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旅情豊かな旅館…え、どこどこ?【日本旅館】 2004.12.1

旅好きな日本人

日本人は旅好きと言われます。
実際、国内外を含めて旅行業界は大きな市場を持っています。
また、この業界はユーザーが老弱男女を問わないほど幅広い珍しい業界でもあります。

若い人は国内ケチケチ旅行あるいは海外旅行。
リタイア夫婦も国内リッチ旅行あるいは海外旅行。
他の業界では消費行動が不活発になる、こどものいる家庭も旅行には出かけることが多い。

30代は元々乳幼児を抱えるので行動が自由にならず、外食、ショッピングなどの消費機会が少ない層です。また、外見を気にする余裕がないので、化粧品やファッションなどの女性の出費比率が多いはずの商品の購入も少なくなります。
加えて、収入の割に教育費がかさむので、経済的な余裕がないのも大きな理由です。

そんな30代でも旅行に関する消費はそこそこあります。特に小学生以上の子供を持つ親にとって、旅行は社会勉強や思い出に深く関わるので、教育費に近い位置づけになるので、出費を削れないのです。

もちろん、不倫旅行なんていうのもあります。
ある大手旅行代理店がバブル時代に300万円の海外旅行プランを発売したところ、その約80%が不倫カップル(と思わざるを得ない客)だったというエピソードもあるくらいです。

それだけではありません。
宿泊つきの小旅行も実は大きな市場を占めています。
例えば、正月やクリスマスなどのイベント期間では、都内ホテルの売り上げの半分以上が都内在住者で占められているのです。
これは地方のホテルや旅館でも事情は似たようなものです。

1世帯当たり、1年に146,216円(平成12年)も使っている旅行という存在。
旅行には夢があります。開放感があります。好奇心があります。
海外旅行に行くと賢くなった気がします。自分の視野が広がり、一段偉くなった気がします。
そして、旅行に行くと同伴者との仲がもっともっと深くなった気がします。
旅行の魅力とはそんな広範囲にわたったものなのでしょう。

これは国内、海外は無関係です。
一時期、人気が下降した国内旅行も、安くて楽しいバス旅行企画パックで人気が復活しました。
「新潟グルメ旅行パック、東京から19,800円」といったチラシが誇らしげに旅行代理店の店頭で踊っています。

そして、旅行に付き物なのが宿泊する場所、ホテルや旅館です。
これなくして、旅行は成立しないといっても過言ではありません。
特に海外旅行ではホテルが選択の中心になることもあります。

ハイアット・ワイキキには絶対に泊まりたい。
カクテル、シンガポール・スリングの発祥の地であるシンガポール、ラッフルズ・ホテルに泊まって、バーで一晩を過ごすのが夢。
一方で、宿泊先でトラブルやイヤな目に会うと旅行の魅力も半減しますし、逆に親切にしてもらうと旅行の思い出も倍増するものです。

そんな、「思い出の立役者」ではありますが、構造的に不況になっている業種があります。
日本古来の旅館です。
全国で63,388件もある旅館ですが(ホテルは8,363件。平成13年)、そのうち黒字なのはたったの5%と言われています。

実は私の祖父もある地方都市で旅館を経営していました。今は人手にわたっています。
旅館は私にとっては、身近な存在でもあるのです。

一体、なぜこうなってしまったのでしょうか。
そして、復活する可能性はあるのでしょうか。同じ日本古来の伝統商品のろうそくのように、火が消えてしまうのでしょうか。
今回は、そんな旅館にスポットを当ててみました。

『古い、汚い、不潔、ぞんざい、不自由』

さてさて、前置きが長くなってしまいました。
話題を進めましょう。
旅館が瀕死の状態だという話です。

「そんなもの、今更、言われなくたって、原因ははっきりしているじゃないですか。
『古い、汚い、不潔、ぞんざい、不自由』。この5つですよ、5つ。場合によっては『うるさい』が入る。
まとめると『時代遅れ』。その一言じゃないですか」

あはは、いつも元気でストレートな小夜子ちゃんです。
いきなり本質を突いた原因を言われては、私も立つ瀬がありません。

「古い」は仕方がありません。旅館は歴史が長いですから、どうしても老朽化する。
さらに、経営が悪化する旅館が多いから新規投資ができず、新築もままならない。

「汚い」は「古い」とは違います。清掃さえきちんとすれば、古くても清潔感を保つことができます。これは従業員教育が不可欠ですが、日本旅館ではなかなか徹底できません。

「旅館というと、どうしても『駆け込み寺』的な使われ方をされるので、従業員教育は難しいんです」

ある旅館の経営者の弁です。

「都会から逃げてきたような人たちが住み込みで隠れることができる就職先。
それが昔から旅館だったし、旅館もそれを当てにしてきた歴史があります。
また、旅館は田舎にあることが多いので、進んで就職しようという人が少ない。人数確保が難しいのが悩みなんです」

「不潔」は「汚い」と似ていますが、あえて違う言葉を使いました。というのは、原因が違うからです。
「汚い」は清掃の問題です。
しかし「不潔」は旅館が持つ本質的な問題のことを指します。
つまり「共有」です。

日本の良き伝統のひとつに「共有」があります。
大浴場が存在するのは「多人数で共有できる」からです。個人使用ではあそこまで大きな風呂は発達しません。
しかし、それがアダになります。

例えば旅館のスリッパ。
最初は消毒しているのかも知れませんが、大浴場に入ると誰がどのスリッパを履いているのかがまったく分かりません。自分が風呂から出てきた時には、水虫のおじさんのスリッパを間違えてはいてしまうかも知れないのです。

「ぞんざい」は従業員の対応です。
洋式のホテルは客との接触時間が少ない分、接客の善し悪しが分かり難いという利点があります。しかし、旅館だとストレートに出てきてしまう。
その代表が仲居さん達の対応です。

「不自由」は先の「共有」の裏返しでもあります。
「みんなで使う」ためには「ルール」が必要です。
従来の日本人は「仕方がない」「それが当たり前」だったものが、現代人には不自由に写る。

例えば、食事内容や時間。
レストランが前提の洋式ホテルでは何を食べるか、いつ食べるかは宿泊客の自由です。もちろん、メニューの幅の広さや営業時間がありますから、無限大の自由ではありません。
しかし、旅館ほど狭くはありません。

食事内容は基本的にあてがいぶちだし、時間もせいぜい1時間程度しか選択の余地がない。
終了時間になると仲居さんが、早く終わるようにせかすことなど日常茶飯事です。
旅行の3大楽しみのひとつである食事を楽しむのに制約があるというのは、かなりのストレスが溜まります。

最後の『うるさい』は他の宿泊客の宴会のことを指しています。
宴会が入るとその近くの部屋はうるさい酔客に悩まされます。宴会場が客室と離れている場合でも、酔客が廊下や風呂やロビーなどを大きな声でわめきながら練り歩く。

【以下、小見出しと最初の段落のみをご紹介します】

「個人客は手間がかかる割に要求がうるさいんです」

今度は逆にいいところを聞いてみましょう。

「うーん。いいところって少ないから、考えちゃいますけど・・」

と悩んだあげく、隣の美代子ちゃんが発言しました。

江戸時代の旅館 - 旅籠

旅館が発達したのは江戸時代、しかも後期です。
それまでは、旅行そのものが一般的ではありませんでした。

第一、移動手段は徒歩だけ。
しかも、貨幣経済が不安定だったので、ある地方で使えたお金が他の地方で使える保証はまったくありません。

旅籠サービス内容

一般的な旅籠の概要をもう少し覗いてみましょう。いくら主流だからといって、飯盛旅籠の内容は現代の日本旅館の大した参考にはなりません。

まず、旅籠の規模です。
実は、当時の旅籠は私たちが想像するよりも遙かに小規模なものです。
もっとも多いのが1旅籠当たり5部屋。総面積70畳です。1部屋当たり12畳の広さです。
例外的に大阪、京都などでは200部屋といった大規模な旅籠もあったのですが、一般的には10部屋が上限といった状態です。

旅館組合「講」の存在

江戸時代後期の旅籠の経営悪化にはいくつかの理由があります。
ひとつは各地で頻繁に起きた火事による建て替え費用の負担です。出火の理由は不明ですが経営に与える負担は相当なものがあります。

歴史から分かる旅館

こうやって、江戸時代の日本旅館の歴史をざっくりと眺めてみると、いくつものことが分かります。
まず、江戸時代の主流であった街道沿いの旅籠は、現代では消滅してしまった、あるいはビジネスホテルに取って代わられたことです。

業界骨抜き時期

実質的には押しつけですが、見方によってはスポーツ部の合宿のようです。あるいは修学旅行にも良く似ています。

そう考えると、ありました。
業界骨抜き時期が。
それは皮肉にも、業界が最も大きく拡大した昭和30年代から40年代だったのです。

救世主スーパーコンパニオン

「スーパーコンパニオン」という存在が、今、一部で大人気です。
普通のコンパニオンと違って、ハダカにシースルーの薄い衣装をまとっただけ。お触りがOKというスーパーコンパニオンも数多くいます。要するに色気サービスです。
それが、1泊2食付きで2万円から3万円で楽しめてしまう。
そう、江戸時代のライト版(本番なし)「飯盛旅籠」です。

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