■情報の洪水がもたらすもの【迷惑メール】

artc20050601個人情報保護法やカード情報流出も大きな問題ですが、今回は私たちに身近な迷惑メールをテーマにしました。
森の奮闘記仕立てにした記事です。
お楽しみ下さい。


個人情報保護法より身近な迷惑メール

迷惑メールが氾濫しています。
いや、今に始まったことではないのですが、ここにきて急に注目を浴びるようになりました。
常時接続が当たり前になり、ネット人口も増えたせいです。

ドコモでは、メール総数の半分近くがこういった広告メール(以下、迷惑メールと一括します)であるといいます。
いくら設備を増強しても、本来のユーザーではなく、ただ乗りの業者に使われてしまう。
通信事業企業としても頭を抱える問題です。

迷惑メールは携帯電話だけではありません。
パソコンの方がある意味深刻です。
シストラットにもずっと以前から迷惑メールが大量に届きます。
HPやメルマガで公開しているアドレスには、1日200通くらいの大量の迷惑メールが届くのです。
そして、その7割がウィルスメールというおまけつきです。

ウィルスのほとんど全てがウィンドウズ用なので、シストラットではマッキントッシュでメール受信を行っているだけでもウィルス対策はばっちりです。それに加えて様々な対策を施しているので、今まで数万通を受信しても、ただの一回もウィルス被害に遭ったことがないのが救いです。

しかし、それらのアドレスには問い合わせなどのまともなメールも届くので、整理は人海戦術に頼らざるを得ないところがあるのです。
毎日、アルバイトが30分~1時間かけて整理をするので、その人件費は年間50万円近くにも及びます。

一方、私個人のメールとなると、またちょっと様子が異なります。
ウィルスメールはほとんど来ませんが、ろくでもない広告メールが殺到してきます。
「人妻の誘惑」「素敵な出会い」「あなたの知り合いの女性のAVを撮ります」などなど、エッチ系花盛り。
あ、もちろん、これらは私がエッチ系のHPにアクセスしているからではありません(^^;
あ、いや、エッチ系は見ないわけではありませんが…あ、いえ、アセアセ。

その数は1日数10通。
月間で500通を越えるわけですから、無視できない数です。

さて、個人情報保護法が施行された今、プライベート情報の漏洩が問題視されています。
しかも、通販やプロバイダの個人情報が漏れて大騒ぎとなり、つい先日、クレジットカードの情報が数千万件も盗まれたばかり。フィッシング詐欺やカード盗用など、犯罪の話題にも事欠きません。

しかし、それらは私たちにとって「身近な存在」ではありません。
防衛することに越したことはありませんが、一生、犯罪と出会わない人が大半ですから、どこか対岸の火事的な部分があります。

しかし、迷惑メールとなると、インターネットやメールを使う人のほとんどが遭遇するものです。
今回は、個人情報保護法という大きな視点ではなく、迷惑メールという身近な存在をテーマとしてお送りします。

記事構成は「迷惑メールを撲滅する奮闘記」のようにしています。
タマネギの皮を剥がすように、ひとつひとつ洗い出したものの先にあったものは、マーケティングを題材とするこのメルマガにふさわしいものになってしまいました。
まずは、ご覧あれ。

迷惑メール、1ヶ月に500件に急増

さて、話を進める前に私のメールの環境をお話ししなければなりません。
というのも、多くの読者がそうであるように、私もまた、複数のメールを使い分けているからです。
後述するように、削除したものを含めると、なんと16個もあります。
現在、使用しているのは、そのうち6個。それでも多い。

最初はもっと単純でした。
仕事用のアドレス、プライベート転送アドレスと、メールを受ける実際のアドレスの3本だけ。
ところが、プライベート用の転送アドレスに迷惑メールが届くようになってから、ことが始まりました。

このプライベート用転送アドレスはほぼ10年前に取得したものです。
ちなみに、転送アドレスとは、それさえ友人に教えておけば、プロバイダが変わっても今までと同じように連絡が取れるためのものです。
もちろん、アダルトサイトで使用するときや、女性がメールをやりとりする時など、プロバイダのアドレスでは色々と不都合が生じる時に利用するケースも多々ありました。

当時、いくつかの転送サービスがある中で、私が選んだのは、新聞社(の関連会社?)が運営しているサービスでした。

そのアドレスは数年にわたり、とても活躍してくれました。
3年前に開設した趣味のHPのサイトのアドレスとしても利用していたほどです。最初の8年間は静かでした。

さて、2年前から一気に迷惑メールが増えてきました。
それまでは、せいぜいが1日0~3件だったものが、1日に10~20件になってしまったのです。
シストラットの代表アドレスには1日200件のウィルスメールが届きますが、私個人のアドレスにこんなに大量に来るのは初めてです。

しばらくして、あれよあれよという間に数倍にも膨れあがってしまいました。
大量に届く前のデータはありませんが、その後のデータを見てみましょう。
迷惑メールを捨てないで、残しておいた2003年8月から、現時点の2005年6月の22ヶ月の間に受信した迷惑メールの総数は5,596件にも登ります。
会社に届いたメールではありません。私個人、たった一人の件数です。

【森個人に来た迷惑メール】

日付 件数
2003年8月 ほぼ0件
2003年9月 166件
2003年10月 327件
2003年11月 390件
2003年12月 523件

迷惑メールの被害

メールを受信するだけなら、数10秒で済みます。
また、私のパソコンはマックで、かつ、ウィルス対策は二重にも三重にも施しているので、一見、大したことはありません。

ところが次々と不便なことが起こってしまいました。

●メールの整理に膨大な時間がかかる

私は、プライベートと仕事のメールを同じメールソフトで受けているので、たまりません。どれが仕事のメールなのか、どれが迷惑メールなのかを判別するだけでも大変な作業です。

タイトルや発信元アドレスで判断できるものは判断しますが、本文を読まないとわからないものまで出現。
しかも、外資系の仕事もあるので、英文だからといって、一気に迷惑メールとするのは不可能です。

毎日、出社すると、その迷惑メールの処理だけで15分も費やすハメになったのです。一見、大したことがないように見えますが、塵も積もれば山となります。1ヶ月で8時間。年間で90時間の無駄な時間を使わなければならないのです。プロジェクト数本をこなすほどの時間です。

●仕事のメールを見逃してしまう危険性がある

大量に迷惑メールが届くと、それに紛れて仕事のメールを間違って迷惑メールと判断してしまう危険性があります。
幸いにして被害はありませんが、そんなことに神経を使うくらいなら、仕事に使いたいのが本音中の本音です。
従って、迷惑メールはゴミ箱に入れないで、専用のフォルダを作って、その中に保存しています。仕事のメールを間違って消してしまわないためです。

●ウィルスなどの危険度が高くなる

ウィルスソフトを入れただけの一般の人たちにとっては、危険度は低ければ低いほど望ましい。
ウィルスの感染経路で一番多いのがメールです。約半数がメール経由でウィルスが送られてくるといいます。
従って、迷惑メールの数は多ければ多いほど、ウィルス感染の危険は高くなるというわけです。

ウィルスソフトは万能ではありません。更新していなかったり、更新よりも早く広まるウィルスには太刀打ちできないからです。

●携帯電話がすぐに電池切れになる

携帯電話にも被害が及びます。
携帯に迷惑メールが大量に来ると、すぐに電池切れになります。音声通話より電池を余計に消費するので、いざというときに電池がなくなり連絡が取れなくなったら、シャレにならない事態になりかねません。

●海外出張時に携帯電話のメールボックスが一杯になる

海外に出張してメールボックスをチェックできないと、転送されたメールでドコモのメールボックス容量が一杯になり、メールを受けつけてくれなくなります。

仕事のメールはパソコンのアドレスに送られるので、「メール容量が一杯でしたので、受信できませんでした」というメッセージが携帯電話側から送信者、つまりクライアントに送られてしまいます。
心配になったクライアントは何回もメールを送ってしまう。しかし、何回も戻ってくる。信用問題になりかねません。

●とにもかくにも不愉快になる(笑)

精神的な被害は「Priceless」ですが、すっきりしない毎日を送るのは、やはり避けたいものです。
「リッチな奥様との裸のお付き合い」「女性増加のため男性緊急募集!&特典超増加!」などといった文言が踊るメールを受信するのは、私は気になりませんが、職場で妙な誤解を受けたり、自宅で配偶者から痛くもない腹を探られる可能性のある火種が来るのは精神衛生上、良くない人も数多いことでしょう。

ウィルスの被害を再確認(この章は知っている方は読み飛ばしてください)

話はずれますが、悪質なウィルスにかかったことのある人は、その被害がどれだけのものかは身に染みて分かっています。しかし、多くの人は実感がわかないのもまた事実です。

簡単に整理してみましょう。
ウィルスにかかると何が起きるか。

●パソコンか起動しなくなる(ことがある)

メールはもちろん、ホームページも見ることができなくなります。
パソコンのない生活をどれだけ我慢できるかが、被害の大きさを実感できるかどうかの瀬戸際です。

修理に出そうとすると、数万円は覚悟しなければなりません。数回、ウィルスメールにかかると、修理費だけで格安の新品パソコンが買えてしまいます。

自分でやる(インストールしなおす)となると、勉強と作業時間はが大変です。
私は、ウィンドウズで一度被害に遭い、勉強のためにと自分でウィンドウズを再インストールしてみました。
なんと1回の再インストールで15時間かかりました。4日が潰れた計算です。
マックなら半日でできる知識と経験があるのですが…(^^;

●保存していた、文書、写真、映画などがすべて吹っ飛ぶ(ことがある)

自宅での仕事の文書、年賀状、自分の日記、家族の写真、趣味のホームページ、ネットのお気に入り、彼氏・彼女とのやりとりのメール、友人のメールアドレス、ネット通販の注文の控え、友人からもらったソフトなどなど、最悪の場合は数年間に蓄積していたすべてのものが消えてしまいます。

これはバックアップをマメにしていれば、最小限の被害(例えば、過去1週間分)で済みます。しかし、個人でバックアップをきちんと取っているのは、3割に満たないという調査結果もあるほどです。

分からないではありません。
ハードディスクが吹っ飛んだ経験のない人にとって、バックアップをする手間は面倒だし、ソフトも必要・知識も必要。
加えてバックアップをするための、増設ハードディスクなどにもお金がかかります。

一度でも被害に遭ってしまえば、数万円と数10分の手間なぞ、4日間の悪戦苦闘から比べたら何と言うこともないのですが、未経験者には実感ができない。

「私はハードディスクの中身が飛んでも、あまり被害はないです」
という人でも、友人のメールアドレスがなくなると、途端に不便に感じるものです。

●迷惑メールが一気に増加する(ことがある)

あなたのメールアドレスが業者に漏れて売買されているとしたら?
そして、それを盗んだのは1通のウィルスメールだったとしたら?
ウィルスによっては、あなたのメールソフトの友人などのアドレスに一斉にウィルスソフトをばらまくものもあるからです。

●あなたのせいで、友人・知人に同様の迷惑をまき散らす(ことがある)

パソコンが使えなくなったり、貯めていた文書やメールが吹っ飛び、迷惑メールが一気に増加するのはあなただけではないかも知れません。
アドレスをばらまくソフトはあなたのメールソフトに登録されているアドレスにも同じような被害を与えるウィルスをばらまきます。

場合によっては、あなたは相手のアドレスを失い、相手もあなたのアドレスを失ってしまえば、もう永遠に連絡が取れないかもしれないのです。

本人にその意図がなければいいというものでもありません。
HIV(エイズ)に感染した人間が知らず知らずに周囲にエイズウィルスをばらまいているようなものです。

次々と対策をほどこしてみる

【対策その1】新規転送メールを作る

毎日の迷惑メール攻勢に悲鳴を上げた私がしたのは、新しい転送メールアドレスを作ったことです。
携帯電話でも良くやる手です。携帯電話ではアドレスを変えてしまえばいいのですが、パソコンではそういう訳にはいきません。だから、新しいアドレスを作る必要がありました。

【結果その1】(なんと)微少効果

さあ、これで晴れ晴れとするかな、と思ったところ、迷惑メールは減少したものの、たったの15%しか減っていません。

【森個人に来た迷惑メール】

日付 件数
2003年8月 ほぼ0件
2003年9月 166件
2003年10月 327件
2003年11月 390件
2003年12月 523件
2004年1月 457件
★(←新規転送メールで改善)

迷惑メールを受信するメールアドレスが使えないのに、まだ迷惑メールが来る。どう考えても妙な話です。
迷惑メールをよくよくチェックし、メールのヘッダを見たら、使用中止をした転送メールアドレスへの迷惑メールは確かにゼロになっていました。

ところが、その転送メールサービスに登録したプロバイダメールアドレスに届いているではありませんか。
プロバイダメールアドレスは本当に親しい友人数人にしか教えていません。
「無修正AV女優優待」というような業者がどうやってプロバイダメールアドレスを入手できたのでしょうか。

一体、何が起きたのでしょうか。
いくつかの原因は考えられますが、今でも原因は分かっていません。
しかし、急激な変化となると、思い当たるフシはひとつだけあります。
その転送メールサービスは、信用していた新聞社系列(?)会社から、ある大手検索エンジン企業に吸収されたのです。
つまり、私たちのリストが売られたという訳です。

その際、どさくさに紛れて、登録されていたプロバイダアドレスと転送アドレスが外部に漏れた(売られた?)可能性は否定できません。
なにせ、急な被害(一気に迷惑メールが届き始める)の原因である、急激な変化はそれしか考えられないのです。

【対策その2】友人のアドレスを変更する

そんなことで悩んでいるうちに、あることに気が付きました。
仕事の関係で、シストラットからメールアドレスを貸している人がいました。
私にも関係あるので、そのアドレスが受信したメールは私にも送られてくるように設定してあったのです。

そのアドレスに、仕事だけでなく、大量の迷惑メールが紛れ込んでおり、私にも迷惑メールが来ていたのでした。
早速、彼女に連絡を取り、アドレスを変えてもらいました。

効果はてきめんです。
迷惑メールはピーク時と比べて半分に減りました。

【森個人に来た迷惑メール】

日付 件数
2003年8月 ほぼ0件
2003年9月 166件
2003年10月 327件
2003年11月 390件
2003年12月 523件
2004年1月 457件
★(←新規転送メールで改善)
2004年2月 280件
★(←友人のアドレス変更で改善)

彼女に話を聞いていると、特に、「あやしい系」に出没している訳ではなさそうです。すでに10年のつき合いのある人ですから、彼女の真面目さはわたしが良く知っています。
それでも、1ヶ月に200件の迷惑メールが届いてしまう。

【対策その3】プロバイダを変更する

さてさて、これでピーク時には1ヶ月523件あった迷惑メールが280件に減少しました。
しかし、減ったと喜んでばかりもいられません。
まだまだ迷惑メールが届くからです。
仕方がありません。泣く泣くプロバイダを変えることにしました。

【森個人に来た迷惑メール】

日付 件数
2003年8月 ほぼ0件
2003年9月 166件
2003年10月 327件
2003年11月 390件
2003年12月 523件
2004年1月 457件
★(←新規転送メールで改善)
2004年2月 280件
★(←友人のアドレス変更で改善)
2004年3月 210件
★(←プロバイダ変更で改善)

それでも1ヶ月70件しか減りません。

【対策その4】もうひとつの転送メールを変更する

そこで、もうひとつ使っていた転送メールを中止しました。
約40件の効果です。

【森個人に来た迷惑メール】

日付 件数
2003年8月 ほぼ0件
2003年9月 166件
2003年10月 327件
2003年11月 390件
2003年12月 523件
2004年1月 457件
★(←新規転送メールで改善)
2004年2月 280件
★(←友人のアドレス変更で改善)
2004年3月 210件
★(←プロバイダ変更で改善)
2004年4月 168件
★(←新規転送メールで改善)

タマネギの皮を剥いだ先にあったものは

【対策その5】企業のお知らせメールを総カット

いよいよ、手詰まりで、月間200件の迷惑メールとつきあうしかないかな、と諦めかけていた時です。
メールタイトルをずっと眺めていると、あることに気が付きました。

このアドレスは、「信用ができる」と私が思っている相手企業やお店に対してユーザー登録するのによく使っていたものでした。
具体的には、こんなところです。

●アップルストア(製品を買った時に愛用者カードに登録)
●マイクロソフト(製品を買った時に愛用者カードに登録)
●アスキーストア(製品を買った時に愛用者カードに登録)
●ソースネクスト(製品を買った時に愛用者カードに登録)
●ひとびと・ net(ある調査会社が主催している、コミュニティサイト)
●三省堂書店(本を買った時に愛登録)
●アマゾン(本を買った時に愛登録)

ところが、来るのはこんなものばかり。

●MSXゲームリーダー、独占企画でご予約受付中!(アスキーストア)
●あの「目玉おやじ」がUSBカメラになった!(アスキーストア)
●PS2版『MONSTER HUNTER』【15%OFF】予約受付中 3/11(木)発売(アマゾン)
●【 再入荷 】 DVDを観るなら SONY 「5.1chワイヤレス・ヘッドフォン」(ソースネクスト)
●mactopia ニュースレター 第 13 号【Vol.1-No.13】 [2003/09/26](マイクロソフト)
●Apple Store eNews 2003/09/19(アップルストア)

私は数20年前のゲームパソコンであるMSXなんぞ持ってもいないし、興味もありません。
また、パソコンを使って「5.1chワイヤレス・ヘッドフォン」で音楽も聴く気も毛頭ありません。

それなのに、次々とDMメールが届いてくる。
新聞のチラシなら、ごっそりとチラシだけを掴んで、横に置いたりゴミ箱に捨てたりすればことが済みます。

しかし、メールとなると、上記で話したように整理するだけでも膨大な時間がかかる。ウィルスの恐怖がないだけで、私の貴重な時間を奪うことには変わりありません。

「森さん、そういうものだって情報ですよ。私は気にならないですね。
ましてや、そういうものを『迷惑』メールだとは思ってもいません」

そう。情報というものは、人によって、価値観によって、宝石にもゴミにもなります。
ある調査会社が、こうつぶやいていました。
「消費者調査のデータは欲しいところには数100万円でも売れるのに、銀行にとっては単なる紙っぺらなんですよ」

私にとっては、MSXの情報はゴミ以外の何者でもありません。
自分の時間と労力を使って集めて消化しないといけない情報は山とあります。それらをいかに効率よく時間をかけずに消化するかに腐心している一方で、不要な情報にかまける時間はもったいない。

その邪魔をしてくれるような、企業の情報供給体制(要するに、メールというカタチでの垂れ流し)とはつきあいたくないのが本音です。

「そんなにイヤなら、そのアドレスに来るものをごっそりと別フォルダに移動するようにメールソフトを設定すればいいじゃないですか」

そうです。それも自衛手段です。
ただ、そのアドレスは企業からのDMメール受信専用ではありません。だから、ごっそりとは別フォルダに収納できない。
そうしたいのなら、別アドレスを作って管理しないといけないのですが、そのための時間とコストが無駄になるのは同じです。

企業からのDMメールは頼んでもいないものがやってくるのです。
いや、正確には頼んだことになっている。製品を登録した時に「お得な情報をお知らせしても良いですか」といったチェックボタンにチェックされているのを気が付かずに、そのまま送信する方が悪いというのが企業側の理屈です。

「我々は、森さんの『パーミション(許可)』を受けているのだから、文句を言う方が変ではないですか。
例えばクレジットカードにしても、銀行口座にしても、小さな文字で読めないけれど、ここにあるすべてのことを消費者が了解している前提でカードも口座も栄えるようになっている。
DMメールを送る企業だけをやり玉に挙げるのは不公平です」

金融関係のあの小さな文字の羅列は、メルマガの記事として別に取り上げてもいいくらいに、私は反発しています。
ただ、IT関係ではあれだけ「パーミション(許可)マーケティング」だと騒いでいるのに関わらず、こういうことをしているだけで、既に
「言っていることと、やっていることが違うではないか」
と、疑問を持っています。

金融はやっていることが同じでも、そんなことは黙ったまま。声高に「パーミション」などとは言っていない。
「言っていることと、やっていることは、実は同じ」
だけ、金融の方がネットよりマシだと私は思っています。

パーミション・マーケティングの実態

結局、ほとんどの企業で「メール配信解除」の手続きを取りました。
しかし、購入したソフトのバージョンアップの情報だけはないと困りますので、それは残しました。
その結果、迷惑メールは一気に減りました。

【森個人に来た迷惑メール】

日付 件数
2003年8月 ほぼ0件
2003年9月 166件
2003年10月 327件
2003年11月 390件
2003年12月 523件
2004年1月 457件
★(←新規転送メールで改善)
2004年2月 280件
★(←友人のアドレス変更で改善)
2004年3月 210件
★(←プロバイダ変更で改善)
2004年4月 168件
★(←新規転送メールで改善)
2004年5月 172件
2004年6月 80件
★(←お知らせメールカットで改善)
2004年7月 60件
★(←お知らせメールカットで改善)
2004年8月 25件
★(←お知らせメールカットで改善)

中でもソースネクストは、受信内容が選べます。

●お得なメールニュース
●サポート情報 (随時)
●優待案内 (随時)【下記は当時なかったもの】
●セキュリティ情報 (随時)
●法人ユーザー様向け ライセンス情報メール (月1~3回)

しかも、メールニュースの形式と称して、テキスト形式のメールかHTML形式のメールかも選べてしまう。
さすがに、1,980円のソフトで革命を起こした企業だけのことはある、と感心したものでした。

もっとも、最初の登録では、

●メールニュースを希望する
(プレゼント情報、ユーザー限定ご優待情報、無償バージョンアップ情報、ウイルス情報などを随時お知らせいたします。)

しかチェックできないので、バージョンアップ情報が欲しい場合は、ごっそりりとDMメールがやってくる仕組みになっています。

そこで、私が必要な

●サポート情報 (随時)

だけにチェックを入れて、設定しました。

ところが、どうも受信していると、妙なことに気が付きます。
ソースネクストからのメールだけは、私の購入したソフトと関係のないものが週に何件もやってきます。
私の購入したのは、携帯電話のアドレスやメールなどをパソコンにバックアップするソフトです。

しかし、

●【 32%OFF 】 驚きの翻訳精度。最新版「本格翻訳4 Platinum」(ソースネクスト)

といったDMメールが、まだまだやってくる。

私がチェックした「●サポート情報 (随時)」には、こんな説明があったのです(現在は2つに別れていますが、当時はひとつでした)

「お買い上げいただいた製品(ユーザー登録済み)のアップデート情報を随時お届けします」
「お買い上げいただいた製品(ユーザー登録済み)のバージョンアップ版や関連商品が発売される際に、特別ご優待価格にてご購入できるご案内を随時お届けします。 」

私には、どう考えても、翻訳ソフトが携帯電話のバックアップソフトの「関連商品」とは思えません。
しかし、彼らの常識では「関連したもの」なのでしょう。

そうすれば、答えは2つです。

●このまま、彼らの常識につきあって、DMメールが次々とやってくるのを我慢する
●私は私の常識で動きたい。だから、お知らせメールは有益なものも目をつぶって、受信しない。

もちろん、私が選択したのは「受信しない」です。

アンチ派を生むパーミション・マーケティングとは

これで、ようやく静かになりました。
しかし、後日談があります。
ソースネクストの携帯電話ソフトは価格の割に大変良くできていますし、十分満足しています。開発陣は大変良い仕事をしている。

しかし、新しいバージョンが出た時、私は購入するのをためらってしまいました。
サポート情報がやはり欲しい。
だけど、DMメールはもうごめんだ。
ソースネクストのソフトは2,970円ですが、ライバルのソフトはその倍近い5,000円はする代物です。

ソフトを2年間使うとして、差額2,000円ということは1ヶ月80円の差。
キャンディ1つのお金で、DMメールが来なくなることを考えると、実は安いものだということに気が付いてしまったのです。

かくして、私は他の携帯電話ソフトを物色したというわけです。
ソースネクストにとって幸いなことに、そして私にとっては不幸なことに、他のソフトは私のニーズに合いませんでした。
従って、いまでもソースネクストの携帯電話ソフトを使っています。

しかし、ライバルがちょっとした私のニーズ(実は、メールを整理する時に、フォルダを作成できるといった簡単なことなのですが)に合わせた新バージョンを発売すれば、すぐにでも乗り換える用意はできています。

自宅にウィンドウズパソコンを購入した時も、ウィルスソフトはソースネクストが幾ら安くても検討対象には入りませんでした。理由は同じくDMメールです。
1,000円~2,000円程度の差で他社製品が買えてしまうし、携帯電話ソフトと違って、機能に差はないからです。

ソースネクストのやり方を批判するするつもりはありません。
実際、ソースネクストは1,980円ソフトで大躍進したものの、その裏には、こういったDMメールが購入を刺激しただろうことは容易に想像が付きます。
つまり、ソースネクストとしては、私に嫌われるよりも、他の大多数の人たちにソフトが売れる方がビジネスとしては正解です。
つまり、私はソースネクストにとって「招かれざる客」という訳です。
それならば、私は私で潔く、ソースネクストとつきあわなければ良い話です。

しかし、一方で、「パーミション(許可)マーケティング」というIT業界であれだけもてはやされたものが、企業の都合良く解釈され、手あかにまみれていく姿を見るのも忍びないのは確かです。

「パーミション(許可)マーケティング」を日本で提唱した阪本啓一さんは、このような姿を期待していたのでしょうか。

恐らく、彼ならば、こういうことでしょう。

「本当に『サポート情報だけ』を選べるボタンをひとつ作って、その人たちだけに情報を送るようにソフトをちょっと書き換えればいいだけの話ではないですかね」

確かに私が10年以上も愛用しているメールソフトの開発会社は「本当に『サポート情報だけ』しか送ってこない」のです。
しかし、一方で、無料であるアウトルックエクスプレスに負け、企業としても決してソースネクストのように好調ではありません。

阪本氏が考えていた「パーミション(許可)マーケティング」とは、その中間を行くような配慮に行き届いたものではなかったのか。

そうなると、ソースネクストの好調を横目で見て、同様のメール配信を行い初める企業が次々とやってくる個人的な危惧はぬぐい切れません。

確かに、最初は好調でしょう。
しかし、一方で、その企業にもやっかいな問題が起きる可能性も否定できません。
というのも、情報に触れる人間は上級者になるに従って、自分に必要なものとそうでないものを選別する傾向が強くなるからです。
つまり、情報初心者ほど「とにかも色々な情報が欲しい」というニーズがある。しかし、中級者、上級者になるに従って、「いるものしか、いらない」というニーズが強くなる。

インターネットが普及し始めた1995年から10年。
今や、70%の生活者がインターネットに触れ、情報の洪水に身を任せています。
ここから先は、中級・上級者が増えることはあっても、初級者が増えることはありません。
そんなとき、「関係性が見えない」「関連商品」のような情報を送り続ける企業は、むしろ嫌われてしまうことになりかねない。

迷惑メールが注目されている今、本来の意味での「パーミション(許可)マーケティング」は何か、をもう一度考える必要がありそうです。

後日談 - ヤフーオークションからの被害

さて、後日談です。
一旦収束したかのように見えた迷惑メールがまたまた勢いを戻してきました。
2004年12月には1ヶ月28件(ピーク時の523件と比べると95%も削除)だったものが、半年もしないうちに、629件と以前より増えてしまいました。

【森個人に来た迷惑メール】

日付 件数
2003年8月 ほぼ0件
2003年9月 166件
2003年10月 327件
2003年11月 390件
2003年12月 523件
2004年1月 457件
★(←新規転送メールで改善)
2004年2月 280件
★(←友人のアドレス変更で改善)
2004年3月 210件
★(←プロバイダ変更で改善)
2004年4月 168件
★(←新規転送メールで改善)
2004年5月 172件
2004年6月 80件
★(←お知らせメールカットで改善)
2004年7月 60件
★(←お知らせメールカットで改善)
2004年8月 25件
★(←お知らせメールカットで改善)
2004年9月 20件
★(平和な日々)
2004年10月 15件
★(平和な日々)
2004年11月 25件
★(平和な日々)
2004年12月 28件
★(平和な日々)
2005年1月 302件
★(←一気に増えた)
2005年2月 355件
★(←一気に増えた)
2005年3月 402件
★(←一気に増えた)
2005年4月 629件
★(←一気に増えた)

原因は2つです。

ひとつは、趣味のホームページにあるアドレスです。
ホームページを自動的に巡回して、メールアドレスを集めてくるソフトを使って、アドレス業者は大量にメールアドレスを拾って来ます。
趣味のホームページのアドレスは変更したものの、その後に巡回ソフトが拾っていったのです。

そこで、自衛策として
「morikun■@tensou.ne.jp」
と、「@」の前に■を入れることにしました。
これだと、巡回ソフトはアドレスと認識しなくなります。

ところが、効果といえば1ヶ月数十件でした。
焼け石に水です。
よく見ると、残りの数百件はヤフーのメールアドレスに来ていたのです。

理由は簡単。
ヤフーアドレスの「@」以前の文字はヤフーオークションのIDとして使わなければならないものなので、ヤフーIDに「@yahoo.co.jp」の文字を加えれば、メールアドレスになってしまう代物なのです。

昔、シストラットでとらばーゆに求人広告を出したことがありました。
そのあとしばらくして、担当者の女性に裏ビデオの通販DMが届いたことがありました。
とらばーゆには会社名と住所、そして担当者名が乗っています。住所を集めるのに絶好の場所です。ただ、名字しか掲載していなかったので、男性だと思ったのでしょう。

それと似たようなことがヤフーでも起きたというわけです。
経験のある方はご存じですが、このIDをクリックすると、今まで取引のあった人たちからの評価を見ることができます。
この評価が高ければ高いほど信用できる相手だという証明になるものなので、詐欺事件の相次ぐヤフーオークションでは、是非残しておきたい貴重なものなのです。

IDを取り直すこともできますが、そうすると評価も消えてしまう。
にっちもさっちもいかないメールアドレスなのです。
そこを狙った業者が一気に私のメールアドレスに迷惑メールをぶち込んだという訳です。
いま、ヤフーオークションも止めてしまおうかと検討中です。

迷惑メールとの戦いは、今後もずっと続けなければならないのでしょうか。

【使用画像】社団法人日本インターネットプロバイダー協会signature




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