一見、何も問題がないように見えるパン業界。いや、むしろ、ベーカリーブームや新しい食感の食パンのヒットなど、元気に見える業界ですが、意外なところに魔の手が潜んでいました。今回はそれを洗い出してみましょう。
タイトルはマリーアントワネットの有名なことばです。
ニッボン人の朝食事情
おはよう。
…と来れば私たちの年代では、「スパイ大作戦」の
ですが、私のイメージは決してトムクルーズではなく、あの金髪のピーター・グレイブスでなければなりません。
そんなオヤジの戯れ言はどうでもよろしい。
朝といえば朝食。
厚切りトーストをくわえながら、キャミソール姿の女性がシンプルなマンションの一室で、モーニングカップのコーヒーを飲む…
いかにもステレオタイプ。アンアンに毒されたイメージが浮かんでしまうのは一種の職業病です。
でも、誰しも、間違っても、駅構内の立ち食いそば屋で時間を気にしながら、ハフハフ言ってそばをズルズルすすっているサラリーマンは思い出したくもありません。
実は、みそ汁と納豆や卵焼きの組み合わせという純日本風の朝食も健在です。
20代の若い人たちでも朝食のごはんとパンの比率はほぼ半分。意外にもごはんが健闘しています。
公開データで見るとみんなの朝食の雰囲気がわかります。
このメルマガの中心読者層である20~30代社会人で見てみました。
(出所 : 「きかせて・net」http://www.kikasete.net/)
ただ、未婚男性はごはん派が64~65%でパン派が57~58%と逆転しますし、未婚女性がごはんが47~48%に対して、パンが70%と全体傾向を強めた感じになっています。
要するにほとんどの人が朝食を摂っていて、パンとごはんは半々であるものの、若い女性はパン派が多少多く、若い男性は多少ごはん派が多い。
みなさんがイメージする像とそんな変わらない結果となりました。
さて、このデータには「朝食に何を求めるのか」という質問が入っていました。
パン派、ごはん派で差がある項目を見ると、興味深い数字が並びます。
●身体を目覚めさせたい(75.0%)
●とにかく1日3食で健康を維持したい(72.9%)
●身体に良いものを摂りたい(69.0%)
●簡単・手軽に食べたい(66.7%)
●エネルギー源を摂りたい(69.4%)
パン派は目的がはっきりしていて、かつ、手軽に健康維持するためにパンを選んでいることが良く分かります。
異議あり!
私の後輩です。
そこに、過去にも登場したひなちゃんが乱入してきました。若干21才。あるファッション・ブランド店に勤務するバリパリのおしゃれっ娘です。
と後輩が色めき立ちます。
私もごはんの方が好きだし」
ひなちゃんの一部の周りだけの流行じゃないのかな。
ほら、立ち仕事で身体を使うからパンじゃ物足りないとか、特殊な事情なんだよ、きっと」
と、彼はコンサルタントの卵らしく、調査データをまず信用しようとします。
机の上の数字だけじゃないもん」
と口をとがらせながら、彼女は不満そうです。
実は、私もちょっと疑問を持ち始めているところなんだ」
と私が口を挟みます。
最近、おにぎりを代表としたごはんがものすごいブームです。
コンビニおにぎりは昔からのヒット商品ですが、おにぎりだけの小さなお店が大ヒットしています。
小田急線のおにぎりキオスクが注目を浴びた最初ですが、東京駅のおにぎり屋を筆頭に街にはおにぎりを並べたお店が次々と出現しています。
それだけではありません。
脱サラ組3人が始めたお茶漬け屋が大盛況し、今やチェーン展開しようという勢いのご時世です。永谷園のお茶漬けのテレビ広告が大ヒットし売上げが一気に上がったのも、広告だけの問題ではなく背景にある生活者ニーズがあったからです。
ごはん人気上昇とともにパンが押されて人気下降。極端に進むとパン嫌いが発生する。そんな現象があったとしても何ら不思議はありません。
調査データは大事ですが、往々にして隠れている真実も多いものです。
ましてや、調査は「現在を拾うモノ」ではあっても、「未来を予測することはかなり難しいモノ」です。
もし、ひなちゃんのことばに「パンの未来」が隠されているなら、ちょっと面白いことになるかも知れません。
なぜ私が調査データを疑ってまでパン嫌いが気になっているのか。
彼女の職業にちょっとピンと来るモノがあるのも理由のひとつです。
ファッションビルに限らず、デパートなどに勤める若い女性はオピニオンリーダーになることが良くあるのです。
マーケティング用語でいうところの「イノベーター」が多い分野です。
従って、彼女たちに流行ったものは後々になって一般大衆が追いかける構図を良く見かけます。
「現在のパン」イメージが良いとしても、もしイノベーターが「そうではない」と考えているなら、早晩、パンのイメージが変わることも十分にあり得ます。
いいきっかけだから、ちょっと考えてみましょう。
ということで、今回のテーマは
です。
「ちぇ、パンかよ…」
さてさて、まずはパンの消費量を見てみましょう。
最も正確なのは食糧庁のデータです。(グラフはこちら)
パン全体のうち、半分の50%を占めるのが食パン(普通食パンのほか、コッペパン、レーズンパンなど)、続いて菓子パン(アンパン、デニッシュなど糖類配合10%以上のもの)の30%。
そして、その他パン(フランスパン、欧風堅焼きパン、ロールパン、クロワッサン、調理パンなど)が17%と続き、最後に学校パンが3%です。
私たちの感覚からいうと、やきそばパンやカレーパンなどの調理パンはクロワッサンなどのベーカリーと区別して欲しいのですが、お上のやることはこんなものです。文句を言っても始まりません。
パン消費量は伸びても減ってもいません。ほぼ横ばいです。
あえていえば、2000年から2001年にかけてベーカリーブームがあったころの「その他パン(フランスパン、欧風堅焼きパン、ロールパン、クロワッサン、調理パンなど)」が多少伸びて、15~16%のシェアが最高19.2%にまで成長しましたが、2001年の後半から落ち込み、ブーム以前と大きく変わらない状態になりました。
このデータを見る限り、ひなちゃんの杞憂は杞憂で終わりそうです。
少なくとも、今のところ危険な兆候を見ることはできません。
後輩がしてやったり、という表情をしています。
後輩の顔を見て不満だらけの彼女に聞いてみました。
助けを求めるように一気に明るくなった彼女が話し始めます。
セールの時とか、そんな時ですね。で、大体3日間続きます。
その差し入れはお菓子、ケーキ、おにぎり、チョコレートなどの食べ物で、20くらいあるテーブルに段ボール単位で届けられます。
年末に、差し入れが来たんですが、初日はマドレーヌなどのコージコーナーからの差し入れでした。
んで、次の日がパン、最終日はチョコ。
パンは菓子パンや調理パンがほとんどでしたが、休憩所に同僚と一緒に行った途端、彼女たちがつぶやいたんです。
『ちぇ、パンかよ…』他の子たちもおなじような反応でした。
おにぎりの時は『おっ、おにぎりだ♪』という感じですから、全然反応が違います」
ファッションビル全体の女性たちの話だよね」
と私。
だって、休憩所の掃除は私たちがするんですが、おにぎりの時は全然残らないのに、パンはごっそり残っているんですよ。誰も食べていない証拠ですよね」
だって、おにぎりやパンのビニール袋を片づけるのも私たちの仕事ですから、それは分かりますよ」
彼女の店の数人の従業員だけではない大きなファッションビル全体の話ですから、統計的には何ら問題はありません。
やはり何かがありそうです。
他に色々と凝ったモノがたくさんあるんですよ。でも、それらの大半が残っていて、一番シンプルなあんパンに人気集中。
シンプルなモノがいいんでしょうか、パンって」
まあまあ、結論を急ぐのは止めましょう。
しかし、彼女の観察力には本当に驚かされます。何の問題意識もないのに、きっちりと現象を見て覚えている。いつも感心しているのですが、すごいとしか言いようがありません。
だって、立ち仕事ですし重い商品を運ぶことも多いから、女の子なのにみんな力持ちだし(笑)
だからお腹が空くわけで、そんな時におにぎりが欲しくなるのは当たり前ですよね。
事務をやっているOLさんたちとは違うと思います」
思い当たる節がないわけではありません。
水商売や風俗で働いている女性たちと仲良くなった時に、一番喜ばれるのは高価なプレゼントでもない、ちょっとした手巻き寿司だったりするからです。
夜の仕事ですから食事時間が安定していないという理由もあるかとは思いますが、身体が資本であることには変わりありません…って、違う話になりそうなので話を強引に進めます(汗)
彼女の仕事の特殊性は真実かも知れませんが、ちょっと置いておきましょう。
だって、おにぎりに人気があるという一般の傾向がすでにある以上、そのブームが立ち仕事を中心とした接客業に従事する女性たちだけに支えられているとは到底思えないからです。
いつものやり方は…通用しません
いつもなら、ここで一般の人たちの話を聞くのですが、先ほどのデータで一般人のパンに対するイメージには昔と大差がないことが分かっています。時間の無駄なので、止めましょう…といいながら、いつものクセで聞いてしまいました。
使い分けは特に意識していないかな。食べたいと思った時に食べている感じです。和風はごはん、洋風はパン。それだけですね。
健康イメージという面では、パンもごはんもカロリー以外は変わらないかな。ごはんだって、おかずによって健康を意識したメニューを選べるわけだし」
28才のOLさん。事務職です。
健康的なのは、やっぱりパンです。
それもベーカリーショップで買うパンですね。コンビニは貧乏くさくてイヤです」
25才デザイナー。
私たちの世代と比べて、ごはんの地位が多少上がっている気もしますが、パンのイメージが良いのは間違いなさそうです。
おっ、ごはん派が出てきました。
23才、OLさんです。
『あー、食った食ったぁ~』って感じかな。あはは。
身体を動かす仕事ではないので、友人と比べると量はそんなに食べませんが、あの充実感が好きです」
うーん。やはり参考になりませんでした。
若さのリトマス試験紙
話を聞いているうちにこんなエピソードも出現しました。
話の内容がオヤジの私にはびっくりするものでした。
それは
のです。
「本当ですよ、森さん。私は普通に平気で食べます」
「私は積極的に選ぶわけではないですが、たまにやります」
「理由なんて…あえていえば、両方食べたくなった時かな」
「私もそう。理由なんてそんなもんです」
がーーーーーん(汗)
私もこういう仕事をしていますから、若い人の食に関する感覚が自分と違うことはうすうす気がついていました。
弁当を電子レンジで温める慣習が根付いてから、暖かい漬け物が当たり前という味覚センスをはじめ、普通の米飯に牛乳を食卓に並べる感覚など、旧世代の私には考えられない嗜好を彼らが持っているのは知っていました。
それでも、彼女たちと食事に行く時はアタリメやいもの煮ころがしに舌鼓を打つ様を見ていただけに、
と思いこんでいた私がバカでした。
それだけではありません。
私は新しもの好きなので、レストランなどでは変わった組み合わせを試してみたくなったり、巷で流行った「納豆とマヨネーズの組み合わせ」など、意外性のあるものが好きでした。
もちろん海外旅行では高級レストランより地元の人たちが食べる立ち食いや屋台ものを見ると我慢ができなくなるタイプです。
それを見て彼女たちが恐れおののき、
などとバカにされていた過去を(いや、現在も)持ち合わせます。
だから、食というのは年齢に関わらない保守的なものであり、個人の趣味によるものだと思いこんでいたのです。
正直、食に関して言えば私の方が革新的であり、挑戦的だとすら密かに思っていました。
それが、サンドイッチとおにぎりという至極身近な組み合わせに盲点を突かれ、そんな組み合わせなど考えてもいなかった自分にガックリきたことをここで告白します。
その後、若い人たちにそれとなく聞いてみると、20代前半がターニングポイントのようでした。半数以上がパンとご飯の組み合わせには違和感がないと答えるだけでなく、そのほとんどが週に1回はごはんとパンを同時に食するというヘビーユーザーでした。
逆に言えば、
と思っている人たちは、実年齢に関わらず、旧世代の人間ということになります。リトマス試験紙のようなものです。
ごはんとおかずの東西事情
話を元に戻します。
今度は手を変えてみましょう。話を進めるきっかけをごはん対パンにしてみるのも一つの手かも知れません。
一般の人たちに潜んでいる何かを探り当てようとするには、普通のやり方をしていても埒があきません。
主食としてのごはんとパンをもう一度洗ってみよう作戦です。
はい?主食と言うことで麺類はどうするのかって?
いや、確かに麺類は炭水化物の食べ物ですし「今日はラーメンにしようか、牛丼にしようか」と悩むわけですから、ごはん・パンと競合する主食であることは間違いありません。
しかし、ラーメンをおかずにごはんを食べるラーメンライスや関西で良く見かける白飯とうどんや焼きそばの組み合わせを考えると、競合関係というより補完関係にあることも多いので、ここでは対立関係のものとしては考えないようにします。
個人的には水分が足りないボソボソの焼きそばと白飯の組み合わせはとても食べられませんが(笑)
話は脱線しますが、ラーメンライスを商品化してしまった「ラーメン?茶漬け」には脱帽です。あれはまさに「ラーメン?茶漬け」だからヒットしたのであって、洋風おじやや永谷園が過去に失敗したスープ御飯のような位置づけではあそこまでのヒット商品には育たなかったでしょう。
これはポジショニングと呼ばれる手法で、マーケティングでは大事な考え方ですから、後日改めて記事にしたいと思っています。
もう一度、話を元に戻します。
主食・副食という概念が日本にはあります。
ごはんとおかず。
だから、パンは主食であるごはんにとって代わられるものと思われがちです。
しかし、欧米、特にアメリカでは主食という概念自体がありません。
アメリカでは確かにパンを食べます。しかし、1回の食事で食べるのは食パンなら1枚分の量です。
量から言えば野菜とほぼ同じかそれ以下。肉の方がはるかに多い。
従って「欧米での主食は肉である」と言っても正しい。
ちなみに地方の特色や年代などで違いはあるとは思いますが、典型的なアメリカの家庭の夕食だとこんな感じだと思ってください。
(朝食の場合はベーコンやソーセージエッグ、パン、グリッツやオートミールが主流で、昼食はサンドイッチだけというのも多く見かけました)
(ミートローフなど。ステーキは滅多に出てきません)
(グチャグチャに煮た缶詰や冷凍野菜、ゆでたとうもろこしなど。ライスもここに入ります)
(食パンもありますがケンタッキー・フライドチキンで出てくるようなビスケットも多い。多くは冷凍のドウを買っておきオーブンで焼く)
こうやってみると意外にサラダやスープといった「洋食ならでは」のイメージの食べ物は頻繁には出てきません。
高校から大学時代にアメリカ人の友人が学校のカフェテリアで料理を選んでいるところを観察しても、この構成は大きく変わるものではありませんでした。
ここで注目して欲しいのはやはりパンの分量です。重さに換算して5%しか摂取していない。多くても10%です。
茶わん2杯のご飯の量(約200g、1回の食事量のほぼ60%を占めます)を考えると日本食と比べていかに少ないかが良く分かります。
中公新書に「肉食の思想」という、私に大きな影響を与えてくれた「個人的名著」があります。米の文化と肉の文化を比較することで、恋愛論や結婚論にまで発展する「風が吹けば桶屋が儲かる」の典型的な、ぶっとんだ論法を展開してくれる痛快な文化論です。
米を中心とした日本食が主と従の関係であるのに対して、洋食は対等な相互関係であることは、ここでも言い表されています。
つまり、ごはんが味付けだけ(塩味だけ)で単体で食べられるのに対して、パンは他のモノと組み合わせないと食事として成立しないことを物語っています。
ん、まてよ。
それじゃ、ごはんとパンはどんな組み合わせで食べられているのでしょうか。そして、その組み合わせの相手のイメージによって、ごはんとパンのイメージが決められてしまうと考えても不思議ではないはずです。
主食で見るのではなく、おかずを見ることで主食を判断するという発想です。
ファッションビルでのインタビュー
20人くらいに聞いたんですよ、ファッションビルの子たちに」
ひなちゃんがシストラットのオフィスにやってきました。
発想の途中ですが、せっかく彼女が頑張ってインタビューをしてきたのですから、無下に断るわけにも行きません。
統計的には20人は大したサンプル数ではありませんが、実務上、十分使える数です。それを休憩中に聞いてきたという彼女も気合いが入ってます。
で、一番多かったのが
●パンだけでお腹を一杯にしたくない/できない
という理由だったんです。
菓子パンなんて甘ったるいし、しつこい。あれを1個食べたところでお腹が一杯になる訳じゃない。でも、2個以上食べると気持ちが悪くなりそうだというのが理由です。栄養的にも問題ありますし。
ごてごてとクリームやらなんやらがあるパンに人気がないのは、それが理由だったんです。
という意見も多かったんです。携帯に便利だし、バッグにもちょっと入る。
でも、そうなるとマドレーヌとかワッフルでいいじゃないかという意見も出てきた。
確かに菓子パンにする理由はどこにもないです。総菜パンも似たようなモノです。ハムカツとかコロッケとかカレー揚げパンとか味がしつこいじゃないですか。
栄養の偏りもありそうだし。
●手軽で、
●携帯に便利で、
●食べ残しても収納できて、
●(味的に)食べやすくて、
●栄養バランスが取れている
のがいいとなると、ふと思ったんですが、結局カロリーメイトになっちゃうんです。パンはカロリーメイトとケンカをしなくっちゃいけないんでしょうか」
若干21才の素人さんがグループインタビューをやったようなものです。
インタビューテクニックは稚拙でしょうが、販売スタッフですからそう無茶なモノではないはずです。信用して良いでしょう。何よりも良い根性しています。立派。
そう考えると、カロリーメイトやワッフルはパンの進化形のひとつであることが分かります。
パンというモノに欠けている要素を突き詰めていくと、こんなバリエーションが発達する。本来はパン業界が考えなければ自分たちのメシのタネがなくなってしまうのに、他業界にお株を取られてしまう。
相方に見るパンの実態
派生形の話はここまでにしましょう。パンの話です。
まてよ、よくよく考えると、パンはちっとも健康的ではないじゃないですか。
いや、パン自体ではありません。組み合わせの相方が、です。
例えば、コンビニで売っている菓子パンや総菜パンの具材はこんな感じです。
【不】が不健康イメージや高カロリーで、ダイエットを気にする若い女性が敬遠しがちなもの。【健】がまあ、健康イメージがそこそこあるものです。
実はあんパンに人気があったのも、和菓子ブームのせいでアンコに不健康や高カロリーなイメージがなくなったからです。
【不】生クリーム/カスタードクリーム
【不】カレー
【不】コロッケ・メンチ
【不】やきそば
【不】マヨネーズ/ソース/ケチャップ
【不】チーズ
【不】ハム/ソーセージ
【不】パン自体を油で揚げる
【不】パンに砂糖をまぶす
【不】メープルシロップ
【健】レタス
【健】たまご
【健】アンコ
いかに不健康や高カロリーイメージの食材が多く使われているか。
食パン自身はどうか。トーストにして、自宅ではどう食べるか。
【不】ジャム
おかずとしてサラダや目玉焼きを一緒にしたところで、それはパンでなければならないものではありません。ごはんと一緒に食べても構わない。
なあんだ。結局、私達が普通考えつくパンの食べ方というと、脂っこい物、カロリーの高そうな物ばかりです。
わずかに、街のベーカリーショップがライ麦パンやクルミパンなどの健康イメージのあるものを品揃えしています。
しかし、品揃えの大半を見たら良く分かります。そんなパンは陳列の1/5あったら良い方です。
多くは伝統的なジャムパンやクリームパン、ピロシキなどの揚げパン、カロリーやコレステロールが不安だというイメージのチーズをふんだんに使ったモノ、ピザなどのこってり不健康イメージのものなどなど。
とてもではありませんが、健康的、低カロリーイメージを全面に打ち出すほどの店づくりでもなんでもありません。
一方のおにぎりと言えば、高カロリーの物もありますが、多くは健康的、低カロリーイメージのあるものとの組み合わせです。
【健】ひじき/めかぶ/こんぶ
【健】ツナ/明太子/鮭/カツオ節
【健】納豆
【健】海苔/高菜
【不】天ぷら
【不】マヨネーズ
おにぎりは和食のイメージが見直された大きな波に乗って、伝統的な具材のイメージが見直されたという幸運もありますが、それに乗じて新製品開発にもきちんと気を使った。それだけ努力をした結果です。
一方のパンは私達が若い頃、1980年代までは先進的、健康的なイメージがあったものの、何も努力をせずに古くからのものを作り続けただけ。
新しいことをせずに安直に当時のイメージにおんぶにだっこしていたため、パンの健康イメージが消え始めた。
相対的にパンのイメージが下がったために、和食が見直されるきっかけを作ってしまった。
パン業界が「パンは健康的、ごはんはダイエットに適さない」という盤石なイメージをキープしていれば、ごはんのイメージがこんなに上がることはなかったはずです。
一般の人たちのパンのイメージは、実は昔の残り香のようなものです。
実態は時代の波に取り残されて、「健康とは言えない」ものとの組み合わせで終わってしまっている。
ファッションビルの販売スタッフの感覚はどうも正しいようです。
彼女たちは妙なイメージに惑わされず、実態をそのまま直視している。そのために、パンのイメージがどんどん悪化し、ごはんのイメージが相対的に上昇していることに他なりません。
すると、早晩、イメージがイメージであり、実態とかけ離れていることに気がつく人たちが増えていくことは間違いありません。
それが一般大衆として大きな人口になった時がパン業界の正念場になりそうです。
その前に彼らはどんな手を打てるのでしょうか。
熟成した食パン、新しい食感の食パン開発競争も結構です。ダブルソフトが一気にパンのブランドとして育ったのも業界にとって大切なことです。
しかし、もっともっと大切なことを彼らは忘れているようです。
パンのきちんとした食べ方の提案。
菓子パンや総菜パンの相方の選定。
さっきの「パンとおにぎりを一緒に食べる文化」が一部にでもあるなら、それを利用した商品開発があってもいいかも知れません。
いずれにしても、もっとももっとマジメに考えないと、パン業界の先行きは暗雲が立ちこめる気がします。
余談:和食サンドイッチの試食実験
実はこのメルマガを執筆するに当たって、パンと和風総菜の組み合わせを色々と実験してみました。
パンの相方としてサラダやサーモンなどの洋風「健康イメージ」と組み合わせるのは当たり前です。ヒット商品となるかも知れませんが、何か面白味に欠ける。
アメリカで学生時代に教授の奥さんが日本人で、クリームチーズと明太子をサンドイッチにしたものが意外においしかったので、バカなことをやってみたくなりました。
そこで、スーパーの総菜コーナーに出かけていき、軽い実験をしてみました。和風総菜をトーストに挟んでの試食実験です。
順当なところです。元々、マヨネーズで和えていますから、パンに合うだろうと思っていたら、そのまんまでした。
水っぽいところもパンのパサパサ感を補ってくれて正解。
合いません(泣)
ぼそぼそしておいしくない。天つゆとソースを試してみたのですが、どちらも失格でした。
天むすが合うのだから、これもいいかなという安直さはダメですね(笑)
合わないと言うか、合うというか、ひじきは味が薄すぎて、「どうでもいいや」という組み合わせになってしまいました。
意外や意外。なかなかうまい。
れんこんのシャキシャキ感がトーストとおり混ざって、食感がいい感じです。
醤油の味付けを多少濃くするなどの微調整は必要ですが、ポテンシャルは十分です。
個人的にかなりはまっています (笑)
実験のためにやってみたのですが、今では昼食の常食メニューに格上げです。
焼き鳥のたれがおいしいのでそのままでも十分ですが、私はさらにチーズを乗せ、サラダクリームで酸味を加えて微妙に味付けを整えています。
健康イメージ強化と味の維持なら、酸味系調味料であるアップルビネガーとオリーブオイル(ようするにイタリアンドレッシングです)の組み合わせ十分代役できるでしょう。
しかし…よくよく考えてみると、てりやきバーガーならぬ、てりやきサンドイッチなのでした。味の相性が良いのは当然でした。
でも、「焼き鳥サンドイッチ」「つくねサンドイッチ」は、ハンバーガーショップの持つ「ジャンクフード」イメージがない分、有利な組み合わせであることも確かです。
ただし、ご忠告いたします。間違っても塩でなくタレで食べてください。
興味がおありなら、色々とやってみるのも楽しいです。
私が他に試したのは次のものたちです。結果はあえて書きませんが、「おっ、なかなかいけるやん」というのも中には混じっています。
●シャケ | ●梅干し | ●海苔 | ●海苔の佃煮 |
●たくわん | ●納豆 | ●明太子 | ●筑前煮 |
●高菜 | ●紅ショウガ | ●山菜 | ●なめ茸 |
●おから | ●おでん | ●こうや豆腐 | ●さんまの塩焼き |
●さつま揚げ | ●つくだ煮 | ●肉じゃが | ●キムチ |
●その他たくさん |
【使用画像】週末天然酵母パン倶楽部