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安いからモノが売れるのか【一般商品とキャバクラ・クラブ】 99.7.1

安いものが売れている

手元に「日経トレンディ7月号」があります。

第2特集が「お値うちヒット商品の裏側」と題した、低価格が話題を呼んでいる商品の特集です。89,900円のPBパソコンや1,500円のゲームソフト、1,999円の三ツ星レストラン格安ランチ等の話題が並んでいます。

日経トレンディは相当価格の話題が好きなようで(正確にはトレンディの読者というべきですが)、半額商品の話題などを過去にも何回か特集しています。

今回の不況で価格という存在はずいぶん見直されています。
時代を反映する雑誌として、当然といえば当然の特集です。

確かに日本マクドナルドは元気です。
その原因はご存じ半額セール。
ハンバーガー90円の時などは、大量に買い込んで冷凍庫で保管するという強者もいましたが、大半は他の商品も買い込むので、売り上げだけでなく営業利益もうなぎ登り。

ヤマダ電機も元気です。
その原因は圧倒的な安さ。
同じディスカウントストアの城南電機の倒産を尻目に、今や安売りの町ではなく観光地となった秋葉原、そして隠れた安売りの町として人気はあるものの、統一価格で店に面白みがない新宿西口をしのぐ勢いです。

100円ショップが盛況です。
シストラットのオフィスがある東京恵比寿のスーパー松坂屋ストアは、2階の半分以上の売り場を100円ショップに変えてしまいました。
100円ショップコーナーで山と積まれている電池やボールペンと同じものが、2メートル先の売場の棚で3倍の価格がつけられています。

発泡酒が大ヒット。説明は不要でしょう。

「安ければ安いほど良いのは当たり前。これらの商品が売れて当然」

という声があります。
「そうだよね」とうなずきかけてしまいそうですが、本当にそうなのでしょうか。

カラオケボックスは1時間100円と自分の首を締めているとしか思えない価格設定をしているところもありますが、売り上げは減るばかり。
一方で、高額商品もそれなりに売れています。
「価格が安ければ良い」という訳ではなさそうです。

100円ショップは驚きを売っている

「それは森さん、当たり前だよ。
安かろう悪かろうでは、今の消費者は動かない。
『安くて質が良い』のが今の流れだもの。
100円ショップだって、安いだけじゃなくて、『今まで300円、500円のものが100円』だから売れるんだ」

そのとおりです。

100円ショップのトップ企業、大創産業社長は

「100円ショップは、商品を売るのではなく、『えっ?こんなものが100円なの?!』という驚きを売っています」

と言い切っています。

そういう意味では良い時代になりました。いや、バブルの垢がそぎ落とされて「まともな時代」になりつつある息吹を感じます。

せっかくの機会ですから、今回は価格について考えます。
価格はマーケティングでは最も研究が遅れている分野です。
マーケティングを構成する要素として「4P」が代表的なものですが、その中でも製品戦略に間する研究が最も進んでおり、様々な理論や調査手法が開発されています。
また、広告・販促分野は電通のメシの種なので古くから研究されています。

●製品戦略(Product)
●価格戦略(Price)
●流通・営業マン戦略(Place)
●販売促進・広告戦略(Promotion)

しかし、価格となると「価格弾力性」といった、経済学からの転用理論くらいしかないのが現実です。実にお寒い限りです。
ただ、限られたスペースで、価格にまつわる事象すべてを網羅するのは現実的ではありませんので、テーマを絞ります。

「なぜ私たちは価格が安い、高いと感じるのだろう」

が今回のメインテーマです。

前半では一般的な商品をベースに価格を紹介します。
後半では、価格づけの中で最も複雑(魑魅魍魎ともいいます(笑))とされるサービス業、特に、ナイトビジネスの代表格であるクラブやキャバクラを題材に価格を説明します。

後半が身近な話でない女性読者の方、ごめんなさい。

「ナイトビジネスに行く男性は、こういったことを無意識に考えて行動しているのか」

と参考にしてください。

後半は私だけでは手に負えませんでしたので、burt氏を初め、Tokyotoplessのメンバーおよび羽鳥英夫氏の協力を頂きました。この場を借りてお礼を申し上げます。

【以下、小見出しと最初の段落のみをご紹介します】

価格についての素朴な質問

さて、まず質問です。
10,000円の新品パソコン。あなたは高いと思いますか、安いと思いますか。
5,000円のメモ帳。あなたは高いと思いますか、安いと思いますか。
(このメモ帳は特別な仕掛けはありません。単なるメモ帳です)

数字だけで判断すれば10,000円のほうが5,000円より「金額が多い」のにも関わらず、10,000円のパソコンは安くて、5,000円のメモ帳は高いと感じるのが一般的です。
どうも、価格というのは単独では安いとか高いなどと言えないようです。
「何に対して」という対象物がないと判断できません。

心理的サイフ

これらのことがわかると、価格に関して「すべきこと」「考えるポイント」が整理されます。そのうち、今回はいくつか紹介します。

トップバッターは「心理的サイフ」と呼ばれる概念です。

私たちの頭の中には、あたかもサイフを持っているように「この商品はいくらまでなら払える」という「予算の振り分け」があります。

生活者は1人で幾つものサイフを持っています。
クルマ用、外食用、ファッション用のサイフ等々です。

定価とオープン価格

もうひとつは相場に関する知識量です。
最近メーカー推奨価格(定価)を提示しないことが多くなりました。
さて、もしあなたが家庭用ゲームに詳しくない人なら、「1,500円のゲームソフトが出た」といわれても、ピンと来ません。普通のゲームソフトの価格を良く知らないからです。

Value for money か Money for valueか

生活者アンケートで「あなたはオーディオを買うとき何を重視しますか」等と聞くことが良くあります。選択肢には「性能、価格、使い勝手」等々を用意します。

そして、価格に反応する人が多いと

「これは問題だ。
価格を下げなければいけない。
でもコストはそう簡単には下げられない」

と悩みます。

同じ自分なのに、なぜ2万円も私に払うの?

【ご注意】ここからの4章は事例業種がキャバクラ等のため、タイトルだけを表示します。

変化する標準モデル

無視できない規模の接待モデル

戦略的な業態開発とは

価格には理由が必要

中高年向けの雑誌「サライ」の通信販売で、30,000円のじゃがいもに注文が殺到しました。何ということはない。単なる3,000円の誤植だったのですが、編集部が注文客にお詫びの連絡を入れたところ、大半が「3万円のじゃがいもって、どんな味がするのだろうかと思った」から注文したということでした。

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