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陳列・ディスプレイ・選ぶもの?【書店業】 99.5.15

店面積の大半を占める「陳列」という存在

街を歩いていると様々なものが目に飛び込んできます。

人、看板、店、自動車、道、店先・・・

そして、一歩お店に入ると、ど〜んと面積の大半を占めるのが、陳列、陳列、陳列。

その一角に近づくと、初めて店員が近づいてきます。
あたかも、店は陳列というスペースの集合体ではないか、と思わせるような雰囲気です。

当たり前といえば当たり前です。
陳列という名前を与えられているものの、その実態は商品なのですから、商品を売るべき商店の大半を陳列が占めているのは当然です。
では、なぜ「商品」と呼ばずに「陳列」なのでしょうか。商品と陳列は何が違うのでしょうか。

商品は1つ1つの「価値を持った製品」です。陳列は「ある意図を持って並べられた商品の集まり」です。
「ある意図」とは商店が「もっと売りたい」ということです。
生活者が選びやすいだの何だのは後づけです。選びやすければ買いやすい、つまり売りが増えるということです。あえて選びにくくする場合もあります。選んですぐに店を出てしまうより、店に留まって欲しいからです。もちろん客も留まることにメリットがなければなりませんが。

店の面積の大半を占めるからこそ、スーパーやデパートは心血を注ぎます。
それでも理想どおりにはなかなか行かないのに、無頓着な業種も多々見受けられます。
今回は、陳列が持つべき条件の1つ、「選びやすさ」をテーマにお送りします。

Mr. Surfrider inspired me
 − この号を敬愛する Surfride さんに贈ります
http://chieichiba.net/

私が敬愛する「電脳市場」の Surfrider さんが、シストラットのプロダクトコーン理論を使って関西の大型書店を切った、痛快な記事がありました (【Surfin'99】pointed cone 99/3/28)。

光栄なことです。感激しました。
でも、正直な感想は「先を越されたぁ」(笑)
私も書店が題材の記事を構想していたからです。
私も頑張っちゃいます。「電脳市場」との「強引連動企画」です (笑)

本はコンサルタントにとって、重要な情報源です。
情報スピードさえ気にしなければ、社会の事象をまとめて俯瞰できるので、体系だった知識を効率良く吸収できます。学者が書くマーケティング理論の本は系統だって骨太なので、頭をナタで殴られるようなヒントを掴むことも良くあります。同業者のコンサルタントが書いたマーケティング関係の本は、自分のポジションを知るのに役立ちます。

おもしろい経験をしたことがあります。
「セルフ・コンサルティング」というおもしろそうな本をひょいと買いました。読み進めているうちに、シストラットが開発したプロダクト・コーン理論が紹介されていました。DCCM理論もあります。が、他の理論にはクレジットがあるのに、私のものだけがない。

「これは著者に文句を言わなければならない」

と著者名を見ると、何と私の以前在籍していた会社の部長で、親しい友人ではありませんか。野口氏は快くシストラットのクレジット表示要請を受けてくれました。お恥ずかしい話でしたが、著者名を見ない悪いクセは今でも直っていません。

私が1ケ月に読む単行本は30冊程度。雑誌は15誌をほぼ定期的に購読しています。
他業種はできるだけ色々な店を回るクセをつけるようにしている私ですが、書店だけはメインの店を決めています。
雑誌は自宅の近くの本屋さん。本は東京渋谷の紀伊国屋と大盛堂です。オフィスから1駅と近い割に品揃えが多いからです。

店を決めている理由は小さな本屋さん同士、大型書店同士は品揃えが同じだからです。だから距離の近さだけでそれぞれを使い分ければ良い、というわけです。

結果、私の場合のニーズは次のようにまとめられます。

●頻度の高い利用の場合は利便性を重視。品揃えの幅は軽視
 (つまり近くの小さな本屋さん)

●頻度が低い利用の場合は品揃えの幅を重視。利便性は軽視
 (つまり渋谷の大型店の紀伊国屋、大盛堂)

こう説明すると、何だか生活者ニーズがすっきり整理されているように見えます。

でも私の本音は違います。品揃えの幅と利便性以上に私が重視している点が、この「まとめ」では隠れているからです。つまり、

「いつも決めている書店が好きだから行くのではなく」

「他の書店に行きたくない」から

「書店を決めているだけ」

なのです。
生活者の行動面だけのデータをきれいにまとめると、こういった裏側を見逃してしまうことは良くあることです。

【以下、小見出しと最初の段落のみをご紹介します】

私が他の書店に行かない本当の理由

では何が問題か。
初めての書店では、目的の本を探す時間と手間がかかることです。
わざわざ私が説明するまでもなく、皆さんの多くが経験していることと思います。

書店という低付加価値業態

なぜ、顧客無視のレイアウトになってしまうのでしょう。
書店は棚貸し業、スペースブローカーだからです。つまり、自分の店舗スペースは自分で管理していない。出版社が自社のスペースを確保しているからです。
それは書店が楽だからです。入荷した本をチェックして、入れる棚を考えるのは面倒だからです。ダイヤモンド社の本はダイヤモンド社の棚に放り込んでおけば、ことは済んでしまいます。

You deserve it

「書店だって工夫している。ベストテン・コーナー等はその良い例だ」

同感です。
だから、私は初めての書店ではほとんどベストテン・コーナーに「しか」行きません。
ということは、もし、ベストテンしか置いていない数坪の極小の本屋さんが近くにあれば、そこに行きます。大型書店の他のスペースは私にとって無駄、いや、ベストテンコーナーを探す邪魔になるからです。

人間の思考過程 − ニーズの枝分かれ

なぜ書店は選びにくいのでしょう。
人間には「判断の枝分かれ」があります。ニーズ・ヒエラルキーと私は呼んでいます。
例えば、主婦の木村さんが100%果汁を買おうとします。

ニーズ・ヒエラルキーを応用して成功、知らなくて失敗

東京池袋西武はかつて日本で最大の売上を誇る百貨店でした。
その隣の東武百貨店がリニューアルした時、皆が興味津々でした。
「二流の東武が勝てるのか」
結果は皆さんご存じのとおりです。

一に性格、二に性格、三四がなくて五に【ナイショ】 (笑)

こんな話をしていたら私の友人は一言。
「森さん。風俗嬢の写真指名も、そういう分類で選べないかな?」

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