今日のテーマは家庭用ゲーム会社の大手スクウェアの初めてのネットゲーム、「ファイナルファンタジー11」です。
あ、今、イヤな顔をした読者が最低でも15人は頭に浮かびました (笑)
というのも、過去に2回、ゲームの話をしたのですが、読者からの反応がさっぱりだったからです。
それでも、私は書きます (笑)
二の轍を踏んでしまうかも知れませんが、書かずにはいられない面白いテーマなのです。
まず、記事の主役である「ファイナルファンタジー11(以下FF11)」を説明しなければなりません。
FFはプレイスーションなどの家庭用ゲーム機で遊ぶゲームで、ドラゴンクエストと並んで日本の二大RPGと言われてきました。
RPGとは「ロールプレイングゲーム」の略で、物語を追うようにテレビゲーム上の主人公を操作して、その成長を楽しむものです。
敵(モンスターや悪魔など)と戦って勝つことによって、「経験値」と呼ばれる報酬が増えるたびに「レベル」が上がり、攻撃力や防御力が強くなる。これを繰り返すことで、最初は相手にもならなかった敵のボスに勝つことができるようになる。
物語に沿ってゲーム進行をする中でその達成感や爽快感を味わうのがRPGです。
多くのRPGは剣と魔法と竜が登場する中世世界を舞台にして繰り広げられる物語です。最近のヒット映画「ロード・オブ・ザ・リング」をお手本にして作ったゲームといえば分かりやすいでしょうか。
「ファイナルファンタジー11」はシリーズ初のネットゲームです。
サービスが始まったのが事実上今年の6月ですが大きな問題を抱えています。
売上げが投資額に追いついていないのです。つまり赤字。
最高400万枚もの売上げを上げたことがあるFFシリーズなのに、今回のFF11はたったの15万枚。一方、投資額はゲームの制作費用だけでなく、サーバーやネットワーク構築のためのお金も必要になる。
公式な費用は発表していませんが、任天堂社長をはじめ、投資の回収ができていないと考える関係者が多数います。
当のスクウェアは失敗を認めていません。
ネットワークゲームの商売の仕方が従来と違うから、というのが彼らの言う理由です。
どういうことか。
FF10までのFFは客が店頭でソフトを買い、家に持ち帰れば売上げが立ちます。
そして彼らはゲーム機にソフトをセットするだけ。一人で遊びます。
しかし、FF11はネットゲームです。ネットにつながなくては遊べません。そして、赤の他人とチームを組んで遊びます。
そのための費用が、店頭のゲーム購入費用の他に月々1,280円必要になります。
売りきりではなく入会金プラス会費制の商売の仕方です。
スクウェアはこの月々費用も売上げに計算に入れろと主張しているのです。
例えば、ユーザー1人が1年間遊べばソフト購入代金の3倍が売上げになる。
スクウェアはFF11のサービスを4〜5年続けると宣言していますから、ソフト単体の約10倍の売上げを見込んでいることになります。
一見、スクウェアは正しいように見えます。
しかし、
をきちんと考えないと、成功か失敗かの判断はできません。
売上げ本数だけでなく、スクウェアの考える4〜5年を本当にユーザーが遊んでくれるのか。検討する要素はこの2つです。
では、彼らの要望に従って計算してみましょう。
まず売上本数をみてみます。
15万本しかありませんから、それを3倍(1年間遊ぶ)したところで45万本。シリーズ最高の売上本数の1/8にしかならない。
11月7日にウィンドウズ版が発売されますが、予約で3〜5万本だと発表されています。人気ゲームの予約本数の比率を考えても、プレイーション版と合わせて25万本いきません。
1年間遊ぶとして75万本分。最盛期の1/5です。
なあんだ。
スクウェアの主張する「月々の収入」を計算したところで、400万本を売り上げるシリーズなのに大したことはありません。
設備投資金額は分かりませんが、恐らく回収できないでしよう。
発売後4カ月経った現在の売上げも微々たるものです。
正確な数字は分かりませんが、ゲーム雑誌ファミ通のベスト30を見ていると、週間売上げ2,000本以上のタイトルにFF11の名前が乗っていません。すると週間数100本の売上げと見た方が妥当でしょう。ほとんどゼロに等しい。
次の検討要素は「遊ぶ期間の平均」です。
こればかりは誰にも分かりません。簡単に言えば
という単純な方程式で考えるしかありません。
しかし、推測はできます。「面白い」という感覚を「数字」に置き換えてみます。
今までのRPG(以下「オフラインゲーム」と呼びます)は大体50時間くらいのプレイ時間で終わるように設計されています。
これがメーカーの考える「適性プレイ時間」だとすれば、1日2〜3時間を2〜3日おきにプレイすれば、約2ヶ月になる計算です。
次にネットゲームがオフラインゲームより魅力的だと好意的に解釈します。
その代表的存在が、ネットゲームの世界で「廃人」と呼ばれる、ネットゲームに没頭する人たちです(本当の廃人は、ネットゲームを遊ぶために会社を辞めたり、転職してしまうような人たちのことです)。
私の友人は今までのFFですら500時間遊びますが、FF11ですでに1,000時間を超えました。自他とともに認める「廃人クラス」のユーザーです。
その彼女が「そろそろレベル上げに飽きてきた」と言い始めています。
FF11が普通のゲームの2倍魅力的だと乱暴に仮定すれば、上記の普通の人たちは約4ヶ月で飽き始める計算になります。
解約までの惰性期間を考慮に入れても、先の4ヶ月は6ヶ月間にしか伸びません。
スクウェアが計画した4〜5年どころか、私が仮定した1年間にすら足りません。
うーん、これでは、スクウェアがどう主張しても、根本的に今までのゲーム内容である限り、そう長くは続かないゲームであり、そして彼らの言う「ビジネス」にもなりそうにありません。
私が「FF11はビジネスとして失敗である」という根拠はここにあります。
私がこんな説明をしなくても、当のスクウェアの経営陣は間接的に認めているようです。
先日の株主決算発表の場で、ネットゲームへの投資の縮小が発表されたからです。失敗とは思っていなくても、経営に影響するほど投資額が膨らみ、回収が容易でないことを認めたからこその、縮小方針です。
先ほど、
といいました。
ここからは、この公式を将来予測にしてみます。
とはいうものの、事前の期待が大きければ、5万円を支払っても良いと考えるユーザーだって多くなります。
さて、ここでステップ1「FF11を知らない人でも買いたくなるか(トライアル購入意向)」に話題を移しましょう。
楽しいハズのゲームが苦しいゲームになっている。
昔、あるRPGの開発者が「達成感というのはそれまでの過程が苦しければ苦しいほど、強いものなんです。だから、どれだけユーザーを苦しめるのかが勝負です」なんて、インタビューで語っていました。
とんでもない誤解です。
さて、ゲーム開始時の話に戻ります。
開始後10時間。あまりにもゲームがつまらないので、7万円の投資を諦めて止めようかとウロウロしているうちに、見知らぬ人から電話がかかってきました。
さて、ここまで読み進めて来た人たちは不思議に感じると思います。
ネットなのに、なぜもっと気楽になれないのだろう。ゲームなのだからなぜもっとアバウトになれないのだろう。
そんなに苦しいのになぜゲームを進めるのだろう。
ところが、そのことは、現代の若い人たちが敬遠する要素であることに他なりません。