■コンサルタントになるには-その1:コンサルタントの種類と仕事内容編【コンサルタント】

コンサルタントの光と影

コンサルタント・・なんて甘美な響きでしょう。
難問もたちまちの内に解決する。
知識の宝庫。
腕を一振りすれば、バラ色の経営が待っている。
まるで魔法使いのような、神聖で怪しげな存在。

…なんて思っている人は、ここの読者にはいませんよね (笑)
当の私だって、思ってもいないのですから (^^;

それより、こんな声も良く聞きます。
胡散臭い。
口先だけはうまい。
コンサルではなく、「今猿」(過去の顧客へ提出した報告書のクライアント名だけを書き直した<猿まね>。報告書を数千万円で売りつける)。
理屈だけで使いものにならない。

ある弁護士の主催する弁護士学校ホーページの掲示板で、主催者から「こんなのどうですか?」とシストラットのページを紹介していただきました。彼は私の知り合いでも何でもありません。
しかし、一人のアクティブ・ユーザーから上のような反応が返ってきた途端、シストラットそっちのけで、コンサルタントに対する不満や罵詈雑言が続いたという実例もありました。

それでも、コンサルタントという職業に対して夢を持っている人も多いことは否定しません。
学生さんの人気就職先のひとつが外資系のコンサルタント企業ですし、「子供に就職させたい企業のトップテン」にコンサルタント企業トップのマッキンゼーが入っていました。
第一、私の会社に仕事を依頼してくるクライアント企業が存在するということ自体、コンサルタントのイメージは悪いだけではなさそうです。

裏と表の顔やイメージ。
その原因のひとつが、コンサルタントという職業の全貌が隠れているからでもあります。
未知の存在に対する人間の感情は、好奇と恐怖のないまぜになったものです。
そして情報というものは、あいまいで悪いものの方が面白いし、伝わりやすい性質を持っています。社会学の基本の一つです。
想像をあたかも事実のように言う人も多いですし、実際にひどいコンサルタントもいますから、それがどんどんと膨らむ。

コンサルタントが陰に隠れた存在であるのは、仕方がないことでもあります。守秘義務があるので、クライアント企業名やプロジェクト内容を公表できないからです。
黒子に徹しなければならないのが宿命。

以前、日産自動車のヒットモデルBe-1を作ったと公言したコンサルタントがいて、雑誌や新聞で話題になったことがあります。しかし、当の日産は「彼に仕事を依頼した覚えはない。広告代理店に頼んだのだ」と宣言。結局、彼にコンサルティングを依頼する企業がどこにもいなくなってしまった。そんな実例もあるくらいです。

ルールを無視したコンサルタントは排除される。
厳然とした掟ですし、だからこそコンサルタントは世間に知られることがない忍者のような存在になってしまっています。

とはいうものの、先日、私が皆さんにお願いした「読んでみたいテーマ」アンケートのトップが「コンサルタントになるには」でした。
そこで、「排除されない範囲 」で、コンサルタントの実状をちよっとだけ紹介するのが今回のテーマです。

以前、「コンサルタント日記」と題した記事の人気が今一つだったので、それとは一線を画しています。あれは、ひとつひとつのブロックが短くて消化不良になってしまったのが失敗の原因だったので、今回は深堀りしてみました。

これはシリーズで展開する予定です。
一部、書籍版に掲載するものもありますが、大半はメルマガでお届けしたいと考えています。
予定しているのは、以下のサブ・テーマです。

【第1回:今回】コンサルタントの種類と仕事内容(総合編)
【第2回】コンサルタントになるには
【第3回】コンサルタントの悲喜こもごも(覆面座談会)
【第4回】クライアントから見たコンサルタント

私のことですから、人気がなかったりネタが尽きたら予定を変えてしまいますので、あらかじめご了承下さい。
なお、営業目的でこんな記事を書いているのだろうという方もたまにいらっしゃいますので、あらかじめ「その気はない」と宣言させていただきます(といっても、説得力はないのですが (苦笑))

コンサルタントになるのは簡単だ

まず、タイトルどおり、どうやったらコンサルタントになれるか。
簡単です。

「森コンサルティング事務所 代表 森 行生」

という名刺を300円で10枚作る。
これで、できあがりです。

威厳を保つために、ロゴをマイクロソフト・ワードのアートワードで作って貼り込めば完璧。
ただし、そうなると300円では無理です。
そうですね、2,000円~3,000円にはなってしまうでしょう。
うーん、大金かも。

いや、笑い事ではありませんね。
こうやって作られたコンサルタントはたくさん実在します。特にIT業界に多い傾向です。
IT業界なら仕事もたくさんある。
安心して下さい。このメルマガの読者の半数近くはネット関係やネット関係の技術者ですから、食いっぱぐれることはありません。今のうちなら。

「半分冗談、残りの半分本気」はさておき、コンサルタントになるなんて、しょせんそんなものです。資格も後ろ盾もないから、売り上げの保証もない。
私はコンサルタントを「企業を健康にする医者や弁護士」に例えますが、根本的な違いは「保証」のあるなしにあります。
だから、常にうさんくさいイメージがつきまとう。

ところで、書籍版「私はこう見る」の記事草稿で、「悪魔の辞典版マーケティング用語集」に、こんな一節を書きました。事前に見せて意見を聞いた数人のメルマガ・アクティブ読者には大受けでした。納得する部分があったからでしょう。
プロのコンサルタントの後輩には滅茶苦茶不評でしたが。

「コンサルタント」
ビジネス版詐欺師のこと。

コンサルタントに限らず、「いつでも簡単に、すぐなれる」携帯電話のような職業はたくさんあります。
ライター、コピーライターなど、文章を扱う商売は自分でもできると錯覚し、おしゃれっぽいから志望者も多い。そして、名刺に「ライター」と書けば次の日からライターなのです。

ところが「自称●●」ということばがあるように、コンサルタントやライターという肩書きや職業は他人に認められて初めて成立するものです。だから、コンサルタントというタイトルを決めるのは自分ではなくクライアントなのです。

試しに、私の愛用検索エンジンgoo で「コンサルタント」と入れてみると、なんと13,158件もヒットしてしまいました。MSNでは211件。Google では124,000件。Inforseekでは「40,000件以上ありました」と件数すら教えてくれない。

コンサルタントがコンサルタントであるには、売り上げがきちんとあり、クライアントがコンサルタント「ならでは」の期待値を持って接してくれるかどうか。これがすべてです。
そういう意味では、「私はこう見る」のまぐまぐへの紹介文の「第一線コンサルタントが深堀り解説・・」のくだりは、「自称●●」に限りなく近いのですが (^^;)

おばかな話をしていても仕方がないですね。
「コンサルタントになるには」というテーマの記事を読みたい人は、コンサルタントという肩書きが欲しいのではなくて、コンサルタントの仕事をしたいからだ、と無理矢理自分を納得させて話を続けましょう。
(実は、肩書き「も」大事だという人が意外に多いのですが)

コンサルタントの定義

コンサルタントという言葉は分かるけれど、その実体となるとイメージが掴めない人はかなり多いです。
コンサルタントと広告代理店はどう違うのか。
シンクタンクとコンサルタントは違う業種なのか。
調査会社とコンサルタントは同じなのか。

厳密な定義などありません。
だって、名刺を作ってしまえばおしまいの世界ですから、それぞれが勝手に定義して勝手にやっています。
だから、コンサルタントといっても元(現)雑誌の編集者、元(現)デザイナー、元(現)よく分からない人 (笑)、など様々です。

「定義なんか何でもあり」のコンサルタントですが、少なくともコンサルタントとは「企業が知らないことや新しい視点をもつことで、アドバイスをする人たち」といったイメージはあります。

そういう広い定義で言えば、「(マーケティングという枕言葉がつかない)コンサルタント」なら、現在のほとんどのコンサルタントが「れっきとしたコンサルタント」になります。

これでは記事が進みません。
最初のステップとして、とりあえず「まともな」コンサルタントの種類を整理しましょう。特に、今回はシリーズの初めの記事ですから基礎知識としてご理解下さい。

一般の書物を見ると、コンサルタントは3種類あると言われます。

●総合コンサルタント
●専門コンサルタント
●システムコンサルタント

総合コンサルタントは何でもできると標榜するコンサルタントです。主に経営コンサルティングとマーケティング・コンサルティングの2つがメインの場合が多いですが、システムコンサルタントの組み合わせも最近は多く見かけます。
マッキンゼー、ボストンコンサルティング、日本能率協会などがあげられます。もちろん、中小企業診断士もこの分野です。

専門コンサルタントは、企業の業務分野のそれぞれに業務を特化したもので、経営コンサルティング、マーケティング・コンサルティングが2大分野ですが、営業マン教育や財務、広報なども数多く存在します。

また、ホテル、旅館業、ビデオショップ開業コンサルタントといった、極めて実務寄りで細分化された専門コンサルタントもこの中に含まれます。

専門コンサルタントは、文字通り専門なだけあって、規模が小さなコンサルタント企業が多いですが、その中でも船井総合研究所は流通分野に特化し、企業規模も大きく、名も知られている特異な存在です。
また、トーマツ・コンサルティングは財務分野でダントツの知名度と企業規模を誇ります。最近は、財務だけでなくマーケティング・コンサルティング部門も立ち上げて、総合化の道を走ろうとしています。

最後のカテゴリー、システムコンサルタントは、企業のコンピュータ導入に当たって、様々なアドバイスを行ったり実際のシステムを開発したりします。
最近のIT関連企業で市場が急速に拡大しました。

森流コンサルタントの定義(の本音)

一般的な定義を見ましたが、私はマーケティング・コンサルタントなので、私や私の会社を理解してもらうには、この分類では大雑把すぎます。従って、森流として、こんな分類をしています。ちなみに、システム・コンサルタントは除外しています。

●総合コンサルタント
●経営コンサルタント
●マーケティング・コンサルタント

総合コンサルタントは教科書の分類と同じです。なんでもできる。
経営コンサルタントは企業の内側を担当するコンサルタントです。従って、経営、人事、組織、財務、教育などを得意とします。

マーケティング・コンサルタントは企業の外側が担当分野です。
商品、広告、流通、生活者に関わるものを得意とします。

そして、それぞれのコンサルタントを

●戦略系
●戦術系

に分割しています。

分かりやすいところでマーケティングを例に取ると、戦略系はシストラットのやマッキンゼーのマーケティング部門のように、「そもそもどうすべきか」を評価したり作るコンサルタントです。乱暴に言えば、企業が「●●年度事業計画(ブランド計画)」と呼ぶものを担当します。

一方の戦術系は現場で頑張るという感じです。
例えば、デザイン・コンサルタントはマーケティング・コンサルタントの一種ですが、デザインに特化して具体的なデザインのアドバイスをしますから、戦術系です。
さきほどお話ししたビデオショップ開業コンサルタントも戦術系です。

戦略系、戦術系と分割するのに、どんな意味があるのか。
実はあまり意味がなかったりもします (笑)
本音を言えば、私が戦略系を自分の差別優位性の1つとして標榜しているので、自分の都合の良い分類にしているというか、自分を理解してもらいやすいように分類しているといった方が正しいかも知れません。

ただ、現実的に戦術が得意なコンサルタントは戦略(そもそも論)は弱く、その逆もあるといった傾向があることは否めません。
極端な例ですが、大手コンサルタントやシンクタンクに対する批判でこんな指摘を良く聞くのはそのためです。

「『このブランドの売り上げを上げるために、潜在需要の開拓が必要である』ことは分かったけど、『どうやったら、潜在需要が喚起できるのか』が報告書に書いていないし、尋ねても要領を得ない回答しか返ってこない」

これはクライアントの期待値調整が充分にできないまま、成約に至ってしまったことが原因のケースです。別のケースでは、戦術を意識せずに戦略だけを机上で作ってしまうために起きる悲劇です。
「机上の空論」とまでバッサリ切り捨てるつもりはありませんが、現場や現実を知らないまま作る戦略はどうしてもふわふわと雲の上に乗っている感じがしてしまう。

現場をある程度分かっていながらわざと省いて戦略だけを報告書に記述するのが、本来の戦略報告書のあり方なのですが、メーカーなどの現場を知らず、新卒からいきなりコンサルタントの世界に入ってしまったために、それができないコンサルタントも数多く存在します。

アドバイス型とプロジェクト型

さて、戦略系、戦術系という分類方法よりも、一部のクライアントにとって大事なのは、

●アドバイス型
●プロジェクト型

といったコンサルティングの仕方による分類です。
アドバイス型は、「いわゆるみんながイメージする、先生的な」コンサルタントです。

「私がアドバイスをするので、作業はクライアントがやってください」

という仕事の仕方をします。

顧問契約を結び、用があってもなくても定期的にクライアントに出向くやり方もアドバイス型です。また、口頭コンサルティングといって、口頭だけでアドバイスをするのもこの部類です。
料金は「時間いくら(タイムチャージ)」になることが多いのが特徴です。

一方のプロジェクト型は問題意識や命題をクライアントから与えられ、調査データを元に報告書を作り、提案するやり方です。料金の積算は「タイムチャージ」をベースにしますが、最終的には「トータルでこれだけの料金です」とパッケージになることが特徴です。

プロジェクト型はアドバイス型と違い、クライアントと話をしたり議論することは重要ではありません。それよりも、報告書という紙の形で、まとまったものを見せることができるのが、アドバイス型との最大の違いです。

プロジェクト型はクライアントから見れば次のメリット、デメリットがあります。

●報告を聞くだけだから楽だけど、一緒に考える訳ではないので、クライアント企業内にノウハウとして残りにくい
●まとまったものを一度に見ることができるので、論理構成やデータなどが精緻になり、企業戦略などの大きなテーマにも十分耐えられる。

私の場合、メインはプロジェクト型です。売り上げのほぼ90%を占めます。一方私のアドバイス型のプロジェクトはクライアントやテーマによって使い分けています。
例えば、コンサルタントに対するアドバイスなら(コンサルタント同士のつきあいです)、プロジェクト型にする必要はありません。タイムチャージ制で口頭のアドバイスをしたり、クライアントである若手コンサルタントが書いた報告書の論理の穴を突いて、完成度を高めるだけで十分です。
私とのディスカッションに慣れたコンサルタントなら、1~2時間のミーティングを持つだけで、かなり報告書の品質を高めることができますし、料金も数10万円と安上がりです。

一方で、初めておつきあいするクライアント企業が相手の場合、アドバイス型の仕事は受けないようにしています。双方でクセが分かっていないと、無駄な時間を費やすことになり、料金が無駄になるからです。また、クライアント企業の期待値と提供するサービスにギャップが出て、料金トラブルも起きやすくなります。だったら、初めから仕事を受けない方がクライアント企業、私双方にとって賢明というものです。

私がアドバイス型を避ける本音の理由のひとつは、手間がかかる割に評価されにくいからです。
アドバイス型は、ある意味、クライアント企業の担当者を教育するように依頼されるものです。
ところが、これがくせ者です。
自分の会社のスタッフを教育するのに、四六時中一緒にいてアドバイスをしても、ノウハウを教え込むのに2~3年もかかります。

いくら、クライアント企業の担当者が自社業界の基本知識があり、業務に手慣れているとはいっても、たったひとつのプロジェクトをこなしただけで、一定水準のノウハウを身につけることができるはずがありません。私と一緒にいる時間だって、2週間に1度、2時間と考えると、半年で24時間しかない。
自社スタッフのたった3日分です。
でも、クライアント企業はそれなりのノウハウ吸収を期待する。
これがトラブルの原因となることが多いのです。

アドバイス型をメインとするコンサルタントはそれを実現するノウハウを持っていると思います。しかし、問題を解決する能力とノウハウを教え込む能力。この2つを兼ね備えるには、ノウハウを持たない私にとって4倍の努力と能力の高さが要求されます。

とてもではありませんが、荷が重い。
どちらかに得意領域を絞る必要があります。
スポーツの世界では「名プレーヤー、必ずしも名監督ならず」という言葉があります。それと同じことと割り切る。
その結果、現場経験の豊富さを生かし、迷わずプロジェクト型を選んだというのが実状です。

もうちょっと、突っ込んでみる

以上、コンサルタントの分類を正式なものと森流のカテゴリー分けで、ご紹介しました。
ここからは、コンサルタントのお仕事がどうなっているのか。もうちょっと突っ込んでお話ししましょう。

ただ、この記事ではマーケティング・コンサルタントに限った話にします。
理由は簡単。私自身が他の種類のコンサルタントのことを良く知らないからです。

また、私は外資系やアドバイス型コンサルティング企業にも勤務したことはありません。従って、この記事は必ずしも公平な見方ではないことをご了承下さい。

それでは、一体コンサルタントの仕事の内容はどうなっているのか。
何で稼いでいるのか。
口先三寸です。

…あ、いえ、こんなギャグをかますと、また後輩に叱られてしまいます。
真面目にやります (笑)

一言で言えば企業に対するアドバイスや提案がコンサルタントの仕事です。
しかし、

「先生、これはどうすれば良いのでしょうか」
「うむ。良きにはからえ」

で、300万円の請求書が届いたのは今は昔の出来事です。

こんなコンサルタントも存在しますが、今時、一般企業(クライアント)は黙って支払うほど甘ちゃんではありません。
また、私のような性格の人間は、こんなことで稼げるあぶく銭でメシを食うなんて、自分のプライドが許しません。

それではどうするか。
生活者にアンケート調査を行い、意見を聞いた上で「それではどうしたら良いか」を提案します。

コンサルタントの勝手な思いこみや経験だけで判断し、数十億円、数百億円もの様々な広告や生産設備、原材料調達への投資をするのはクライアントとしても気が重いものです。
それよりも、お客さんになる生活者の意見を聞くのが一番正確なのです。
だって、商品に金を出してくれるのはコンサルタントではなく、生活者なのですから。

「調査をするだけなら、コンサルタントよりも調査会社に頼んだ方が安上がりですね」

と言われそうです。
確かにそのとおり。
データをきちんと読めて、その中からどうすべきかを考えることができるクライアントなら、コンサルタントは無用の長物です。調査会社だけで事足ります。

例えば、

「現代の女性は『優しい男性』が理想のタイプです」

という「結果」は調査会社から出てきます。
しかし、現実社会でもやさしい「だけの」男性はもてないのはご承知のとおり。

しかも、

「どうやったら、女性と知り合うきっかけがつかめるか」や、
「どういう会話をすれば、その男性が優しいことを相手の女性に理解してもらえるか」

といったことになると、調査データだけでは到底分からない。

一方のコンサルタントは数字で表される「現在の状況」から、「今後のアクション」を予想し、提案するのが仕事です。

ちなみに、誤解を避けるために付け加えておきます。
調査会社から提案が出てこないのは彼らが無能だからではありません。
調査業界は

「できるだけ正確なデータを集め、それらの膨大なデータから、意味のある(ありそうな)数字を選択し、分かりやすく整理する」までが専門分野の範囲だ

と、自分を規定しています。
逆に言えば、彼らはその範囲なら、誰にも負けない専門技術水準を維持するのが命題だと信じて、切磋琢磨しているのです。

話を進めます。
調査データをベースにどういうコンサルティングをするのか。
もうちょっと具体的な例をあげると分かりやすいかもしれません。
ただし、私の関わったケースや友人コンサルタントのケースを紹介する訳にもいきませんので、外部から見たヒット商品をベースに私の推測でお話をします。

あるメーカーが人参ジュースを開発したとしましょう。
製品はできた。
では、これをどう売るか。

調査したところ、人参は嫌いな野菜のナンバーワン。
すると、このジュースを持ってニッコリと笑ったアイドルが「おいしい」といっても、説得力ゼロです。何か別な方法を考えなければいけない。
調査を進めると、人参は「栄養面から取らなければいけない」と生活者が考えている野菜のナンバーワンであることが分かった。

すると、人参は体に良くて、ビタミンやベータカロチンが豊富であることを訴え、このジュースには人参が丸ごと2本分入っていることを知らせ、感性ではなく理屈で攻めることのほうが有効です。

最後にデザイン。
人参の臭みを連想してはいけませんから、パッケージには写実的な人参の絵を描いてはいけません。かといって、人参であることが分からないといけない。
その最良の解決方法のひとつは切り絵でデザインを作ることです。

今でこそ当たり前ですが、10年前にこんな発想で売った商品はそう多くありません。カゴメから発売されて、大ヒットになったカゴメキャロット100は、恐らくこんな経緯で商品化されたのでしょう。外部から見ても大体の開発ストーリーは見えてきます。

私の推測が正しいかどうかは、この際、意味がありません。
もし、コンサルタントが関わっていれば、こんな形で調査や提案をするということが分かっていただければ結構です。

企業がコンサルタントを使う時

必ずといって良いほど上がってくる質問があります。

「コンサルタントの仕事の内容は分かりました。でも、会社にはそういう部署はないのですか?
特に、大きな会社なら専門にしている部や課がありそうなものですが」

もちろん、あります。
そして、普段は彼らが一生懸命商品のことについて考えています。
それでは、どんな時にわざわざ高い金を出してコンサルタントを使うのか。
コンサルタントの使い方という視点でお話ししましょう。

企業がコンサルタントを使うのには、いくつかの理由があります。
私の経験を元に、代表的なものを4つご紹介します。

より深い専門知識や経験が必要
▼難しい問題にぶち当たってしまったので、自分たちだけでは解決しない。
(今まで、特に大きな難問はなかったので、どう取り組んで良いのかが分からない)
▼自分たちの発想には限界があるので、新しい視点からのアイデアや戦略が欲しい。
(自分たちは業界内のことしか知らないので、他業界にも詳しい人の視点を取り入れたい)
▼マーケティングのノウハウがないので、蓄積したい。
社内のマーケティング部が信用できない。
社風が問題/若手の応援
▼社員が何を言っても聞いてくれないが、同じ事を外部の人が言うと、信用してくれるので、自分たちの考えを代弁して欲しい。
オアシス(?)
▼自分たちでも考えることができないことはないが、日常業務に追われて、忙しくてとても時間が取れない。

第1の「より深い専門知識や経験が必要」は一般の人でも何となく理解できる話です。
元々、弁護士にせよ、医者にせよ、アドバイス系の専門職はその知識や経験がお客さんと離れていればいるほど、お金になるからです。
従って、クライアントがコンサルタントよりも勉強してしまえば、コンサルタントは飯の食い上げになります。

意外によく見かけるのが2番目の「社内が信用できない」という理由です。
例えば技術部門や営業部門はマーケティング部門と仲が悪いのはどんな企業でもある話です。だから技術部門が直接外部であるコンサルタントを使う。

3番目の「社外の人に代弁してもらう」のも、意外に多いコンサルタントの使い方です。若干25才の女性が300人のクライアントを前にしてプレゼンテーションをぶっても、聴衆は真剣な眼差しで聞いてくれています。

「うらやましいですね。
35才の私が同じ事を言い続けてきたのに剣もホロロだったんですよ・・」

とある担当者が嘆いていました。

人間、そんなものです。
自分と似た環境の人間は「仲間」。そうでない人間は「新鮮」(場合によっては「危険」ですが (笑))。
私も独立してしばらくはメーカー出身であることをクライアントには明かさなかったものです。

「なぁんだ。自分たちとおんなじじゃん。
それなら、発想も自分たちと大して違わないね」

と、相手にしてもらえなかったケースがあるからです。

ところで、代弁目的でコンサルタントを使うのは、相手を見ないと危険な場合があります。
クライアントの思考を横で見つつ、報告書を作るコンサルタントも多くいますので、そういう人に当たれば問題はありません。

ところが、私のような人間も数は多くありませんが存在します。
つまり、「そういわれてもダメなものはダメです」というばかりか、担当者に都合が悪かろうがなかろうが、戦略上、重要なポイントだと思えば、堂々と報告書に今までのやり方を否定しかねないことも書いてしまう。諸刃の剣です。

私が広告代理店経由の仕事をほとんどしない(できない?)のはこういった理由からです。彼らとしては、「森は使いにくいったらありゃしない」のが本音だと思います。

ただ、多くはその中間です。

「言わなければいけないことは言う。
しかし、表現はあくまでも柔らかく」

森の割り切りと悩み

これまで、様々なタイプを紹介してきました。それぞれの目的で、それぞれのコンサルタントをクライアントが使い分けるのが理想です。
問題があるとすれば、「どんな視点で使い分けをすれば良いか」の基準軸が、慣れないと(つまり、時には成功し、時には失敗しないと)分からないという点です。私たちが商品を買うのと同じ。経験をつまないと良い買い物ができない。ただ、残念なのはその差が激しいという点です。

そこでクライアントはたくさんのコンサルタントを使った経験がないために、それを補い、基準値を示して上げるのは、クライアントとの仕事の経験が豊富なコンサルタントの役目ではないかと、私は勝手に思っています。

その結果、私の会社が基準値に合わず、仕事が取れなくても一向に気にしません。私が、無理して、苦労して、それでも期待値が違っただけで、地を這うような低い評価を下されるよりは百倍もマシだと考える人間だからです。
別名、「わがまま」とも言います (笑)

そういう意味では、クライアントの期待に応えようとする一部(多くの?)の同業者の姿勢は立派だと思います。
かっこよく言ってしまえば、私はどちらかというと職人気質のメーカー、期待に応えようとする他社はマーケティング志向のメーカー。

そうすると、マーケティング・コンサルタントとしては、彼らの方が正しい姿勢であることを認めなければならない。
しかし、一方で、シェアが少なく企業規模が小さい下位企業の戦略としては、顧客ニーズを切り捨てる見切りも必要。
そんな状況なので、どちらが正しい間違いとは言えないと感じています(単に認めたくないだけか? (笑))

ということで、とりあえず、第1回が終わってしまいました。
今、改めて読んでみると、「コンサルタント徒然草」という感じがしないではないですね。勝手なことを言い放っている。
こんな回があってもいいかな。

次にご期待下さい(^ ^)。
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