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企業が生活者からお金をぶんどれない時【カバン】 2001.9.1

カバン探しの旅の始まり

ガラガラ、どっしゃーん!バラバラ。

「いってぇー」

駅の構内で転んでしまい、かばんの中身を床にぶちまけてしまいました。

知らぬ顔して通り過ぎる人、へえという顔でのぞき込む人、びっくりして振り返る人、散らばった持ち物を拾ってくれる人。
いずれにしても、気恥ずかしい一瞬です。

そしてまた、自分の普段の持ち物の多さにびっくりする一瞬でもあります。書類や雑誌、手帳、パソコン、たばこなどなど。
改めて見ると、他人のカバンが気になります。
みんな、一体、何をどう持ち歩いているんだろう。

時々、テレビや雑誌で「カバンの中身拝見」といったテーマのコーナーや記事を見かけますが、そんなことを考えるのは私だけではなさそうです。

最近、特にカバンの中身が気になり始めました。
というのも、40代になってから、体力の衰えとともにカバンが重く感じるようになったからです。とうとう、肩こりが取れなくなってしまいました。

そこで、12年間愛用してきたサムソナイト・アタッシュケースに別れを告げるべく、カバン探しの旅に出ました。
これが、また難航したのなんのって。遭難しそうでした (笑)
そこで、今回は「カバン」をモチーフに記事を書くことにします。

カバンという商品にはカバン自体と中身の2つの視点があります。
最初は両方一辺に記事を書こうと思ったのですが、長くなったので「カバン編」と「中身編」の2回に分けてお送りします。
「中身編」の隠れたコンセプトは「シャープ対ソニー」。それはそれで、おもしろいお話になりそうです。

2つのパートを続けてお送りするのも芸がありませんので、中身編は数回後にお送りしたいと思っています。しかし、もし、休刊しそうになったときは、次回に繰り上げるかも知れません (笑)

興味のない方には、サブ的に見られがちなカバンですが、様々な角度から光を当ててみると、意外に多くのマーケティング・ヒントが見つかります。
今回は私のカバン探しをこと細かくドキュメンタリー風にまとめてみました。しかし、それだけでは「私に限っての話」なので、皆さんの参考になりません。

そこで、「教訓」のコーナーを随所に設けています。こうすることで、マーケティングの考え方が具体的に分かるように工夫しました。
加えて、皆さんが日常生活の中で、マーケティング的な考え方をまとめる参考になる。自分という狭い世界だけでなく、生活者という広い発想の仕方を学んでいただけるようにしたつもりです。

スタイル的には私が愛読しているメルマガ「経営戦略考」を無断でパクりました (笑)
「経営戦略考」の森さん、お許しを。

私のカバンのご紹介

まずは私のカバンをご紹介しましょう。自慢できるものではありませんが、そこから話を始めないと、記事が進みません。
私はここ20年ほど一貫してアタッシュケースを愛用しています。サラリーマン時代からです。

●パカっと開けて、何でも放り込める
ことと
●書類が折れたり曲がったりしない

のがアタッシュを気に入った理由です。

アタッシュケースを最初に買ったのが、スーパー長崎屋のバーゲンで980円也 (笑)
話はずれますが、私の買い物の仕方はいつもこれです。新しいタイプのものを試す時は、できるだけ安いものを買って使ってみる。

気に入らなければ捨てても惜しくない。
気に入れば、細かい不満点を解消してくれるものを求めて、予算を上げていくやり方です。

システム手帳の時もそうでした。
最初に買ったのはシンガポールで3,500円の安モノ。次に買ったのはファイロファクスです(もっとも、イギリス本国で買ったので、14,000円で済みました。日本の1/3の値段です)。

話をカバンに戻します。
前フリでお話ししたとおり、コンサルタントとして独立してからは、つい最近までサムソナイトのアタッシュケースを10年以上愛用していました。

中身を入れ替えるのが面倒なので、ビジネスでもプライベートでも、これ一つ。
おかげで、クライアントに会わない日の私の定番ファッション、ジーンズとTシャツ姿にアタッシュケースはちょっと異様です。
「危ないモデル・プロダクションの社長のように見えますよ」
とよく言われます (笑)

私がサムソナイトを愛用していたのは、当時、A4サイズの書類が2列収納できるアタッシュケースがこれしかなかったからです。
使っているうちに収納スペースが広いのと頑丈なのが気に入りました。
駅のホームでも、疲れたらその上に座れてしまう (笑)

欠点と言えば、その収納スペースの広さに比例して、サイズが大きいことと頑丈なので堅いことです。満員電車や混雑したところで、他の人が当たると痛そうでした。

教訓-1
やはり差異化は強い。
あるニーズに「オンリーワン」で応えたら、多少のマイナス要素があっても商品は売れる。
大きな市場でたくさんの競合があるより、小さな市場で少ない競合を目指すのは弱者のマーケティングの基本中の基本である。

ところが、ここ1〜2年、サムソナイトのアタッシュケースの重さに、体力がついていてこなくなってしまいました。何せ、私のカバンは中身を入れると8kgにもなります。それを40代になっても毎日持ち歩く訳ですから、「運動になる」なんて言ってられません。

中身を整理して軽くしようとしても限界でした。
だって、計ってみたら、カバン自体の重さが2.5キロもあるのてすから、自ずと限界がある。
旅行カバンでは軽くて丈夫で有名なサムソナイトも、ビジネス用ではまだまだ重いのが実情です。

そこで、10年間の愛用ブランドに別れを告げるべく、新しいカバンを探し始めました。上限予算は10万円。仕事の効率や健康を考えると高い金額ではありません。

目標は色々とカバンの中身を整理したり、1つ1つの小物の重さを量って算出した1.2kg〜1.5kg。約半分の減量作戦です。

スタイルは書類が曲がらないものがよい。すると街でよく見かける、軽そうなソフトバッグは対象から除外されます。
(実際に、ソフトバックだと重量も1kgと軽いのが多いので残念です)。
ショルダーバッグはスーツの形が崩れるのでパス。

それ以外なら贅沢は言ってられません。後で分かったことですが、軽いカバンが極端に少ないので、おしゃれだの見栄えだのを云々している余裕はないのです。

カバン探しは、案の定、簡単な話ではありませんでした。
カバンなんて、とにもかくにもたくさんの種類があります。一々、店を回ってカバンを探す時間を使うのもばかばかしいのは、今までの経験から分かっています。

そこで、目を付けたのがインターネット。検索エンジンで調べたり、オークションサイトを覗きました。
目的はもちろん、できるだけ軽いカバンを探すことです。

教訓-2
流通業にとって、情報は立派な商品。そうでないと、ネットに客が流れてしまう危険性がある。
例えば、東京JR渋谷駅のコンビニ、ランキング・ランクイーンは、一見、普通の駅のコンビニだが、1つ1つの商品や雑誌・CDに売れ行きランキングが表示されている。それだけでも、かなり他店と違うおもしろさ(価値)がある。
教訓-3
目的の商品を探す手間が省ける「ワンストップ・ショッピング」の概念は、百貨店やショッピングセンターだけの専売特許ではない。
カテゴリー・キラー(サイザらスやビクトリアなどのおもちゃやスポーツ用品店に特化した大型専門店。一般的に価格も安い)は、安さもさることながら、商品購入に関わる時間短縮ニーズがあることを忘れてはいけない。
【以下、小見出しと最初の段落のみをご紹介します】

情報が見つからない、困った

さすがにネットです。カバンの通販も情報もたくさんありました。
ところが、私が最も知りたい重さを表示しているものがほとんどありません。
たまにあっても目標重量を上回ります。

百貨店のカバン売り場にて

カバンの話に戻ります。
そろそろ、気が弱くなってきました。重さの情報があまりにも少ないからです。
カバンの重さを気にする人なんて、私くらいしかいないのか、と心細くなってきます。

10万円が5,000円に化けた。ちっとも嬉しくない

三再び、カバン探しの旅が始まります。
そろそろ意気消沈してきました。
というのも、この段階で使った時間は、すでに20時間。軽いプロジェクトなら1本分に当たります。日常の工夫で、時間短縮をコツコツと積み上げてきたものが一辺に吹っ飛んでしまう。

払いたいのに払えない人々

お金を払いたい、払っても良いと思っているのに、自分のニーズに合った商品がないから使えない。
私だけでしょうか。
色々と考えてみます。

出てきた仮の結論は、私のケースに限ったことではない、です。
世の中、「若い人」「女性」向けの商品開発ばかりしてきたおかげで、団塊の世代という1,000万人を越す大きな市場を取り逃がしています。

一握りの努力をしたものだけの特権、ブランド

くだんのカバンです。
ベニヤ板では耐久性が低いので、早晩買い換えなければなりません。
実際、購入してから半年しか経っていないのに、中身の重量に耐えきれず、歩くとハンドル部分がギシギシ言い始めています。

買い換えの時、また同じような「無駄な」時間を使わなければならない。そのことを考えると気が滅入ります。

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