では、どうしたら、身体測定機になることができるのか。
簡単です。
Plan
- Do - See を繰り返すだけです。
例えば、商品の普及率やテレビの視聴率を例に取りましょう。
「自分が週に2回見るなら、その期間の露出量は1,200GRPくらいだろう」
というような人間変換機になることを、ここでの目的とします。
まず、自分の興味のある商品の広告をチェックします。
自動車が好きなら気になるプリウスの広告、ビールが好きなら中山美保の一番搾り。何でも結構です。もちろん、最近多い「食べっぱなし型」の永谷園やカップヌードルのようなワンパターン広告でも良いでしょう。
興味があるものなら、やっていて楽しいから、という単純な理由です。
その上で、
「これなら1,000GRP〜2,000GRPくらいの露出量」
と自分の回答をメモに書きます。当初の感覚を忘れないようにするためです。
メモは強くお勧めします。
成長のない人間にありがちなのは、自分が最初に思っていたことをすっかり忘れ、結果を見てから「俺の思ったとおりだ」と思い込むことだからです。
中には自分が間違ったことに気がついていても、見栄を張りたいがために「だから俺が言ったとおりだったろ」と言うようなイヤな奴もいます。でも、大半は事実を目の前にして、その強力な誘因力に負け、自分が何を感じていたのかを忘れてしまうのです。
これでは、学習能力がまったくない人間になってしまいます。
さて、メモを書き終わり、その広告が見られなくなった段階で、広告代理店などに依頼して、正確な露出量を調べる。これを繰り返すだけです。
情報ルートのない人は、テレビドラマの視聴率でも構いません。番組改編の春や秋に主要なドラマを1〜2回チェックします。「このタレントが出て、この内容なら視聴率はこれくらい」と、やはりメモを残します。
番組の最後や途中で、テレビ局に電話すれば正確な視聴率を教えてくれます。
もちろん、最初はまったく当たりません。ボロボロです。
私の場合、15年ほど前に初めてテレビの視聴率をチェックした時は、2クール(1年間)くらいは、実際と私の予想数字に倍近い差がありました。「よし、このメンバーなら、視聴率18%は固いな」と思っていたら、10%くらいの視聴率しかなくてガックリしたり、逆に2倍の視聴率が上がって、びっくりしたり、という連続でした。
商品や消費者行動の普及率は自分の感覚だけでなく、メディアを見ることによってもおおよその感覚は掴めます。
ところで、身体測定機の訓練を積むにあたって、気をつけなければならないポイントが1つだけあります。
私はプロのマーケティング・コンサルタントです。その皮膚感覚を研ぎ澄ますのはメシのタネでもあります。
だから、例えば、自宅からオフィスまでの通勤にクルマは絶対に使いません。
電車内の人々や会話、広告、駅や街を行き交う人々、そして、店頭の商品すべてが情報源だからです。
その時は、少なくとも1ケ月に1回は次項でお話しする定点観測をしていました。ただ、商品開発部に配属された時の最初の1年間はほとんど出ずっぱりでした。昼間だろうが、夜中だろうがいろんな場所に出かけます。
今だからこそ、若かりし頃の恥をお話しできますが、あの頃は、平日の昼間からナンパしたり、20年前では珍しかった「女子高生の援助交際」の現場を見に、昼の新宿や夜中の綾瀬まで行ったり(彼女たちに話しかけはしましたが、客にはなっていません。念のため)、当時流行りかけていたカフェバーを1日5〜6軒、計300軒を2ケ月足らずに一気に回ったりと、まともなビジネスマンではありませんでした(1軒で1杯しかカクテルを飲みませんが、私、酒が弱いので、5〜6軒目にはベロンベロン状態になってしまいました。なお、私が在籍していたのは酒類のメーカーではありません)。
大体の感覚が掴めるようになったら、その精度を上げることを目標として下さい。
さて、感覚を十分磨いたら、最後は上級編です。
中級編では感覚を実態と合わせました。
今度は、感覚を理論と合わせます。