今回のテーマは、コスプレです。
今、ニヤついたあなた、そう、あなたです。
残念ながら、今回のテーマは恋人同士が「むふふ」と楽しむそれではありません。
無料でコスプレを貸し出してくれるラブホテルが都内にはいくつもあり、コスプレは妙な方向に市民権を得はじめたところもあります。
しかし、今回、お話しするのは、通称コミケ、正式名称コミックマーケットに現れるような本家コスプレです。
え、それでもニヤニヤですか。
うーん、どうぞ、ご自由にお楽しみください (笑)
昨年、メルマガ再開のお知らせを読者のみなさんにお送りした後、知り合いから一斉に心配の連絡が集まりました。
というのも、このような文面だったからです。
と言われてしまいました(^^;
中でもコスプレが最もインパクトが強かったようでした。
分からないではありません。
コスプレというとキワモノのイメージがあります。
また、恋人同士の秘め事の「隠すべき」イメージを持つ人もいます。
マーケティングの持つ固いイメージとはちょっと離れている。
なのに、「メルマガのテーマにしまーす」と公言してしまったわけですから、「森さん、どうかしたの?」と反応が返ってくるのは当然です。
一方、私は私で、好きなアニメやゲームの登場人物のコスチュームを身にまとう、そんな彼ら、彼女たちには数年前から注目していました。
なぜか。
街や電車ですれ違う「(自称)正常な神経を持つ」若い人たちの表情に生気がないのに対して、コミケなどに来ている通称レイヤー、コスプレイヤーたちはみなイキイキとしているからです。
人間、好きなことをしている時が、それが仕事であっても趣味であっても、はたまた恋人と一緒であっても、イキイキとするものです。
しかし、「なんかさぁ、面白いことないかなぁ」と携帯電話で知り合いと話したり「ヒマして死にそうでーす。誰かあそぼ」とケータイやネットの掲示板に書き込みながら、無表情で暮らしている若い人たちには、その「好きなもの」がない。
一方で、レイヤーたちは、好きなものを発見した幸せな人たちです。
コスプレイヤーたちを駆り立てるのは何なのか。
一体、コスプレの何がおもしろいのか、楽しいのか。
私の疑問は素朴なものでした。
そこで、今回のテーマは
そして、隠れたテーマは
です。
話を始める前に多少、説明をしなければなりません。
ここでいうコスプレとは何か、です。
コスプレの基本は、アニメやゲームのコスチュームを人間が実際に着ることです。
ただ、そのままで街を歩くわけにはいきません。かといって、自宅の部屋で着ているだけでは面白くもなんともない。
だから、そんな人たちが集まる祭典がいくつもあります。
その最大手・最古参が、年間2回開催されるコミック・マーケット、通称コミケです。季節にちなんで「冬コミ」「夏コミ」と呼ばれます。
コミケは元々、「コミック」の名前が示すとおり、マンガ同人誌を作っていたアマチュアたちが集まって、即売会などを開いたりする場でした。
1975年に始まった当初は30サークルが出展し、来場者も800人程度の単なる「ファンの集い」でしたが、約30年たった現在では22,000サークル、来場者も30万人を数える一大イベントに成長しました。
元々、同人誌には「うる星やつら」のラムちゃんなど、有名マンガの登場人物をパクったものに人気がありました。アダルトなものが多く、本家では絶対に見ることができない、女性キャラクターのえっちシーンが満載の同人誌も少なくありませんでした。
そこに、アニメやマンガのコスチュームを着て会場を闊歩する人たちが現れたのは、パロディ精神旺盛の彼らとしては、ごくごく自然な成り行きでもありました。
それが注目を浴び、人が人を呼び、コスプレイヤー(コスプレを趣味にする人たちのことです。縮めてレイヤーともいいます)が集まる場としても成立してしまったという訳です。
コスプレ単体のイベントも数多く開催されています。
コミケほどの動員数はありませんが、後楽園などで数千から数万人単位で、人が集まることも珍しくありません。
規模の大小にかかわらず、会場ではみなさんおなじみのセーラームーンやファイナルファンタジーのキャラクターがいると思えば、サクラ大戦やギルティギアのようなマイナーなゲーム(失礼)のキャラもいます。
はたまた、何のゲームか分からないと思ったら、自分たちが書いた同人マンガのキャラや自分でデザインしたオリジナルキャラのような、まったく無名不明のキャラも会場を練り歩いています。
街中でもコスプレが見られます。
中でも有名なのは、マンガ専門店「まんだらけ」の店員さんたち。
彼女たちは銘々に好きなコスプレで働いています。
春麗、ギルティギア、フェリシアなどなど、コミケと変わらないキャラクターのオンパレードです。
「声」さんのように、お客さんから人気が出て、スターになった従業員も出てきました。
「コスプレ喫茶」なるものもあります。
マニアのメッカ秋葉原が中心地ですが、一部の店では、まんだらけやコミケをイメージしていくと大間違い。ウェイトレスは全員メイド服なだけのお店なのでした。
それと区別するためか「メイド喫茶」と呼ばれることもありますが、厳密な定義はありません。
ちなみに、コスプレ喫茶の第一号店は2000年5月に秋葉原に開店した「カフェ・ド・コスパ」です。当初はPiaキャロットというマンガのコスプレがメインで、様々なコスプレに身をまとった従業員がいました。
同年8月「蔵 太平山」がコスプレ居酒屋として、日曜日限定でコスプレ店員を配置したところ大人気。予約がなければ入店すらできないというほどでした。
コスプレ喫茶は全国に30店あまりしかありませんが、喫茶店だけでなく、コスプレ・キャバクラ、コスプレ焼き肉、コスプレ・しゃぶしゃぶと(両方とも大阪です。関東の方、残念(笑))、かつてのノーパン喫茶と似たような進化をたどり始めているのが興味深いところです。
いつものように、まずは色んな人に聞いてみましょう。
コスプレをしていない一般の人たちの印象はというと…
私はたまに企業研修などの題材にコスプレを例に出したり、宿題のテーマにすることがありますが、出席者の失笑を買うことが多くあります。
例えば、レイヤーが格闘ゲームのポーズをきっちり決めた写真をプロジェクターで映しだした途端、必ずといっていいほど、会場からクスクスと笑いが漏れて来る。
なぜ、と聞いてみると、こんな答えが返ってきます。
双方の言い分を聞いていると、面白いことに気が付きます。
コスプレ反対派は「他人の目を意識するかしないか」で、好き嫌いを判断しているのに対して、コスプレ賛成派は「自分が心地よいかどうか」を基準としています。
まさに最初に紹介した「自分の世界に入っているから、気持ち悪い」と言うOLさんが、その典型です。
そこで、ちょっと意地悪な質問をしてみました。
一般の人たちのコスプレに対する非難の2番目は、主に女性レイヤーに向けられるものです。
先ほどのレイヤータイプが「なりきり系」だとするなら、こちらは「露出系」です。
ほとんどハダカあるいは、水着のような肌の露出の衣装をまとうレイヤーたちです。
ここでちょっと脱線します。
「露出(自己注目)」タイプに登場した重要な人たちのことに触れないといけません。前出のカメコたちです。
カメコとはカメラ小僧の蔑称で、カメラマニアたちのことです。
彼らは「露出タイプ」にとって大切な「舞台と観客」です。
彼らが群がってくれるからこそ、自分の心理的欲求が満たされるからです。
カメコについてはこのくらいにしておきましょう。
この記事では彼らは「つまみ」です。
主役のレイヤーに戻ります。
「なりきりタイプ」「露出タイプ」と来たら、次は「●●タイプ」となるのですが、3番目のタイプは端から見分けがつきません。
先の2つのタイプとともに語られることが多く、一緒くたくになってしまっています。
コスプレは冒頭で紹介したように、門外漢からは、一種独特のもの、変わり者といったイメージがありますが、ちょっと彼らを見てみると、私たちと何ら変わらない心理がベースになっていることがわかります。
ビジネスの世界では、いや、一般の生活でも「違い」を探すことが当たり前の風潮にあります。
あ、でも、キャミソールという「下着」で電車のホームに立ち、街ではリゾート地よろしく、上半身ブラ一枚で渋谷センター街や原宿ラフォーレ前を闊歩する若い女性たちがすでに現れていますね。
考えようによっては、これらは一番手っ取り早い「変身願望タイプの」コスプレなのかも知れません。