■サルにもわかるプレゼンテーション・企画書講座シリーズ
■サルにもわかるプレゼンテーション・企画書講座 その2 プレゼンテーション初級編
■サルにもわかるプレゼンテーション・企画書講座 その3 完結編
プレゼンテーションの時代、本当に到来
先日、ある雑誌社から取材を受けました。
私の友人の紹介で、「プレゼンテーション論を持っている人を知りませんか」というリクエストに、私の名前を上げたとのこと。
その友人はこのメールマガジンの読者でもあったので、前回の講座の記事を渡したそうです。ライターの方は女性でしたのに、「痴漢」の記事も渡していたのには笑ってしまいましたが。
聞くところによると、最近、企業の新卒面接でプレゼンテーションを学生にさせるところが増えているとか。しかも、IBMなどは、「わが社の北米進出についての戦略はいかに」というテーマでプレゼンテーションをさせることが面接の一環だそうです。
いやはや。とんでもない時代になってしまいました。
自己紹介ではなくプレゼンテーション。
昨今のプレゼンテーション・ブームもその一翼をになっているのでしょうか。
しかし、学生さんにプレゼンテーションをやらせて何を見るのでしょう。
しかも、「北米戦略」といった難しいテーマ。
聞く方は人事の専門家でしょうから、例えきちんとした戦略を述べたところで正しく評価できるのでしょうか。いや、マーケティングの部署ですら、ちゃんと判断できるかどうかもわかりません。
コンサルティング企業の新卒面接ではそういう戦略のプレゼンテーションをさせるのは昔からの慣行だそうですが、彼らなら戦略の正否の評価はできるのでしょうが。
「面接者の理論構成を見るようです」とは、その雑誌の編集者の弁。
確かに私も面接では
商品は●●です。
市場状況は▼▼です。
さて、どんな戦略を立てますか。具体的に教えて下さい
と、テーマを振ることはあります。でも、それは30歳以上の即戦力の人材に限った話です。
初心者である学生さんにそんなプレゼンテーションをさせるのは、プレゼンテーションや戦略とはそんなものだと軽視されているような気がして、個人的には楽しくありません。
コンサルティング企業の新卒の若造が知ったような態度をするのは、面接にも原因がありそうです。
もしかしたらメーカー人事部で使っているプレゼンテーションという言葉と、私が思い浮かべるプレゼンテーションとは違うものかも知れません。
ちょっと考えさせられる取材でした。
いずれにしても、プレゼンテーションのテクニックは学生さんでも必要な時代に突入しています。前回12月の予告編記事が好評だったせいもあり、第2弾の時期を早めることにしました。
なお、中級者以上の方々には申し訳ありませんが、中級以上のテクニックについてはそれぞれの項目に追加としてリストアップするに留めました。
中級者以上の方なら、箇条書きの項目を読むだけでも内容が想像つくと思います。
今回は、「基本を思い出す」ためのチェックリストのような使い方をして頂ければ、記事を読む時間を無駄にしないで済むと思います。
ちなみに、私が取材を受けた雑誌名は公表いたしませんので、悪しからずご了承下さい。
だって、むりやり写真を撮られてしまったんですもの。変装もなしに (笑)
顔が割れてしまうと、悪いことができなくなってしまいます (^^;
プレゼンテーションとはコンサルタントにとって唯一の「晴れの舞台」
雑誌の取材でも聞かれました。
思わず本音を答えたのは
という一言でした。
仲間内ではコンサルタントを白鳥に例えます。
水面から見ると優雅な白鳥も、水面下では一生懸命水掻きでこいでいる。
コンサルタントの現場は戦争です。
大声こそ飛び交ってはいませんが、集計表やら調査票、以前提出したレポートなどがところ狭しと机の回りに散在し、一心不乱に分析レポートや戦略企画書を書いています。
パソコンのデスクトップでいえば、17インチではまったく不足です。60-70インチのモニタでなければ、その散在した報告書の束をパソコンの画面上になど再現できません。
そんな日常を2週間ほど過ごして、ようやくクライアントが観客である2時間の舞台がやってきます。黒子の存在であるコンサルタントが唯一主役になれる。それがプレゼンテーションです。
ただ、演劇のように初日はちょっと慣れなくて、回を追うごとに演技に円熟さが出てきて、なんて悠長なことは言っていられません。一発勝負です。
しかも、プレゼンテーションが失敗すれば、報告書の内容など吹っ飛んでしまいます。
プレゼンテーションの場で「興味なし」「つまらない」と烙印を押されてしまえば、報告書を後でじっくり読み返してはくれません。
コンサルタントの評価は一瞬で決まってしまうのです。
緊張の一瞬でもあるわけです。
そのインパクトは今まで打合せなどで培ってきた信用など、一気に消滅する力を持っています。信用を作るのはコツコツと積み上げなければなりませんが、なくすのは1秒で充分です。
それだけに、プレゼンテーションの成功の可否に対する神経の使い方は、並々ならぬものがあります。
今回は、血と汗と涙の結晶のノウハウを惜しげもなく公開いたします。
なお、本記事ではは7つのテクニックを3つの章にまとめました。
第2章は、基本となる「聴衆を疲れさせないためのテクニック」
第3章は「聴衆の心理を元にしたテクニック」
特に、第2、第3章は「初心者はこれだけ守れば、プレゼンテーション効率が1.5倍上がる」という点を中心にご紹介します。
【第1章 : 良くある間違い】
#1 : 身体で覚えよ。練習あるのみ
「オヤジ、またやってるよ」と私。
「おフクロも大変だ。相手をさせられるんじゃ」と弟。
小学校5年と3年の兄弟の会話です。
幼い時には自分の父親がなぜ自宅で演説をしているのか、さっぱりわかりませんでした。
代議士でも何でもない一介のビジネスマンの父親です。多少、会社での地位が高いのは知っていましたが、演説と仕事の関係など幼い私には分かりようがありません。
自宅では単にうるさいだけ。
父親の行動がようやく理解できるようになったのはメーカーを辞めて、コンサルティング会社に入ってからでした。私が33才の頃です。
次の日のプレゼンテーションの練習をしようと、テープレコーダーに向かって喋っていたときでした。
ふと、昔の情景を思い出し、自分の行動が父親とまったく同じなのに気がついたというわけです。血は争えないのでしょうか。
コンサルタントというと頭脳労働者のイメージが根強いのは確かです。
でも実際はかなりの部分を肉体労働が占めます。そのひとつがプレゼンテーション。
練習、練習、また練習。
プレゼンテーションが上手くなるには練習あるのみです。
メーカー時代から数えて、1,000回以上のプレゼンテーションをこなし、1,000回以上の他人のプレゼンテーションを聞いたことのある私でも、時間があれば前日にプレゼンテーションの練習をします。
いや、それだけの数をこなしたからこそ、練習の大切さが身にしみて分かっているといった方が正解です。
と良く驚かれます。
唐突ですが、俳優さんたちが舞台の稽古をするのは当たり前です。
でも、プレゼンテーションとなると、練習をしなくなる人が多いのは何故なのでしょう。ぶっつけ本番が当たり前という人が多いのは不思議でたまりません。
だから、プレゼンテーションの練習など必要がない
と豪語する方もいます。
と突っ込みたくなってしまいます。
演劇は俳優の演技を楽しむものではありません。彼らの演技を「通じた」物語や感動を楽しむものです。
そういう意味では、プレゼンテーションの主役はあくまでも報告書の中身です。でも、だからといって、練習の必要がないことにはなりません。
という内容主義の方もいらっしゃいます。
それも同じです。
脚本に金をかけて練りこみさえすれば、大根役者でもいいという発想です。
いや、それ以上に報告書にはプレゼンテーションの練習の時間も含めるという発想がないまま計画を立てていることに他なりません。
プレゼンテーションはあくまでもおまけ扱い。
だから、私は初心者 (新人社員) には、プレゼンテーション・デビューさせるまで相当な特訓をします。私に叱られて涙をぽろぽろ流す女性もいます。
ちなみに、デビューの目安は50時間の訓練と私のプレゼンテーション観察、最低20回です。しかも、観察後のミーティングは「いいところ3つ、悪いところ3つを指摘せよ」の質問攻め付き。
それで、ようやく10分間のデビュー戦を許されます。
それでおしまいではありません。日々、練習です。私の場合、前日に3回練習をします。
以前はテープレコーダーに吹き込んだものを聞き直すことを繰り返していましたが、5年前からビデオを使うようになりました。身ぶり手振りもプレゼンテーションの大きな要素の一つだからです。
以前のコンサルティング会社で気がついたのですが、プレゼンテーションの上手な人は演劇部出身の方が多いのです。
「プレゼンテーションの女王」と呼ばれていた25才の女性は大学で演劇部、「キング」と呼ばれていた33才の男性は劇団ひまわりに所属していたことがありました。
人前で自分 (の裏にあるもの) を表現する技術に長けている人はプレゼンテーションも上手だという証拠のようなものです。
私も演劇部に在籍したことがありましたし、アメリカで一番最初のアルバイトが地方のドサ回り劇団 (ディナー・シアターという食事をした後に演劇を楽しむレストラン) の現地採用だったという経歴を持ちます。
【第1章 : 良くある間違い】
#2 : プレゼンテーションは体力勝負。寝るのも仕事
誇らしげに語る人を見ると、
と思ってしまいます。
もちろん口に出すセリフは
というお世辞ですが。
プレゼンテーションは相当な体力を使う仕事です。
2時間のプレゼンテーションを余裕でこなしている人は、プレゼンテーションをなめてかかっているか、本当に優秀なプレゼンテータのどちらかです。
まず、「しゃべる」には相当なエネルギーが必要です。
ある研究によると、人間が1日に話す時間を凝縮すると
●無口な人で30分
●普通の人で60分
だと言われます。
プレゼンテーションは、その大半が「おしゃべり」です。つまり、2時間のプレゼンテーションでは、丸々1日分の話すためのエネルギーを費やすことになるのです。
しゃべくりがメシのタネである芸人に無口の人が多いのは当然です。仕事でしゃべり放しでは、疲れてしまうからです。仕事以外でも話好きの明石屋さんまや所ジョージは珍しい存在だと言って良いでしょう。
プレゼンテーションが疲れるのはそれだけではありません。
クライアントの表情を見て取り、相手の心理を探り、一瞬で自分の次のアクションの判断をしなければならないからです。
例えば、OHPの数ページを省略する。説明の仕方を変更する。強調する部分を変化させる等、状況判断を常にするだけの神経を使わなければなりません。
出席者が1人、2人ならまだしも、10人、20人となると、極端に研ぎ澄まされた神経で相手の心理サインを察知しなければならないのです。
これにエネルギーが相当使われてしまいます。
従って、寝不足はプレゼンテーションの最大の敵です。
ましてや、エプソンのカラープリンタの広告の飯島直子のように、プレゼンテーションの前日に酒を飲むなどもってのほかです (広告では、飲み過ぎて寝過ごしたというストーリーになっていますが)。
睡眠を取ること。あるいは、報告書の準備をそれまでにきちんと終えること。これは立派な仕事なのです。
#2 : 自分のプレゼンテーションは必ず自分でチェックすること
#3 : アイコンタクトの重要性を認識せよ
#4 : 自分の話を聞いて欲しくば、ハンドアウトは終了後
#5 : OHPこそデジタルだ
#6 : ファッションチェックはおしゃれだけではない
#7 : しゃべり100なら原稿50の法則
【第2章 : 基本は相手を疲れさせないこと】
#3 : 語尾にこそ力を入れよ
さて、プレゼンテーションに臨む際の第1弾のテクニックです。
その基本コンセプトは「聴衆を疲れさせないこと」ただ1点です。
直接の担当者はまだ内容に興味があるわけですが、一歩、立場を離れるとその興味は半分以下になってしまいます。
例えば、担当者の上司。
「会議なんて面倒だ」
といわんばかりの意識の方も多く存在します。
もっといえば、
「直接は関係ないけれど、聞いて置いて欲しい関係部署」の出席者。
これらのメンバーは最も睡魔に襲われる可能性の高い人たちです。
ひどい時には出席者の70%が寝ていた報告会というケースも、メーカー時代に経験しました (もちろん、プレゼンテータは私ではありません)。
そうでなくても、人間、座ってじっとしているのは辛いものです。
これだけで「疲れ」が出てくる。
従って、プレゼンテーションの初心中の初心は「疲れる要素をどれだけ削ることができるか」の1点に絞られるのです。
その第1歩が「語尾にこそ力を入れる」ことです。
「~だと我々は考えてい『ます』」
女子高生のような「でぇ~」といった口調になっても構いません。それを恐れるくらいなら、語尾が消えてなくなる方を恐れるべきです。
幾つかの理由があります。
1つは、人間は自信がなかったりやましいことがあると、語尾が消えていくものです。聴衆はそれを敏感に察知します。自信のないプレゼンテーションほど、説得力のないものはありません。
これについては、第3章でもお話しします。
もうひとつ。人間の「聞く」ことのメカニズムからの説明です。
聴覚によるメッセージ、つまり口頭による言葉は人間の聴覚からアナログで入ってきます。
例えば
ということばは書き言葉では漢字混じりですが、聴覚にはこう聴こえます。
「こんかいの・・」
「こんかいのしん・・」
「こんかいのしんしょうひんは・・」
人間はこれを一時記憶 (パソコンでいえばキーバッファやキャッシュ。漢字変換ソフトでいえば、変換キーを押す前のひらがな) に瞬時に溜めておきます。
そして、文脈や口調から「、」「。」がついたな、と感じた瞬間にそれが1つながりの文章であることを認識し、意味を解読します。
「しじょうでくせんを、」
「しています。」
そう、漢字変換プログラムと同じ構造です。
さて、ここで、「。」にあたる部分がないあるいは不明確だと、聴衆はその文章をどう解釈して良いのかが分かりません。
語尾を強調するということは、聴衆に対して「ここで、1つの文章の区切りですよ」ということを知らせる重要な役目を果たすのです。
また、日本語は否定、肯定を文末で判断します。
「私は学校に行きま『せん』」
この語尾が消えゆくようでは、180度意味が変わる判断をしなければなりません。
その分、「えっ、どっちだろう」と聴衆に考えさせるようでは疲れが溜まるだけなのです。
「そんなの当たり前だ」と思う方は自分でテープレコーダーに吹き込んでみて下さい。私の経験ではテープに吹き込んだことのない方の70%は自分のプレゼンテーションを聞いて、「そんなはずはない」と驚きます。
語尾が消えゆく原因のひとつは、場の雰囲気に負けてしまうことです。
聴衆は静かにあなたの話を聞いています。すると、その静けさにあなたが同化してしまうのです。しばらくするうちに、話し声が小さくなり語尾が消える。
また、プレゼンテーションは前述のように疲れる仕事です。
最初は元気でも段々と疲れが出てくる。
このペース配分や基礎体力 (?) が低い人は、プレゼンテーションが進むにつれて、声を出すエネルギーが少なくなっていくのです。
だから、自分では気がつきません。
裏話をしましょう。プレゼンテーションを教える相手が以下の条件を備えている人に限り、あることを実施することがあります。
●物事の分別をわきまえている方で
●初級卒業前の方
それは、テレクラに連れていくことです。
防音設備がしっかりしていない店を選びます。
現場をご存じない方に説明すると、客は電話とテーブルと椅子が置いてあるだけの、小さな部屋や薄い板で間仕切りされたボックスに閉じこめられます。女性から電話がかかるとその電話で会話ができる仕組みになっています。
店内は静かなBGMが流れていますが、基本的にはシーンと静まり返っています。そして、隣の客が女性と楽しそうに話しているのがカベの上の空間から聴こえてきます。
さて、初心者はどうなるか。
周囲の静けさに負け、自分の会話を隣の客に聞かれるのが恥ずかしいので、どうしても小さな声になってしまいます。
テレクラに電話をかける女性はそんなことは考えてくれません。いや、現場を知らないのだから当たり前です。
すると、彼女の受話器から聴こえてくるのは
です。こんな相手とは会話が続くわけがありません。すぐに電話を切られてしまいます。
私はそこで何をするか。
テープレコーダーを持ち込んで、その男性の会話を録音します。
2~3本の電話切りを経験してもらった上で、イヤホンで自分の声を聞いてもらいます。
その上で、今度はこう指示します。
そして、またテープに吹き込む。
当然、女性との会話が長く続きますから、本人もその効果が実感できるのです。
【第2章 : 基本は疲れさせないこと】
#4 : ポインタは動かすな
と驚かれることがあります。
完全に誤解です。
確かにポインタはOHPなどのスクリーンで強調したいところ、注目して欲しいところを示すためのものです。
人間は雑食動物ですから、元を正せば野生では基本的に動いているものは食料か敵です。どちらにしても自分の命に関わるものですから、動くものに注意が向くのは本能です。
だから、ポインタが動けばその先を注目するのは自然です。
しかし、それがアダになります。
むやみにポインタを動かすと、聴衆はその無駄な動きまでも追っていき、注意力が散漫になります。それが何回も続くと疲れてしまうのです。
ましてや、ポインタを弄んで手のひらで叩いたり、伸縮するのをいいことに伸ばしたり縮めたりして遊ぶのはもってのほかです。
ポインタは強調したい場所に迷いなく持っていきピタッと止める。これが基本です。
アメリカではOHPのシートの上にペンを置き、その影で強調する部分を示すことを良く見かけます。置いてしまえばペンは動きません。そう、この基本がポインタの使い方です。
だから、私はレーザー式のポインタは絶対に使いません。
レーザー式はペンの先からピンポイントで光が出るもので、どんな大きなスクリーンでも背の低い人でも欲しい場所にポイントできる利点はあります。
しかし、一方で小さな手の動きや震えも反映されてしまうので、光の点が常に揺れるのです。これほど聴衆を疲れさせるものはありません。
追加テクニックとして、ポインタは腕で動かすというより、全身で動かすようにします。
文字では説明しにくいのですが、ポインタを腕の小手先で動かそうとするとレーザーポインタのように先が揺れます。でも、身体全体でポインタを動かそうとすれば、そのブレが少なくなるからです。
【第2章 : 基本は疲れさせないこと】
#5 : 部屋は暗くするな
プレゼン会場に出向き、OHPのセッティングをしていると良くあるのが、クライアントが気を回して部屋の電気を消してくれることです。
そんな時
と言い添えながら、明かりをつけなおします。
OHPマシンはよほどの光量がないと、部屋が明るいと見ずらいものです。
コントラストが低くなるからです。
ましてや昨今のようにカラープレゼンテーションが主流になると、普通の光量では赤なのかオレンジなのかが分からなくなります。それではカラー原稿の意味がなくなってしまいます。
一方で、聴衆にとってみれば、暗い部屋で前述のようにただ座っているだけでは、一層大きな睡魔が襲ってきます。
最も理想なのは、明るい場所でもくっきりと見える光量を持ったOHPマシンを使うことです。
でも、大半のOHPはモノクロ時代の光量が基準ですから、それはかないません。
従って、どちらの不利さを取るかの攻防戦になります。
私は、部屋が明るい方を取っています。
スクリーンのコントラストが低くて見にくいのは、企画書デザイン、文字の大きさ、レイアウトでなんとかカバーできます。睡魔を防ぐテクニックよりも簡単なのです。
#9 : 身ぶり手振りは大胆に
#10 : 自分のパーソナルアイデンティティを決めよ(私のPIは欧米の弁護士)
#11 : 準備体操は失礼に当たらない。特に、昼食後と午後3時は要注意
#12 : 睡眠率で自分のプレゼンテーションの客観的な尺度とせよ
#13 : ジョークの種類は少人数向け (1~3人)、中人数向け (5~10人)、そして大人数向け (50人以上) の3種類存在すると心得よ
【第3章 : 聴衆の心理を考えよ】
#6 : 話の内容は13%
最後の章です。
ここでの基本背景はただ1つ。
「説得力要件」で、「話の内容」が占める割合は13%しかないという研究結果があります。要するに、自分が思っているほど相手は自分の話を聞いていないのです。
心血注いで徹夜もして一生懸命作り上げた企画書ですから、出来上がったものがかわいいのは当たり前。自信があるのも当たり前。
でも、相手はそうは見てくれない。
ここで怒っても始まりません。
死ぬ思いをしようが何をしようが、事実は事実です。結果は結果です。そして、あなたは相手にとって他人です。
そのことを分からないと、きちんとしたコミュニケーションはできません。
ビジネスは情では動かないと知るべきです (そうでない業種もありますが)。
それでは、何が要件の上位を占めるか。
外見40%、口調30%。
「だったら、話の内容はいい加減で良い」というのは早急です。
むしろ、「13%を前提にして、どうするか」を考えるべきなのです。
【第3章 : 聴衆の心理を考えよ】
#7 : 言い切りの原則
そのひとつが「言い切る」ことです。
自分が100のことを言っても、相手には60しか伝わらない。
170言ってようやく100伝わる計算です。
170とは1.7倍の分量の話をしなさいという意味では必ずしもありません。
1.7倍の強さで言っても良いということです。
良く見かけるのが、口頭でも報告書でも「~と思われる」「~ではないか」といった、「ぼやけた表現」です。
これでは、受け取る側はもっとぼやけて理解します。
すなわち、前述したように「何が言いたいの?」と相手に考えさせる、つまりストレスを与えることに繋がります。
それよりは、「~です」「~であるべき」と強く言って、「自分の言いたいことはこれだ」とはっきりした方がよほど親切です。もちろん、それが間違っていれば反動も強いですが、そんなことを恐がっていたらあなたが伝えたいことが伝わりません。
いや、報告書を作った段階で、反論されて困るようなものを作ったあなたが悪いのです。プレゼンテーション以前の問題です。
コンサルタントの立場でいえば、プレゼンテーションでごまかしたり、(自分に有利な) 誤解をしてもらえば、その場は何とかなります。でも、次のアクションで必ずどこかでトラブルが発生します。
例えば、私の提出した戦略で商品が売れなかった。私の分析が間違っていたという悲劇が出現します。
プレゼンテーションでの反論など非ではないくらい、問題が大きくなったり信用をなくすのです。だったら、その場で私の主旨をきっちり伝えた方が後々のトラブル防止にもなります。
と良く聞かれます。
実は面白いことに、強く言って反発されたことは、過去20年間で2回しかありませんでした。率にして0.2%以下。
それよりも「ダメならダメ、いいなら良い」とはっきりさせることが、私の特徴や評価に繋がり「森さんのは分かりやすいし、すっきりする」という評価の方が多いくらいです。
つい最近も、あまりにも「これではダメです」と、OHPでも明確に大きな文字で強調し、胸の前で両手をクロスしてバツを作って強調したため、担当者がヒヤヒヤして、「いつ止めさせようか」と見ていたところ、上司を含めて出席者がおもしろがっていたのを見てほっとした、というエピソードがありました。
ちなみに、失敗のうちの1回では42才の大の大人の担当デザイナーが、泣き出してしまったのです。
という理由でした。
とキーマンの取締役が後でフォローしてくれましたが、デザイナーは繊細な人が多いので、以降それだけは気をつけるようにしています。