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商品・企業の差別優位性チェックポイント
DCCM理論 (TM) (要約)

【詳細版のページ】

ベネフィットの限界-商品の差別優位性

いくら理想的なベネフィットを見つけても、すでに市場で同様の商品を販売していたなら、意味がなくなってしまう。また、逆に言えば、同様のベネフィットを持つ商品が市場に存在する場合、対抗商品より、幅広い流通網を持ち、多額の投資をすれば、シェアを奪うことも可能ということになる。しかしこのやり方では投資効率は低下する。さらに流通力のない企業は、このやり方を踏襲できない。そのため大半の企業は勝ち目のない競争に挑まねばならなくなってしまう。

DCCM理論は、こうした「力の論理」を補うためのものである。

差別性は情報カオス時代を生き抜くための自衛手段

DCCMとは、コミュニケーションを効率的、効果的に行うために必要な要素の総称である。

DCCMのDは「差別性=Differentiatiing」のDである。
差別性が商品や広告において重要な要素であることは、いうまでもないだろう。

例えば、社会心理学者のミルグラムは、商品や広告が氾濫する現代消費社会において生活者は固有の情報(特定ブランドの情報)を収集する時間をできる限り短縮しようとし、そのため重要でないと思われる情報は、極力無視する傾向があると主張している。

DCCM理論で差別性を最初に位置づけているのは、まさにこのためである。企業がどんなに努力しても、生活者に無視されたのでは、商品機能やメッセージに生活者が触れるチャンスすらない。

ゆえに「差別性」で目を引き、まず生活者に商品を注目してもらおうという「商品の自衛手段」が必須になるのである。

差別性と優位性は違う

一つ注意しなければならないのは、「差別性」は、後に説明する「優位性」とは別の、独立した概念であることだ。
差別性とは、単に「違う」ことを意味するに過ぎない。「違う」だけでは、良い、悪い、好き、嫌いなどの優位性についてはの判断はできない。

別の機会で詳しく述べるが、つい数年前まで、時代の流れは「差別化商品」を求めていた。単なるもの珍しい商品が続々と発売され、もてはやされた。基本的欲求、雷同の欲求、優越の欲求を満たした生活者が、今度は他人と異なる行動をする、あるいは他人を否定することによってアイデンティティを確立しようとしたからである。

このため、「差別性」が、即「優位性」としてもてはやされた。これは、生活者が差別化の欲求により自己のアイデンティティを獲得しようとしたからだといえよう。もっともこれらの心理は、自己確認が終わった時点で忘れ去られる。現在、人と違うことが価値を持たなくなったのは、生活者がとりあえず、商品を選ぶことによる自己確認をし終えたからだといえるだろう。

差別性のみのキワモノ商品は真のヒットにはなり得ない

DCCMの第2の要素は「優位性=Copmpetitive」である。

ある商品に優位な点がなければ、購入行動が起こらないのは当然のことだが、「優位性」の対象になるのは、商品に直接関係する「機能」や「コンセプト」だけとは限らない。たとえば「どこでも買える」ことや「みんなが使っている」というのも、「優位性」になり得る。

さて、80年代の日本の生活者は、自分の価値観を模索し、それに合った商品を求めた。
「より差別的」であることが、同時に「優位性」でもあったのである。しかし、先ほど述べたとおり、「差別性が高い商品」がそのまま「生活者の価値観に合致した商品」である時代は終わった。そこで「優位性」が再び独立宣言したのである。

「優位性」は、時代やターゲットが変わっても、常に商品に求め続けられる要素だ。「差別化の時代」においてさえも、「優位性」のない商品は、実はたいして売れていなかったのである。

説得性で生活者の疑いを晴らす

DCCMの第3の要素は「説得性Convincing」である。

さて、説得力を高める要素として、まず商品の素材や製法が挙げられる。
さらに、すでにブランドや企業に対する信頼が確立されている場合は、それだけで十分説得力を持ってしまうことがある。

ブランドや企業そのものが説得力を十分に持っていない場合、最も効果がある材料は「事実」である。さらにデザインも、「説得性」を高める要素になる。たとえば飲料の場合、ラベルを見て一目で味が想像できるデザインは、「説得性」を増す場合がある。

従来のように「これがいいのだから、さあ、買いなさい」式の売り方では「説得性」が得られなくなってきている。商品にも広告にも、「これは、こんな理由でいいのだから、買いなさい」という理路整然とした説得力のあるメッセージが必要なのである。

市場ボリュームのチェック

DCCMの第4の要素は「市場性=Marketability」である。

下図を見てもわかるように、「差別性」「優位性」「説得性」は心理学からのアプローチ、つまり商品や広告のメッセージが個人に効率よく到達するよう編み出された手法である。

しかし同時に、商品も広告も同一のメッセージで大量の生活者に訴求しなければならない。

「市場性」とは、「差別性」、「優位性」、「説得性」を満たした商品が、どの程度の生活者に受け入れられるのかチェックするための要素である。

DCCMの定義とは

DCCM理論は、商品コンセプト開発や、広告メッセージを開発するにあたって考慮しなければならない基本価値基準である。

ここでDCCMについてまとめてみよう。

差別性
(Differentiating)

その商品が持っている他商品との違い。

優位性
(Competitive)

(他商品と違う、同じにかかわらず)、「他商品より良い」、あるいは「他商品より有用な」ところ。

説得性
(Convincing)

(差別性、優位性をサポートする)寄観的で説得力のある事実やイメージ。
市場性(Marketability) (上記3点を備えて市場に投入したときの)生活者の受入れ状況。


【注】このパートは「シンプルマーケティング」(翔泳社)から抜粋しました
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