さて、このシリーズの最後に、シストラットでのケースを具体的に、面接の質問、という形でご紹介します。
もちろんこれは普遍的なものではありません。シストラットだけのユニークな部分もありますので、そのおつもりで。
悪いところ3つ、は言える人が多いのですが、良いところをきちんと言える人は少ないものです。
広告代理店などでは「クライアントの商品を好きになることが、仕事の第1歩」と言われますが、生活者の代表であるコンサルタントは、良くも悪くも客観的な目でクライアントの商品を見る必要があります。
「冷たい認識と熱い対応」は私の信条ですが、これを実践するには冷静な目が大切です。日本人の美徳意識や遠慮意識はまだまだ若い人にも息づいていますが、それを乗り越えて自分を観察できなければ、他人(クライアントの商品)を観察することはできません。
実は、もうひとつ理由があります。
コンサルタントはあくまでも個人が前面に立ちます。その時に、自分の個性をきちんと意識しないと仕事になりません。体育会系の体躯と容貌の男性が女性下着のコンサルテーションをしようとしても、説得力がないのは当然でしょう。
私の知り合いのコンサルタントは、自分はしゃべりが下手であることを十分に理解しています。だから、彼はそれを補うために企画書や報告書を文字主体で作成します。
もうひとりのコンサルタントは以前演劇をやっていたため、多人数の聴衆を相手にするプレゼンテーションが得意です。従って、彼の報告書はOHP形式で文字も図も簡潔なものが多くなります。
「敵を知り、己を知れば百戦危うからず」。クライアントは「敵」ではありませんが、コンサルタントの資質に関して言えば真実のことばです。
なお、この質問のバリエーションとして、たった今、会ったばかりの「面接担当者の良いところ3つ、悪いところ3つ」を上げてもらうこともあります。
さて、「自分を冷静に観察できているか」という目的の他に、それぞれ3点の概念がきちんと分割されているかどうか、を回答から探っています。
例えば、「元気であること」「周囲を明るくすること」が良いところだとしましょう。
さて、この場合、この2つは独立した概念ではなさそうです。元気「だから」周囲を明るくする、と考えると「周囲を明るくすること」は「元気である」ことに従属したポイントであり、一見2つの良いところを回答しているように見えても、1つしか答えていない、ということになります。
もちろん、独断で決め付けることはしません。「・・・と思うんだけど、それぞれは別のことを言っているのかしら、それとも同じ事?」と聞き返します。
自分の考え方を言葉にして表現する力を初めから持っている人は、そう多くありません。それは、幾らでも教育できます。だから、その場でディスカッションをして確認します。私にとって、その過程もその人(応募者)を知る大きな材料になるのですから。
話はずれますが、「良いところ3つ、悪いところ3つ」法は便利なので、入社1年目の社員の教育などにも多用します。
例えば、プレゼンテーションが終わった後、オフィスに帰る途中で記憶が新しいうちに「さっきのプレゼンテーションの良いところ、悪いところ3つづつ」というように確認していきます。ここで大事なのはしつこいくらいに毎回実施することです。最初は大したコメントができないのですが、回を重ねていくうちに冷静にプレゼンテーションを見ることができるようになります。また、私や先輩のプレゼンテーションを聞いていても、「またあれを聞かれる」と思えば、良いところ、悪いところを探しながら観察するようになります。これが、自分がプレゼンテーションの場で主役になったときに大きな効果をもたらしてくれるのです。
次の質問はシミュレーション・ゲームのようなものです。
最後のパートです。ここではまず、「最近印象に残った、街角で見かけた人について教えてください」という質問から始まります。もちろん、この人は赤の他人でなければいけません。
面接での質問のボリュームが多いのに気がつかれた方もいらっしゃると思います。
1対1でこういった質問をベースに面接をするので、1回につき優に2時間はかかります。
ではどうしたら、この2つの資質が伸ばせるのか。
正直言えば、シストラットではこの2つを既に持っている人にしか興味がないので、「どうすべきか」という問いに答えるだけの十分な経験を持っていません。
ですから、「こうすればいかが?」という方策をリストアップするに留めたいと思います。