2番目の法則ができあがります。

「主流風俗が初任給1/7から1/5の価格に上がると、
1/10価格の新興勢力が台頭する」

yuna例えば、前者の江戸時代では吉原(岡場所)の価格が初任給1/5になった頃、激安価格(ほぼ初任給1/10の価格)の「浮世風呂(別名、湯女<ゆな>風呂)」が登場して人気を博しました。客を取られた吉原は悲鳴を上げ、江戸の奉行所に圧力をかけました。
そのせいで、浮世風呂は壊滅的な打撃を受けたのです。

ソープの元祖は昭和34年だと言われますが、そのはるか昔300年前にはすでにソープがあったことになり、風呂好きの日本人の民族文化として興味深いところです。

時代が変わって、後者の昭和時代にはソープに対抗して、昭和52年から現在のヘルスの元祖となるマントル・ホテトルが登場しました。
プロではなく素人のソフトサービスが売りでしたが大盛況。
その時の価格は約1万円。当時の初任給のちょうど1/10です。

たった2回の「変動期」なので法則化するにはちょっと無理がありますが、とりあえず、それを元に計算してみましょう。
現在の風俗の相場に置き換えると、サービス料は初任給1/10で2万円。
リーマンショック前の相場である「20,000円~25,000円」は法則に当てはまっていたようです。
現在の平均価格「17,000円~20,000円」も『ほぼ』法則どおりだと言えるでしょう。

しかし、ショック後の激安価格「3,900円(あるいは60分コースの7,800円)」は、完全な「法則外」です。
しかも、運がよければ平均価格の初任給1/10の2万円で初任給1/7と同じサービスが受けられることもあります(ここは微妙な話題なのでぼかします)。
burt氏が驚いていたのは納得がいきます。

■ビジネス構造の変化

話を価格から変えます。
さきほどの激安価格で働いた経験がある女性従業員のことばに

「イチから常連客を作るのは大変だから」

という一節がありました。

また、普通店の女性従業員と話をしていると頻繁に出てくるのが

「お客さん(常連客)が入店3ヶ月に50人もできた。
前の店では半年かかったので嬉しい」

といった言葉です。

共通しているのは「風俗で稼ぐのには常連客獲得を意識している」という点です。
このひとことは、風俗業界の大きなビジネスモデルの変化を端的に表しています。
どういうことか。
風俗は「ヒットエンドラン」から「常連を大切にする」ビジネス構造に移行したのです。

「ヒットエンドラン」と私が名付けているモデルは鳥居みゆきのギャグではありません。スキー場や海水浴場などのリゾート地周辺で店を構えている経営者のやり方です。
例えば、普通の繁華街では看板に「森中華そば店」と固有名詞(店名)が書かれています。気に入ったらまた来て欲しいからです。「林ラーメン屋」と間違えて欲しくないからです。

一方、リゾート地の飲食店の看板には大きく
「ラーメン」
「定食」
と書かれていますが、固有名詞は小さく隅に追いやられています。

観光客の一見さんしか客がいないから、店名よりも「何が食べられるのか」を書いた方が売上げに貢献するからです。
そして、たいていは「値段が高い割に、まずい」。
客はリピーターになってくれる可能性が低い訳ですから、店も品質を高めようという発想がありません。

客は観光客が中心ですから常連になりようがない。年間1~2回しか来ない客を相手に数百円の商売をしていては「常連を大切にしよう」という発想がないのは仕方がないことと言えます。

リーマンショック前の風俗はまさに「リゾート地のヒットエンドラン」ビジネスと同じ構造でした。
ヒットエンドランだから接客は大切にしない。
サービス中でも携帯電話をいじる。平気で時短する(決められたコース時間を大幅にカットして帰る)。部屋に入るなり、自分もたばこを吸って世間話をするフリをしてサービス時間を無駄に稼ぐ。タメ口で話す。

こんな女性従業員が多かったものでした。
みなさんの中にも経験がある方も多いと思います。

ヒットエンドランが可能だったのは、以下の条件が揃っていたからです。

●需要(客の人数)より、供給(女性従業員)が少ない
●新規顧客が次々と流れ込む(風俗常連客の比率が低い)
●客単価が高く1回の手取りの重みが高い
●(客単価が高く手取りが多いので)収入に占める指名料の比率が低い

しかし、リーマンショック後の現在は様相が変わります。

●需要(客の人数)が減り、供給(女性従業員)が増加するので、供給がダブつく
●新規顧客が少なく、旧来からの顧客しか循環していない(風俗常連客の比率が高い)
●客単価が低くなり数をこなさないと一定金額が稼げない
●客単価が低くなり手取りが少ないので、収入に占める指名料の比率が高くなる

特にわかりやすいのは指名料の比率が高くなった点です。
計算してみましょう。

一昔前の総額2万円の店では客一人当たりの収入と指名料金比率は17%でした。

手取り(50%) 10,000円
指名料 2,000円
収入総額 12,000円
総額に対する指名料比率 17%

しかし、30分3,900円の店では指名料比率は46%に跳ね上がるのです。

手取り(60%) 2,340円
指名料 2,000円
収入総額 4,340円
総額に対する指名料比率 46%

指名客獲得がどれだけ収入に影響するのかが良く分かります。
普通店でも指名料の比率が大きく上がる事情は変わりません。

ちなみに、店側の常連獲得に向けての経営努力は涙ぐましいところがあります。
前述のようにクレームが来たら女性従業員をクビするといった工夫もそうですが、プロカメラマンにプロフィール写真を撮らせる(昔は男性従業員がポラロイドカメラで撮った写真を利用)、格安クーポンやグルーポンの実施、メルマガやツイッター利用など目を見張ります。

女性従業員への待遇面でいえば待機室の個室提供、フリードリンク、5割の手取りを6割に配分率を上げたのも、「質の良い女性従業員を確保するため」の経営努力です。
また、指名客の獲得数によって、配分率を変えるシステムを採用し、女性従業員同士の競争を促す店もあります(やりすぎると、女性従業員が違法行為に走るので良し悪しですが)。

もうひとつの背景が収入の減少です。。
リーマンショック前では日給3万円が当たり前だった女性従業員の収入が、現在では平均2万円程度に落ちています。
週3日出勤で月収20万円以下という例も珍しくありません。風俗に従事しているのに年収240万円以下。これを多いと見るか少ないと見るかは読者の判断にお任せします。

少なくとも彼女たちの事情からいえば、常連さんから指名が入れば、その日の最低限の収入は確保できる。お茶を引いて精神的に落ち込むこともない。常連さんを確保する動きは女性の日々のニーズでもあるのです。

■人妻を越えた「おかあちゃん」

2つ目の店の紹介です。60分8,000円。
3,900円の店より高く感じるかも知れませんが、60分に換算すると前述の店が7,900円なのでほぼ同額です。

それよりも私がびっくりしたのは店のコンセプトと女性従業員の年齢です。
人妻店はたくさんありますが、ここはそれを越えた「おかあちゃん」がコンセプト。
だから、源氏名にも「けいこおかあちゃん」「りさおかあちゃん」と、必ず「おかあちゃん」が付きます。

女性従業員の年齢も大きく違います。
普通の人妻店ではメインが30代に対して、この店は40代がメイン。10才上に丸々上に移動しています。50代の女性も在籍しています。

風俗店の女性の年齢軸で特色を出す手口は昔からありました。
ところがまさかの10才、20才越えです。
これで、風俗の年齢軸が完成したと言っていいでしょう。
(疑似)女子高生から50代までの完成です。風俗の年齢軸に死角がなくなります。
常識を疑うことの大切さをしみじみと感じます。

「まっさらの素人さん出身」嬢に話を聞きました。
ずんぐりむっくりの彼女は40代前半。買い物かごを下げるとよく似合う人です。

「お店で働くのはとても楽しいです。
最初はお金がきっかけで入店しました。
でもすぐに気が付いたことがあります。

ここだけは女として私を扱ってくれる男性と会えるんです。私の年齢だって最初から分かっているからいやな顔をされたこともありません。
普段は母親や妻としか扱ってくれないけれど、この店は私にとって『女としての自分を取り戻す場』なんです」

時々、恥ずかしそうにうつむいたり目をキラキラさせたりしていた彼女は、完全に「おんな」でした。

■新規参入は時代が巡る

「おかあちゃん」コンセプトの店は「激安」という価格視点も斬新ですが、それ以上に「業界の死角がなくなっていく」過程におもしろさを感じます。

一方、「まっさらの素人さん出身」の例もそうですし、前述した「ヒットエンドラン」から「常連を大切にする」ビジネス構造で解説した「需要が減り、供給が増加する」点にこの章では注目します。
「供給のだぶつき」は、どんな産業でも価格低下の要因として普遍だからです。

赤線時代の古く昔から新人女性従業員は必ずいました。
しかし、風俗という産業に身を置くには心理的抵抗が強く一部の人間しか入ってこないのが常でした。
風俗は「やむにやまれぬ事情」がなければ新規参入がない産業です。

しかし、現代社会では様相が異なります。
昭和52年からのヘルスの低価格が受け入れられたひとつの理由にオイルショックに続く円高不況がありました。
客側の理由としてソープのような高額サービス料を支出することができなくなった。
供給側の理由として、不況で就職が決まらず、水商売や風俗に流れた女子学生が多かった。なにせ、それまで大企業の200人だった採用枠が一気に30人や50人に減った時代です。

それに加えて、女性の性に対する意識の変化も「素人の大量参入」を支えました。
1970年代からの学生運動とヒッピー文化は女子学生やそれに続く若い女性たちの「過去のしがらみからの解放」つまり「性に対する解放」をも促進していたのです。
だから、風俗参入に対する抵抗が「ひと昔前よりは」低くなったのでした。

実は、もうひとつの理由があります。
この時代は技術が売り物だったソープも、素人系の「技術はからっきしないが、初々しさだけはある」女性従業員に人気がシフトした時代です。
また、キャバクラ(キャバレー・クラブの略)も、バーやキャバレーのホステスのようなプロではなく、素人がアルバイトでやっている触れ込みで大ヒットしたのも、この時期です。

ヘルス系風俗の興隆は「プロが行う特別なもの」から「初々しい素人が行うもの」の大きなニーズ(と供給)の変化の一環だったのです。

yukaiそして、「Yukai」の創刊が素人女性の新規参入の後押しをします。
「Yukai」は日本で初めての「女性のための風俗就職情報誌」でした。歴史は古く1994年7月創刊ですから、約20年も続いています(現在も「ユカイライフ」という誌名で1冊200円で販売されています)。
「Yukai」が斬新だったのは専門誌だったこともありますが、「女性従業員のベネフィットを最大限に訴求した」ところでした。
巻頭のグラビアでは1万円札を何十枚も広げて、高級外車の前で微笑んでいる先輩女性たちが何人も紹介されていました。風俗従事の最大ベネフィットである「稼げること」を恥ずかしいくらいにあからさまに、でもマジメに訴えたのです。

闇に紛れそうな業界情報も白日の下にさらけ出しました。
例えば、特集では「ピンクサロンってどんな仕事をするの?」と1日のスケジュールまで紹介しながら、業務内容や時給の解説を事細かに説明していました。
客である男性が読んでも面白い内容です。

この情報誌によって、まったくのさらの素人さん(主婦やOL)からの流入が各店20%に上ったといいます。
ほぼ、数倍増加に相当します。

それまでは客用の広告を元に電話をかけて面接する方式が主流でした。だから、職場の情報も得られず、素人にはハードルが高い環境だったのです。それを下げたのが「Yukai」だったのでした。

現在2013年の日本とよく似ています。
不況によるデフレと就職難、女性の性に対する抵抗感の低下、キャバクラ嬢が「女子高生がなりたい職業」の1位になる、そして、芸能界(主にAKB)やメイド喫茶に見られるプロからアマチュアへのシフト…
AV業界でも「女優の採用率が15%にまで落ち込んだ」といいます。「AVの需要が減った一方、女優志願者が増加したため、容姿やスタイルなどレベルが高くないと採用しないから」です。
…歴史は繰り返します。

■レベルの低さ日本一の風俗店

一気に低価格が進んだ風俗業界ですが、それをなんとか回避しようと知恵を絞り差別化で勝負する店が登場してきたところに、風俗業界の底力が見られて大変興味深いところです。
大企業以上の商品開発力です。

その一例を紹介します。
風俗のジャンルには「美形専門店」があります。
美形の反対概念は「不細工」ですから、専門店があってもおかしくない。
「巨乳専門店」に対して「貧乳専門店」があるくらいですから。

人の好みはさまざまですし「ブサカワ(ぶさいくなところがかわいい。美人より親近感がある)」という概念もあるくらいです。
一笑に付すにはもったいない。
…ということかどうか知りませんが、実はあるのです。

「不細工専門店」が。

しかも、大人気で3年近くも営業を続けています。
週刊誌で紹介されることも多いので、ご存じかも知れません。
最近、新宿にも2号店が開店しました。

キャッチフレーズは

「地雷!レベルの低さ日本一
風俗を止めたい方へ…
遊べば夫婦関係円満!
彼女の有難さ倍増!」

ちょっとわかりにくいので補足説明をすると、
「不細工な嬢が集まっている店です。
だから、彼女たちに会うと風俗通いを引退したくなります。
また、不細工な嬢たちと比較すると、恋人や奥さんの良さが再確認できます」
という意味です。

地雷とは体型やルックス、サービスに難がある女性従業員を示す男性客用語です。体型やルックスに重点を置かない客は、「サービス地雷」と呼び、ルックスと接客を分けています。
名前の由来は「踏んでみないと(会ってみないと写真では)わからない」からです。

この店にいるのは半分がぽっちゃり体型、残りの半分が年齢を含めたルックスに難がある女性従業員たちです。

風俗誌記者が解説します。

「客の需要は半分が体型と年齢の高さです。これらは、デブ専や熟女店でも対応可能。
残りの半分はまさに『不細工需要』です。
男性客が優越感に浸りたいための利用だと考えて良いでしょう」

「ひどい話だ」と感じる読者もいるかも知れません。
でも、男性が性的に興奮するのは婚姻や家族の習慣が普及した時代から「一盗二卑」と相場が決まっています。

「『一』番興奮するのは、人のものを『盗』むこと=人妻」
「『二』番目は、自分より『卑』しい女を手込めにすること=女中、召使い」

「優越感に浸るための不細工需要」は二番目に興奮するシチュエーションという訳です。男性の「正常な欲望(?)」であり、意外に需要は大きいのです。

勘の良い読者はお分かりかと思いますが、「二卑」の対象のひとつは現代でいうメイドです。
メイド萌え文化があれだけ大きくなった背景には「二卑」があると私は思っています。つまり、「不細工需要」と「メイド萌え」は根っこは同じ。

メイド好きからは猛反発をくらいます。
「メイドが卑しいなんて自分は思っていない」
「メイドと不細工を一緒にするな。メイドは常にかわいくあるべきだ」

いやいや、「ご主人様」とかしずくこと自体が「自分は卑しい女です」表現です。また、「卑しい(メイド)と卑しい(不細工)」の「卑しさのダブル効果」はかえって「効果半減」ですから、「かわいい・メイド」は大切なことです。

現役女性従業員が不細工店について教えてくれました。

「最近は人気が出たので、まともな女の子も増えてきました。
19歳でルックス○、スタイル◎なんて子が入店しています。
なんでこの店に入店させたんだろうと思いますが、『全員採用』というスローガンを掲げている以上、断れないのでしょうか。
この店、系列が数店あるので、他店に所属させてもいいはずなんですが。
地雷店の特徴が薄れて、面白みがなくなったというお客さんもいるんです」

都内にたった2店しかないので、この店が業界全体を動かすことなんてできません。
でも「なんでもあり」は言うのは簡単ですが、50代の女性従業員と同じく「常識を越える」ことも大切さをこの店からも学べます。

■180度開脚ができる女性従業員だけを集めた

足フェチ、SMなど、性的嗜好には「マニアック」と呼ばれるジャンルがあります。
それらは風俗業界でも店として存在します。そのほとんどが「普段の生活では実現できないことを体験したい」ニーズに支えられています。
つまり、既にニーズがあり、店は客の願望を実現させるという構図です。
ところが今までになかった「マニアック」な店が登場したのです。

バレエ歴15年やジャズダンス歴8年などの経験を持つ女性ばかりを集め、その全員が180度開脚の姿勢でサービスができる店です。
これが大人気で、来店しようにも4時間待ちは当たり前。
何人かの女性従業員は出勤してすぐに予約で埋まり、「満員御礼」の札がHPに張られるほどです。

この店が他のマニアック系と違うのは、男性客側に「180度開脚」のニーズが顕在化していなかったことです。
つまり、この店が客のニーズを掘り起こしてしまった点が革新的な点です。

4時間待ちが当たり前の理由は簡単です。
平日の出勤人数が2人~3人しかいないのです。
(現在は4~5人は出勤しているようです)
そんな身体が柔らかい女性を見つけるのも大変ですから無理もない。

「なぁんだ。出勤が少ないなら当たり前じゃん」と言うなかれ。ビジネス構造上、この店が人気なのは画期的なことなのです。
「すごいですね」とびっくりしているのは現役女性従業員。

「普通、女の子が2人~3人しかいないとお客さんは来ないものです。
『女の子を選ぶ』楽しみがなくなるわけですし、いつ行っても同じ顔ぶれの女の子じゃ、『飽きた』『もう来なくてもいいや』という気になりますよね。

だから、以前、勤めていた店では、実質5人~6人しか出勤していないのにたくさんの女性従業員が出勤しているように見せかけていました。『空(カラ)出勤』ですね。
そんな店はたくさんありますよ。

なのに、この180度開脚のお店、女の子が2人~3人しか出勤していないと正直に言っているし、それでもお客さんが来るというのがすごいと思います。
それだけ『行ってみたい』『また、来たい』というお客さんが多いという証明ですもの。私?身体が固いから無理です(笑)」

この店も、全国に1店しかありませんから、業界を変える原動力にはなりえません。
でも、他のニッチ店とくらべて最大の違いは「人気がある」という点です。
風俗客も捨てたものではありません。きちんとした差別優位性があれば、それを認める眼力を持っています。

「不細工専門店」といい「軟体人間専門店」といい小さな波かも知れません。でも、「激安価格」一辺倒からの脱却のヒントにはなるはずです。
そして、それは、風俗業界だけでなく外食産業や自動車産業など、「カタギ」の商売でも通用する真理です。
いや、そういう観点からいえば風俗業界の方がよほど立派です。
社会的に「大企業だから、オレたちの方が人間として上だ」なんておごりがないからです。

■風俗の本質とは

最後に地雷ばかりを集めた店の話に戻ります。
実は風俗誌記者の続きの言葉がありました。

「どんな接客業もそうであるように、この地雷店のリピート客は女性従業員の性格やサービスに対する真面目な姿勢に惹かれるのです」

というのも、この店の特徴の一つは「原則(薬などの違法でない限り)面接即全員採用」だからです。それは女性従業員の世界にも知れ渡っています。
だから女性にとって「他の店がダメでも、あそこならなんとかなる」、逆に言えば「あそこでダメならどこも採用してくれない」という防波堤のような存在になっているほどです。
それがどう接客に結びつくのか。

彼女たちにとってこの地雷店が「最後の砦」。
だから、この店で踏ん張らなければ後はないと考える女性従業員が頑張る。すると、勢い接客にチカラを入れようとする。
世の中、よくしたもので、そういう真剣な姿勢に惹かれる客も多くいる。

この店が人気であるもうひとつの秘密はコンセプトの徹底振りです。
ともすれば、大企業のように「特徴がない店(「いい女と最高のサービス」なんて標榜している店はごまんとあります)」が多い風俗業界の中にあって、コンセプトを貫くのはほんの一部です。

この地雷店は、HPを見ても「地雷であることをおもしろおかしく、開き直って笑いに昇華させている」のが良く分かる作りになっています。
女性従業員の紹介文や店長のブログにそれが端的に表れています。

例えば、ある女性従業員の紹介ではこんな調子の文章が続きます。

「巨艦です。間違っても上に乗せないでください。
待ち合わせ場所に行かせますが、お客さん、絶対、絶対に逃げないでくださいね」

また、別な女性従業員の紹介文にはこうありました。

「決して可愛くはありません。身長、スリーサイズ、写真にだまされないでください」

初期の頃の店長ブログでもヒマであることを包み隠さず言うことで笑いを誘います。

「朝から1件も電話が鳴らない。
電話が故障かと思ったけど、壊れていなかった」

風俗店といえば、いいことばかり書いてあり、写真もパネマジ(パネルマジックの略。別名、写真詐欺)ばかりに飽き飽きしているところに、正直なこの店の姿勢に好意を持つ客も多く存在します。

そう。だから、この店の本当のコンセプトは「地雷」でもなんでもありません。

結局、店も女性従業員も「誠実」が裏のコンセプトなのです。
雑誌の紹介で「シャレで始めたのに人気が出てびっくり」という店長のコメントがありました。だからこそ、肩の力を抜いて「売上げを上げてやろう」という妙な邪念がなかったのが功を奏したのでしょう。
だからこそ、キワモノのはずの店が3年近くも営業でき、2号店も開業し、熾烈な競争を生き抜くことができたのでしょう。

そして、もうひとつの「軟体人間専門店」の風俗好きのコメントの続き。

「私が、もう一度行きたいと思ったのは、今までと違うスタイルでのプレイだけではありません。空出勤をしない店の姿勢が正直だと思ったからです。
そしてなにより大切だったのは、体育会系の女性従業員の礼儀正しさや爽やかさに惹かれたからです」

風俗に限らず、バーやキャバクラ、ソープでも、指名ナンバーワンの女性従業員は、美人でもスタイルがよいわけでも、ましてや(ソープなどでは)技術でもありません。
美人はせいぜい2位から3位までが上限。
トップクラスは実は平凡な顔立ちだったり、普通のスタイルの女性がほとんどです。

それでは、彼女たちは何が違うのか。
気配りです。
指名上位の女性従業員の多くは、客が帰った後に必ず特徴やその日にした会話などをメモしています。私も、何人にも見せてもらったことがありますが、箸袋の紙やナプキンなどに殴り書きをし、仕事が終わると手帳に書き写す女性が何人もいました。

そして、次に指名が入ったときには「この前、●●さん(名前も覚えています)、ああいってたけど、私も買っちゃった」と会話が弾みます。
客は自分のことを覚えてくれて嬉しくないわけがありません。
彼女たちは誕生日もしっかり記録してありますから、安いモノでも手渡すと客は喜んでくれる。

「日本の風俗は入り口は多種多様だが、結局、たどり着くところはみんな同じ(射精)」

だと言われることも多いですが、私に言わせると

「結局行き着くところは、人(客)と人(女性従業員)との心のふれあい」

です。

風俗とは「興奮」を得るところですが、「癒し」を得るところでもある場です。
まっとうな心理学でも「やわらかくて」「あたたかくて」「丸い」ものに触れるのは、老若男女すべてに「精神的安定(癒し)」を与えることが検証されているのですから。

それを忘れず、店も「誠実さ」をきちんと表現する。

「たかが風俗とあなどるなかれ。
ビジネスやマーケティングにもしっかり通用する真理が隠されているのが風俗という業界」

です。

「心のふれあいっていったって、風俗の女の子たちは『お金のために』メモをしているのだから、森さんは所詮踊らされているだけじゃないですか」

それならそれで、いいではありませんか。
きれいに踊らされるなら、私は喜んで踊ります。
…あ、私は妻帯者なので風俗には行きませんが…あせあせ。
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