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亜麻色の髪の乙女【音楽業界】 2002.9.1

色んな切り口があります

多くの人になじみがあるのに、私がまだ記事にしていない企業や業界がたくさんあります。
そのひとつが

「記事を書くタイミングや視点のとらえ方が難しいので、練りに練っている」

産業です。

私はメルマガ執筆の際、執筆テーマや企業・産業をできるだけ重複しないように配慮しています。
産業や企業を変えた方が新鮮な気分で読んでくれるからです。
さて、そうなると悩むのが、ある産業を記事にする時にどういうテーマで記事にしたら、最もその企業や産業が題材として生きてくるかという点です。その切り口がいくつもある場合にはなおさらです。

今回の音楽産業も代表例のひとつです。
例えば、読者の中でも音楽に興味がある、あるいは産業に従事している人から特に多い要望のひとつが

「ネット配信の音楽ビジネスは成功するのか」

という点です。
また、特定アーティストや音楽ジャンル好きから良く頂く要望は

「モーニング娘。はどこまでヒットするのか」

といった将来的な話だったり、なぜヒットしたのかといった要因の話だったりします。

これについての記事を書こうと思えば、いくらでも書けます。
しかし、前者の音楽ビジネスの話も後者の話も

「興味がある人は非常に聞きたいが、そうでない人にとってはどうでも良い話題」

です。

「読者の1/3が面白いと思う記事にする」執筆姿勢では、モー娘。やネット配信は題材として弱いのです。

一方、音楽業界を料理するにはこんなやり方があります。

●歌手や作曲家などで買ってもらう「ブランド戦略」
●コンピレーションCDやベストアルバムなどに見る「商品戦略」
●音楽ジャンルやアーティストの将来性を探る「商品開発」
●エンターテイメント産業としての特殊性を浮き彫りにする「業界研究」

●ショップの視点から切る「流通戦略」
●FM局のヘビーローテーションなどに見る「販売促進戦略」
●テレビ番組や広告タイアップにみる「ブランド管理」と、「イベント戦略」や「販売促進戦略」

●テレビ広告がどれだけセールスに影響するかを検証する「コミュニケーション戦略」
●音楽雑誌の低迷の原因追及

これらのどれが最も皆さんの参考になるか、また読んでいて面白い記事になるかを考えなければなりません。
執筆の時間よりも、こういった視点出しや料理方法(複数を組み合わせる場合、どの順番が最も説得力があるかなど)を検討する方に時間をかけていくのが私のスタイルです。

さて、前置きが長くなったので、そろそろ本題に入りましょう。
今回の視点は

「音楽業界はマーケティングの基本である、生活者のニーズをどれだけ考えているか」

です。
正攻法で攻めます。
紙面の都合があるので、視点を2つに絞ります。

前半は「何を売るか」をテーマにした商品戦略。今回は特にブランド戦略を考えます。

後半は「どう売るか」をテーマにしたコミュニケーション戦略、流通戦略。あくまでも商品戦略と連動したものにするため、CDショップ研究のようなものにしないよう気を付けて書きました。

Jポップ販売不振

なぜ正攻法か。なぜ生活者ニーズか。
現在の音楽業界は市場が急激に縮小しているからです。
総出荷枚数は1997年の4億8,000万枚から、2001年には3億8,500百万枚と1億枚も減少しています。比率にして20.8%もの減少です。
これでは業界が悲鳴を上げるハズです。

デビュー歌手数も1997年の250人から2001年には132人とほぼ半減しています。
音楽業界、冬の時代です。
こんな見出しの2002/9/5付けの朝日新聞記事を見つけました。

「Jポップ販売不振」

2002年9月4日に大手レコード会社のエイベックスが業績の下方修正を発表したのがきっかけで、今年上半期はシングルCDのミリオンヒットがゼロに終わったことを指摘した記事です。

ここ数年、ミリオンセラーが20タイトルも出ていたことを考えると、隔世の感があります。例えば最高潮の1998年にはミリオンセラーがアルバムで28枚、シングルで20枚だったのが、2002年上半期ではアルバム5枚だけ。

シングルでは最も売れた元ちとせの「ワダツミの木」でも85万枚とミリオンに達していない。
今年7月に発売された浜崎あゆみのシングル「H」が100万枚を既に超えているので、今年はミリオン・ゼロではありませんが、それにしても寂しい状態です。

一体どうなってしまったのでしょうか。
朝日新聞では「娯楽の多様化」「違法コピー」が主な原因だと見出しに書いています(本文に解説はありません)。

しかし、娯楽の多様化なんてものは最盛期の1998年当時も言われていたし、その頃と比べて多様化が特に進んでいる兆しはありません。
違法コピーといったって、日本では音楽をネットで違法にコピーし配布する文化はまだ先進層のほんの一部だけの動きです。

このことは音楽業界の調査データを見れば一目瞭然です。
「無料の交換ソフトを使ってダウンロードしたことがある(違法?)」人は「ネット利用者ですら」21%しかいません。ネットを利用しない人を含めると、全体からすればまだ6%程度でしかない。

娯楽の多様化も違法コピーもミリオンが減った理由の「ひとつ」ではあるものの、「激減」という表現が当てはまるものでありません。
「よくある『言い訳』的マーケティング分析」にしか聞こえません。

「言い訳」といえば、こんな話があります。
25年前に音楽業界の人たちと話していた時のことです。

「ミリオンセラーはなかなか出にくいですよ。年に1回くらいかな。
タイトル数が多い業界だから仕方がないです。
音楽業界の特殊性ですね」

5年後の20年前には別の音楽業界人が、こう言いました。
100万枚を超えるタイトルが10年間の間に1枚もない時期です。

「ミリオンセラーなんて過去の話です。
松田聖子ですら100万枚売れたシングルはありません。
消費者が多様化した一方、アーティストが増えたので、集中しなくなっているんですね。
音楽業界が他の業界と違うところです」

つい5年前に音楽業界人が言ったことばは・・

「今や、100万枚を超えるシングルやアルバムは年間で最低でも20はありますよ。
人の心を打つ音楽は同じなんです。たくさんの人が良いと思うものはいい。
世の中不景気ですが、音楽業界は他の業界と違います」

100万枚のミリオンセラーが出ても出なくても、多くても少なくても「音楽業界の特殊性」。
原因分析をしているように見えますが、要するに「現状追認」をしているだけです。

悪いのは自分のせいではなく環境のせいだ。
良いのは自分たちだけが頑張ったからだ。
「子供じみた」と言っても良いし、「ジコチューな見方」と呼んでもいい。
もっとも、こんな例は音楽業界だけではありません。一人前の大人のハズの大企業のサラリーマン諸氏にも、こんな

「一見、論理的。裏を返せば責任回避の屁理屈」

をよく見ることができます。

【以下、小見出しと最初の段落のみをご紹介します】

100万枚が持つ意味

さてさて、客観的に見て100万という数はそんなに大変なことなのでしょうか。
マーケティングが発達している業界では100万個売れたとしても、「たかだか100万個」です。
例えば、アサヒスーパードライは年間で37億本も売れています。

音楽業界に見るブランドづくり

さて、ここから音楽業界のマーケティングの状況を見てみましょう。
まず、「何を売るか」という視点。ブランドという観点から眺めます。

生活者が聴きたい曲を提供すること

この事実をどう見るのでしょうか。
音楽業界の調査で、ここ1年間でCDの購入枚数が減った人に「なぜ減ったのか」を聞くと、その理由のトップが「欲しいCDがないから」で、なんと64%にも登るのです。

ブランドを維持することの大切さ

プロデュース・システム(ある意味マーケティング手法)を進めるには大きな条件があります。それは、アーティストよりプロデューサーの方が実権を握っていなければならないという点です。
アーティストが偉くなって「これは好き、これは嫌い」と言い出しては、結局、プロデューサーなしのケースと同じになってしまうからです。

良さが伝わること

冒頭でお話ししたように、商品が売れる要素は大きく分けると二つあります。

【売上】=【商品の質】X【良さが伝わること】

後半では「どう売るか」の代表ポイントとして「良さを伝えること」に視点を移します。

悪循環の販売不振

しかし、あくまでも「恵まれたタイトル」だけが手をかけてもらえる。
ほとんどは特別扱いを受けることなく、CDがプレスされてCDショップに流れ、ただ売れるのをじっと待つばかり。
次の新譜が出たら、トコロ天式に売場から消えていく運命にあります。

小さなショップにヒントが

もうひとつの方法は、すでに実践されているけれど普及しておらず、マーケティング的に見ても整合性がきちんと取れている方法を見つけ出すものです。

使い捨ての文化、「狩猟型」マーケティング

マーケティングという言葉かどうかは別にして、様々な企業が私たちの好みを知り、私たちの好きな環境を次々と作っていったのは紛れもない事実です。
それは大企業に限りません。小さな手作りの経営者も「どうしたら客のニーズに応えることができるか」を常に考えています。

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