アルバイト情報誌の2大誌はフロムAとデイリー・アンです。
本来は、「デイリー・アンとフロムA」と逆に標記しなければならないほど、この雑誌の功績は大きいのです。アルバイト情報を店先や大学の掲示板という限られた世界から、出版物という広い世界に引きずり出した功労者が学生援護会が発行するデイリー・アンだからです。
ところが、現在、この2誌の売上は天と地ほどの差です。
「鬼」と呼ばれる私も、さすがにかわいそうなので言えません。
フロムAが完売しているのに、デイリー・アンは在庫山積み、という状態。
この原因は、「カ、キンキン」広告でも、発行元のリクルート社の強力な販売力でもありません。フロムAは実に巧みに読者に対して「自分の顔」を作ってきたのです。
販売数量が圧倒的に開き切ってしまった1980年代後半、この2つの情報誌はすでに「おしゃれなフロムA」と「ダサイ、デイリー・アン」というイメージがついていました。実際に両誌同時に利用した企業もフロムAは「今風の学生」が来るけれど、デイリー・アンは「苦学生」のような古風(?)な人が多い、と言い切ります。
では、本当にデイリー・アンのバイトはダサイのか(死語)。
当時チェックしたことがあります。
学生のバイトにそれぞれの募集記事を見てもらい、以下の3つに分類してもらいました。
それぞれ2,000の広告をチェックしてもらったのですが、意外にも結果は同じでした。
フロムA | デイリー・アン | |
---|---|---|
ダサイバイト | 30% | 30% |
普通のバイト | 50% | 50% |
おしゃれっぽいバイト | 20% | 20% |
【注】当時の数値資料が残っていないので、私の記憶でお話ししています。ご了承下さい。
なぜ、こんなイメージの差ができあがったのか。
当時、創刊時からフロムAは
のように、強調すべきジャンルを表紙に大書しました。また、デイリー・アンにはなかった巻頭記事コーナーを新設。
というように、当時おしゃれで人気の高かったカタカナ職業を全面に出した編集方針を貫いたのです。
インデックスも「勉強したい人」「お金を稼ぎたい人」といった、ベネフィットを中心としたジャンル分けでした。
一方のデイリー・アンはバイト就職情報誌の草分け的存在として当時「日刊アルバイトニュース」という名が示すように、淡々とアルバイト情報を掲載するだけ。しかも、インデックスは「業種別」「地域別」といった、無味乾燥なものばかり。
バイト情報の中身は同じでしたが、「見せ方」によって雑誌の性格を変えたのです。その結果、売上まで変わってしまう。怖いものです。
まったく同じ事が、ぴあと東京ウォーカーで起こったことは、読者諸兄も記憶に新しいでしょう。
同じものなのに光を当てる場所によって、異なったものに見える。
ここまでくると、イメージではなく、商品そのものが変わるのです。
これは、「攻守ポートフォリオ」という概念でシストラット独自の理論を展開しています。
もう一つお話をします。
今度は、商品ではなく「人」の話です。
ある28才のビジネスマンがいました。
当時、彼は、「壊し屋」と一部の幹部に呼ばれていました。
これら2つの例に共通するものがあります。
中身とは別な顔を外に印象づけることによって得をする、という点です。
社会学で言うところの「役割」という考え方を加味すると、ラベリングはもっと身近な考え方になります。
「人を決め付ける」ラベリングと「自分しかいない」役割を合わせると、強力なポジションが得られます。
これをCI(コーポレート・アイデンティティ)をもじって、パーソナル・アイデンティティ(PI)と呼びます。
PIをどう決めれば良いのか。
マーケティング戦略理論の考え方が応用できます。
マーケティングは、生活者に対してたくさんある商品の中からどう効果的に自分の商品を選んでもらうか、をテーマとした科学です。従って、「自分」を商品として冷たい目で見ることができれば、効果的なPIを作ることが可能です。
ここからの後半部分では、その実践ポイントをお話します。
読者の皆さんが練習する時はインターネットの掲示板にしてみましょう。
もちろん、職場や就職活動、部活を対象としても良いのですが、まっさらな状態からスタートできるので、みなさんもやりやすいでしょう。
現在、出会い系メールマガジンやホームページが人気なので、それを対象にしようとも思ったのですが、残念ながら私は妻帯者ですので倫理上の観点から自粛いたします。でも、基本は同じですから、皆さんは出会い系で試してみるのも一つの手です。
実際の作業ですが、ステップとしては4つしかありません。
の4つです。それぞれ、順を追って説明しましょう。
後は、それをイメージしてもらうために、どういうことをしたり言ったりする必要があるか、を考えればおしまいです(これが、DCCM理論で言う説得性です)。