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ネット調査はどこまで使えるか【ネット調査】 2005.12.1

ここかしこで見かけるようになったネット調査

企業からの相談を受けていると、今までやった調査やデータを見せられることが良くあります。もちろん、私も、無駄な調査を実施して、余計なお金をかけさせないように、今までのデータを見せてもらうように頼むことも多々あります。

最近、富みに出くわすのが、ネット調査の結果です。
つい数年前にはネット関係のビジネスですら見たことがなかったネット調査ですが、一般企業にも普及し始め、最近は少なく見積もって20件に1件、多く見積もって10件に1件がネット調査による結果です。

私が愛読している日経流通新聞ですら、第一面にネットで実施した生活者調査の結果を掲載して、記事を構成しています。

普及率が10%を越えると、ひとつの独立した市場として認められることを考えると、ネット調査はそろそろ市民権を得たようです。

15年前に流行ったFAX調査と比べると、その差が良く分かります。
どちらも「早い」「安い」が特徴の調査手法ですが、当時のFAXの普及率が7%程度。現在のネットの普及率が約60%と言われる昨今、使っている生活者が多い分、調査がしやすくなり、これほどまでに普及するのは納得しそうな勢いです。

クライアント企業からも「ネット調査を考えているのだが、どうだろうか」と手法を指定してくる企業も出始めました。
しかし、これだけの勢いのある調査手法を「単に流行っているから」というだけの理由で採用して信用するのはどうなのでしょうか。
つい最近も、ある政府系機関から

「民間企業もやっているようだし、そろそろネット調査を試験的にやってみたい」

と話を持ちかけてきました。

「右にならえ」は日本人の習性ですが、ビジネスの世界で、考えもなくやることほど怖いものはありません。

「みんながやっているのだから、問題はないのだろう」

と、考えることを停止してしまう。
私がよく言う「思考停止状態」がここにも現れてきています。

ネット調査も中身をきちんと検討しないで、右にならえでは、危険なことおびただしい。そこで、今回はもっともっとネット調査について、考えてみましょう。

早い、安い、質がいい?

ネット調査を実施した企業や検討している企業の担当者に話を聞くと、まず返ってくるのが従来の紙をベースとした調査と比較したメリットです。

●「早い」

これは、たくさんの人たちが指摘するネット調査のメリットです。
市場は動いています。生活者も変わるだけではなく、競合企業も様々な手を打ってきます。昨日常識だったものが、明日は非常識になる…こんなことも現実であったりします。
そんな中で、調査をするために1ヶ月、分析を待つのに1ヶ月も待っていたのでは勝機を逃してしまう。そんな危機感があります。

ネット調査は早いところでは数日で結果が出ます。
今日質問すれば、明後日には結果が出てくる。
まさにネットならではのスピード感です。
これについては、私も何の抵抗もありません。いや、歓迎すべきことです。
私だって、翌日に結果が出てくれば、クライアントに喜んでもらえます。また、そんなに早く結果が出れば、戦略報告書を作る期日にも余裕が出てくるというものです。

●「安い」

この点も企業担当者の多くが指摘するところです。
紙をベースにした調査と比べて、数分の一で済んでしまう。
300万円かかる調査が30万円で済んでしまえば、こんなに嬉しいことはありません。
浮いたお金を、もっと知りたいところに焦点を当てて調査をすればいいのですから、万々歳です。

この点についても、何ら反論するところはありません。
大事なのは調査にお金をかけることではなく、それを読むことだからです。無駄なコストはかけるべきではありません。

●「質が良い」

これもまた多くの担当者が指摘しています。
つまり、こういうことです。ある企業担当者の話です。

「今までは予算に制約があったから、本当はもっとサンプル数(回答者数)が欲しかったのだけれど、これで思う存分サンプル数を集められます」

うんうん、これはこれで正しい。
150サンプルのデータを読むには、経験とコツが必要です。それがないと「本当のデータと嘘のデータ」を見分けることができません。
それならば、10倍の1,500サンプルのデータを扱う方が余計な気を使わなくて良いので、分析も楽になります。

【以下、小見出しと最初の段落のみをご紹介します】

「サンプルは多ければ多いほどいい」??

ところが、ちょっと疑問がある言葉が彼の口から出てきました。

「なぜって?
サンプル数が多い方がデータの精度が高いじゃないですか。
たった10人が回答している調査より100人が、そして1,000人がいいのは当たり前ですよ。森さんも知ってるでしょ、そんなこと」

統計誤差の落とし穴

さてさて、実はネット調査には、大きな落とし穴があります。
従来型の紙ベースの調査で200サンプルを集めたとしましょう。
ネット調査で、2,500サンプルを集めたとします。
統計誤差は6%から2%に減りますから、精度が上がりました…というのは、ちょっと早急です。
回答する人間が違うからです。

1日に5時間以上ネットをさまよっている人間の回答は正しいのか

話が長くなりました。
調査というのは、「代表性」が大きなカギだということが言いたいのです。
異質な人たちが集まったデータは、いくら分析しても正しい結果にはなりません。

それでは、ネット調査はどうなのでしょうか。
まず、わかりやすいところから説明しましょう。

「インターネット調査は社会調査に利用できるか」という報告書

手元に1つの報告書があります。
「インターネット調査は社会調査に利用できるか 〜 実験調査による検証結果」
と題された厚生労働省所管の独立行政法人、労働政策研究・研修機構という政府系企業の研究結果です。発行は2005年1月31日。最近のものです。
内容は、従来型の調査とネット調査の結果を比較して、ネット調査がどれだけ従来型調査に近いのかを検証するものです。

ネット社会特有の習慣 - ウソ

さて、もうひとつ、ネット調査に特有な問題点があります。
それは、「ネットは匿名性が強い」というところに起因しています。
現実社会では、「名前(実名)」は非常に重要なものです。それだけで個人が特定できる可能性が高いからです。
「森 行生」といえば、同姓同名の人はいるかも知れませんが、ほぼ私を指すことになる。

ネットベンチャーとしてのネット調査会社の勃興

一体、どうしてこのようなことが起きるのでしょうか。
1番目の理由が、企業がちゃんとものを考えずに「安い」「早い」だけで飛びつくからです。
利用する企業が多いから、ネット調査が増える。
ネット調査会社の実績が増えれば「こんな有名企業も利用しています」と喧伝する。
そしてまた、何も考えずに「おお、それなら安心だ」とネット調査を利用する。
ネット調査会社は質を上げることより、モニタ数が多い、と自慢した方が企業のウケがいい。
企業は自分で自分の首を絞めていることに気がつく必要があります。

相手は血が通った人間であることを忘れてはいけない

さて、それではネット調査会社がすべて「軽くヤバイ」ところかというと、そうでもありません。従来型調査会社を中心に、良心的にネット調査を請け負っているところがあるのも確かです。ただし、よく言われるほど「早くも」「安くも」ありません。

ネット社会特有の習慣 - ウソ

さて、もうひとつ、ネット調査に特有な問題点があります。
それは、「ネットは匿名性が強い」というところに起因しています。
現実社会では、「名前(実名)」は非常に重要なものです。それだけで個人が特定できる可能性が高いからです。
「森 行生」といえば、同姓同名の人はいるかも知れませんが、ほぼ私を指すことになる。

ネット調査会社の見分け方、7ケ条

さて、それでは、どうすればいいのでしょうか。

「できればネット調査をやりたい」
「ネット調査をやらざるを得ない。ならば、精度の問題はある程度覚悟しても、できるだけ無茶なデータは避けたい」
「まともなネット調査を実施しているところがあるならば、探したい」

「モニタ人数を「ウリ」にしていない」

【その5】データチェックについて、きちんと質問をする

従来型調査では必ず行っているステップです。
質問のヌケ落ちがないか、矛盾がないか、いい加減に回答しているかどうか。
論理チェックのように、一部、コンピュータでチェックできる項目もありますが、ほとんどは人間の目で一票一票確認するのが原則です。

ネット調査の使いどころ、3ケ条

それでは、ネット調査はまったく使えないのかというと、そうでもありません。
「餅は餅屋」ということばがあるように、使い方によってはメリットもあります。
次に、3つだけその例を挙げましょう。

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