先ほどは「例えば」というところから、若干普遍性に欠ける話題になってしまったので、今度はもう少し「まとも(?)」な話をしましょう。
コンサルタントの業務の細かい話は別な機会に詳しくお話するとして、これを読んでいる方々が多少の知識を持っていることを前提に話を進めていきます。
論理性と感性
最も重要な資質は論理性と感性です。
ここでいう論理性とは、物事を幾つかの要因に分けて、それぞれのつながりを解き明かす力のことを言います。
何故キリン・ラガーが売れないのか。
「イメージが悪かったから」というだけでは論理的ではありません。
キリン・ラガーが持つ売れる要素、売れない要素を列記し、それぞれに優先順位と影響の割合を示し、時には主原因と副原因に分割して玉突き式のように影響の方向性を示す。そして、その中で「最も影響を与えているのが」イメージであるというような結論をきちんと導き出す力。これが論理性です。
もっと言えば、イメージが悪いと何故いけないのか。生活者にどういう影響を及ぼすからいけないのか。そして、その悪いイメージはどのようにして生活者の頭の中に形成されたのか。これらが順を追ってきちんと説明できること。これがまず、コンサルタントに求められる「論理性」です。
そう。実はこれらのことをちゃんと説明するためには、マーケティングの知識だけではなく、心理学や社会学、時には記号学等の知識が必要となります。
だから、「コンサルタントの論理性」は、例えば法曹関係者の論理性と異なり、広い分野での知識を基盤にした概念なのです。
戦略策定には感性も必要
さて、ここまでは単なる現状認識に過ぎません。
現状が分かれば、それを回避する…というだけで問題が解決するとは限りません。
「イメージが悪いから直しましょう」というだけではコンサルタントの提言になりません。
「どうしたら、(最も効率良く)イメージが直るのか」までを考えなけれは、無責任な発言で終わってしまうからです。
医者が「血糖値が高いから、低くしましょう」というだけでは、患者はどうすれば良いのかわからないのと同じです。どういう食事をとれば良いのか、どういう生活をすれば血糖値が下がるのかを教えてくれて、初めて医者という職業が成立するのと同じだと思って頂ければ結構です。
そのためには、論理性とともに感性、つまりクリエイティブ能力が必要になります。
例えば、戦略策定は「これからどうする」の視点が大事ですから、現状認識(論理性)だけでは通用しません。
戦略を煮詰めたコンセプトの段階になると、もっとその必要性が明確になります。
例えば、どういうコンセプトで進めたら良いか、等はコピーライターの資質が必要となるのです。
ただし、忘れてはいけないのは、コンサルタントはあくまでもクリエイターではないということです。デザインやネーミング、はたまた広告クリエイターが仕事がしやすいように(つまり、イメージしやすいように)、方向付けをするのが責務なのです。
余計な事をするなとか、セクショナリズムをかざしているわけでもありません。要するに、彼らプロフェッショナルの能力を信じ、あくまでも彼らが神経を集中できるように領域を提示してあげることがコンサルタントの能力だし、デザインなどの素人が口をはさんでは、いいものができない、と言っているのです。
そして、そのコンセプト等のクリエイティブ領域は「何故その方向性が有効なのか」をベースに作らなければならないし、それをクライアントに対しても説明できなければなりません。従って論理性はこの段階においても必要なことなのです。
従って、論理性65%、クリエイティブ能力35%がベスト・バランスです。
ちなみに、実務経験がないコンサルタントは酸味のない酢豚のようなものだと私が良く言うのも、「どうすべきか」という視点がないままコンサルテーションをしているからです。
(まだまだ、次回に続く(笑))