■みんなで広げよう、ともだちの輪【mixi】

artc20060601SNSと呼ばれるサービスが注目されています。その最先鋒が460万人の会員を誇るmixi。
web2.0といったキーワードでもくくられてしまうmixi。
そんなmixiを解剖してみました。
タイトルは、「笑っていいとも!」の「テレホンショッキング」で、昔やっていたかけ声です。いつからかしら、やらなくなったのは…てなことはどうでもいい話です(笑)


mixiがヤフー、楽天に続く第3位に

mixiと呼ばれるインターネットの無料サービスが大人気です。
会員数公称460万人を誇り、ヒット商品ベスト10にも入り、飛ぶ鳥を落とす勢いです。
2006年6月29日の新聞報道では、mixiの総閲覧時間数が4位の2ちゃんねるを抜き、ヤフー、楽天に続く第3位になったことを報じています。

ここ数ヶ月、電車内でも

「あんたのmixiの日記はさー…」
「mixiであとで連絡するね」
「マイミクのみんながね…」

といった会話が交わされています。
しかも、週に2-3回は目撃するのです。
最近開業して話題の表参道ヒルズの話題は週に1回ほど聞ければいいほうですから、その多さが分かろうというものです。

さて、mixi現象の話をしても、何のことやら訳がわからないでしょうから、
「mixiとはなんぞや」
を説明します。

mixiはソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)と言われるネット上のサイトのひとつです。

あ、これでも分からないですよね。
要するに、

●ブログ(日記)
●メール
●掲示板

がセットになった無料会員制のサービスです。

なぜ、こんなものが(失礼)人気になるのでしょうか。

最近のブログブームには分かりやすいメリットがありました。
というのも、今までの日記サイト(HP)では、ホームページを作るのが面倒だったからです。
HTMLというネット言語を覚えなければサイトを作ることができません。
例えば、こんな感じです。

<TR>
<TD WIDTH=”100%” HEIGHT=”68″ VALIGN=”TOP”>
<BLOCKQUOTE>
<P>このサイトは、消費財の事業戦略およびブランド戦略を専門としたマーケティング・コンサルティング企業、シストラットコーポレーションを紹介しています。</P>
</BLOCKQUOTE>
</TD>
</TR>
</TABLE></P>

それがイヤなら1万円もするソフトを買わないといけない。

一方、ブログはそんな手間はいりません。
日記の文章を書いて「アップロード」ボタンを押すだけ。
誰でも簡単に日記のホームページが作れてしまう。
もちろん、画像も表示できる。

でも、SNSにはそんな分かりやすいメリットはありません。
ブログや掲示板、画像アルバムはどこでも無料で借りられて、メールはプロバイダからもらうアドレスを使用すればいい。
セットになってからといって、どんなメリットがあるのでしょうか。

「セットになったメリットなんてないですよ(笑)」

と笑い飛ばすのは、私をmixiに招待してくれた20年来の友人です。

「せいぜいが、それぞれのサービスを管理するためのパスワードや、サービス提供会社を覚える面倒がなくなるくらいですかね」

今回はそんな「不思議な」サービスをテーマにしました。
一見、何のメリットもなさそうなmixiが何故こんなに人気があるのか。
そして、mixiに死角はないのか。

実は当初、mixiの経験者に向けて記事を書いていました。メルマガの読者はネットに明るい人たちが多いと考えていたからです。

ところが、取材を続けているうちに、会員数460万人とはいえ、予想に反して入会している人が少ないことが分かりました。
先日開催したマーケティング塾でも参加者15人のうち、mixi会員は2~3人しかいませんでした。

そこで、記事を書き直し、mixiを体験したことがない人たちに向けた構成に変更しました。
従って、一見、mixiの入会をお勧めするような誤解を受けるかも知れません。

でも、ここで高らかに宣言します。
私はmixiの手先ではありません(笑)

私のmixiのきっかけ

私のmixi入会のきっかけは2年前に届いた一通のメールでした。
前述の20年来の友人からです。

「森さん、あの僕らのNiftyが帰ってきたんですよ。
これはもう劇的なシステムです。
絶対に入会してください。損はさせません」

彼は業界では有名人。現在、日本で唯一の巨乳評論家で風俗ライター・兼巨乳カメラマンをしています。
職業柄、文章がどうにもうさんくさいのが玉にきずですが、真面目な性格は良く知っているので、軽い違和感と苦笑を覚えながらも言われるままに入会しました。

実は、それから一週間もしないある日、ひなちゃんと食事をしていたとき、彼女の口から飛び出したのもmixiでした。

「森さん、mixiって知ってる?入らない?」
「あら、もう入ってるよ」
「さすが森さん、早いな~」

それから数ヶ月の間、友人から誘いが次々と来るわ、来るわ。
友人に会うたびに誘われる始末。
といっても、2年前の当時、mixiの会員数はたったの20万人。今の1/5程度の規模でしたから、私の周りはイノベーターばかりだったということになります。

なぜ誘いがあるのか。
SNSの最大の特徴が

「既に会員になっている人の招待がないと入会できない」

からです。
YahooやLivedoorのブログのように誰もが簡単に申し込めば入会できる訳ではない。

さて、入会したのはいいものの、最初は何が何だか訳の分からない状態でした。
ログインすると次のような画面がモニタに出てきます。

●自分のプロフィール(自己紹介)
●日記のタイトル
●友人のリスト
●友人からの紹介文リスト
●所属している掲示板のリスト

友人のリストには私を招待した巨乳評論家の名前がアイコン(写真)とともにポツンとあるだけです。そこにひなちゃんも加わる。
とりあえず簡単に自己紹介欄を埋めて、そのままほったらかしにしていたところ、彼から私への紹介文が書かれていました。

そのあと、次から次へと、20年前当時のNiftyの仲間たちから「友人登録」の依頼が舞い込んでくる。
あっという間に「カタチだけは」当時のNiftyの集まりとなっていました。

出会い系サブグループ「男女出会い系」

さて、私の体験談はこれくらいにしておきましょう。
mixiの何が楽しいのか。
それをいくつかのグループに分けて紹介します。

mixiを語られる時によく出てくるのが「出会いの場」です。
後述する、「リアル知人とのコミュニケーション」と並んで大きな動機になっているます。

簡単に言えば

「広く知り合いたい。だけどネットでは怖い」

という動機です。

ただ、この動機を持つ人々は数も多いので、3つに分けます。

▼男女出会い系
▼ビジネス系
▼カメラマン・モデル系

記事の構成上、まずは「男女出会い系」を紹介し、残り二つは最後の方に回します。

さて、「男女出会い系」は見て名のとおりです。そして、3つに分けても最大の人口を誇るグループです。

一時期流行した「出会い系掲示板」を利用していた人たちがmixiに移動したと考えればわかりやすい。

また、現実社会でナンパの手口が様々であるように、出会いの方法も多岐にわたります。
従って、現実社会で「ナンパだと思っていなかった」以上に、「出会いでmixiなんて使っていませんよ」という人でも、この中に分類されることがあります。

私の言葉ではおもしろくないので、mixiの住民の言葉を借りましょう。
(文中の名前はすべて仮名です。mixiで検索してメッセージを送らないように(笑))

「出会い系の掲示板って、変な人や犯罪の巣窟というイメージがあります」と語るのは、ミナミさん。「殺人事件が起きたり、援助交際の女の子が多かったり、変質的な人がいたり…
私はいろんな人から刺激を受けて成長したいと思っているのに、そんな危険なところには出入りしたくありません」「mixiは1年前から始めました。
招待制というシステムなので安心じゃないですか。必ず誰かの知り合いだから。
実際、ブログをちょっとやっていたこともありますが、荒らしが来たり変な(変質者的な)メールが来たりしてイヤになってやめました」

「安心というのは私にもあります」と今度は久美さん。「招待制もそうですが、mixi独自のシステム『足あと』機能が大きいかなと思います」

「足あと」とはその人のページに誰が来たのかが、日時とともにリストアップされる機能です。
普通のアクセス解析では「何時何分に、何人が来たか」は分かりますが、「誰」までは分からない。
ところがmixiでは、そのリストをクリックするだけで、どんな人が自分の日記を読んだのかがすぐに分かるのです。

ということは

「私が他の人を見に行くのでも、一瞬躊躇する時があるんです。
特に、後ろめたい時や興味本位の時なんかは、自制心が働くんです。
あ、こんなことでのぞき見をしているのがばれたらちょっと恥ずかしい、という感じで。相手の人もそうだと思うんです。実際、私のマイミクの人たちもそんなことを言っているし。
だから、匿名の人が無責任に発言を浴びせるようなネットであっても、mixiではそれぞれにニックネームが付いていて、友人のリストや日記があるから、まったくの匿名ではないんです。だから、無責任発言の人が極端に少ない。
それが『安心』という理由です」
「安心という点で、もうひとつ大事なことがあります」久美さんが続いて発言します。「普通の出会い系掲示板って、自己紹介のメールが来るだけじゃないですか。メールのやりとりをしながら相手を理解していくんですが、私だけに調子のいいことを言っている可能性だってある。
何がイヤかって、メール上とはいえ、最初はいい人だったのに後でイヤな思いをすることほどイヤなものはありません。
『あーあ、こんなヤツと私は一対一で話していたのか』と思うと寒気がする。でもmixiだと、その人のプロフィールを見たり日記を読んで、その人の性格が分かる。
マイミクのリストを見ればどんな友人がいるのかが分かる。
そして、コミュニティのリストを見れば、どんな趣味を持っているかが分かる。
そこで、ちょっとでも『あ、やばいな』と思えば、その人とのやりとりすらしなくてもいい」

「情報があるから、ナンパされた気にならない」「出会い系で知り合った気がしない」というわけです。

出会い系サブグループ「男女出会い系2 - きつねと狸の…」

しかし、

「mixiでは2年間で50人くらいの女性とデートしましたよ。
他のサイトや掲示板なんかより、圧倒的に簡単にデートできます」

と豪語するのは、ある男性。

「僕から見ればmixiはナンパの場以外の何モノでもありません。
だけどmixiのいいところは、ナンパの雰囲気を上手に隠せることです。
そりゃあ、いきなりメッセージを送って『きれいな人ですね、今度食事につきあってください』みたいなバカ正直なヤツもいますよ。それでもまかり通るのが不思議な世界で、そんなストレートな表現でも数百人メッセージを送っていれば、一人や二人は反応してくれてデートにこぎ着くことができる。

ネットナンパの基本は『数打ちゃ当たる』ですからね。だけど、僕はそんなみっともないことはしません。
めぼしい相手の女性の日記にさらりとコメントをつける。気の利いたコメントを一週間でも続けていれば、相手が好印象を持ってくれるんです。
それでマイミクしたりしなかったりしながらデートに持ち込む。この方法の一番いいところは、ナンパ慣れしていない普通の女の子を、ナンパされていることに気がつかないように持っていけることなんです。

ネットナンパに飽きたから、これはこれで僕の美学というヤツでしょうね。あ、あと、mixiでは地域別に検索をかけられるのが、ナンパにはものすごく便利です。
コミュニティも会員のリストがあるから、すごく便利。
コミュニティという興味関心のある分野が分かっているのだから、話を合わせるのが簡単なんです」

この話を裏付けるかのような発言がありました。
礼子さんです。

「私、時々、携帯電話で自画撮り写真を載せたりしているんですが、ちょっと男性受けするかなと思った写真だと、足あとだけじゃなくてメッセージも数倍に跳ね上がるんです。うざいので、都道府県を非公開にしたところ、一気に1/3に減りました。
さらに年齢を72才にしたら1/10くらいになったんです。
男ってバカですね(笑)
でも、この前、『72才というお年寄りなのにmixiをやるなんて、モダンなおばあさんですね』とメッセージが来てしまった時には、微笑ましくて楽しくなってきましたけど(笑)
ちなみに、私はバリバリの25才です(笑)」

「きつねと狸の化かし合い」とはこういうことを言うのでしょうか…
あ、いや、もとい。

「大人の駆け引き」

ですね(笑)

露出系

私が男性のせいでしょうか。
よく目につくのが、セクシー自画撮り写真をプロフィールにしている女性達です。
mixiではヌード写真は禁じられているので、胸の谷間やきれいな脚を強調する写真を携帯電話のデジカメで撮ったものを公開しています。
共通しているのは、顔は写していないこと。
多くは日記もエッチ系。

いかにも奔放な性を謳歌しているような印象を受けます。
彼女たちのマイミクには男性ばかりがずらりと並んでいます。
その中のひとりに聞いてみました。ひとみさんです。

「リアル世界では、私は根が真面目で通っていて、周囲の目も『良いお嬢さん』なんです。
だけど、そんな自分に嫌気がさしているというかストレスが溜まるんです。
mixiだと、そんな自分を知らない人たちだから、思い切り『エロい自分』をさらけ出せるんです。一種の欲求不満解消かな。
男性がキャバクラとかに行って、普段真面目な自分が思いきり『すけべおやぢ』に変身するのと似ているかも(笑)」
「私は、注目を浴びるのが快感だからかな」と発言するのは、亜矢さん。「男性の視線というか注目を集めるのはセクシー系が一番手っ取り早いじゃないですか。
実際、ちょっと露出の多い服の写真をプロフィールにすると、足あとの数が半端じゃないくらいに跳ね上がります」

2人に共通しているのは、

●セクシー系
●顔は公開しない

のはもちろんですが、心理的に探ってみると

●自分を確認したい

という欲求でした。

それは、ひとみさんのように現実とのギャップのバランスを取るカタチで現れる場合もあれば、亜矢さんのように「男性」という観客を得て初めて成立するカタチもあります。

そして、もうひとつ共通するのは、

●「それはmixiでなければならない」

という点でした。

ひとみさんはこう言い放ちます。

「普通のネットだとどんな人がいるか怖いじゃないですか。
mixiは閉じられた空間だし、足あとも出てくるから自分さえ気をつけていれば安全なんです」

男女出会い系と同じ「安心」というキーワードがここでも出てきました。

そして、もうひとつ共通しているのは

●絶対に外では男性と会わない

という点でした。

「セクシーなイメージを持たせているのだから、外であったりしたら、相手の男性はそんな目ではじめから見るのは分かっていることです。
だけど、多くの男性はナンパしてくる。
『美しき誤解』っていいですよね(笑)」

リアル友人との繋がり系

意外に多いのは「リアル友人との繋がり」の場としてのmixi利用です。

「mixiって、そんなにおもしろいものじゃないです」と言い放つのは、ひなちゃん。
「出会いを求めるわけでもないし、趣味のあった人たちとワイワイやるのも楽しいというほど気力もないし(笑)」「結局、私がmixiをやめないのは、ただひとつの理由だけなんです。

それは、私の一番の友人とつながっているからです。それまでも携帯で話したり、メールをしたりしていたんです。
会うのも1~2ヶ月に1回。女性同士のデートを楽しんでいました。

だけど、携帯で話すには『元気?』とか『最近どう?』とか、色々気を使うところもあるじゃないですか。mixiだと、相手も日記を書いているから
『あ、いま仕事で大変なんだな』
とか
『彼氏とうまくやっていそうだな』
とか、いつでもほぼ毎日分かる。
それだけで安心するんですね」

「出会いの場」動機が

「mixiという閉鎖性社会での開放性」

を求めているのだとすれば、

「リアル知人とのコミュニケーション」動機は

「mixiという閉鎖性社会での、さらなる閉鎖性」

という逆方向に向いている人たちです。
それをもっとももっと進めたのが、香さん。

「私のマイミクのほとんどが女子高時代と今の学校の友人たちばかりです。
というか、ほとんど私が入会するように勧めたんです(笑)
あ、大学の助教授もいますよ」

確かに彼女の43人のマイミクのうち男性はたったの2人。助教授も女性でした。

「高校時代の友だちって、同窓会くらいでしか会えないじゃないですか。
特に、私は群馬県出身なので、なかなか会えない。
それがmixiなら、いつでもどこでも友だちの様子がわかるなんて最高です」

実際、彼女の高校のコミュニティ(掲示板)もあり、350人も集まっています。
実は私も自分の学校を調べたことがあります。
母校であっても日本ではマイナーなアメリカのDuke大学のコミュニティを見つけた時は本当にびっくりしました。

「日記は友人限定にしているし、マイミクで会ったことがない人は3人だけで、残りの39人は実際に会ったことがある人ばかりです。だから安心していろんなコトが書けるし、連絡もすぐに着く。
『今度、群馬に帰るから会おうよ』
と日記に書けば、すぐに数人が
『あたしも行く~』
とミニ同窓会ができちゃう」

この二人を代表する「リアル知り合いの補完としてのmixi利用」は、昔のポケベルを思い出させてくれます。
ポケベルでは「映画見た」「バスタ食べた」といった他愛もないことをさっと送るだけ。
当時の女子高生がこう語ってくれたことが印象に残っています。

「電話をかけると『元気?』とか前置きが長いじゃないですか。
ポケベルはそんなに長い文字は送れないから丁度いいんです。
しかも、なんとなくつながっている気がする。密度の濃いコミュニケーションはいらない時もおおいけど、何もないと寂しい。
そんなに時にポケペルは便利なんです」

この発言の「ポケベル」を「mixi」に置き換えると、そのまま彼女たちのmixiの使い方が現れてきます。

ちなみに、この2人に限らず「リアル友人とのコミュニケーション」はmixiをある程度経験した人が多いのが特徴です。
出会いから興味が始まって、ここに落ち着く。そんな経路をかいま見せられるグループです。

寂しがりや系

マイミクの数ということでいえば、数が多いということを自慢げに話す人たちがいます。
「寂しがりや」と言えばいいのでしょうか。

mixiではマイミク登録が1,000人まで可能なので、それを目指してやたらめったらに「マイミクになりませんか」とメッセージ(mixi内でのメール機能)を送る御仁も存在しますし、そういう人たちは800人とか900人といったマイミクを揃えています。

それは極端にしても、「友人がたくさんいると安心する」そして「たくさんいることが偉い」動機などが混在しているグループは確かに存在します。
一見、「知り合いの輪を広げたい」動機も入るように見えますが、根っこが違います。

例えば、「マイミクシーどうぞ♪」というコミュニティは、マイミクをたくさん作ろうという趣旨の掲示板ですが、参加者は実に32,334人(2006.6.28現在)。
460万人のたったの0.8%というなかれ。3万人を超えるコミュニティはそうそう存在しない中では、かなりメジャーなものです。
しかも、類似のコミュニティをあわせると約10万人。複数のコミュニティに登録する人もいますが、大きな勢力であることも確かです。

もちろん、こういったコミュニティがすべて「寂しがりや」の集まりではありません。コミュニティの役割としては、恥ずかしくてマイミクも少なく孤立しがちな新人たちを救う意味を持っている部分もあります。

しかし、血の通った「人」という存在を「コレクションの対象とする」のは、リアル社会でもネット社会でもよくあることです。mixiはそれがしやすい。

実際、ちゃんと活動できるのは30人が限度だという人は数多くいます。
それを超えるとマイミクの日記を見たりコメントを書いたりするのが苦痛になってくるというわけです。

出会い系サブグループ「ビジネス系」

さて、冒頭に出会い系の話をしました。
ここでは、残り2つのサブグループを紹介しましょう。

最初はビジネス系です。
出会いとビジネスはイメージが違いますが「見知らぬ人と実際に会う」という定義なら、まさにビジネス系も当てはまります。

ビジネス系といっても2種類あります。
わかりやすいのはDM代わりにmixiを使う輩。

これらは直接メッセージを送って来るわけではありません。
自分のプロフィールや日記にDMで書くような内容のものを記述しておく。
めぼしい人をクリックして足あとをわざと残す。

すると「自分に関心を持ってくれた人だ、誰だろう」とクリックを返すと、
「1年間で2,000万円稼ぎました」
「尿を飲む健康法で私も病気が治りました」
が目に飛び込んでくるという具合です。
うさんくさいことおびたただしい。

もうひとつは「mixiを使ってビジネス(金儲け)をしよう」というグループです。
先ほどとは違って中身はいたく真面目です。
その中でも二つに分かれます。

●営業系
●企画系

です。

前者はわかりやすい。

「イラストレータやってます。お仕事ください」

系です。

後者は

「mixiという市場があるのだから、そこに向けて何かビジネスを始められないだろうか」

という人たち。

前者は個人での活動ですが、後者はコミュニティ(掲示板)などで議論しながら企画を練っていくタイプです。

後者は古くパソコン通信の時代からありました。
何かをチャンスに金儲けをしようとする人はいつの時代にもいます。
最近のネットベンチャー企業もパソコンやネットの技術も知識もないけど儲かりそうだから、という理由で立ち上げて育ったものもたくさんあります。

出会い系サブグループ「カメラマン・モデル系」

出会い系最後のサブグループは「カメラマン・モデル系」です。
mixiの会員と話すと、よく出てくるのが

「森さん、mixiって、ものすごく(アマチュア)カメラマンと(アマチュア)モデルが目立ちませんか」

という話題です。

彼らは、主にmixiを

「素人モデル探し」
「素人カメラマン探し」

として活用しています。

正確に言えば、モデルを探すカメラマン(ほぼ男性)はそれがmixiでの主目的ですが、カメラマンを探すモデル(ほぼ女性)は、mixiでは別な目的(出会いだったりします)で、モデルとして写真も撮られてみたいかなといったサブ的な目的です。

460万人という規模を考えると、カメラマン・モデル系は少数派です。
この手の最大手「mixiモデル部」というコミュニティでも3,670人しかいないし、類似のコミュニティを合計しても1万人足らず。
先ほどの「マイミクシーどうぞ♪」のたった1/10です。

それでも「目立つ」のは、モデル志願者、カメラマン志願者が1万人も集まるところが、ネット広しといえどもどこにもないからです。
「モデルやります」「モデル探しています」といった掲示板もmixiの外にはたくさんあります。

しかし、その大半は「ヌードモデル」だったり「援助交際」だったり。時給2万円3万円といった高額なギャラが飛び交っている世界です。アマチュアカメラマン、アマチュアモデルが入り込めるモノではありません。

かといって、一方でギャラなし(あるいは少額の謝礼)程度で撮ったり撮られたりしようとすると、個別にカメラマンやコスプレーヤー、ネットアイドルのサイトを探さないといけない。

一方、mixiではギャラの支払いが絡むケースはほとんど見られません。
純粋にアマチュア同士で、「撮られたいから、お金をもらうなんて」「食事くらいはごちそうできるけど」といったつつましやかな関係が多い。

しかも、一同に介しているので、探すのが楽となれば、こぞってmixiになだれ込むのは当然の帰結です。
加えて、mixiという「安心」な場ですから、実際に「モデルとして撮ってもらいました♪」「モデル見つけました♪」と日記に写真とともに紹介されているのを見ると、きれいな写真が並んでいる。

アマチュアといっても上手な人が多いので、見栄えが良い。しかも撮られた本人は本当に嬉しそう。普通の女性が
「私もやってみようかな」
と思わせるには十分すぎるくらいです。

しかし、いいことばかりではありません。
会員数20万人といった小さな所帯の頃はトラブルもなく、双方で楽しむ関係でした。しかし、規模が大きくなり様々な人種が集まるとトラブルも増えます。

ネットの世界でモデルを強姦するという噂の絶えない(被害者だと名乗る女性も数多く出現しました)人物がmixiに名前を変えて潜み、被害者を増やしているという噂もあります。しかも、一人ではなく複数人。

そこまで犯罪すれすれでなくても、素人モデルをだましてヌードを撮ったとか、ハメ撮りをしたとかのケースが流れています。
撮った方、撮られた方、それぞれに言い分もあるでしょうし、大人の判断力で対処する話もあるのでしょう。
しかし、mixiが「すでに安全ではない」以上、一般の出会い系掲示板が持つ問題点を持ち始めていることも確かです。

出会い系の本当の最後のサブグループは「ゲイ」ですが、これについては私は詳しくないので記述を避けます。

「それしかできない」が「なんでもできる」に勝つ

これまで見てきたように、mixiの楽しみ方は様々です。
そして、これがはてなダイアリー、@コスメ、Wikipediaやmixiに代表されるSNSといった「ユーザーがコンテンツ(内容)を作っていき、それがさらなるユーザーを増やす」自己増殖的サイトの真骨頂でもあります。

しかし、一方で、これがmixiの壁を作る危険性があるのです。
今までは、問題ありませんでした。
イノベーターと呼ばれる「他人に言われずとも、自分で工夫し、楽しみ、行動する」そんな人たちがコンテンツを作っていたからですし、自分なりの楽しみを見つけていたからです。

しかし、460万人を超えるとなると、そうはいかなくなります。
「何でもできる」ことが却ってアダになる。

ある人があなたに営業の売り込みをしたと想像してください。

「何でもできます。だから、仕事をください」
「何でも…って、何が得意なの?ほら、マーケティングとか商品の売り込みは得意とか、人事管理はばっちりとか…色々あるじゃないですか」
「それ全部できます。だから仕事ください。
何でもできるから、どんな仕事を出すか、森さんが考えくれればけっこうです」
「…」

こんな稚拙な営業はありませんよね。
いまのmixiはこんな状態です。
別な言い方をしましょう。

昔、パソコンは「何でもできる魔法の箱」と言われ続けていました。
それは、家庭内普及率12%が10年以上も続いた頃、つまり1994年までです。
確かに、みなさんご存じのようにパソコンはソフトを入れれば、ワープロマシンにも表計算マシンにも、データベースマシンにも早変わりします。
しかし、それはあくまでも、全人口の10%%足らずのイノベーターの発想でした。
一般の人には「何でもできるといっても、わからない」のが本音。

だから、海外では珍しい文書作成「しか」できない「ワープロ専用機」が発達してきました。家庭普及率がパソコンの12%と比較して40%にも及んだ。
「それしかできない」機械が「それ以外もできる」機械に勝ってしまったのです。

別な例を挙げます。
ホームビデオカメラがありました。
もちろんビデオですから何でも写せます。記録ができます。
でも、結局ビデオカメラが普及したのは「子どもの成長記録」としてメーカーが販促を始めてからです。いまや、小学校4年生以下の家庭のビデオ普及率は70%を超えます。

つまり、「何でもできる」という広さを強調するより、「これができる」と狭めた方が最終的にユーザーが増えることに他なりません。

なぜか。
イノベーターはせいぜい人口の10%程度しかいません。
残りのうち25%は、アーリーアダプタと呼ばれる中間的な人たち、そして65%を占める一般大衆(フォロワー)と呼ばれる人たちが最後に続きます。

最初のうちはその分野に詳しいイノベーターに普及するのですから、自分の楽しみを自分たちで見つけることができます。
しかし、普及するためには、アーリーアダプタやフォロワーにもユーザーになってもらわなければならない。しかし、彼らはイノベーターほど創意工夫に長けているわけではありません。

勢い、メーカーが「こういう風に使ってください」と提案をする必要があるのです。
それが、ワープロ専用機や子どもの成長記録(ビデオカメラ)という訳です。

いまのmixiからは、「こういう風に使ってください」というメッセージが発信されていません。確かに冒頭で上げた新聞記事では、mixi(SNS)を

「参加者が自己紹介を公開し、共通の趣味や紹介などを通じて交友を広げる(サイト)」

と書かれていますが、これだけではなんのことがさっぱり分からない人も多くいます。
いえ、もっと大事なことは、これは朝日新聞が書いたモノであって、mixi自ら発信したことではないということです。

mixiのイメージ - 喜んでいるヤツはキモイやつだ。以上。

だから、何が起きるのか。
会員の経験がない人にとっては

「出会い系掲示板と同じでしょ」という理解のされ方や
「写真って自分の顔を出さないと行けないんでしょ」
「年齢や住所なんかも本当のことを公開しないといけないんでしょ」

といった誤解につながります。

会員経験者にとっても

「一回入ったけど、どうしていいやら分からず、なんとなくほったらかしにしています。結局、やる価値は分からない。あんなのやってるのはキモイ連中だよね」

といった強引な結論に持っていく人たちが増える。

また、

「mixiって、足あとがつくのが気持ち悪いので、イヤになってやめました。知らない人が自分のプロフィールを読むのって気持ちが悪い」

という女性も出現してしまう。
彼女はブログも持っています。しかし、ブログでは「足あと」という個別の名前のリストが出てきません。だから、誰か他の人が見ているなんて想像もしない。

「どうせ私のブログみたいなつまらないものを見る人なんていないですよ」

が彼女の言い分です。
初心者にありがちな「知らぬは仏」状態です。
だから、「足あと」という具体的な目に見えるものを見せつけられた時に拒否反応を示す。

一般人だけではありません。
mixiは識者と言われる人からもこんなことを言われてしまう。
Web2.0が話題になっている中で、決して易しい内容ではない専門書「ウェブ進化論」が30万部を超す大ヒットを飛ばした。その著者がこう言い放ちます。

「リアルの世界で恵まれているエリートは、SNSやグーグルを見ても感動が薄い。

(中略)でも普通の人はそんなもの持っていない。
だから、グーグルに対して、『こんなこともできるの』という感動は、持たざる者のほうが大きいよ。

(中略)会社で認められた人は会社の中で楽しいじゃない?
会社の中のコミュニティで充足するでしょ。
そういう人がSNSを見ても『何がおもしろいの』と。
ところが、学生や主婦は、そこに対する感覚が全然違う。

(中略)リアルの世界で地位の高い人、恵まれている人、自分の影響力の大きい人は、何が面白いのかわからない、いくら説明しても」

皮肉っぽく要約すると

「SNSはリアル社会で成功していない、恵まれない人たちが集まる(かわいそうな場所)」

となってしまう。

確かにそういう人たちもいます。
しかし、前述したように、大切なリアル知人とのコミュニケーションで使っている人たち、カメラマン・モデル系の人たちは必ずしも「成功しているしていない」とは無関係な人たちです。
そういう層の人たちまで味噌も糞も一緒にされているmixiに、良い評判が立つわけがない。

ましてや、なかなか招待されずに悶々としてひねくれてしまう人が出現する始末(村八分ならずmixi八分と呼ばれます)。
一部で話題になった「mixiに招待されなかったから、すねてしまって、mixiとブログを両方やっている人たち(厳密には彼らのサイト)をさらし者にする」勘違い組が出てきてしまう。

会員の中からは、危ない人たちが増える。会員の外からはあらぬ疑いをかけられる。

「前門の虎、後門の狼」

mixiはそろそろ、そんな状態になっています。
これをどう方向付けていくのかは、運営元にかかっているのです。

しかし、mixiではないけれど、同じSNSを運営する会社の社長が、雑誌の取材にこう答えています。

「『SNSは何が面白いのかわからない』という人がいる。うどんを食べたことがない人にうどんを説明しても理解できない。でも、実際に使って喜んでいる人がいる。それを理解しようとするかどうかの違いだ」

お客さんはそんなに甘くはありません。
そこまで、考えてもくれない。
いや、考えたけど

「結論。
喜んでいるヤツはキモイやつだ。
だから、私とは関係のない人物たちだ。
以上。」

と結論づけられるのがオチです。
わかってもらうための責任放棄をするような人がSNSの一角を担うようでは、これからのSNSの成長は怪しい…と結論づける日が来ないことを祈ります。
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