多くの人になじみがあるのに、私がまだ記事にしていない企業や業界がたくさんあります。
そのひとつが
産業です。
私はメルマガ執筆の際、執筆テーマや企業・産業をできるだけ重複しないように配慮しています。
産業や企業を変えた方が新鮮な気分で読んでくれるからです。
さて、そうなると悩むのが、ある産業を記事にする時にどういうテーマで記事にしたら、最もその企業や産業が題材として生きてくるかという点です。その切り口がいくつもある場合にはなおさらです。
今回の音楽産業も代表例のひとつです。
例えば、読者の中でも音楽に興味がある、あるいは産業に従事している人から特に多い要望のひとつが
という点です。
また、特定アーティストや音楽ジャンル好きから良く頂く要望は
といった将来的な話だったり、なぜヒットしたのかといった要因の話だったりします。
これについての記事を書こうと思えば、いくらでも書けます。
しかし、前者の音楽ビジネスの話も後者の話も
です。
「読者の1/3が面白いと思う記事にする」執筆姿勢では、モー娘。やネット配信は題材として弱いのです。
一方、音楽業界を料理するにはこんなやり方があります。
これらのどれが最も皆さんの参考になるか、また読んでいて面白い記事になるかを考えなければなりません。
執筆の時間よりも、こういった視点出しや料理方法(複数を組み合わせる場合、どの順番が最も説得力があるかなど)を検討する方に時間をかけていくのが私のスタイルです。
さて、前置きが長くなったので、そろそろ本題に入りましょう。
今回の視点は
です。
正攻法で攻めます。
紙面の都合があるので、視点を2つに絞ります。
前半は「何を売るか」をテーマにした商品戦略。今回は特にブランド戦略を考えます。
後半は「どう売るか」をテーマにしたコミュニケーション戦略、流通戦略。あくまでも商品戦略と連動したものにするため、CDショップ研究のようなものにしないよう気を付けて書きました。
なぜ正攻法か。なぜ生活者ニーズか。
現在の音楽業界は市場が急激に縮小しているからです。
総出荷枚数は1997年の4億8,000万枚から、2001年には3億8,500百万枚と1億枚も減少しています。比率にして20.8%もの減少です。
これでは業界が悲鳴を上げるハズです。
デビュー歌手数も1997年の250人から2001年には132人とほぼ半減しています。
音楽業界、冬の時代です。
こんな見出しの2002/9/5付けの朝日新聞記事を見つけました。
2002年9月4日に大手レコード会社のエイベックスが業績の下方修正を発表したのがきっかけで、今年上半期はシングルCDのミリオンヒットがゼロに終わったことを指摘した記事です。
ここ数年、ミリオンセラーが20タイトルも出ていたことを考えると、隔世の感があります。例えば最高潮の1998年にはミリオンセラーがアルバムで28枚、シングルで20枚だったのが、2002年上半期ではアルバム5枚だけ。
シングルでは最も売れた元ちとせの「ワダツミの木」でも85万枚とミリオンに達していない。
今年7月に発売された浜崎あゆみのシングル「H」が100万枚を既に超えているので、今年はミリオン・ゼロではありませんが、それにしても寂しい状態です。
一体どうなってしまったのでしょうか。
朝日新聞では「娯楽の多様化」「違法コピー」が主な原因だと見出しに書いています(本文に解説はありません)。
しかし、娯楽の多様化なんてものは最盛期の1998年当時も言われていたし、その頃と比べて多様化が特に進んでいる兆しはありません。
違法コピーといったって、日本では音楽をネットで違法にコピーし配布する文化はまだ先進層のほんの一部だけの動きです。
このことは音楽業界の調査データを見れば一目瞭然です。
「無料の交換ソフトを使ってダウンロードしたことがある(違法?)」人は「ネット利用者ですら」21%しかいません。ネットを利用しない人を含めると、全体からすればまだ6%程度でしかない。
娯楽の多様化も違法コピーもミリオンが減った理由の「ひとつ」ではあるものの、「激減」という表現が当てはまるものでありません。
「よくある『言い訳』的マーケティング分析」にしか聞こえません。
「言い訳」といえば、こんな話があります。
25年前に音楽業界の人たちと話していた時のことです。
5年後の20年前には別の音楽業界人が、こう言いました。
100万枚を超えるタイトルが10年間の間に1枚もない時期です。
つい5年前に音楽業界人が言ったことばは・・
100万枚のミリオンセラーが出ても出なくても、多くても少なくても「音楽業界の特殊性」。
原因分析をしているように見えますが、要するに「現状追認」をしているだけです。
悪いのは自分のせいではなく環境のせいだ。
良いのは自分たちだけが頑張ったからだ。
「子供じみた」と言っても良いし、「ジコチューな見方」と呼んでもいい。
もっとも、こんな例は音楽業界だけではありません。一人前の大人のハズの大企業のサラリーマン諸氏にも、こんな
をよく見ることができます。
さてさて、客観的に見て100万という数はそんなに大変なことなのでしょうか。
マーケティングが発達している業界では100万個売れたとしても、「たかだか100万個」です。
例えば、アサヒスーパードライは年間で37億本も売れています。
さて、ここから音楽業界のマーケティングの状況を見てみましょう。
まず、「何を売るか」という視点。ブランドという観点から眺めます。
この事実をどう見るのでしょうか。
音楽業界の調査で、ここ1年間でCDの購入枚数が減った人に「なぜ減ったのか」を聞くと、その理由のトップが「欲しいCDがないから」で、なんと64%にも登るのです。
プロデュース・システム(ある意味マーケティング手法)を進めるには大きな条件があります。それは、アーティストよりプロデューサーの方が実権を握っていなければならないという点です。
アーティストが偉くなって「これは好き、これは嫌い」と言い出しては、結局、プロデューサーなしのケースと同じになってしまうからです。
冒頭でお話ししたように、商品が売れる要素は大きく分けると二つあります。
後半では「どう売るか」の代表ポイントとして「良さを伝えること」に視点を移します。
しかし、あくまでも「恵まれたタイトル」だけが手をかけてもらえる。
ほとんどは特別扱いを受けることなく、CDがプレスされてCDショップに流れ、ただ売れるのをじっと待つばかり。
次の新譜が出たら、トコロ天式に売場から消えていく運命にあります。
もうひとつの方法は、すでに実践されているけれど普及しておらず、マーケティング的に見ても整合性がきちんと取れている方法を見つけ出すものです。
マーケティングという言葉かどうかは別にして、様々な企業が私たちの好みを知り、私たちの好きな環境を次々と作っていったのは紛れもない事実です。
それは大企業に限りません。小さな手作りの経営者も「どうしたら客のニーズに応えることができるか」を常に考えています。