artc20130801今回はアマゾンとヤマダ電機(家電量販店)に焦点を当てます。 ネット通販とリアル店舗の比較をメインにしたマーケティング記事です。 前回の記事から約10年。家電量販店は変革したのか。アマゾンの成功要因はなんだったのか。 ちょっと辛口の森流の味付けをお楽しみに。

アマゾン vs 楽天

2013年7月、アマゾンは初めて日本国内市場の売上げを発表しました。 その額7,300億円。 業界は騒然となりました。 というのも、トップの楽天1兆3千億円(流通総額。手数料総額としての売上げは2,858億円)の次、2番目にアマゾンが大きいことが白日の下にさらけ出されてしまったからです。 「うすうすは感じていたけど、やっぱりな…」 が業界のつぶやきです。 もっとも、この金額は正確ではありません。 アマゾンはマーケットプレイスという楽天のような「売る店はアマゾンではないけど、出店業者からマージンを取る」コーナーもありますから、7,300億円のすべてが流通総額ではないからです。 それを勘案すると、アマゾンの流通総額は7,300億円ではなく、1兆1千億円だと主張する試算結果もあります。 いずれにしても、アマゾンが日本で1位または2位の巨大な一角を占めたことが、通販業界が衝撃を受けた理由です。
「いやいや、まだ納得できませんよ。 楽天のあのサイトの見ずらさは異常です。 アマゾンの方がよほどスッキリしていて買いやすい。
しかも、楽天は売り込みメールがひどい。1日何十通も来ます。 メール受信拒否の設定をしているのにかかわらず、来るんです。迷惑メールですよ、まったく。
アマゾンの売上げが少ないというより、楽天の売上げが多すぎる。 誰があんなところで買ってるのか不思議でしょうがないです」
私の友人です。ちなみに、男性です。
「誰が楽天で買っているのか、わからない?」と私。 「わかりませんよ。私の周りはみんな楽天のことをボロカスに言ってます」 「その『周囲の人』に女性はいるかい?」 「え?女性は…いません。それ関係あるんですか?」
そこにバイトのサキちゃんがやってきました。
「サキちゃん、アマゾンと楽天、どっちが好き?」と友人が聞きます。 「楽天です。アマゾンは好きじゃないです」
「ええ?なんで?あんな見にくくて頭が痛くなるようなサイトが? 長い長い商品説明の最後の最後まで画面をスクロールしないと、購入ボタンすら見つからないし…」
「なんで?って、楽しいからですよ。 説明があんなにたくさんあると安心するし、ごちゃごちゃして楽しいじゃないですか。 実際のお店で接客を受けて、説明されているみたいな感じというか。 ドン・キホーテや百円ショップで陳列がごちゃごちゃしているのと同じというか。
購入ボタンなんて、買うかどうかも決めてないのに、最後の方でいいです。 アマゾンは機械的で暖かみがない気がします。 デメリットは送料が高いことかな。でも一定金額以上の買い物なら送料は無料になるし」
「ううむ…」と絶句する友人。 「はい、勝負あり(笑)」と私。 買物に対する価値観の違いで楽天とアマゾンは性格が違います。 買物を楽しもうとする人たち(女性に多い傾向です)は楽天派、目的のものを時間をかけずに手に入れたいという人たち(男性に多い傾向です)はアマゾン派。 さらに言えば、アマゾンは規格を重視する人たち向けのサイト作りになっています。 例えば、この時期に検索キーワードが多い扇風機を比較してみます。 「楽天で一番売れた」と喧伝している「±0(プラスマイナスゼロ)扇風機 リビングファン XQS-V110 スタンドファン サーキュレーター」をピックアップしてみました。 まずは、商品名から違います。 ●アマゾン ±0 プラスマイナスゼロ Stand Fan リビングファン XQS-V110 ●楽天 ±0(プラスマイナスゼロ)扇風機 リビングファン XQS-V110 スタンドファン サーキュレーター アマゾンは正式名称なのでしょう。素っ気ないネーミングです。 一方の楽天では「扇風機」「スタンドファン」「サーキュレーター」と3つのキーワードが追加されています。 楽天では扇風機に詳しくない人でも一目でわかるように「扇風機」の単語が追加されています。 「スタンドファン」はアマゾンでは英語、楽天ではカタカナです。日本人は英語を見ると単なるデザインにしか見えない人が多いので、パッケージデザインでも英語は避けるように私はアドバイスをします。従って、楽天のカタカナはメカに詳しくない人にもやさしい配慮です。 楽天の「サーキュレーター」の追加は商品用途を拡大して伝えています。 artc20130804artc20130805サイトデザインは画像を見てください。 画面を縮小して何枚か並べるだけで、アマゾンはすっきり、楽天はカラフルなのが一目で分かります。 スクロールの量も違います。 アマゾンは4.5回のスクロールで商品ページの最後までたどり着きます。 楽天は写真が大きいせいもありますが、17回もスクロールしないと注文と価格のコーナーにたどり着きません。 そして、情報の順番がアマゾンと楽天の最も大きな差です。 アマゾンは商品画面をクリックすると最初に商品名と価格、商品画像が現れ、次に「商品の仕様(商品スペック)」「製品の特徴」が出てきます。
「【ブランド】 プラスマイナスゼロ 【サイズ】 幅36×奥行き33×高さ72〜90.5cm」
が商品名などの次に目に入る作りです。 artc20130806artc20130807 一方の楽天の商品ページをクリックすると目に飛び込んで来るのは
「人気カラー限定の特別価格。30%オフ」の文字画像。 次に「2011年 楽天年間ランキング受賞 6位」の画像。 そして、「1位入賞ありがとうございます!」の画像。
なんと、商品名すら出てきません。 4枚目の画像でようやく商品名と扇風機であることがかわる画像が出てきます。 その次も楽天はアマゾンと違います。 楽天ではこんなコピーが目に飛び込んできます。
「機能・デザイン・価格のバランス良し! 一部屋に1台欲しい、これぞ有能扇風機」
アマゾンにはありません。 楽天はその後、延々とベネフィットや規格がないまぜとなって、なぜこの商品がいいのか、どこがいいのかを詳しく説明します。 ジャパネットたかたの映像が文字と写真になっているようです。 20行前の私の文章を思い出してください。 アマゾンでは
「【ブランド】 プラスマイナスゼロ 【サイズ】 幅36×奥行き33×高さ72〜90.5cm」
が最初に表示される商品解説なのです。 これは過去記事「プロダクトコーン理論」そのままの違いです。 アマゾンは規格で商品の善し悪しを判断するイノベーター向け、楽天はベネフィットで説得されるアーリーアダプタ向けの通販サイト。 トリアという美容家電(もちろん、女性向けです)をアマゾン式のページから楽天式のページにした途端、売上げが2倍近くになった事例もあります。 情報の内容はまったく同じなのに、です。 さて、アマゾンに関する様々なサイトやニュースを見ていると、このように「楽天 vs アマゾン」という切り口の記事を多く見かけます。 同じネット通販企業ですから、当然と言えば当然です。 しかし、今回は視点をちょっと変えます。 アマゾン vs 家電量販店です、 ネット vs リアルです。
「ここまで延々とアマゾン対楽天の文章を読まされて、いまさらヤマダ電機かよ」
と怒らないでください。 他のブログ記事1本分くらいあるので、おまけということで、ご勘弁を。 さて、ネット vs リアルの視点はアマゾンが日本に登場した時からずっと議論されてきました。 アマゾン(ネット) vs 書店業(リアル)。 アマゾン(ネット) vs CDショップ(リアル)。 アマゾン(電子書籍) vs 出版業(リアル)。 だから、書籍、CDの次のアマゾンの柱、家電量販店にも、この図式でマーケティングを解説しようとする記事にしました。 今までもこの視点の記事はありました。 しかし、今回はある発言が引き金となって、本記事を書こうと思い立ったのです それは、「ネット価格にも対抗します」ヤマダ電機宣言です。 詳しい話はさておいて、記事を進めましょう。

またまた悲鳴を上げる家電量販店

家電量販店が売り上げの減少に悩んでいます。 地デジやエコポイント効果はなくなり、かつてのパソコンやデジカメのような急成長を続ける家電も消滅し、青息吐息です。 約9.5兆円あった家電量販市場が8兆円に縮小してしまったのです。率にして16.5%。 10%以上縮小した市場や企業は構造に大きな問題を抱えている重傷のケースですが、家電市場が8.5兆円から7.5兆円と縮小してしまっているので、そのあおりを食らった格好です。 家電量販店の悲鳴は今回だけではありません。 家庭向けパソコン普及による成長が止まった時から、次の商材を探すまでいつもヒーヒー言っていました。 2000年前半はデジカメでしのぎ、後半は液晶テレビで息を吹き返し、最後はエコポイントとスマートフォンでしのいだのが彼らの実情です。 その結果、業界再編が進み、コジマやソフマップがビックカメラの軍門にくだり、ベスト電器はヤマダ電機に飲み込まれました。 現在の業界の構図は、ヤマダ電機が市場シェア約20%、1兆7千億円でトップ。2位のビックカメラは8千億円でほぼ半分の約10%。エディオン、ヨドバシカメラが7千億円で並んでいます。 問題の不振はヤマダ電機以下トップ4社の売上高が仲良く対前年比6%前後減少したからです。 そんな中、家電量販業界から「アマゾンの価格は、不当廉売には当たらないのか」という不満が上がりました。 ヤマダ電機の山田昇会長は今年7月、
「我々は取引上、厳しい監視の目にさらされている。だがアマゾンは違う。これで公正な競争と言えるのか」
とメディアに語ったとのこと。 この発言には呆れました。 低価格を武器に町の電気屋さんを潰してきたのは、家電量販店ではありませんか。 やった側がやられた側になっただけです。 それをいまさら批判するなんて虫が良すぎるというものです。 因果応報です。 もともと、流通業には低価格分野があり、価格を巡って歴史を繰り返してきました。 スーパーが価格を破壊し個人商店を潰す(主に食品と衣料)。 次にディスカウントストアが台頭。家電量販店、衣料専門量販店、ドン・キホーテや百円ショップもここに入ります。 それらとは別に通販業界が流通市場に参入し(主に下着や収納家具など)、ネット通販(最初は書籍だったのが現在は多分野)に至ったのでした。 それらの交代劇は流通業の構造的な変革です。 家電量販店は変革の波についていけなかっただけです。 家電量販店は勘違いをしてしまったようです。 自分たちが絶対無比の存在であるかのような傲慢な発言。 企業体質が中小企業のまま、不治の病である大企業病にかかってしまったようです。 このままでは、電気屋さんのように淘汰されて立ち行かなくなるだけでしょう。 …と思ったら、矢継ぎ早にヤマダ電機が次の一手を打ちました。 全役員14人の降格と、会長が社長に復帰。 artc20130803ついに
「ヤマダは他社のインターネット価格にも対応で安い! 他店より高い商品がございましたら、ご遠慮なく販売員にお申し付けください」
と店頭ポスターで宣言。 これまではネットの価格を店員に見せても
「ネット価格の値引きは無理です。あちらで買ってください」
と断られてきたのと対照的です。
「アマゾンや楽天と戦いたい。戦って勝つ。これしかない。ネット企業には絶対に負けない」
と2月に副社長が宣言したことばを受けた対応策です。 家電量販店は「ショールーミング」と揶揄され、店頭で実物を見るものの、注文はアマゾンや楽天などのネット通販で行う生活者が増えてきたのも原因の一つです。 ただでさえネット通販に売上げを取られるだけでなく、ネット通販に協力してしまっている。もちろん、見返りはなし。店舗の維持費用と人件費がそっくりただ乗りされている。 怒るのも無理はありません。 ただ、こういった買い方は遙か昔にもありました。 私がパソコンを最初に買った昭和50年初期にも家電量販店で商品を物色し、実際に買うのは圧倒的に安い問屋というマニアも多かったものでした。 特に、照明器具はその傾向が強く、ヤマギワ電気の照明器具専門店の関係者はよくこぼしていたものです。 それを乗り越えてきたのが家電量販店のハズです。

斜陽産業がビジネス源:アマゾンの成功要因1

さて、一方のアマゾンに話を移します。 そもそも、アマゾンは斜陽産業をビジネスの中心にしていました。 言い方が悪いですね。 マーケティングで言うところの成熟産業が彼らのビジネス源です。 アマゾンの最初の柱、書籍は縮小産業。次に手を伸ばしたCDも斜陽業界。 そして3番目の柱になった家電・AV機器も衰退しつつある業界です。 一般に言われる
「アマゾンは商品点数が多くて、探すのが大変な業界を相手にネット特有の検索技術で勝ってきた」
といわれた成功要因は書籍、CDまでの話です。 家電は書籍やCDほどの商品点数があるわけではありません。 日本市場に限って言えば、アマゾンは家電分野で初めて戦略を変更したのです。 しかも、もうひとつポイントがあります。 書籍やCDには「似たようなもの」つまり代替品がメジャーではないという点です。 森行生著「シンプルマーケティング」が欲しければ、「シンプルマーケティング」でなければなりません。似たようなマーケティング本ではいけません。 ヴィレッジシンガースの「亜麻色の髪の乙女」が欲しければ、それでなければいけません。島崎ひとみの「亜麻色の髪の乙女」ではいけないのです。 だからこそ、検索が重要になります。 これが家電ならどうか。 扇風機が欲しければ東芝でも日立でも「似たようなもの」でも代替可能です。 もちろん特定メーカーの特定商品(型番)でなければならない人もいますが、こういう人は多くありません。 大半の人にとっては、「冷蔵庫」「洗濯機」の中から、良さそうなものを選ぶだけ。そうなると、アマゾンの持つ「強力な検索」はさほど重要ではなくなります。 「だから」成熟産業がアマゾンの成功要因なのです。 なぜか。 通販は実物を見ることができません。 従って、従来のカタログ通販でも下着や収納家具などの
「多少失敗してもいいやと思えるもの」 「触らなくても、品質が想像できるもの」
が、そもそもの売れ筋でした。 この中で2番目が大切です。「触らなくても、品質が想像できるもの」とは、たくさんの人が何回も買った経験があり、学習しているもの。つまり成熟産業の商品なのです。 成熟産業を狙い撃ちして成功する構図はプライベートブランド(PB)にも似ています。 スーパーにいけばトップバリュやセブンプレミアムなどのPBが棚に所狭しと並んでいます。 しかし、よくよくひとつひとつを観察していると、マヨネーズ、ハム・ソーセージ、食用油、お菓子など、成熟した業界の商品です。 間違っても、魚醤や味覇(ウェイパー)などの「まだ使ったことがある人の割合が少ない=普及率が低い」商品はありません。 成熟市場での商品には大きな差別優位性がなくなります。 技術的にも商品的にも「似たような商品ばかりになる」。 だから、代替品でもよくなります。

価格が勝負どころの誤解:アマゾンの成功要因2

さて、CDと書籍の2つめまでと今回の家電との大きな違いがもうひとつあります。 それは、「価格が大切な分野だ」ということです。 CDも書籍もアマゾンは品揃えの豊富さや、検索の容易さでユーザーに人気がありましたが、決して価格が安かったからではありませんでした。 アメリカでは書店最大手バーンズ&ノーブルと丁々発止の価格競争を繰り返してきたアマゾンですが、日本では「1,500円以上の注文で送料無料キャンペーン」くらいしか当初は低価格政策をしていませんでした。 送料を無料にしてようやく書店やCDショップと肩を並べることができただけです。価格に関する限り、アマゾンがリアル書店と比較して有利な点はありません。 日本では書籍もCDも再販制度がありますから、むやみに価格は下げられません。それをやってしまったら、出版社や音楽業界から総スカンをくらってしまいます。 実際、アマゾンは今年8月末から学生向けに、書籍購入時に10%のポイント還元を行う「Amazon Studentプログラム」を行っています。 これが日本出版者協議会の会員社51社の逆鱗に触れ、自社商品の除外を求める要望書が提出されました。もし、アマゾンが拒否した場合、出荷停止指示(アマゾンから言えば仕入れができなくなる)もあり得ると警告しているのです。 トイザらスが日本上陸当時、アメリカほど価格を安くしなかったのも、玩具メーカーに配慮したからです。 いえ、言い方を変えます。 玩具メーカーを怒らせて仕入れができなくなるのを恐れたからです。 ところが、書籍やCDと違い、家電には再販制度のようなカベはありません。 メーカーも生活者も安売り競争は家電量販店との歴史で慣れています。 そこに、低価格という武器をひっさげてアマゾンが家電分野に参入しても、誰も違和感を持たないのです。
【注】最近はセブンイレブンの金の食パンのように、PBでありながら普通より価格が高い商品も登場し、ヒットしています。 金の食パンは5枚入りで250円(地域によって6枚だが、容量は同じ)。普通のスーパーで買う食パンより1.5倍近い価格です。 この記事でいうPBはセブンゴールドシリーズのような「新しいタイプのPB」のことではなく、従来タイプの「同じ品質で安い」商品のことを指しています。【注書き終わり】

通販は安心感が大切:アマゾンの成功要因3

書籍やCDが主役だった頃と違う、もう一つの要因があります。 それは、アマゾン自体が持つ安心感、ブランド力です。 通販の世界では安心感は重要な要素です。 生活者にとって、名前も聞いたことがない通販会社に注文するのは勇気がいることです。 事前に銀行に振り込むのでは、本当に商品が届くのかどうかわからない。もしかしたら、お金だけ懐に入れてバックれられるかも知れない。 代引きだから安心という訳にはいきません。 中国の通販会社に薄型テレビを注文したら、大きな板が送られてきただけという実例もあります。 また、iPadを注文したら、外箱の中身は石だったという泣ける話も伝わっています。 代引きでお金を支払ってしまえば、中身を配達員と一緒に確認しない限り、悪意のある詐欺には対抗できません。 最近話題になっている通販の押し売り詐欺だって存在します。 ゆうパックで勝手に商品を送り、たまたま在宅していた奥さんが夫や子供が注文したのだと思い込み、代引きでお金を支払ったものの、実は誰も注文していなかったというからくりです。 怪しい雑誌の後ろに掲載されている怪しい商品の通販広告ページを見てください。
「このペンダントで一気にモテモテになる」 「1週間で10kgもやせるダイエット食品」 「服が透けて見えるメガネ」
などなど、怪しさ全開の広告たち。 3番目はネタとしては古く、笑い話のハズですが、実のところ現在でも
「服が透けて見えるスマートフォン・有料アプリ」
が詐欺だったことがわかって、激怒したユーザーのコメントがグーグルストアのコメント欄にあふれかえっています。いつの時代も誘惑に負けて懲りない人はいるものです。 さて、あなたはこれらの広告になんの疑問も持たずに注文しますか? あ、いや、透視アプリは何の疑問も持たずにお金を支払った人たちでしたね。失礼(笑) ネット通販だろうがリアル通販だろうが、通販会社で最も重要なのは「信頼性」です。 アマゾンが書籍やCDを日本で売り始めた頃は、まだまだ一般の人には「うさんくさい会社」でしたが、成功して知名度が上がった後に展開した家電商品では、そのカベがまったくありません。 artc20130808実は、現在でもアマゾンは決して「最安値」ではありません。 価格comで見るとよく分かります。 例えば、価格comで「シャープのAQUOS LC-32DR9-W [32インチ ホワイト系]」を価格順に見ると(2013年8月6日現在)
1位 90,777円 クラスト
2位 90,777円 アジアンダイレクト
3位 95,560円 アサヒデンキ
4位 96,664円 パソコン卸売り
13位 105,070円 アマゾン(価格comにはなかったので、リストに追加)
15位 129,800円 ヤマダ電機WEB.COM(参考)
アマゾンはというと13位です。最安値との価格差は14,293円もあります。どちらも送料無料です。 普通に考えれば、1万4千円も高いアマゾンは価格で太刀打ちができず、家電販売なんてできる訳がありません。いつ撤退してもおかしくない。 しかし、価格comでのアマゾンのショップランキングを見ると家電で2位、カメラで1位をはじめ、全26カテゴリー中、1位は14カテゴリーで半数以上を占めています。 一方で、上記の例の最安値店は家電のショップランキングで
66位 クラスト
91位 アジアンダイレクト
私たちになじみがある店で見ると、家電のショップランキングで
1位 ヤマダ電機WEB.COM
2位 アマゾン
4位 ビックカメラドットコム
5位 Joshinネットショッピング
7位 ケーズデンキオンラインショップ
8位 ヨドバシ・ドット・コム
9位 コジマネット
ショップランキングを見ると「激安店」ではなく、「有名店(親しみのある店)」に人気が集中していることがよく分かります。 価格comのネットショッピング歴が古い読者なら、2007年に起きた最安値の常連サイト「PCサクセス」が自己破産した事件を生々しく覚えていることでしょう。 PCサクセスの破綻で直前に代金を前払いし、商品を受け取れなかったユーザーが2千人もいて大騒動になりました。 別な言い方をすれば、家電では価格が安いことはアマゾンのマーケティング戦略にとって重要なものの、必ずしも最安値で勝負しなくても良いことにもなります。

その他もろもろ:アマゾンの成功要因4

ほんのちょっとだけ、アマゾンの成功要因を付け加えます。 ●オススメ商品を含めて、個人個人に合ったページが自動的に育成されること ●レビューを充実したこと ●アマゾンの商品をブログなどで広告すると手数料が入るシステムを作ったこと これら3つは一般的にアマゾンの成功要因と言われていますし、私も賛同します。 ただ、これらは今では言われ続けているので、ここでは詳しく説明しません。

もっと安い相手には文句を言わない:ヤマダ電気の言いがかり1

ここからはアマゾンの成功要因が家電量販店にどう影響したのかを見ていきます…と言いたいところですが… あれれ、そうすると、冒頭のヤマダ電機の「アマゾンは普通廉売」主張がちょっと怪しくなってきます。 安値で勝負していた業態はネット通販の遙か昔から存在していました。 問屋販売もそうでしたし、アマゾンが家電に参入する前の激安ショップもヤマダ電機より安い価格で商品を売っていた。 アマゾンが家電に参入したところで、最安値とは言えない。 ヤマダ電機や家電量販店はそれのどこが気に入らないのでしょう。 「アマゾンの価格は、不当廉売には当たらないのか」 と非難する前にクラストやアジアンダイレクトに文句を言うのがスジです。 その答えは、実はもう冒頭に書いています。 家電量販店業界の総額が減ったからです。売上げが下がったからです。 自分たちの努力不足なのに、それを棚に上げて他者に言いがかりをつけているだけ。 音楽業界も市場縮小の原因はネットのダウンロードだと言い張っていましたね、そういえば。生活者調査では「聞きたい曲がない(からCDを買わない)」が大半を占め、ダウンロード防止法で締め付けたものの、市場規模は更に縮小している。 【参考】■亜麻色の髪の乙女【音楽業界】 音楽業界といい、家電量販店といい、古くから甘い汁を吸うことに慣れた業界って、なぜこんなにも他人のせいにしたがるんでしょうか?

実はたいした被害はない:ヤマダ電気の言いがかり2

もうひとつ、からくりがあります。 ヤマダ電機が「アマゾンは不当廉売だ」と騒ぎ始めたのはアマゾンの日本での売上げ額が初めて発表された直後でした。 その金額はというと7,300億円。ヤマダ電機の半分、いや、ヨドバシカメラ1社分の規模です。 PCボンバーのような小さな業者が最安値で低価格を売りにしたところで、痛くもかゆくもない。けれど、うすうすは感じていたものの、いきなり第2位の量販店と同じ規模の会社が登場したのですから、慌てるのは理解できます。 ところが、よくよく考えると、アマゾンの7,300億円の売上げは家電商品だけのものではありません。元々の主力分野である書籍やCDも含めた金額です。これらは、ヤマダ電機や家電量販店としては売上げを奪われる心配もない分野です。 そうすると、アマゾンの家電部門の売上げ額が気になります。 部門別の売上げは発表されていないので、エイヤッと三分の一にしてしまいましょう。 すると、約2,500億円しかないではないですか。 アメリカのアマゾンではメディア(書籍やCD)が売上げの70%、家電およびその他商品(靴やおもちゃなど)が27%だと言われていますから、エイヤッと三分の一でも家電の想定売上げ2,500億円は多いくらいです。 artc20130809さて、その金額はというと、10兆円と言われる家電市場(パソコン等を含む)のたった2%、9.5兆円と言われる家電量販店市場のたかが2%しかシェアがないのがアマゾンです。 ハンバーガー市場で言えばフレッシュネスバーガーあたり、清涼飲料水でいえばダイドードリンコあたり。 とてもではありませんが、普通の感覚ならマクドナルドやコカコーラのようなトップ企業が、そんな小さなところに目くじらを立てる神経は持ち合わせていません。 なあんだ。 結局、ヤマダ電機や家電量販店業界は自分たちの失敗(売上げ減少)を棚に上げて、株主や投資先向けにアピールしているだけです。

アマゾンは家電量販店がうらやましい:ヤマダ電気の言いがかり3

視点を変えてアマゾンから見ると、家電量販店はうらやましい存在です。 だって、家電量販店では実店舗があるので、実物を見て触って、その場で持ち帰ることができるのですから。 アマゾンには到底できない芸当です。 しかも、店員がいるのでいくらでも質問ができて、その場ですぐに回答が帰ってくる。アマゾンでメールのやりとりはできても、メールを書く、返事を待つことから比べたら、何倍も客の負担は少ない。 営業時間が限定されていることや自宅から出られない人にとっては不利ですが、そういった人たちの人口比率はそんなに大きく変化していません。 「まだありますよ」と友人のビジネスマン。 「私は通販はあまり使いません。というか、使うことができません。 だって、自宅にいることが少ないから、商品を受け取ることができないからですもの」 そう。通販の商品を受け取るなら「宅配便用ポスト」があるマンションを選ぶとか、駅の宅配便受け取りポストを使うなどの工夫が必要ですし、余計なコストがかかります。 「不在票が入っていても、夜だから受け取れなかったりして、結局、手に入れるのは数日後なんてことも少なくありません。 即日配送なんて、私にとってはまったく意味がありませんし、実店舗の方が商品を早く手に入れることができるんです」 と彼。 それなのに、ああ、それなのに。 家電量販店は何をしてきたのでしょうか。 過去記事「■不思議な不思議な池袋。東が西武で、西、東武【家電量販店】」では家電量販店が如何にとんでもない商売をしてきたかを書いています。 列記しただけでも、こんなにあります(詳しくは記事をどうぞ)。
【接客関連】 ●客の話をきちんと聞かない店員 ●世の中にそんな商品はないと言い張るが、実は自分の店でその商品を売っていることを知らない店員 ●客にウソをついて放ったらかしにする店員 ●商品があるのに「同じくらいの性能」と偽って低性能の商品を売りつけようとする店員 ●帰ろうとすると後ろから隠し持っていた商品を出す店員
【売り場関連】 ●どこに何があるか分からない店内表示 ●必要最低限である売場の所在を聞こうにも、いない従業員 ●サンプルと商品がまったく違う場所にある売場 ●小さな商品は同じ量販店チェーンでも個店によって売り場が異なる面倒くささ ●在庫切れが当たり前の品揃え
この中のいくつかは現在では改善されています。 言葉遣いはとても丁寧になったし、売り場を聞くと同行して案内してくれる店員も多くなりました。 後述するスピーカー売り場に行ったときも、「どんな機器に接続するのか。パソコンかテレビかiPodか」と客の環境を聞き出し、勧める商品を見極めようとする店員にも遭遇しました。 笑顔はありませんでしたが、飲食と違って、メシが不味くなるわけでもなく、音質が低く聞こえるようになるわけでもないので、気になりません。 しかし、昔とそのままのものが多いのも事実です。 例えば「適当な商品知識で客を誤って誘導する店員」「在庫切れが当たり前の品揃え」など、「悪習慣」は数多く残っています。

価格のウソと幅:ヤマダ電気の言いがかり4

しかも、今回の「他社のインターネット価格にも対応」は、実は限定された価格です。 事前にネットで調べていたので知っていましたが、確認のためにヤマダに行ってみました。価格comに載っていた最安値を見せて交渉してみたのです。 結果は予想どおり
「アマゾンとヨドバシドットコムの価格でないと値引きできないんです。 パネルには『対応』とは書きましたけど、『値引きする』とは書いていないですよね」
とけんもほろろの対応でした。 それなら「他社のインターネット価格にも対応だから安い」というあいまいな表現はかえって客のイメージを悪くするだけです。 もうひとつ、価格に関して現在の家電量販店の問題があります。 家電量販店は価格幅がせまいのです。 友人の中島さんがこう言います。
「この前、テレビ用にスピーカーを買いに行ったんです。 1,000円程度のスピーカーでもそこそこ使えるのは知っていましたので、低価格のものを探しました。
いつもなら、新宿のドスパラというパソコンパーツショップに行くんです。あそこだと下手すると500円のスピーカーとかが見つかるし。あいにくドスパラは新宿と池袋から撤退しちゃったんです。
artc20130809-1そこで、アマゾンをのぞくと、セパレートタイプでAC電源付きでは ●最安値で298円 ●次に安いのが573円 でした。
ところが、渋谷のビックカメラに行ってみると ●最安値は4,980円
4,980円ですよ、森さん。4,980円、4,980円…」
うわごとのように繰り返す中島さん。 確認のため、数日後に中島さんと同じ渋谷ビックカメラの2階に行くと、4,980円の商品は消えていて5,980円が最安値のスピーカーでした(2013年8月16日現在)。 思わず店員にも確認しましたが、セパレートタイプでは5,980円が最安値なのは間違いありませんでした。
「森さん、そりゃそうでしょう。天下のビックカメラですもの。がらくたのような商品を扱うわけにはいかないでしょう。 すぐ壊れるような商品だと苦情や返金の手間がかかってしまうから、責任ある品質の商品を揃えようとすると、高くなるのは当然ですよ」と友人。
いや、そのこと自体は私も同感ですよ。 でもね、アマゾンの573円のスピーカーはバッファローというれっきとした日本のパソコン周辺機器メーカー製です。家電量販店でもバッファローのルーターやキーボードは売れ筋です。 しかし、ビックカメラ2階のスピーカーコーナーには4,980円以下の商品が置いていない。 どういうことなのでしょうか。ビックカメラは「安い家電量販店」ではないのでしょうか。 実は、流通業界の価格戦略には2種類あります。 ひとつは「同じ商品が安いか高いか」。 ずっと家電量販店がメーカーと戦ってきた歴史です。 もうひとつは「品揃えを考えるときの価格帯をどの辺にするか」です。 アパレル業界では東京の店は中価格帯から高価格帯の商品を揃えるけれど、地方都市では物価が安いので、低価格帯から中価格帯を中心に商品を揃えるのが常識です。 現在の家電量販店の品揃えは価格が高い方に寄りすぎているのです。 この傾向はスピーカーだけではありません。 例えば、デジカメでもよく使うSDメモリカード。 家電量販店とパソコンパーツ店では同じ国内メーカー製なら3割〜4割くらいの差しかありません。 例えば、富士フィルム製16GBのSDカード(クラス10)はビックカメラ店頭で3,980円です。パソコンパーツショップのドスパラで2.750円。1.4倍の価格差です。 しかし、パーツショップではA-DATAといった安い台湾メーカー製が売れ筋です。 客がパーツに詳しいユーザーなので、性能や耐久性は国内メーカーとほとんど変わらないことを知っているからです。 問題なのは一方の家電量販店では安いメモリカードは扱っていないことです。 例えば、ドスパラで最安値の16GBクラス10のSDカードはKINGMAX製の980円。渋谷ビックカメラ店頭の最安値は2,480円(サンディスク製。東芝との共同開発でSDカードを最初に開発したメーカーです)。ほぼ2.5倍の価格差なのです。
メーカー 量販店店頭 パーツショップ 価格比
富士フィルム 3,980円 2.750円 1.4倍
最安値商品 2,480円 980円 2.5倍
理由は簡単です。 安い商品を置いてしまうと儲けが減ってしまうからです。 家電量販店では例えばパソコン本体は数%の利益率しかありません。本体だけを売っていたのでは店の維持費も人件費も出ない。 しかし、メモリカード、ハードディスクやルーターなどの周辺機器の利益率は30%もあります。 乱暴に言えば、牛丼などの目玉商品は儲けはほとんど出ないけれど、みそ汁やお新香で儲けを出すようなものです。 その隠れた稼ぎ頭の売値を下げると、同じ30%の利益率でも儲け額が減ってしまう。大問題です。 でも、その結果、家電量販店は「安いものがない安売り店」に成り下がります。 まったく同じことを近くのスーパーで最近体験しました。 恵比寿の松坂屋ストアは競合店が駅前のピーコックしかありませんでした。競争がほとんどないので、郊外住宅地のスーパーより3割ほど高い商品しか置いていません。 同じものが高いのではなく、高い商品しか置いていない。 そこにピーコックが松坂屋ストアを買収しましたが、元々ピーコック自身が安いスーパーではないし、恵比寿地域では独占になったので、むしろ価格が高くなりました。 焼き鳥が98円だったものが徐々に上がり、150円にまでなりました。 今年前半、ピーコックがイオンに買収され、松坂屋ストアもイオングループに統合。その結果、今まで主流だった商品の半額程度のイオンPB(トップバリュ)も追加されるようになりました。 具体的には、100g200円の商品しかなかったソーセージ売り場に半額以下のイオン100g83円のPBが登場。 しばらくして、低価格商品の追加でも利益が出ると判断したのでしょう。 とうとう100g100円のNBも置かれるようになりました。 シャウエッセンなどの価格が高めの有名ブランドはそのまま売られ続けていますが、低価格商品の選択肢が広がったのです。
「そんな安い商品があるなら、はじめから置けよと思っちゃいます」
とシストラットのバイトの弁です。 私は家電量販店はスピーカーコーナーの数十種類ある商品を全部入れ替えろというつもりはありません。店舗面積が限られているリアル店舗では、低価格品ばかりを扱ってしまっては売上げも利益も下がるだけだからです。 しかも、スピーカーに低価格品を求める私のような客ばかりではありません。数十万円もする趣味性の高いスピーカーを求める客や、中間の数万円の商品を欲しがる客もいます。 ただ、その中に低価格品を1種類でも2種類でも取り扱うようにすれば、ずいぶんと印象が違うはずです。客を逃すことも少なくなります。 少なくとも、私や中島さんのように
「品質にはそんなにこだわらないので、安い方がよい」
という客や商品が相当数います。 そこには298円でなくても数百円程度なら、外出ついでに買ってすぐに手に入ることのメリットを感じる客は相当数いるのです。 価格comでもアマゾンは決して安くはないのに、売れていることを思い出してください。

リアル店舗の強みとは:ヤマダ電気の言いがかり4

リアル店舗の強みを生かした例があります。 今年5月。私は自分のパソコンを新調するために秋葉原にパーツを一式買いに行きました。自作でイチから組み立てるためです。一式、約10万円の買い物です。 artc20130809-2訪れたのは秋葉原の九十九(つくも)電機。ここは一度、倒産しましたが、根強い人気があるので復活した店です。 店にはCPU、メモリ、ハードディスク、キーボードがところせましと並んでいます。しかも、隣接する店と併せてパーツを扱うフロアが5つあります。 買う予定のパーツはすでにリストアップしています。 普通ならCPUや電源などのコーナーを回って、部品をカゴに入れてレジに並びます。それはそれで楽しい作業です。買い物の醍醐味が味わえます。 しかし、20点もある部品をすべて回るのでは時間がかかりすぎます。 しかも、CPUやハードディスクなどは私にとってはすでに型番まで決めて買う予定のパーツです。わざわざコーナーに足を運んでカゴにいれる時間と労力は疲れるだけです。 そんな客のために、この店では一式を買う場合は注文用紙に書き込めば、店員さんが全部そろえてくれるサービスがあります。 すでに決めているCPUやブランドにこだわりがないメモリやケーブルは、適当に注文用紙に書き込みます。 一方、セール品や電源などのこだわりがある部品は、コーナーを回って品定めをすればよい。 つまり、買い物の楽しさと買い物の作業の省力化を合体できるサービスです。 その結果、普段なら1時間以上かかる買い物が30分ほどで完了してしまいました。それでも買い物の醍醐味や楽しみは十分味わえます。いや、疲れる作業がない分、満足感は大きい。 加えて、注文用紙をチェックするのは商品知識がバツグンの店員さん。
「このマザーボードにはSATAケーブルが2本しか付属していないので、もう1本必要ですよ」 「このケースには2.5インチのHDDベイがあるから、SSD用の2.5インチ用アダプタはいらないので、注文用紙から外しておきますね」
と逐一アドバイスをくれます。 パソコンを自作する人なら誰でも知っていますが、組み立てる段になって「あ、ネジ忘れた。ケーブルが足りなかった」は日常茶飯事です。 今回の買い物では結局、部品の過不足がまったくなく、半日で新しいパソコンが完成しました。 しかも、余計な買い物をしなくて済み、プラチナ電源のセール品をうまく組み合わせたので、アマゾンより安く済みました。 この例では次の3点があって初めて成り立ちます。
●店員が商品知識をきっちり持っている ●店員が自分の店にどんな商品があるかを知っており、場所も分かっている ●指定商品の在庫があること、または客が納得する代替品を提示できる知識があること
現在の家電量販店にはない条件です。 私の例はパソコンの自作という「人口が少ない」例ですが、普段の商品販売だけでなく、新入学・新社会人フェア、夏や冬の必需品フェアなどいくらでも応用が利く事例です。 そして、最も大切なことは、通販のアマゾンでは不可能な、リアル店舗だけが可能なサービスなのです。

価格が安いことが家電量販店の強みだったのか?いや違う

価格を安くすることは元来の家電量販店の存在理由のひとつですから、とても大切です。 また、家電量販店の社員と話をすると必ず出てくる
「お客さんが求めているのは結局は安さなんです」
も一部当たっています。 だから、「ネット価格の安値に挑戦」は原点に戻る意味もあって、評価できる姿勢です。 でも、今まで見てきたように、客には価格一辺倒だけでない様々なニーズがあります。 いや、家電量販店はそうやって売上げを伸ばしてきたのではありませんか。 ビックカメラやヨドバシカメラのようなカメラ系の量販店は、最初は印画紙や現像液などのマニア向けの商品の販売から始まり、徐々に家電に手を広げてきました。 そこに店員を置き始め商品説明をすることで、従来のマニアから初心者向けに客層を広げていった結果の10兆円産業です。 安さ「だけ」を追求してきた家電問屋や「5つのNO」で有名なステップなどのパソコン激安店は、家電量販店との競争に勝てずに消えていった。 家電量販店の原点とは「価格だけ」ではありません。 いたずらに価格だけを追いかけることは、消えていった激安店と同じ道を歩もうとすることに他なりません。 家電量販店の進化はその「価格以外の何か」を工夫することによって、正常進化になるのだと私は思っています。 そして、そのキーとなるのが「客のニーズです」。 それは決して、丁寧な言葉遣いでもなければ、「ネット価格にも対応だけど、値引きするとは言ってない」という言葉のアヤでもありません。 ましてや、「激安価格」でもありません。 アマゾンは決して家電量販店を侵食したのではありません。 アマゾンが流通企業としての理想を追いかけていっているだけです。 家電量販店は自爆、自滅しただけです。 アマゾンがいなくても遅かれ早かれ、どこかの企業に浸食されていく運命だった。 アマゾンは確かに驚異です。 でも、まだ2%のシェアしかありません。 家電量販店が本気になんとかしようとするなら、まだまだ間に合います。 私ですか? できれば日本で一部の税金しか支払わないアマゾンで買うより、日本の企業で買ってあげたいと思っています。 加えて、楽天のごちゃごちゃレイアウトや迷惑メールは私にとって避けたい事柄です。 高校時代のカメラ部の時から家電量販店は私の行きつけのお店でした。 マッキントッシュの知識がとんでもなく豊富な店員がいた渋谷ビックカメラからは、会社用のマックを数百万円も買っていた過去もあります。 でも、現在では2ヶ月前にもらったビックカメラの3万円分の商品券は、まだ千円分しか使っていません。しかも、老眼鏡を買った時の支払いです。 まだまだアマゾンのお世話になりそうです。