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サルにもわかる商品開発【商品開発】 2001.9.15

短い前フリ

突然ですが、今日は、ちょっとストレートに商品開発のお話をしましょう。
いつもの前置きがないのは、本文が長くなってしまったからです (笑)

今日のテーマは「企業はどうやって商品開発をするのか」です。
一般の人たちにとって、商品開発というのはどこかブラックボックス的なところがあります。

何となく、アイデアがひらめいて、チョコチョコっとやれば商品ができあがる。
あるいは、商品開発は技術者や研究者などの苦闘の番組やルポが多いので、研究所が一生懸命やっているイメージもあります。

しかし、実際の商品開発は技術者だけでなく、商品開発担当者の汗と涙の結晶という側面もあります。
今日は、ここをクローズアップしてみようというわけです。

企業の商品開発担当者の読者なら、当たり前のことが並んでいるかも知れませんが、このメルマガは「初心者向け」なので、ご勘弁下さい。

もっとも、日常の実務の中で忘れている「基本」をおさらいするのも、また良いのかも知れません。
私のメルマガでは教科書に書いてあるようなことを書いてもつまらないので、できるだけ泥臭い現場の視点を入れるようにしました。

商品開発の目標

商品開発の目標とは一体、何なのでしょうか。

「売れる商品を作ること」

そのとおりです。
しかし、商品開発の現場で、もっともっと正確に言えば、

「『売れるとあらかじめ分かっている』商品を作ること」です。

この違いは何か。
自分たちが作っている商品は売れるかどうかなんて、100%分かっている訳ではありません。最後は市場に出してみないと分からない。
メーカーの商品開発部で数10銘柄の新製品を手がけた経験からの、私の本音です。

新製品が実際に店頭に並ぶ直前は地獄です。
頭の中は反省や後悔で一杯でした。

「あの時の、デザインの判断はあれで良かったのだろうか」
「味は、もうちょっとはっきりさせた方が良かったのではないか」
「広告のあのシーンは、あれで良かったのか。代理店の提案の方が効果的だったのではないか。いや、私の判断が正しいのだ」

結婚式直前まで迷ってしまう「マリッジブルー」の花嫁のように(そんなかわいいものではないですが (笑))、ギリギリまで悩むのが商品開発というものです。

「血のションベンが出て一人前」

などと、乱暴な言葉がその大企業では言われていましたが、本当に真っ赤な尿が出てきた時はびっくりしました。
が、何となく「ああ、俺も一人前かぁ」とつぶいた自分がおかしかったのを覚えています。

それでも、支社や営業所に堂々と胸を張って

「この商品は、これだけ売れます。だから、きっちりと商談して下さい」

と檄を飛ばすことができたのは、私がはったりをかますのがうまいからではありません。

新製品発売までの過程で、様々なデータがそう語ってくれていたからです。自分が手がけた新製品の実績が予想どおりだった過去があったからです。

正直いえば、いくつかに1つは予想を大きく外れました。
予想より売れなかった場合は、倉庫に山と積まれた現物を目の当たりにして、真っ青になった経験があります。

予想より売れたら喜べるかというと、とんでもありません。
工場への緊急増産指示、営業マンからの苦情対応、各種欠品対策、そして、品物がないときの生活者の反応の変化への恐れ(要するに、欲しい時に商品がないと、その後、増産しても存在を忘れて買ってくれなくなる)。

真っ正直にいえば、売れ残りよりも売れすぎの方が心臓に悪いのです。「嬉しい悲鳴」は端から見た方々の言葉です。「身を削るような思いや恐怖と闘う時の悲鳴」が本音中の本音です。

売れ残りと売れすぎ。そのどちらもイヤです。
でも、最後の最後は出してみないと分からない。
だからこそ、開発途中での正確な売れの把握が必要なのです。

「売れる商品を作る」

のではなく

「売れるとあらかじめわかっている商品を作る」

のは、そういう意味です。

これは、別な言い方をすれば、勝つかどうかが分からないケンカをするか、勝つケンカしかしないかの違いです。

勝てないケンカを延々とやっていると、

●社員の志気に関わります。志気が下がると勝てるケンカも勝てなくなる企業体質になってしまいます。

●スーパーや販売店から相手にされなくなります。これも勝てるケンカも勝てなくなる要因のひとつです。

●生活者から期待されなくなります。「ここの会社の商品はまたぞろ、しょうもないものしか出さないんだろうな」と思われます。
人間に例えてください。「どうせ、こいつ(同僚や部下社員)は大したことをしないだろう」と思われてしまうと、せっかく良いことを言っても信用されなくなるのと同じなのです。

私は、商品開発の様々な準備を、お祭りの射的になぞらえることが多くあります。
素人さんはピストルのように短銃で、カウンターに直立して的を狙います。
しかし、私たちのようなプロは銃身の長いライフルを使い、かつ、カウンターから身を乗り出して、的を狙うのです。

もちろん、ライフルを使ったからといって、百発百中とは限りません。しかも、ピストルのプロならばセミプロのライフルよりも的に当たる確率は高いかも知れません。
しかし、腕が同じなら、ピストルとライフルのどちらが的に当たりやすいかは一目瞭然です。

「確実にヒットすること」は、ライフルを使って身を乗り出すことです。
しかし、ヒット商品に恵まれない企業は、ライフルの存在を知らず、一生懸命、ピストルで撃とうとしている。
それだけの違いです。

具体的にそのライフルとは何なのか。
それが、マーケティング理論や調査手法、そして最後の砦、担当者の熱意なのです。

【以下、小見出しと最初の段落のみをご紹介します】

商品開発の実際

教科書的なお話をしてもつまらないので、ここで、架空の登場人物を紹介しましょう。
和田くんです。
彼は、マーケティングのプロではありませんが、以前在籍していた会社で商品開発部門の中堅として、様々な商品を世に出していました。

アイデアが成功の70%を占める

そこで、新製品のアイデアを考え出せるだけ出してみました。
ニーズの穴に関するものだけでなく、自由に発想したアイデアも含みます。
友人たちにポケットマネーで食事をご馳走する約束で頼んだ案を含め、都合200案のアイデアをまとめます。
表現形式は簡単です。商品のタイトルと2〜3行の大雑把な説明文だけ。

絞り込んだアイデアを練り込む

3週間後、結果が上がってきました。
合格点に達したのがそのうち14個。12%の合格率です。まずまずの成績です。
ポケットマネーをはたいただけの成果は上がったようです。
いずれにしても、最終的に商品開発に必要なアイデアは数個ですので、目的は十分に達成しました。

デザイナーの人選で50%は成功を約束される

ここまで来たら、後は簡単です。
実際に味を作るテストキッチン部隊に味作りの条件を指示し、ネーミングを考え、デザイナーにデザイン試作案を作ってもらうだけです。

ネーミングは知り合いのコピーライターに頼みますが、やはり知り合いの素人のブレインにも依頼します。アルバイトで、1案あたり500円の約束で、とにかくたくさんの数を出してもらいます。
100案出してもらっても5万円で済んでしまう。
彼女たちは「良いアルバイト」として喜んでくれますし、和田くんも案がたくさん出てくるので助かるという利点があります。

デザイン指示は広くても狭くてもいけない

さて、人選がうまく行けば50%は成功したようなモノですが、30%を占めるものがあります。
オリエンテーション資料です。
デザイナーに対する指示です。
デザインというのは商品の説明を簡単にして「はい、お願いね」では、案は出てきますが「良い案」が出てくるとは限りません。

味覚調査だけは、さすがにノウハウあり

そんなこんなしているうちに、キッチンから犬の試食用試作品ができあがったとの知らせ。
早速、調査です。
試食は、さすがに転職先の会社にノウハウがありましたので、それを利用させてもらいます。

どんな人が商品開発担当者に向くのか

商品開発担当者はこんな風に新製品に取り組んでいます。
(和田くんパターンか、先輩パターンかは別として)
最後に、「商品開発担当者に向いている資質」を2つだけご披露しましょう。

●新しい商品を作るのはワクワクして楽しいから

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