先日、ある雑誌社から取材を受けました。
私の友人の紹介で、「プレゼンテーション論を持っている人を知りませんか」というリクエストに、私の名前を上げたとのこと。
その友人はこのメールマガジンの読者でもあったので、前回の講座の記事を渡したそうです。ライターの方は女性でしたのに、「痴漢」の記事も渡していたのには笑ってしまいましたが。
聞くところによると、最近、企業の新卒面接でプレゼンテーションを学生にさせるところが増えているとか。しかも、IBM などは、「わが社の北米進出についての戦略はいかに」というテーマでプレゼンテーションをさせることが面接の一環だそうです。
いやはや。とんでもない時代になってしまいました。
自己紹介ではなくプレゼンテーション。
昨今のプレゼンテーション・ブームもその一翼をになっているのでしょうか。
しかし、学生さんにプレゼンテーションをやらせて何を見るのでしょう。
しかも、「北米戦略」といった難しいテーマ。
聞く方は人事の専門家でしょうから、例えきちんとした戦略を述べたところで正しく評価できるのでしょうか。いや、マーケティングの部署ですら、ちゃんと判断できるかどうかもわかりません。
コンサルティング企業の新卒面接ではそういう戦略のプレゼンテーションをさせるのは昔からの慣行だそうですが、彼らなら戦略の正否の評価はできるのでしょうが。
「面接者の理論構成を見るようです」とは、その雑誌の編集者の弁。
確かに私も面接では
と、テーマを振ることはあります。でも、それは30歳以上の即戦力の人材に限った話です。
初心者である学生さんにそんなプレゼンテーションをさせるのは、プレゼンテーションや戦略とはそんなものだと軽視されているような気がして、個人的には楽しくありません。
コンサルティング企業の新卒の若造が知ったような態度をするのは、面接にも原因がありそうです。
もしかしたらメーカー人事部で使っているプレゼンテーションという言葉と私が思い浮かべるプレゼンテーションとは違うものかも知れません。ちょっと考えさせられる取材でした。
いずれにしても、プレゼンテーションのテクニックは学生さんでも必要な時代に突入しています。前回12月の予告編記事が好評だったせいもあり、第2弾の時期を早めることにしました。
なお、中級者以上の方々には申し訳ありませんが、中級以上のテクニックについてはそれぞれの項目に追加としてリストアップするに留めました。中級者以上の方なら、箇条書きの項目を読むだけでも内容が想像つくと思います。今回は、「基本を思い出す」ためのチェックリストのような使い方をして頂ければ、記事を読む時間を無駄にしないで済むと思います。
ちなみに、私が取材を受けた雑誌名は公表いたしませんので、悪しからずご了承下さい。
だって、むりやり写真を撮られてしまったんですもの。変装もなしに (笑)
顔が割れてしまうと、悪いことができなくなってしまいます (^^;
雑誌の取材でも聞かれました。
思わず本音を答えたのは
という一言でした。
仲間内ではコンサルタントを白鳥に例えます。
水面から見ると優雅な白鳥も、水面下では一生懸命水掻きでこいでいる。
コンサルタントの現場は戦争です。大声こそ飛び交ってはいませんが、集計表やら調査票、以前提出したレポートなどがところ狭しと机の回りに散在し、一心不乱に分析レポートや戦略企画書を書いています。
パソコンのデスクトップでいえば、17インチではまったく不足です。60-70インチのモニタでなければ、その散在した報告書の束をパソコンの画面上になど再現できません。
そんな日常を2週間ほど過ごして、ようやくクライアントが観客である2時間の舞台がやってきます。黒子の存在であるコンサルタントが唯一主役になれる。それがプレゼンテーションです。
ただ、演劇のように初日はちょっと慣れなくて、回を追うごとに演技に円熟さが出てきて、なんて悠長なことは言っていられません。一発勝負です。
しかも、プレゼンテーションが失敗すれば、報告書の内容など吹っ飛んでしまいます。プレゼンテーションの場で「興味なし」「つまらない」と烙印を押されてしまえば、報告書を後でじっくり読み返してはくれません。コンサルタントの評価は一瞬で決まってしまうのです。緊張の一瞬でもあるわけです。
そのインパクトは今まで打合せなどで培ってきた信用など、一気に消滅する力を持っています。信用を作るのはコツコツと積み上げなければなりませんが、なくすのは1秒で充分です。
それだけに、プレゼンテーションの成功の可否に対する神経の使い方は、並々ならぬものがあります。
今回は、血と汗と涙の結晶のノウハウを惜しげもなく公開いたします。
なお、本記事ではは7つのテクニックを3つの章にまとめました。
特に、第2、第3章は「初心者はこれだけ守れば、プレゼンテーション効率が1.5倍上がる」という点を中心にご紹介します。
「オヤジ、またやってるよ」と私。
「おフクロも大変だ。相手をさせられるんじゃ」と弟。
小学校5年と3年の兄弟の会話です。
幼い時には自分の父親がなぜ自宅で演説をしているのか、さっぱりわかりませんでした。代議士でも何でもない一介のビジネスマンの父親です。多少、会社での地位が高いのは知っていましたが、演説と仕事の関係など幼い私には分かりようがありません。自宅では単にうるさいだけ。
誇らしげに語る人を見ると、
と思ってしまいます。もちろん口に出すセリフは
というお世辞ですが。
さて、プレゼンテーションに臨む際の第1弾のテクニックです。
その基本コンセプトは「聴衆を疲れさせないこと」ただ1点です。
直接の担当者はまだ内容に興味があるわけですが、一歩、立場を離れるとその興味は半分以下になってしまいます。例えば、担当者の上司。
「会議なんて面倒だ」
といわんばかりの意識の方も多く存在します。
もっといえば、
「直接は関係ないけれど、聞いて置いて欲しい関係部署」の出席者。
これらのメンバーは最も睡魔に襲われる可能性の高い人たちです。
と驚かれることがあります。完全に誤解です。
確かにポインタは OHP などのスクリーンで強調したいところ、注目して欲しいところを示すためのものです。
また、人間は雑食動物ですから、元を正せば野生では基本的に動いているものは食料か敵です。どちらにしても自分の命に関わるものですから、動くものに注意が向くのは本能です。だから、ポインタが動けばその先を注目するのは自然です。
クライアントに出向き、OHP のセッティングをしていると良くあるのが、クライアントが気を回して部屋の電気を消してくれることです。
そんな時
「部屋が暗いと眠くなってしまうので」
と言い添えながら、明かりをつけなおします。
最後の章です。
ここでの基本背景はただ1つ。
「説得力要件」で、「話の内容」が占める割合は13%しかないという研究結果があります。要するに、自分が思っているほど相手は自分の話を聞いていないのです。
そのひとつが「言い切る」ことです。
自分が100のことを言っても、相手には60しか伝わらない。
170言ってようやく100伝わる計算です。
170とは1.7倍の分量の話をしなさいという意味では必ずしもありません。
1.7倍の強さで言っても良いということです。
取材を受けた雑誌のゲラ刷り原稿が丁度本日送られてきました。
前回の記事と今回の記事をまとめてコンパクトにまとめてくれた分かりやすい記事です。せっかくですから、本当の初心者向けに10ケ条という形でまとめて頂いていたので、それを引用しましょう。学生さん向けです。