■月にかわっておしおきよ!-コスプレイヤー心理学【コスプレ】

artc20040501今回はちょっと毛色が変わったテーマ、コスプレです。
ヲタク中のヲタク文化がマーケティングとどう関わるのか。
よくよく見ると、非常に興味深い分野なのです。
文化論とはまた違ったマーケティング視点でのお話、お楽しみ下さい。
ちなみに、タイトルは永遠の人気を誇るセーラームーンからですが、本文にはほとんど出てきません。ファンの方、ごめんなさい。

「森さん、どうしちゃったの?」

今回のテーマは、コスプレです。
今、ニヤついたあなた、そう、あなたです。
残念ながら、今回のテーマは恋人同士が「むふふ」と楽しむそれではありません。
無料でコスプレを貸し出してくれるラブホテルが都内にはいくつもあり、コスプレは妙な方向に市民権を得はじめたところもあります。

しかし、今回、お話しするのは、通称コミケ、正式名称コミックマーケットに現れるような本家コスプレです。
え、それでもニヤニヤですか。
うーん、どうぞ、ご自由にお楽しみください (笑)

昨年、メルマガ再開のお知らせを読者のみなさんにお送りした後、知り合いから一斉に心配の連絡が集まりました。
というのも、このような文面だったからです。

今のところ、以下のようなテーマを考えています。
▼コスプレなどのサブカルチャー
▼ロリータファッションなどのアパレル
(以下略)

「予定テーマが『コスプレ』『ロリータファッション』って…どうしたの、森さん。お休みの間に何があったの?」

と言われてしまいました(^^;
中でもコスプレが最もインパクトが強かったようでした。

分からないではありません。
コスプレというとキワモノのイメージがあります。
また、恋人同士の秘め事の「隠すべき」イメージを持つ人もいます。
マーケティングの持つ固いイメージとはちょっと離れている。
なのに、「メルマガのテーマにしまーす」と公言してしまったわけですから、「森さん、どうかしたの?」と反応が返ってくるのは当然です。

一方、私は私で、好きなアニメやゲームの登場人物のコスチュームを身にまとう、そんな彼ら、彼女たちには数年前から注目していました。
なぜか。
街や電車ですれ違う「(自称)正常な神経を持つ」若い人たちの表情に生気がないのに対して、コミケなどに来ている通称レイヤー、コスプレイヤーたちはみなイキイキとしているからです。

人間、好きなことをしている時が、それが仕事であっても趣味であっても、はたまた恋人と一緒であっても、イキイキとするものです。

しかし、「なんかさぁ、面白いことないかなぁ」と携帯電話で知り合いと話したり「ヒマして死にそうでーす。誰かあそぼ」とケータイやネットの掲示板に書き込みながら、無表情で暮らしている若い人たちには、その「好きなもの」がない。
一方で、レイヤーたちは、好きなものを発見した幸せな人たちです。

コスプレイヤーたちを駆り立てるのは何なのか。
一体、コスプレの何がおもしろいのか、楽しいのか。
私の疑問は素朴なものでした。

そこで、今回のテーマは

「コスプレって、何が楽しいんだろ」

そして、隠れたテーマは

「見た目にだまされるな」

です。

コスプレとは何か

話を始める前に多少、説明をしなければなりません。
ここでいうコスプレとは何か、です。

コスプレの基本は、アニメやゲームのコスチュームを人間が実際に着ることです。
ただ、そのままで街を歩くわけにはいきません。かといって、自宅の部屋で着ているだけでは面白くもなんともない。
だから、そんな人たちが集まる祭典がいくつもあります。
その最大手・最古参が、年間2回開催されるコミック・マーケット、通称コミケです。季節にちなんで「冬コミ」「夏コミ」と呼ばれます。

コミケは元々、「コミック」の名前が示すとおり、マンガ同人誌を作っていたアマチュアたちが集まって、即売会などを開いたりする場でした。
1975年に始まった当初は30サークルが出展し、来場者も800人程度の単なる「ファンの集い」でしたが、約30年たった現在では22,000サークル、来場者も30万人を数える一大イベントに成長しました。

元々、同人誌には「うる星やつら」のラムちゃんなど、有名マンガの登場人物をパクったものに人気がありました。アダルトなものが多く、本家では絶対に見ることができない、女性キャラクターのえっちシーンが満載の同人誌も少なくありませんでした。

そこに、アニメやマンガのコスチュームを着て会場を闊歩する人たちが現れたのは、パロディ精神旺盛の彼らとしては、ごくごく自然な成り行きでもありました。
それが注目を浴び、人が人を呼び、コスプレイヤー(コスプレを趣味にする人たちのことです。縮めてレイヤーともいいます)が集まる場としても成立してしまったという訳です。

コスプレ単体のイベントも数多く開催されています。
コミケほどの動員数はありませんが、後楽園などで数千から数万人単位で、人が集まることも珍しくありません。

規模の大小にかかわらず、会場ではみなさんおなじみのセーラームーンやファイナルファンタジーのキャラクターがいると思えば、サクラ大戦やギルティギアのようなマイナーなゲーム(失礼)のキャラもいます。
はたまた、何のゲームか分からないと思ったら、自分たちが書いた同人マンガのキャラや自分でデザインしたオリジナルキャラのような、まったく無名不明のキャラも会場を練り歩いています。

街中でもコスプレが見られます。
中でも有名なのは、マンガ専門店「まんだらけ」の店員さんたち。
彼女たちは銘々に好きなコスプレで働いています。
春麗、ギルティギア、フェリシアなどなど、コミケと変わらないキャラクターのオンパレードです。
「声」さんのように、お客さんから人気が出て、スターになった従業員も出てきました。

「コスプレ喫茶」なるものもあります。
マニアのメッカ秋葉原が中心地ですが、一部の店では、まんだらけやコミケをイメージしていくと大間違い。ウェイトレスは全員メイド服なだけのお店なのでした。
それと区別するためか「メイド喫茶」と呼ばれることもありますが、厳密な定義はありません。

ちなみに、コスプレ喫茶の第一号店は2000年5月に秋葉原に開店した「カフェ・ド・コスパ」です。当初はPiaキャロットというマンガのコスプレがメインで、様々なコスプレに身をまとった従業員がいました。
同年8月「蔵 太平山」がコスプレ居酒屋として、日曜日限定でコスプレ店員を配置したところ大人気。予約がなければ入店すらできないというほどでした。

コスプレ喫茶は全国に30店あまりしかありませんが、喫茶店だけでなく、コスプレ・キャバクラ、コスプレ焼き肉、コスプレ・しゃぶしゃぶと(両方とも大阪です。関東の方、残念(笑))、かつてのノーパン喫茶と似たような進化をたどり始めているのが興味深いところです。

コスプレーヤー、第一のタイプ「なりきり」系

ff10-2リュックいつものように、まずは色んな人に聞いてみましょう。
コスプレをしていない一般の人たちの印象はというと…

私はたまに企業研修などの題材にコスプレを例に出したり、宿題のテーマにすることがありますが、出席者の失笑を買うことが多くあります。
例えば、レイヤーが格闘ゲームのポーズをきっちり決めた写真をプロジェクターで映しだした途端、必ずといっていいほど、会場からクスクスと笑いが漏れて来る。

なぜ、と聞いてみると、こんな答えが返ってきます。

「気持ち悪いです。
自分の世界に入っている。イっちゃってる感じです」

研修に来ていたOLさんの言葉ですが、失笑する人たちの多くは似たような反応です。
自分の感情レベルの表現だけでなく、もうちょっと説明できる人はこんな風に話します。

「私も気持ち悪いと思います。
なぜって、全然似合っていないじゃないですか。
元になったアニメとかゲームは知りませんが、マンガやアニメのキャラって外人顔ですよね。
でも、ああいうところにいる人たちは一般人だから、顔もスタイルもあっていない。
それを自覚していないのが気持ち悪いんです。

『日本人だから仕方がない』とか『自分の好きなカッコウをすればいい』などと言われますが、それはちょっと違うと思っています。
普通のファッションでも、おしゃれな人は自分に似合うかどうかを考えたり、自分の欠点を隠したり、長所を伸ばすコーディネートは基本ですよね。
それは感性だけの問題ではなくて、

『客観的に自分を見つめることができるかどうか』

なんです。言い換えれば、

『頭がいいかどうか』

とも言えます。

だから、それができない人は『いも』『アホ』とバカにされる。
気持ち悪いというのは、そういうことなんです」

いやはや、ファッションの世界とは厳しいものです。

さてさて、当の本人たちに聞いてみましょう。

「なぜ、あなたはコスプレをするの?」
「あはは、森さん。『楽しいから』に決まってるじゃないですか」

レイヤー歴5年という24才の知り合いの女性に聞いてみました。
彼女はゲーム・ファイナルファンタジーが好きで、登場人物のコスプレを主にする人です。最近ではFF-X2のリュックがお気に入り。

「うん、そうだよね。それじゃ、何が楽しいのかしら」

と私。

「うーん、キャラになりきれることかな…
ファイナル・ファンタジーってRPGだから、50時間くらいプレイするじゃないですか。
そんなに長くやってると感情移入するんですよね。
セリフにジーンときたり、『あ、それ分かる分かる』と共感してみたり。
そうすると、自分もやってみたくなる。
でも、私は魔法は使えないから、せめて格好だけでもキャラになりきりたいんです」

この「なりきり」動機は随所で聞くことができます。
23才の女子大生はこう言い切ります。レイヤー歴3年。

「私、もともと格ゲー(格闘ゲーム)が大好きなんです。
大の男をすっ飛ばしたり、殴りまくったり。
もうね、気分爽快なんですよ。
ゲーセンで対戦をやっているうちに、自分も強くなった気になる。
だから、自然とコスプレをするようになりました。
楽しいですよ、鏡の前に向かって、構えたりキックの練習をしたりするの」

「私はアニメかな」

と切り出したのは、27才、OLさん。レイヤー歴10年のベテラン(?)です。

「主に、セーラームーンとかが多いです。
やっぱり私が夢中になったアニメですから。
あと小説とかもあります。『グインサーガ』シリーズとか。
カットとかイラストを元にして、衣装を自作するので大変ですけど、頑張ってます」

同化欲求という心理

バトルロワイヤル双方の言い分を聞いていると、面白いことに気が付きます。
コスプレ反対派は「他人の目を意識するかしないか」で、好き嫌いを判断しているのに対して、コスプレ賛成派は「自分が心地よいかどうか」を基準としています。

まさに最初に紹介した「自分の世界に入っているから、気持ち悪い」と言うOLさんが、その典型です。

そこで、ちょっと意地悪な質問をさっきのOLさんにしてみました。

「『自分の世界に入る』ってことは、言い方を変えれば『夢中』ってことですよね。
そういう時って、田中さんにはありませんか」

と質問をしてみます。

「うーん、あることはあるけど…カラオケとか」
「ちょっと昔までは、若い人たちに、カラオケで自分の世界に入るのはかっこわるい風潮があったけど、今はそうでもないですよね。
彼らも熱唱したりしてる。
カラオケはいいのに、コスプレはなんでダメなのかしら」
「人前だから…?
あ、カラオケも友達と行きますね…
うーん…あっ、そうか。カラオケでの人前は知り合いだから気にならないけど、見ず知らずの人たちの前だと、カラオケでも自分の世界に入り込めないです」
「そうしたら、街中で恋人たちがキスしたり、いちゃいちゃしているのも許せないのかな。自分たちの世界に入ってるのを人に見せている」
「あ…あれは気にならないです。
うーん、確かに、恋人なら自分たちの世界に入り込んでる人たちを見ても、気にならないです…むしろ、うらやましかったから自分もやってみたいくらいの勢いでした。
うーん。何が違うんだろう。うーん」

彼女が詰まってしまった理由は簡単です。
レイヤーたちの動機である「なりきり」は、人間の心理としては珍しくもなんともないからです。
心理学でいうところの同化欲求です。

「好きな異性の趣味と同じことをしたい」が典型的な例です。
「好きなタレントが身につけたグッズが欲しい。同じレストランに行きたい」

無意識に現れるものもあります。

「映画館でヤクザ映画をみたら肩をいからして、映画館を出ていた」

のも同化欲求の結果です。

天使「なりきり」ニーズは実は誰にでもある欲求です。
ただ、欲求の強さよりも障害が大きい場合に、人は「抵抗がある」と総合判断して、あえて実行に移さない。

その障害とは、この場合、「人前で特異な格好をするのは恥ずかしい」がそれに当たります。
外部から見るとコスプレは「特異」な格好です。しかし、コスプレ会場にはそういう人たちばかりです。
お仲間ばかりなのだから、「特異な格好」ではありません。
つまり、コスプレ会場では、その障害がほとんど存在しない。自分の欲求だけに目を向けても構わないのです。

第2のタイプ「露出系」

露出ナース一般の人たちのコスプレに対する非難の2番目は、主に女性レイヤーに向けられるものです。
先ほどのレイヤータイプが「なりきり系」だとするなら、こちらは「露出系」です。
ほとんどハダカあるいは、水着のような肌の露出の衣装をまとうレイヤーたちです。

「何だかんだ言って露出狂でしょ。
私には考えられないです、あんなかっこう」

は、男女問わず、一般の人の言葉です。
「露出狂」とまで言われてしまいました。

この「露出系」は、正当派(?)レイヤーたちの評価も高くはありません。

「あんなのがいるから、コスプレは変な目で見られるんですよ。
彼らがいなかったら、この世界はもっと平和だったと思います。
カメコもカメコですね。露出さえ高ければ誰でもいい。だから、私はカメコに撮らせてくれと言われても断ってます。あんな人たち(露出系レイヤー)と一緒に見られたくない」

ちなみに、カメコとは「カメラ小僧」の蔑称です。

彼女の話が続きます。

「私は、コスプレには対象となるキャラへの愛情がなければいけないと思っていますが、連中(露出系レイヤー)はそんなことお構いなしです。
コスプレを注目を集めるための道具にされているようで気分は良くないです」

2人目の本格(?)レイヤーのことばです。

「私は自分が好きなことができればそれでいいので、露出系のレイヤーがいてもかまいません。自分は自分ですから。
でも、それだけでは世の中うまくいかないもので、私がまともなレイヤーだっていっても信じてくれずに、彼氏が引いてしまって、別れたこともありました。
自分が好きなことが他人に理解されないのは仕方がないとしても、それだけで全人格を否定されるのは寂しいです。
え、彼氏が引いた理由ですか。
「『お前も人前でパンツやおっぱいを見せたりしてるんだろう』と言われました」

ルブランどうにも分が悪い露出系レイヤーです。
当の彼女たちに聞いてました。

「私は『どれだけ使う布の面積を削るか』を毎回考えてキャラを選んでます」

と堂々と発言するのは26才フリーターの女性です。レイヤー歴6年。

「最近は生足ではダメだとか、うるさい規則が多かったりもしますが、どれだけハダカに近づけて、でも、ハダカではないギリギリのえっちさを実現できるかに情熱を傾けてるんです。

最近のお気に入りはファイナルファンタジーX-2の敵役の女ボスかな。
胸が開いているなんてもんじゃなくて、首からへそまでをずっと隠すものがないコス(コスチューム=衣装)です。あれは着こなすのが難しいんです。
胸が大きくないと似合わないし、キャラ的に今時のスリムすぎる体型では似合わない。
むしろ、グラマーな方がいいので、デブな私には丁度良い (笑)」

デブなんてとんでもない。彼女のスタイルは165-94(E)-61-96と抜群です。

マズローの五段階欲求と露出系

「最初は私もおとなしいコスだったんです。
セーラー服をアレンジしたようなやつとか、男っぽい格好のキャラとか…
ところが、ある時、露出がちょっと多めのコスにしてみたら大変だったんですよ。
何がって、カメコが群がってきた。

それまでは『撮らせてください』というカメコは4~5人いればいい方だったのが、その時は一斉に30人くらいが周りを囲んできたんです。
『これだ!』と思いました。
それからどんどんエスカレートして、
『どれだけカメコが集まるか=どれだけ肌の露出を高めるか』
がコスプレの目的になりました。
雑誌にも出たことがあるんですよ。えっち系の男性誌ですが (笑)

うーん、露出狂と言われることも多いですし、否定はしません。
でもどちらかというと、人が私に注目することが楽しい感じかな。露出は一番手っ取り早い方法というだけです」
「そしたら、例えば、ミカちゃんはミュージシャンやグラビアアイドルになってもいいのかしら」
「私にそれだけの技能があるかとか、ルックスとスタイルがあるかどうかは別にして (笑)、森さんの言うとおりかも知れません。
ただ、コスプレの世界だからみんな注目してくれるんであって、芸能界や音楽界では、私なんか見向きもされないから、これで丁度良いかなと思ってます」

自分というものをちゃんと計算している彼女でした。

ギルティギアさて、露出系タイプは「自分への注目」がコスプレの動機でした。
「自分に注目して欲しい」欲求そのものは人間である限り必ずついてくる「自己確認」です。
小さな子供がわざと泣くのも、母親に叱られるのが分かっていていたずらをするのも『自己注目』の心理が働くからです。

しかし、一般のビジネスマンでも、自分自身や自分の主張が周囲に認められるのは、立派な心理的報酬のひとつです。
学生さんや主婦であっても、それは変わりありません。

また、心理学の基本の一つである、「マズローの5段階の欲求理論」でも、第4段階は「尊敬の欲求」であり、周囲に認められることを求める心理が働くことを主張しています。

ちなみに、露出タイプはマズローで言うところの第4段階であることは、先ほどお話しましたが、最初の「なりきり」タイプは、第3段階の「所属の欲求」に当たります。

マズローでは、人間が心理的に成長するに従って、段階が上がっていくと主張していますから、彼によれば「露出タイプ」は「なりきりタイプ」より心理的に進化した人たち、ということになります。

閑話休題:カメラ小僧の生態

カメコ殺到階段ここでちょっと脱線します。
「露出(自己注目)」タイプに登場した重要な人たちのことに触れないといけません。前出のカメコたちです。
カメコとはカメラ小僧の蔑称で、カメラマニアたちのことです。
彼らは「露出タイプ」にとって大切な「舞台と観客」です。
彼らが群がってくれるからこそ、自分の心理的欲求が満たされるからです。

コスプレ会場に行くと、若い男女に混じって、バーコード頭の小太りのおぢさんたちが目立ちます。彼らが目立つのは一見、場にそぐわない風貌だけのせいではありません。

肩から「NIKON」「CANNON」のロゴが入ったストラップにつながれた本格一眼レフカメラをもってウロウロしているからです。
中にはプロよろしく2台、3台のカメラをぶらさげている猛者も混じっています。
カメラ「小僧」という名にはふさわしくない年齢です。

カメコは中年ばかりではありません。
レイヤーと同年代の男性から30代とおぼしきおにいさんたちまで様々ですし、コンパクトカメラを携えている人たちも少なくありません。

しかし、若いカメコたちも、こと露出タイプのレイヤーに対しては豹変します。
いや、群がる時には下手をすると数十人単位でレイヤーを囲みますから、それだけでも異様な情景です…あ、会場に入ってしまえば、それなりに当たり前の光景です (笑)

カメコ殺到おしりレイヤーにカメコが群がっている群衆写真の多くを見ると、まともに撮ろうとしている(?)カメコに混じって、必ず数人はカメラを下に構えています。ファインダーすら覗いていません。
誰がどう見ても、スカートの下から撮っているパンチラ狙いなのは明らかです。

下からあおって撮ったり、上から胸元を狙ったりすることも多い。
コスプレの服は、きちんとした市販の服ではないので、ガードが甘くなりがちです。そこをすかさず撮るのです。

カメコたちはこんな人たちばかりではありません。
レイヤーにも様々なタイプがいるように、カメコにも色んな人種がいます。

まずは、さまほど説明した「えろタイプ」。

次のタイプは「コス統一タイプ」。
キャラに惚れ込んでレイヤーになる女性がいれば、キャラに惚れ込んでそのコスの人たちばかりを撮るカメコがいても、なんら不思議ではありません。

「フェリシアが大好きなんですよ。
だから、フェリシアのコスの子ばかりを撮ってます。
ただ、最近、人気がないみたいで、年々少なくなっていくのは寂しいです」

彼が写した写真を見ると、ものの見事にフェリシアばかりが写っています。もちろん、レイヤーたちはバラバラ。

レイヤーの「キャラなりきりタイプ」がコスプレの正当派だとするなら、こちらはさしずめカメコの正当派です。
先日、実写版セーラームーンがテレビ番組でスタートしましたが、かなり評価が高いのも、こういう人たちに支えられている部分も大きそうです。

次のカメコタイプ。
「コス統一」があれば、「レイヤー統一タイプ」がいます。
同じレイヤーばかりを追いかけるファンたちです。

人気のあるレイヤーたちはスター的な存在になり、常に取り巻きがガードして、「一見(いちげん)」カメコ(?)は入れないようにしている親衛隊がいることもあります。

るたく、せつら、秋との子などがコスプレの世界で有名なビッグネームです。彼女たちの周囲には常に人だかりができる。
彼女たちが参加した冬コミ、夏コミの数日後には、コスプレマニアたちの掲示板に写真がアップロードされます。

単に有名なだけではなく、ファンをテコにして活動するレイヤーたちも出現します。
企業が入り込む場合もあります。
人気レイヤーはコスプレショップと契約することもあります。専属契約を結び、歩く広告塔としてコスプレ会場に出場する。
人気どころではサトコさんなどが有名です。

また、レイヤー専門のモデル撮影会を主催する会社もあります。
撮影会を定期的に主催する「ふぁーみりおん」は個人活動の「起業」ですが、人気レイヤーと専属契約または登録契約して、アマチュアカメラマンたちにモデルとスタジオを提供するビジネスを展開しています。

カメコ殺到バニー次のタイプに話を移しましょう。
3番目のカメコは「(素人)モデルを手軽に見つけることができる」というタイプです。
彼らは、特にコスプレに詳しいわけでも、好きな訳でもありません。

カメラが好きで、女性モデルを撮りたいけれど、撮影会や個人撮影のモデルは料金が高いし、自分の力でモデルを見つけるのも面倒くさい(本音は、できない)。そんなアマチュアカメラマンたちの絶好のモデルハンティングの場がコスプレ会場という訳です。

彼らは、意中のレイヤーたちに声をかけて、写真を撮り歩きます。
コスやキャラもレイヤーの有名度などは気にしません。そんなことは彼らにとってどうでもいいことです。写真の被写体さえ見つかればいいからです。

このタイプの大きな特徴は、高価なカメラと高い写真技術をもっていることです。カメラが好きなので機材にはお金をかける。女性ポートレートは撮ってみたいけど、モデル調達に時間や努力、お金をかけるのがイヤという、ある意味典型的な「カメラマニア」たちです。

第3のタイプ「変身願望」系

青セーラーカメコについてはこのくらいにしておきましょう。
この記事では彼らは「つまみ」です。
主役のレイヤーに戻ります。

「なりきりタイプ」「露出タイプ」と来たら、次は「●●タイプ」となるのですが、3番目のタイプは端から見分けがつきません。
先の2つのタイプとともに語られることが多く、一緒くたくになってしまっています。

しかし、よくよく会場を見ていると、露出タイプほど肌の露出はない。
かといって、なりきりタイプほど、ポーズをビシっと決めている訳でもない。
楽しそうにしてはいるものの、なんとなくコスプレをして、なんとなく会場を練り歩き、なんとなく写真の許可を求めるカメコたちに愛想良くしている。
そんなレイヤーたちも目立ちます。いや、数からいえば、一番多いかも知れません。

そんな彼女たちに話を聞くと、やはり前出の2つのタイプとは明確に違うレイヤーたちであることが分かります。

「コスプレはいろんな服が着れるから楽しいんですよ。
レパートリーには奇抜な服や露出の多いコスもありますが、おとなし目のコスが多いです。
それと、自分に合ったコスを着るようにしています。
例えば、私、胸が小さいので、FF-Xのルールーなんて似合わないもの (笑)」

【注】ルールーは大きな胸を強調したキャラクターで、FF(ファイナルファンタジー)では珍しく、戦闘すると胸が揺れる。

「他人から見たらどうか分かりませんが、私も自分に合うコスを選んでます。私は童顔なので、かわいい系が多いです。
でも、たまには気分を変えたいので、思いっきり男の子してみたり、セクシー系をしてみたりすることがあります。
その時その時の自分が変わるので、楽しいですよ」

そう。このタイプは実は一番「普通の女の子」に近いかも知れません。
「変身願望」が彼女たちの動機だからです。
女性にとって「変身願望」は誰にでもある心理です。
「テクマクマヤコン」の「ひみつのアッコちゃん」がいつの時代にも人気があるのも、女性の持つ根底の願望を満たしてくれているからです。

「六本木ヒルズにいきなり行こうって言われたって、こんな普段着だから、また誘ってね」という女性の言葉は、男性には理解できないかも知れませんが、女性たちにとっては本音中の本音です。

また、自宅を出る直前に、その日の気分によって着る洋服を決めるのも、女性ならではの心理です。
男性もネクタイを締めるとシャキッとする、ラフな格好だとリラックスするのに似たものです。

そして、それをもっとも手っ取り早く、効果的に実現してくれるのがファッションならば、コスプレはその極みといっても過言ではありません。
女性、もとい、「変身願望」タイプのレイヤーたちは、その極々普通の人の心理のすぐ先の延長にある人たちです。

「違いが分かる男」だけでは危険なマーケティング視点

外人召喚士ユウナコスプレは冒頭で紹介したように、門外漢からは、一種独特のもの、変わり者といったイメージがありますが、ちょっと彼らを見てみると、私たちと何ら変わらない心理がベースになっていることがわかります。

ビジネスの世界では、いや、一般の生活でも「違い」を探すことが当たり前の風潮にあります。

「競合他社と自社製品の違いは何か」
「今まで売れていたものが、停滞してしまった。過去との違いを探ることで、変化を見よう」
「40代男性と20代女性は生活者としてこう違うから、異なった商品を開発しなければならない」

などなど、違いを見つけることが能力の高い人物という印象すらあります。

しかし、それが興じて

「なぜなら、男と女が違うからだ」

というだけで、「なぜ違うのか」を説明しないまま、すべてを解決しようとします。
そこに「女のくせに、男のくせに」といった発言が生まれたり、私がよく言う「思考停止状態」に陥ります。

人間は弱いものです。
肌の色が違うだけで、自分と違うもの。
食べるものが違うだけで、気持ち悪い人種。
言語が違うだけで、自分の世界に入ってはいけない存在。

人は何か違うものを見つけ、それを許容しないまま、拒否、隔絶しがちです。
そして、違うものは未知なものとして恐れる。

「出る杭は打たれる」
「道理から外れる」

しかし、私たちマーケティングに携わる人間は、そうであってはなりません。
事柄や事象の違いを発見し、その背景を探っていくのは勿論大事なことですが、それと同じく、いや、それ以上に共通点を見つけだすことが大切な能力になります。

そうやってみると、コスプレはいつ私たち一般の人たちが普通に楽しみ、その格好が当たり前になって、街で毎日見かける日が来てもなんら不思議はありません。
そうビジネスとしてのチャンスかも知れないのです。

危険な30cm丈マイクロミニとコスプレ

外人ラムちゃんあ、でも、キャミソールという「下着」で電車のホームに立ち、街ではリゾート地よろしく、上半身ブラ一枚で渋谷センター街や原宿ラフォーレ前を闊歩する若い女性たちがすでに現れていますね。
考えようによっては、これらは一番手っ取り早い「変身願望タイプの」コスプレなのかも知れません。

いや、かつて街を賑わし、最近また復活したヤマンバメイクも「ヤマンバ」というオリジナルキャラクターのコスともいえなくもない。
また、最近公開された映画で、深田恭子がロリータ・ファッションをしていましたが、あれも考えようによっては「不思議の国のアリス」や「赤毛のアン」のコスプレといえなくもない。

うーん、街は私が考えるよりも変化が進んでいるのかも知れません (笑)

「そんなこと、ありえないですよ。
あんな格好で街を歩くなんて正気の沙汰でない」

とんでもない。
昭和40年にミニスカートの女王ツイギーが来日してから30年。
それまでは「あんなに足を出すなんて、はしたない」と言われた当時、誰が下着が見えそうな32cm丈、確実に見えてしまう30cm丈マイクロミニで闊歩する若い女性を予想したのでしょうか。

ましてやビキニの水着にマイクロミニを組み合わせただけの格好で、リゾート地ならぬ渋谷の街をうろつく女性たちを予想することは、30年前の当時は不可能でした。

かつて「日本には娼婦がたくさんいるんだね」と知り合いの外人が口を揃えて発言したことありました。
ワンレンボディコンは海外では春をひさぐ女性しか着ないイメージがありますが、当時の日本では当たり前のように街を歩いていました。当然、日本のメディアや一般女性たちの反応は「色情狂のような格好で、風俗の人しかあんなの着ない」でした。

女性ファッションは誰もが未来を予想できないものです。
根底にニーズがある限り、本格的コスプレ姿で街を歩くのが当たり前になる可能性はまったく否定できません。

「それでもあのコスプレは納得がいかない。
私たちと同じ人種だと考えたくもない」

と拒否反応を示すあなた。そうあなたです。
実は、それも正しい人間の心理です。
人は外見に惑わされるものです。上品な中年女性がガラス玉の指輪をしても、普通の人にはダイヤモンドに見えてしまう。一方で、高校生が何10カラットのダイヤの指輪をしていても、ガラス玉に見える。

実は私が一番の「変なヤツ」なのかも知れません。
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