「肩の力を抜いて自然体」で接する
「私はこう見る」で「自己啓発シリーズ」と裏で銘打った記事を今までいくつかお届けしてきました。「時間管理」「パーソナル・アイデンティティ」がそれに当たります。
しかし、私はあくまでもマーケティングが本業なので、そろそろこの路線のネタがつきかけているのが本音です。これ以上続けようとすると、「プレゼンテーションの仕方」や「企画書の書き方」のような分野を取り上げないといけなくなっています。
今回は、その中でも皆さんが最も関心が高いだろうテーマ、人脈についての記事です。
このテーマが最後の方になった理由は簡単です。皆さんに胸を張って、「森流の方法です」といえるものがないからです。
時間管理やコスト意識は意識的に努力している私ですが、こと人が相手の人脈となると、それが通用しないことがわかっています。特に、30才を越すと、人と知り合うことを意識すればするほど、あざとくなったり下心が見えてきますから、妙な努力はいいことなんてひとつもありません。
ですから、私は若いうちから人間関係については「肩の力を抜いて自然体」で接するようにしてきました。それだけに、
「どうしたら人脈は増えますか?」と聞かれても
「自分を磨いて魅力的な人間になることしか思いつきません」
としか答えようがないのが実情です。
逆にいえば、
「人脈が増えないのは自分の魅力が足りないからだ。だから、もっと勉強しよう」
という遠回りの道をずっと歩んできました。
こんな私ですが、今回は人脈をどうやったら増やせるかという大命題を意識しながらも、人脈をどう見るか、自分にとって人脈とはどう理解するのか等の視点を中心に、オムニバス形式でお話を進めます。
サブ・テーマは次の4つです。
●自分の人脈を切り分けられますか?
●知り合いの数は十分ですか?
●間接人脈の素をつかむ
●色々な価値観に触れよう
【自分の人脈を切り分けられますか?】
有名な人を知っているというだけで偉くなる心理
この章では、組織の人脈が多いことを批判しているわけではありません。
仕事をする上で、組織の人脈は大切だからです。フルに利用するに越したことはありません。
問題なのは、自分の人脈を切り分ける冷静な目を持っているかどうかなのです。
社会人になると、いくつもの「客観的な偉さの基準」に遭遇します。所属している企業の社会的ステータス、その企業での役職、年収等、様々です。
良く見かけるのは、有名人が知り合いにいると、その人が「偉く」なってしまうケースです。新人アルバイトが私の年賀状を整理すると、必ず「森さん、●●さんや▼▼さんと知り合いなんですか。すごいですねぇ」と感心されます。その時まで私の「偉さ」に気がつかなかったといわんばかりです(笑)
だからなのか、中年男性の中には、初めて出会うと「誰々さん、知ってます?」「『あの人』は私、知り合いなんです」のように、人の話しかしない(できない?)方も多く見かけます。心理学でいうところの「ハロー効果(七光り効果)」です。
一匹狼なので、固有名詞に興味が薄い私にとっては、困ってしまう話題です。
その人が得意げに話をしている「知り合い」が宇多田ヒカルのように「超」がつく有名人なら、まだ相づちも打てますが、文化人となるとからっきしです。
マーケティング業界で有名(らしい)人の話題を出されて、
「ごめんなさい。私、その人知らないんです」というと、
「お前、本当にコンサルタントか?」
という目で見られてしまって困ることも多いのです。
一方で「■■理論」というと「あ、あれね」とすぐに頭に浮かびます。
ところが、そういう「人を知っている自慢」をする人に限って、
「■■理論を提唱された方ですよね、確か」と聞いても
「その辺は門外漢なので、私は良く分かりませんが、ほら、あの有名な人ですよ、知らないんですか、森さん。マーケティング業界の方は『みんな』知ってますよ」
と切り返されるから、たまりません。
「ごめんなさい。勉強不足なものだから」
と謝って、ほうほうのていでその場から逃げることになります。
そんな訳なので、以前在籍していたコンサルタント会社の同僚の本が本棚にあるクセに、そして、「この本は面白い」と周囲にすすめているクセに、彼が著者だったことを久しぶりに会って初めて知るという恥をかくことなります。
また、私の本を初めて会うクライアントに渡すときも、著者略歴から眼を通す人が実に多いことを知り、びっくりすることになります。
とはいうものの、このビジネスで飯を食っているわけですから、いわゆる人脈と呼ばれる存在は他の43才のビジネスマンと比べれば多いのは事実です。
例えば、私が貰った名刺は書類用のバインダー3冊に約3,500枚収納されています。
私は1年に1回、名刺を整理して、その年に貰った顔を思い出すことができない人を除いて1/3くらいに減らして収納するので、単純計算で約1万人以上の名刺を受け取って、渡したことになります。
また、年賀状は毎年2,500枚出します。
そのほか、名刺や年賀状とは無縁だけど、連絡がすぐに取れて色々と交流がある人たちもいます。彼ら、彼女らはビジネス世界とは毛色が違うのが特徴です。
学生、DJ、彫金職人、小説家、歌手・俳優・お笑い芸人、警察・やくざ、風俗嬢など様々な分野に散らばっています。このメールマガジンの記事を書くに当たって情報提供をお願いした人も数多くいます。
正直に告白すれば、私も若いときはミーハーでしたから、「偉くなる人」の気持ちもわからないわけではありません。
例えば、仕事でテレビ局に行って、アイドルに会わせてくれると聞いて最初は喜んだりもしたものです(ただ、夜の酒の場でマネジャーが(気をきかせて?)その子だけを残して帰ってしまったり、私に妙な耳打ちしたりするのにはホトホト参りました。危うく相手の手に乗ってしまいそうになったこともありました)。
しかし「知ッテルおじさん」とまったく逆に、今は「その人物の内容」以外に興味はありません。有名な人や周囲がうらやましがる人(例えばモデル、タレント、外人)にそれなりの数を会っていると、学習効果があるようです。他人の評価やイメージと私の本人に対する評価はまったく独立したものということがわかってきたからでしょう。
ですから、名刺の数も「集めた」というより「気がついたら集まっていた」という方が当たっています。
【自分の人脈を切り分けられますか?】
その会社を辞めたら、どれくらい人脈が残るだろうか
「だって、森さんは一流大企業に10年もいたのだから知り合う人が多いのは当たり前ですよ」
と言われます。でも、大企業にいた時にもらった名刺でバインダーに残っているのは、3,500枚のうちのわずか10%程度です。残りは捨ててしまいました。
人との付き合いなんてそんなものだからです。
確かに、私は従業員数万人、売上高数兆円の企業にいました。しかも、ある部門の責任者でした。だから、どこへ行っても「すごいんですね」という評価をもらいます。また、そんな企業だから、外部の広告代理店や調査会社はチヤホヤとまではいかずとも、敬意をきちんと表してくれます。
その会社を退社する時、そのうち10%が残れば上出来だという予想をしていました。
というのも、彼らは「森」ではなく「●●(株)の森」と付き合っていたからです。前半のタイトルがなくなれば私と付き合う意味がなくなります。
案の定、10%の予想に対して15%程度が残りました。
次の外資系企業は規模は小さいとはいえ、その業界ではトップ企業でしたし、一般の主婦でも知っている会社なので、似たような状態でした。だから、その会社を辞めた時には、予想15%に対して20%が残りました。
最後に、シストラット設立で、残ったのが予想20%に対して30%弱。
大企業から独立して失敗する典型例はいくつかありますが、その内のトップ3に入るのが、この「人脈の測定ミス」です。独立する人間もバカではありませんから、独立の時には100%が確保できるとは思いません。しかし、「5割はいくらなんでも残るだろう。うまくいけば8割はなんとかなるかも知れない」と根拠なく思い込みます。しかしフタを開けてみると10~15%が関の山。当てが大きく外れてしまうのです。
大企業でなくても「人脈測定ミス」は生じます。
新しい会社は1年後には70%が倒産します。3年後には20%。5年後は5%。つまり、新会社の95%は最初の5年間に消滅してしまいます。
1年で倒産してしまう理由は様々ですが、独立前の人脈に頼り過ぎていたというケースも目立ちます。
独立するときの大半は、それまでの付き合いで仕事をもらったり売上げを見込みます。また、実際に独立するとそういった付き合い先から仕事が舞い込みます。しかし、これらは「ご祝儀仕事」「付き合い仕事」です。すぐに、注文が途絶えてしまいます。
普通の人脈を持った人で1年程度しかもちません。厚い人でも3年が限度。だから、3年以内に90%が消滅するという訳です。
結局、独立前の後ろ盾も何もない自分を気に入って、仕事を発注してくれるお客さんをどれだけ掴むかが独立成功の分かれ目の一つと言って良いでしょう。
私が以前在籍していたコンサルタント会社の後輩に若干27才で独立した人間がいました。ある人から独立をすすめられ、その際は自分の会社から最低年間2,000万円は仕事を出すとの約束でした。しかし、いざ独立してみたら、彼からの仕事は最初の30万円だけ。それも、後輩が「約束と違う」と文句をさんざん言ったあげくの仕事です。「あれは社交辞令なんだから、それをまともに信じるお前が悪い」とまで言われたそうです。
結局、私から彼に仕事を意識的に発注。彼の会社維持に最低限必要な金額を聞き、
「よし、今年は最低このうち80%までは仕事を出すから、後は自分の営業努力でがんばれ。ただし、私もいつまでもこの会社にいるかわからないから、それまでに何とか自分のクライアントを見つけろ」
と指示をしたこともありました。
今、彼は従業員20人を抱えて頑張っています。
たまたま、分かりやすい例として独立を上げましたが、基本はビジネスマン、OLとも変わりありません。
その気がなくても、「もし独立するとすれば、どれくらいの人が私についてくれるだろう」と考えてみるのもおもしろいかも知れません。
【知り合いの数は十分ですか?】
数を計算してみよう
この章では、「量」を視点に人脈を見てみました。
さて、付き合いや知り合いはどれくらい広げられるのでしょうか。また、どれだけ広げたらいいのでしょうか。広げすぎると付き合いが浅くなりそうな気がするし、狭いと自分が狭い人間になって、考え方や見方が広がらない気がする。
目安なんていうものは基本的にはありません。
100人の知人で一杯という人もいれば、1万人、いやそれ以上欲しいという人もいます。
ただ、考える尺度がない訳ではありません。
ちょっとご紹介します。
■自問自答 |
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まず、自問自答します。
この場合の「新しい人」とは
相手と考えれば結構です。
営業職などに従事している方は、仕事先で知り合う人を計算しても結構ですが、プライベートで計算してみることをおすすめします。
ゼロという人もいるでしょう。
そんな場合は、
と数えてください。
1週間に2人は私の経験での大体平均的な数字です。ただし、30代半ばまでの人に限ります。
■20年間で出会う人を計算する |
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すると、1年間は52週間ですから、
暗算が面倒ですから、年間100人としましょう。
物心がつきはじめるのが12才として、それからの20年間、つまり32才までに出会う人は
この人数が多いか少ないかを考えれば良いのです。
■多い・少ないの判断基準を探す |
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ピンと来ないですか?
では、下の数字と比較してみてください。
例えば1,500人ということなら、自分の出身校と同じくらいの人数を20年間で知り合うのです。さて、多いですか、少ないですか?
首都圏に住んでいる人なら
2,000人÷1,200万人=0.017%
さて、多いですか、少ないですか?
【知り合いの数は十分ですか?】
身近な数字に置き換えてみるのもひとつの手
●それでもピンと来ない?
うーん。だったら、こんな計算をしてみましょう。
例えば、あなたが女性だとします。
「あなたは一般的に男性何人に1人くらいの割合で『恋愛対象として、お付き合いしてもいいかな』と思いますか」
答えにくかったら、現在の職場やバイト先などで、その時に何人男性がいたか。そして、そのうち、何人くらいなら付き合っても良いと考えるかを想像してみてください。未既婚は問いません。
コツは、男性が30人以上いるところで考えることです。シストラットのように男性が私ひとりでは、スタッフの答えは「ゼロ」になってしまうので、計算の意味がなくなってしまいます。
参考までに今まで私が質問した相手の平均は次のとおりです。
●学生 「3人に1人」~「10人に1人」
●OL 「25人に1人」~「30人に1人」
好奇心が強い、人を見る目がまだ定まっていない若い人の方が、高率なのが興味深い現象です。
2,000人のうち、あなたは女性ですから女性の知り合いが多いことでしょう。
仮に、6:4の男女比とします。
すると、2,000人のうち、男性は800人になります。
さて、先ほど、あなたは30人に1人となら付き合ってもいいと言いましたので、男性もあなたと同じ割合で女性を見るとしましょう。
すると、お互いが「付き合ってもいい」と思う確率は
1/30×1/30=1/900
つまり、32才までに900人の男性と出会って初めて1人、そういう恋愛ができるということを意味します。
先ほどの計算では、あなたが出会う男性の数は32才までに800人。
1回の恋愛分にも満たない人数です。
さて、2,000人に出会うことは多いですか、少ないですか。
これまでの3つの計算で、2、000人が多いと感じた人はそのままの生活で良いでしょう。
少ない、と感じるなら、その人数を増やす努力や工夫をしなければなりません。
ちなみに、実生活ではそれよりも恋愛の数が多い人もたくさんいます。
なぜなら「人間は自分を好きな人を好きになる」傾向があるからです。心理学では「好意の互恵性」という概念です。考えようによっては「軽い妥協」ともいえますが。
【間接人脈の素をつかむ】
人脈を広げるコツ
では、どうやったら、友だちの輪が広がるのか。
知り合いの数は
です。
出会う数がいくら多くても歩留まりが低ければ、知り合いとして残りません。歩留まりゼロなら、知り合いゼロです。
この歩留まりは「あなたの魅力度」です。
出会う相手にとって、あなたがどうでも良い人なら、出会っておしまいです。その後は何もありません。だから、「自分の魅力を上げること」は大切なのです。
とはいうものの、言うほど簡単ではありません。また、このメールマガジンで「こうしたら魅力度アップ!」という記事を書くこともできません。せいぜいが、「いろんな見方ができる柔軟性を身につけましょう」という程度です。
ただし、コツがないわけではありません。
人脈には2つの種類があります。1つは直接人脈。つまり、あなたが直接知っている人たちのことです。
もうひとつは間接人脈です。つまり「友だちの友だちは、皆友だちだ」です。
例えば、あなたが芸能界に詳しい人物を探そうとします。でも、自分の直接の知り合いにはそんな人はいない。その時に、芸能界に明るい人物の知り合いなら、彼に人を紹介してくれるよう頼むことができます。それはあたかもあなたが直接知り合っているようなものです。
もし彼に5,000人の人脈があるとすれば、あなたはその人1人と知り合うことで一気に5,000人の味方をつけたのと同じになるのです。
5,000人に対して「自分の魅力度」を上げるのはかなり大変な作業と努力ですが、1人ならできない相談ではありません。そんな「間接人脈の素」を何人つかんでいるか、が勝負の分かれ道なのです。
ただし、3つだけ気をつけてください。
1つは、間接人脈は「あなた」→「知り合い」→「知り合い」で打ち止めです。
それ以上は赤の他人です。
2つめは、間接人脈といっても得意、不得意分野があることをきちんと理解することです。ホワイトカラー同士の知り合いをいくら集めても、ホワイトカラーです。当たり前と言えば当たり前ですが、意外に勘違いをして満足している人も多々見受けられます。
例えば、私はある病院の看護婦さん達に知り合いが多いのですが、彼女たちは私の顔を見ると「男の子を紹介して」と口癖のように言います。ところが、40代にもなると彼女たちに釣り合う年齢の未婚男性に知り合いが極端に少なくなります。
しかも、「上半身と下半身は別人格」という人も男女問わず存在します。男女間のトラブルは紹介者としても避けたいので、間接人脈は使いにくい。少ない手持ちの候補を何人か紹介したものの、すぐに底がつきてしまいました。
20代前半の彼女たちから見れば、私は絶好の間接人脈の素ですが、そういった目的には「使えないオヤジ」に成り下がります。
3番目は間接人脈の素の1人を掴むといっても、「5,000人より簡単」というだけです。比較論であって絶対値ではありません。あくまでもあなたの魅力度が左右することを忘れてはいけません。特に、1,000人単位での人脈を持つ人は人を見る目が肥えています。なまじの下心で近づいて落とせる相手ではありません。
【間接人脈の素をつかむ】
「素」の立場から言えば
このメールマガジンの読者の平均層は30代ですから、皆さんにとっては私は「間接人脈の素」の立場になるのかと思います。本当は50代、60代でないと厚みが出てこないのですが、とりあえず私が素、という前提でお話を進めます。
私が30代前半の頃に異業種交流会が流行りました。
妙な縁で、ある異業種交流会の主催者と知り合い、私は「スーパーサラリーマン」として持ち上げられ、その会の目玉に祭り上げられることになりました。
とはいうものの、私の実質的な役割は情報タワーのようなものです。
交流会に来ている参加者は99%は20代の若いビジネスマンとOLさん。
勉強会があるわけでもない、どちらかというと出会い系のような異業種交流会でした。立食のパーティ会場で、気が向いた人たちと話をする。そんなシステムです。
それでも、参加者の中には問題意識が高い人がいます。
「こんなことを知っている人を探しているんだけど、こんな分野についての話が聞きたいのだけど、誰か知りませんか」
と主催者にひっきりなしに参加者から訪ねられます。彼は、参加者の中に思い当たる相手がいないと、すべて私に振ってきます。
だから、会に参加すると大変です。食事ができるのは最初の5分間だけ。後はずっとそんな人たちへの対応で追われます。しかも、ある人と話していると10分もしないうちに主催者が次の人を連れて待っている有様です。仕方がないので名刺を渡し、「もっと話が聞きたいなら連絡してください」と、謝ることになります。
結局、3時間で20人近い人の相談を受けることになります。
また、それが評判を呼び、他の会からも依頼がくる。
一時期は毎週のようにそういった会に呼ばれることになったものです。
そんな中で出会った人は約1,000人。そのうち700~800人くらいの人が後で連絡をしてきました。約束ですから、きちんと会ってアドバイスをしたりもします。しかし、それ以上の私の責任に関わること(例えば人を紹介する等)でフォローしたのは、そのうちの20人くらいでした。率にして3%。
「こいつなら、見込みがある」という人間だけです。
さすがの私も24時間しかありません。全員を最後まで面倒見る時間はありません。
また、人の紹介は私にしては珍しく「場合によっては減るもの」と捉えていますので、滅多なことでは他人を紹介することはありません。
というのも、AさんをBさんに紹介するということは、それぞれの人たちが私を値踏みしているようなものだからです。
「なぁんだ。森さんの知り合いって大した人物じゃないよね」
等と思われたら、私が信用を失います。
また、紹介した人間同士が喧嘩したとなると、両方から恨まれるのは必至です。
もちろん、逆に紹介した人物が実は高い能力の持ち主なら私の株は上がります。つまり、人を紹介するということは、私の「人を見る目」が試されているということに他なりません。そんなプレッシャーを感じてまで身を削るに値する人間にしか、自分の知り合いは公開しません。
ちなみに、上記の異業種交流会で出会った中には頑張った人も出現します。
若干21才の学生で会社を設立した女性もそのひとりです。彼女は25才までに年商14億円の企業に育て上げました。
【色々な価値観に触れよう】
偏った自分にならないために
自分と同じような立場のサラリーマンと何1,000人会っても、結局はサラリーマンの中の価値観のバリエーションに過ぎません。それでは、自分のものの見方が広がりません。
人脈のメリットのひとつは「自分の視野を広げる」ということなのですから。
特に私のようなコンサルタントを職業にしている人間にとって、普段の情報収集は宝石より大事なものです。そんな時、ビジネスマンやOLにしか知り合いがいないのでは偏ったものの見方しかできません。これでは、コンサルタント失格です。
商品のターゲットはホワイトカラーだけではないからです。
MBAを卒業して、理論をきっちり勉強しているものの、実際の知り合いは会社の同僚、クライアントというのではコンサルタントとして片輪です。数字の裏には血の通った人間がいるというのに、その人間の息吹を感じられずに、数字だけをいくら統計解析手法、多変量解析をかけようが、「人形作って、魂入れず」になってしまうからです。
一般の方でも同じです。
読者の中にも自分の特殊な環境が当たり前になっているので、世の中すべての人間がそういうものだという勘違いをしてしまう人が少なからずいます。
いや、学生さんなら人生経験が少ないので仕方がありません。これから学べば良いのです。また、30代、40代でもちよっとした勘違いもありますし、人間は自分の環境に慣れるのが能力の一つですから些細なことで目くじらを立てるつもりはありません。
問題なのはその「当たり前」を人に押しつけようとする人たちです。しかも、30代、40代といった「大の大人」です。彼らの「勘違い」は私個人への批判という形になって現れてきます。
特に、
●「(私が)偏り過ぎていている」
●「企業から金を貰っているのではないか」
などの明らかに攻撃を意味する単語が含まれているのが特徴です。そして、その大半が理由を書いていないか、あったとしても
「なぜなら、私はそう思わないからです」
しか書いていません。
「自分が理解しないことはすべて間違っている」と言わんばかりです(笑)
メールマガジンなら、読者の声の「ちょうど良い反面教師」の材料にさせて貰っているので、私には大きなメリットがあります。でも、この人たちの部下はかわいそうです。さぞかしストレスが溜っていることでしょう。
自分が部下を持つ身になった時にそうならないためにも、色々な環境、職業、考え方を持った人たちとの交流をしたいものです。
いや、ビジネスだけではありません。自分のものの見方が狭いと、知り合う人も限られます。
もしかしたら、本当に自分に合った恋人がちょっと目を開くと見つかるかも知れません。
自分が悩んでいる時に良いアドバイスをしてくれる人が見つかるかも知れません。
はたまた、自分の子どもの教育に役立つかも知れません。
メリットは個々人で違いますが、広いものの見方をして損したという話は聞きません。逆のケースは多いですが。
「自分と同じビジネスマンと交流するのも大変なのに、そんな人たちとどうやって知り合うの?」
と良く聞かれますが、意識して知り合ったわけではありませんので、どうにも答えようがないのが正直なところです。
そこで、この記事を書くに当たって、何人かの人たちに聞きました。
ここでは、意識的に男性の「恋人にしたい、してみたい職業」トップテンの常連を上げてみました(笑)
まず、知り合って5年になる風俗嬢(ちなみに、彼女とは男女関係はありません。念のため(笑))
お客さんで出会って友だちになった2人のうちの1人です。
風俗の仕事をしていて『下心がない』というのは『この仕事についている人間をバカにしていない』、『店外デートやプライベートに持ち込もうというあざとさがない』ということです。
内容は恋人つまりプライベートを錯覚して貰うことですが、私たちはそれを仕事としてやっています。
森さんは私たちを仕事人として、そして1人の人間として接してくれるんです。
だから、最初に食事に誘ったのは森さんではなく、私ですよね」
同様のことは看護婦さんやスチュワーデスからも言われました。
だから、一旦外に出ると、看護婦という職業は隠しています。
森さんはその点、『人』を見てくれるから安心なんです」
ここでのポイントは「職業など、その人の二次的な属性に偏見がない」と「その職業ついてから知り合ったのではない」という点です。この2つは同じ事を言っているに過ぎません。
「二次的な属性に偏見がない」のは先の風俗嬢が語ってくれましたが、男性の皆さんなら一度は名前を聞いたことがあるAV女優も痴漢常習犯(?)も、そのことを私に教えてくれるのは、私なら今までと同じような付き合い方をするだろうから安心だ、という意味のことを言っていました。
先ほど上げた14億円企業の女性社長とは、彼女が学生のときに知り合いました。
また、当のAV女優も私と知り合った後にその世界に入った女性です。DJもレーサーも痴漢常習犯も、彼らがその職業につく前から知っていた人たちです。
だから、結果的に付き合いの幅が広がっていたというのが本音なのです。
実は、冒頭でお話した「知ッテルおじさん」と逆の感覚を持っているのは、こういうところでメリットが発揮されるのです。
これらのものの見方は努力したわけではありません。
例えば、アメリカにいたときに肌の色が黄色いというだけで、「Yellow Dog」と呼ばれてバカにされたり、最初の会社が古い体質の大企業だったので、社外では会社名を言うだけで「こんな人」というラベリングをつけられるのがイヤだった。そんな経験が染み付いているのでしょう。
「え?」と思うかも知れませんが、自分とまったく違う世界の人たちとは多い少ないの差はあれど、皆さんも生活の中で必ず出会っています。ただ、そのチャンスやチャンスの芽を自分で見逃していることが多い、というだけです。
万物皆是我師也
人脈ということばは実はあまり好きではありません。
鉱脈、金脈、水脈など、無機質なもののことばに近いからなのでしょうか。それとも、文中にあるように、私は「気がついたら知り合っていた」だけで、「知り合おう」という意識がないからなのでしょうか。
でも、ことばはどうあれ、私は知り合いから様々な影響を受けて、今の自分があります。そして、これからも影響を受け続けて人として成長するのでしょう。
私もまた、自分が知り合った人に何らかの影響を与えていくのでしょう。
「万物皆是我師也」(すべてのモノから学ぶことができる)は私の好きなことばですが、これが一番表れているのが「人との関わり合い」なのかも知れません。