真面目な顔をしてこう言い放った瞬間、目一杯大きな口を開けて、彼女の顔ほどもありそうな大きなケーキに食らいつく。
食らいつく。
食らいつく。
画面には大きなスーパー。
低カロリーシュガー「スリムアップシュガー」の広告だと記憶しています。
あの女性モデルの勢いは今でも脳裏に焼き付いています。
最初に見たときは大きな声で笑ってしまいました。
気持ちがよいくらいの潔さです。一辺にあのモデルさんのファンになってしまったほどです。
場面が変わります。
先日、オフィスのある東京恵比寿の低価格ステーキハウスにひとりで食事に行ったときのことです。
隣の席に女性のひとり客が座りました。
代官山のハウスマヌカンという出で立ちの若い人。
私はというと、ステーキをほおばりながら、聞くとはなしにウェイトレスとの会話を聞いていました。
え? 400?!!!
びっくりして隣を振り返ると、確かに彼女の細い指はメニューの「400g」を指しています。
しばらくしてジュージュー音を立てた400gの肉のかたまりが彼女の目の前に出されました。
ゆっくりと、でも着実に平らげていきます。
「ほう・・」さすがに感心して見とれてしまいました。
いい食べっぷりです。
食べっぷりと言えば、知り合いの20才の専門学校生の女性は身長152センチでスリム体型。
要するにミクロなのですが、ごはんが大好きで、調子の良いときにはチャーハンにすると3合(約1kg)を平らげてしまうという大食漢です。
今度は甘いもの。
数年前、世田谷のチーズケーキファクトリーに行ったときのことです。
ここのチーズケーキは絶品で、私も大ファンです。
ケーキ食べ放題のコースもありました。
ケーキ屋さんですから、客の大半は若い女性。
それがまた食べる食べる。
向かい側の20才そこそこ(に見える)女子学生さんはたった30分で7個のケーキを平らげてしまいました。同伴者の女性も3個をペロリ。かくいう私もチーズケーキは大好きなので、5個頂きました。
甘いものは別バラ(腹)とよく言いますが、それを実感したひとこまでした。
後日、チーズケーキ・ファクトリーの役員とプライベートで話をする機会があったのですが、7個なんてかわいいものだそうです。猛者は4〜5時間粘って、15個は食べて行く。
と本音を語ってくれました。
すごい、と思ったのもつかの間。もっとすごい人が身近にいました。
私がいつも世話になっている恵比寿のスポーツマッサージのトレーナーです。彼は体育大学卒業。シドニーオリンピック出場選手の何人かは彼の後輩でもあります。
うー。何だか文章を書いているだけでお腹が一杯になってきました。
胸焼けがするかも・・ (笑)
ダイエット本は常にベストセラーになると言われています。確かに、20代女性のうち52%がダイエットを実施していますし、ダイエットのせいで骨粗鬆症が増えたと警告が発せられています。
しかし一方で、私の周りには「ダイエット、何処吹く風」と言わんばかりの女性も数多く見かけるのです。52%の残りの48%の人たちです。
チーズケーキの例だけではなく、よく食べる女性は私の周りにいくらでも見つかります。
冒頭のお話がそれに当たります。
立ち食いそばでも最近女性の姿を見かけるようになりましたが、スーツが似合うOLさんが大盛を頼んでいる姿には、中年の私でも「かっこいいぜ、オイ」と感嘆させるパワーがあります。
かといって、日本人全体の食事量が増えているという統計はありません。
カロリー摂取量だけを見れば、微減です。
ということは回答はひとつしかありません。
食べる、食べないが両極端になっている。
食べる人が増えた一方、ダイエットで食べる量が減った人がいる。だから、相殺されて全体では微減という計算式が成り立ちます。
あくまでも仮説ですが。
さて、私はコンサルタントです。
食品の仕事をしていると、どうしても「おいしさ」や「おいしさの演出」に目が行きます。
実際にアンケート調査をしても、重視点の上位には必ず「おいしいこと」が鎮座まします。
一般の生活をしている私たちも、「あの味で500円は高いよね」という会話はなんということもありませんし、場合によってはちょっと「味の分かるヤツだぜ、オレは」的なニュアンスがあります。一方で、「あの分量で500円は高いよ」という会話は、男同士でも若いとき以外はできない雰囲気があります。
と言われたこともあります。
もちろん、食品のオピニオンリーダーは女性であり、男性の意見をくみ取るよりもヒットに繋がる可能性があるのが理由でもあります。だから、比較的少食で、味を追求する女性層にターゲットを絞った方が効率的なマーケティングができる。
それも分かります。
しかし、おいしさは多少犠牲にしても、安くてお腹が一杯になることを重視する人たちは確実に存在します。体育会系の学生さんだけではありません。30代のサラリーマンにだってそういうニーズはしっかりあるのです。
東京でも特に学生街を中心に、「量が多くて安い」店が繁盛しています。
牛丼の吉野屋は高級店や若者店の実験がことごとく失敗。結局、特盛が大ヒットし、売り上げの25%にまで成長した実績があります。
またカップラーメンでも大盛が最初に登場したときに大ヒットになったことが、そういう層が確実に存在することの証明でもあります。
そうなると気になるのが、商品やメニューの「一人前」や「2〜3人様用」といった表示です。
一体、あの表示を生活者はどう考えているのでしょうか。
そんなことをつらつらと考えていたある日です。
友人たちと話をする機会がありました。
そんな男ばかりの会話をきっかけに、ちょっと調べてみたくなってしまいました。
がテーマです。
要するに「盛りが良い、悪い」の差が本当にあるのかということです。
上で紹介した雑談を本当に検証してしまおうという「おバカ企画」です。
次のリストはそれぞれの本部に訪ねた規定値です。
各店とも具体的な数字をなかなか教えてくれず、難儀したと担当の荻野がぼやいていました。
さて、本部の評価がひととおり済んだところで、次は実際の持ち帰り弁当の評価です。
現場は本部指示を守っているのでしょうか。
実際に測った量目が次のリストです。
表が大きくなるので、肉だけに絞りました。まず牛丼です。
あえて書く順番を逆にしましたが、ここで、明らかにしたい前提条件があります。
実はそれぞれの量目はすべて一発勝負です。平均はあえて取っていません。従って、持ち帰り弁当の盛りの差は単なる偶然、運が悪かっただけなのかも知れません。
これがスーパーやコンビニで扱っている商品なら大問題です。
お菓子などのパッケージ商品は法律で内容量の記載が義務づけられています。100gの容量のポッキーがもし90gしかなかったら。
あるいは、精肉売場で豚肉肩ロースのパックに280gと表示されているのに、測ってみたら260gしかなかったとしたら。
苦情殺到、新聞書き立て、インターネットの企業告発ページ急増必死。