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サービス悪けりゃ、命取り【ファミリーレストラン】 98.11.15

日本の接客がアメリカよりひどくなった

喫茶店に中年男女が2人。そこに無愛想なウェイトレスが、コップをテーブルに叩きつけるように置くと、水がこぼれてしまう。そこで、2人、合唱。

「サービス悪けりゃ、命取りぃ〜。

サービス悪けりゃ、命取りぃ〜。」

ナレシーョン入る。
「苦情、最優先、ニッセン」

通信販売ニッセンの最近バージョンです。
私はわかりやすいニッセンのこんな広告が大好きです。
ニッセンの広告が笑えるのは、ああいったウェイトレスが健在だからです。
喫茶店、特に純喫茶タイプの、駅前のちょっと古い喫茶店では日常茶飯事の光景です。
私は滅多にそういう喫茶店を利用しません。料金には接客に対する対価も含んでいる、と明確に信じている私は、店長に苦情を言ったり、注文をキャンセルして退店したりすることが多いからです。トラブルが少ないファースト・フード店や安心できるチェーン店を利用します。

一体、いつからこうなってしまったのでしょうか?
1971年にマクドナルドが銀座三越1階にオープンした頃は、「画一的なマニュアルを読み上げるだけのような接客は不快だ」という趣旨の論調がまかり通っていました。事実、その2年後にアメリカにわたった私は、アメリカ人の無愛想さに日本の接客サービスの良さを再認識したものでした。

しかし、皮肉なことに今ではマニュアルでの接客サービスを提供している店が、最も心地好いサービスを提供しています。いや、逆に、ワイキキなどの観光地を除くと、飲食店や物販店では下手をするとアメリカの方が日本より接客サービスが良いのです。

事前了解の期待価値に対する価格差(仮)

接客サービスと満足度とは何なのでしょうか。
例えば、マクドナルドでは注文をしたものは客が自分で運び、席を探し、食器を指定された場所に戻します。でも、接客に不満はありません。むしろ、時々店内を歩く従業員が「ありがとうございます」「恐れ入ります」と、トレイを受け取り戻し場に戻してくれると「サービスいいよな」とさえ思ってしまいます。

一方、喫茶店では客は座っているだけ。注文は取りに来てくれるし、食器は持って来る。食器もそのままテーブルに置いて帰っても当たり前。でも、ウェイトレスが無愛想で注文に対して返事もしない、となると「不快だ」という感情が残ってしまう。

とりあえず今回は「事前了解の期待価値に対する価格差」と結論づけておきましょう。
ファーストフードのコーヒーは1杯180円。喫茶店は500円。差額320円の一部は椅子などの座り心地代金、その残りがウェイトレス代金。
だから、500円を支払うときには心地好い(でも、最低限の)接客サービスを期待します。それに反したことをやられると不満が残る、というわけです。

また、私たちはファーストフードがセルフサービスだということをあらかじめ了解しています。だから、自分でトレイを片づけるのは当たり前、という意識があります。そこへ、それ以上の期待していなかったサービスに出くわすと、思わず嬉しくなってしまうのです。

その価格差に納得がいかない客が、ドトールなどの立ち飲みコーヒー店に殺到するという構造です。この点については、「価格をどうとらえるか」というテーマで、機会を改めてお話することにします。

ちなみに、マクドナルドでの接客は「すぐに注文したものが出てくる」ことです。
一方、モスバーガーはオペレーションの構造上それができません(正確には、創業当初は作り置きをするだけの客数が稼げなかっただけです)。その代わりに「ていねいさ」「作りたて」を前面に出すことで、マイナスポイントをプラスに変換しています。


【以下、小見出しと最初の段落のみをご紹介します】

顧客満足度No.1は東京ディズニーランド

先日、おもしろいデータが公表されました。
週刊ダイヤモンドが昨年から実施している「顧客満足度調査」です。

ファミリーがいないから「ファミレス(Family-less)」?

1970年にファミリーレストランの草分け的存在「すかいらーく」が、ことぶき食品という小規模スーパーマーケットの一部門として国立に1号店をオープン。1973年のオイルショック時代から脚光を浴び、ニューファミリーという「家族みんなで楽しむ」新しい価値観を持った層を中心に急成長。いまや、年間約3,000億円の規模を誇る大産業です。

が、ここに来て成長が止まっています。

顧客の変化による接客サービスの変質が起きている

すると、何が起こるか?
接客サービスの変質です。

観察も立派な調査

おもしろそうなので、簡単な調査をしてみることにしました。

上記3点のうち、「呼んでも来ない」回数と「客に働かせる」回数をテーマに観察調査を実施するのです。

ちょっとかわいそうな対象店選び

さて、調査店は私のオフィスの近場にしました。本格的なサンプリング(バラツキのないように対象店を例えば郊外型と都市型に分散すること)は割愛しました。考え方や調査の方法は同じですから、皆さんの参考にはなると思います。

手を上げたまま30秒間の条件

調査方法は以下の2点です。

何回呼べば従業員(ウェイター・ウェイトレス)がテーブルに来るか
●「すみませ〜ん」と普段の声の大きさで呼びかけます。

●手を上げ、視覚的にも注意を促します。

●ただし、近くに従業員がいるかどうかは気にしません。

店によっては客席数に対する従業員数が少なく、自分のテーブルの近くまで来るのを待たなければ、注文ができないので、同伴者とおちおち話もできない、ということがあります。でも、このこと自体がサービス失格ですので、従業員とテーブルの距離に関係なく呼びかけ続けます。

●そして、30秒間に普通の声量で1回呼び掛けをします。

●手はあげたまま。

すごい結果になってしまった

実験調査といっても、勝負は目に見えています。
週刊ダイヤモンドですでに結果が出ているからです。

「お客さん、皿をどけてください」

実に、5回に3回は客に食器を片づけさせる結果となりました。
他の店は「もちろん」ゼロです。
ただ、これは、上の「呼んでも来ない回数」とは、構造が異なります。

おまけ:注文間違い

最初は予定に入っていなかったのですが、興味深いので公表します。
実は、注文間違いという現象が頻繁に起こっていました。

顧客満足を正面から捉えていますか?

「学生時代に空間プロデュース等の仕事をしたことがあります」
という方に採用面接することが以前在籍していた会社で良くありました。

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