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デジタル一眼レフカメラは私たちのものか 2004.4.1

世界の2大カメラメーカーの戦いの幕開け

このところ、急激に注目を集めている商品があります。
デジタル一眼レフカメラです。
カメラ雑誌はもとより、パソコン誌やビジネス誌までが取り上げて、かまびすかしい限りです。

今月3月19日にニコンが低価格デジタル一眼レフカメラD70を発売し、昨年大ヒットしたキヤノンのEOS Kiss デジタルに対抗したからです。
日本の、いや世界の2大カメラメーカーががっぷりと対決した図は、カメラ好きでなくても興味を引くのでしょうか。

しかし、ここでちょっとした疑問がわきます。
今までだって、キヤノンとニコンはデジタル一眼レフカメラで対抗してきているのです。今さらなぜメディアが書き立て始めたのか。

ふたつの理由があります。
ひとつは、今回のキヤノンとニコンの対決は本体価格12-13万円という、非常に身近な低価格商品のぶつかり合いだからです。
それまでは、デジタル一眼レフカメラとしては安いといわれたキヤノン60DとニコンD100ですら、本体価格22-24万円でしたから、今回のニコンとキヤノンの対決は約半額の戦いです。

それだけではありません。
半額が話題の元というのなら、例えばニコンD100は、それまで50万円していたD1XやD1Hの半額でしたし、デジタル一眼レフカメラとしては売れに売れました。
しかし、ビジネス誌などがこぞって記事にするような話題ではありませんでした。

それでは何が違うのか。
デジカメ自体の普及です。
1年半前のD100の頃と異なり、デジカメの売上げはすでに写真フィルムを使うカメラ(銀塩カメラといいます)の売上げを追い越してしまっています。
デジカメの普及率は当時で10%弱、現在はすでに40%を超えています。

ここまでデジカメが普及すると、コンパクトデジカメを使っていた人が乗り換えたり、いままで銀塩の一眼レフカメラを使っていてデジカメを使わなかった人たちが、そろそろデジカメを買っても良い時期だと考えるようになります。

低価格と高い普及率。この2つが相まって、ようやくデジタル一眼レフカメラが注目を浴びるようになったという訳です。

その起爆剤は、昨年9月に発売されたEOS Kissデジタルの大ヒットです。
それまで、デジ一眼のデジカメに占める割合は台数ベースで1%しかありませんでした。D100がヒットし、デジ一眼の50%以上のシェアを持っていたといっても、たかだかその1%の中での半分でした。

ところが、EOS Kissデジタル後、デジ一眼の台数シェアは一気に3%と、3倍にも膨れあがったのです。しかもキヤノンのシェアは70%にも登った。

実は、3%という数字には、ちょっとした意味があります。クープマンの目標値と呼ばれるものです。
私の経験では3%を超えると雑誌などが記事にし始め、7%を超えると新聞が、10%を超えるとテレビが取り上げるようになります。
今回、雑誌がここぞとばかりにデジ一眼を取り上げ始めたのも、デジカメに占めるシェアが彼らの興味の基準である2.8%を越えたからです。

ただし、週刊現代や週刊ポスト等の一般誌はまだまだ大きな記事にしていません。パソコン誌やトレンド誌だけです。

理由は簡単です。
デジ一眼がデジカメの3%のシェアといっても、カメラ全体に占めるシェアはほぼ半分の1.5%にしかならないからです。

つまり、記事の対象としてデジカメしか考えていないパソコン誌やトレンド誌にとっては、デジ一眼は基準値の2.8%を越えているから次々と話題に取り上げる。
一方、一般誌はデジカメだけを見ているのではなく、カメラ全体を見渡しているので、だったの1.5%のシェアしかないものを取り上げる気にはならないということです。

さて、「身近」とという側面を別な説明の仕方をしましょう。
1年半前の私たちにとって、身近な順番を上げるとすると、こんな図式になります。

●銀塩コンパクトカメラ
    ↓
    ↓−−−−−−−−−−−−−−
    ↓             ↓
●銀塩一眼レフカメラ      ●コンパクトデジタルカメラ
    ↓             ↓
●中版・大判一眼レフカメラ   ★デジ一眼

この段階では、デジ一眼は2段階も離れた存在です。
銀塩一眼レフカメラを使っている人にとっても、デジ一眼は中版や大判といったプロが使うようなカメラ以上に(2段階)離れた存在になります。

ところが、デジカメが銀塩カメラに置き換えられた現在では、上の図が変化します。

●銀塩コンパクトカメラ←→●コンパクトデジタルカメラ
    ↓
    ↓−−−−−−−−−−−−−−
    ↓             ↓
●銀塩一眼レフカメラ      ★デジ一眼
    ↓
●中版・大判一眼レフカメラ

コンパクトデジタルカメラが銀塩コンパクトカメラに並んだ結果、デジ一眼が一段階昇級したという訳です。これで、2段階離れた距離感覚が1段階に縮まった。
これが私たちの言葉で言えば「身近になる」「手が出せそう」という感覚になるということです。

さて、その大ヒットとなったEOS Kissデジタルは、今までの一眼レフカメラ・マニアだけをターゲットとして売るのではなく、コンパクト・デジカメしか使ったことがないような初心者を大きな潜在顧客としてとらえているようです。

各雑誌の紹介記事でも「初心者向け」と紹介され、キヤノンのホームページには

「誰でも簡単に高画質のデジタル写真が撮れるEOS Kissデジタル・・(後略)」
「今まではコンパクトタイプのデジカメしか使ったことがないという玲奈さんですが・・(後略)」

というコピーとともに、初心者の代表としてモデルさんを起用して、使い方を教えるコーナーを設けています。

さてさて、銀塩カメラ市場での一眼レフタイプは15%程度のシェアですから、カメラ業界では大きな分野ではあるものの、読者の皆さんの興味の対象とはちょっと言い難いテーマでした。

しかし、キヤノンやニコンが想定しているターゲットはまさに、みなさんのような人たちです。
このチャンスを逃す手はありません。

そこで、今回のテーマは

「デジタル一眼レフカメラはメーカーの思惑通り、本当に私たち初心者に売れるのか」

です。

「えっ、そんなこと、長々とメルマガに書かなくてもいいですよ。
私はあんな重くてでっかいカメラには興味がないです。
しかも、10万円のどこが低価格なんですか?」

という方は読み飛ばしていただいた方がいいかも知れません。

デジ一眼は何がいいのか

さて、それではデジ一眼は普通のデジカメとどう違うのでしょうか。今やコンパクトデジカメが4〜5万円で買えるのに、なぜ15万円(レンズとのセット)ですら安いと言われるのでしょうか。

デジ一眼を説明する時には2つの側面から見なければなりません。
銀塩カメラと違うデジタルカメラとしての性質がひとつ。
そして、コンパクトデジカメと違う、一眼レフカメラとしての性質です。

デジ一眼はその名の通り、デジカメの一種です。
フィルムを使わずにCCDと呼ばれる電子式のセンサーを通じて、メモリーカードに画像を記憶させるカメラです。

従って、コンパクトデジカメが銀塩カメラに対して持つ利点は、そのままデジ一眼にも当てはまります。
具体的に言えば、次のような利点があります。

●フィルム代や現像、焼き付けにかかる費用や時間が不要
●撮ったその場で仕上がりを確認できる
●パソコンに取り込んで、色調整や画像加工などが簡単にできる

これらの点に関しては、説明は不要でしょう。みなさんにも分かりやすい。

さて、ちょっとややこしいのが、コンパクトデジカメと一眼レフカメラとしての違いです。

まず、外から見て一番分かりやすい大きな違いはレンズです。
コンパクトカメラ(コンパクトデジカメ)のレンズは直径20ミリ。対する一眼レフカメラ(デジ一眼)のレンズは50ミリ。面積比では約6倍もの違いがあります。

乱暴に言ってしまえば、デジ一眼はコンパクトデジカメよりも6倍もきれい(緻密、なめらか、くっきり)に写真が撮れるということです。

次に、マニア達の多くが指摘するのが、一眼レフカメラ(デジ一眼)はレンズが交換できるという利点です。

例えば、多くのコンパクトカメラ(コンパクトデジカメ)は、暗い室内だとフラッシュを炊かないと写真が撮れません。
しかし、レンズが交換できる一眼レフカメラ(デジ一眼)では、暗いところでも撮れるレンズを取り付ければ、フラッシュがなくてもきれいな写真が撮れます。

運動会などで子供を大きく写したり、花の写真をギリギリまで迫ってクローズアップで撮りたいといった時でも、一眼レフカメラ(デジ一眼)ならば、望遠レンズや接写レンズ(マクロレンズ)に交換すれば可能です。

一眼レフカメラ(デジ一眼)はレンズを変えることで、風景に強いカメラとしても、人物撮影に強いカメラとしても、はたまた旅行のスナップ写真に強いカメラとしても変幻自在にその身を変えることが可能という訳です。

そして、実はデジ一眼には、コンパクトデジカメと比べて、第三の違いがあります。
これがデジ一眼を高価なものにしている大きな理由でもあります。
それはフィルムに当たるCCDの大きさです。
デジ一眼の多くが採用しているAPSサイズCCDの面積は、コンパクトデジカメが採用している1/2インチCCDの12倍もの大きさがあります。

同じサービスサイズの写真に焼き付けるのに、12倍のものから印刷するのとでは、画像のきれいさが違います。
これも乱暴に言ってしまえば、デジ一眼はコンパクトデジカメよりも12倍もきれい(緻密、なめらか、くっきり)に写真が撮れるということです。

例えて言えば、ビデオテープの標準と3倍速の画質の違いのようなものです。
1本の同じ面積のビデオテープに、方や60分、方や180分もの映画を記録しようとするのです。画質が違うのはみなさんも体験していると思います。

もっとももっと乱暴に言えば、こんな計算ができてしまうのです。
デジ一眼はコンパクトデジカメと比べて

●レンズによって6倍もきれい
●CCDによって12倍もきれい
●つまり、72倍(6倍 x 12倍)も総合的にきれい

ということなのです。

なのに、コンパクトデジカメは4万円、最新のデジ一眼はレンズ込みで15万円。たったの4倍しか価格が違わない。

●72倍のきれいさ÷4倍の価格=18倍もお得(コストパフォーマンスが良い)

と言えるのです。

【以下、小見出しと最初の段落のみをご紹介します】

「初心者=操作が簡単」という図式

キヤノンEOS Kiss デジタルのカタログには今まで私が書いたようなことは紹介しています。しかし、漫然と書いてあるだけで、シストラットのスタッフに読んでもらっても、実感がわかない。
もっとも、後述するように、カタログは初心者向けではなく、マニア向けに書かれているので、当然といえば当然なのですが。

「自由力」ってなんだ?

さて、次の側面を見てみましょう。
初心者に訴求するための大事な広告です。
EOS Kiss デジタルはテレビや雑誌などのマス媒体では「自由力」というキャッチフレーズを使っています。
初心者にはなんのこっちゃやら良く分からない。
高校時代に写真部だった私でも、最初は何を言っているのか分かりませんでした。

ピントが合わないデジ一眼??

これまで、デジ一眼が初心者に売れるかどうかを検証してきました。
その結果、少なくとも現在のままでは難しいことが分かります。ただ、これからも、売上げ台数は伸びていくでしょう。現在の銀塩一眼レフカメラの置き換え需要があるからです。

「あ、森さん、ちょっと待って。
必ずしもそうではないんですよ」

誰もがきれいな写真を撮れてはいけない世界

しかし、初耳でした。
プロの世界ではピントが合わないのは当たり前なんて…

「森さん、森さん、それは言い過ぎですってば(笑)」

本物のプロカメラマンです。

初心者は手を出してはいけないカメラなのか

「すると、うがったものの見方をすれば、中嶋さんのようなマニアたちを守るために、一眼レフの世界は『ピントがこなくても当たり前』のような慣習を元に、『来たら、とんでもなく美しい』レンズやカメラを開発する。

でも、一方で、そういう慣習がない一般の素人さん向けのコンパクトカメラは、彼らが分かりやすいように、ピントがくるように見せる技術を発達させる。
かなり乱暴な言い方をすれば、こんな感じですか」

と、私はそにいた3人に水を向けます。

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