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不思議な不思議な池袋。東が西武で、西、東武【家電量販店】 2002.6.1

量販店戦争勃発

先日、1通のダイレクトメールが届きました。

「この度、ヨドバシカメラ新宿西口本店が装いも新たに新宿地区最大級の売場として生まれ変わりました」

とあります。

あの西口一帯に鎮座ましましている7つものビルを総称して、「本店」と呼んでいることを初めて知りました。

一方、池袋の覇者ビックカメラは新宿東口一帯に3店舗を構え、同地区に8店舗を持つさくらやと激しい競合を繰り広げていましたが、今年5月23日に西口の小田急ハルクに出店。なんとハルクの2階から6階までを占拠。
ヨドバシカメラ本拠地、西口に殴り込みをかけた格好です。
さくらやも新宿駅西口の横手に西口駅前店を開店。

ヨドバシカメラの本店リニューアルは攻勢に対する必死の防衛なのでした。
新宿西口は百貨店戦争から、家電量販店(カメラ量販店)三つ巴の戦場と化してしまいました。

この中で最大手はヨドバシカメラ。全国に16店舗、従業員1,700名、年商約4,100億円。
ビックカメラは東京と主要大都市に16店舗を展開。従業員1,460名。ここまで見るとヨドバシカメラと変わりませんが、年商は約1,700億円と2.5分の1しかありません。
最も弱小のさくらやは東京都を中心に17店舗、従業員500名、年商約1,000億円とヨドバシカメラの1/4。

ちなみに、西口にはソフマップも拠点を構えています。
全国38店舗と最も数が多いですが、従業員数880名、売上高は1,400億円。1店あたりが小粒なのが特徴です。

かつては年率30%で伸びていたパソコン市場の恩恵を受けて、売上げを欲しいままに伸ばしていた量販店ですが、企業の備品限度額が20万円から10万円に引き下げられ、パソコン減税がなくなったせいもあって、パソコン市場は急速に縮小。今やデジカメの売上げの伸びで何とか企業成長を続けている有様です。

その彼らが生き残りをかけた戦争のひとつが、新宿西口の攻防戦だというわけです。

さて、今回は彼らに焦点を当てた記事を紹介します。
テーマは

「何が量販店業界の問題点なのか」

をあぶり出すことです。
従って、今回はビックカメラの話が多いものの、例えばビック対ヨドバシカメラのような構図ではなく、業界全体をテーマとしました。
いつもの生活者の視点が2/3ですが、最後はメーカーの視点にも及ぶ、私としてはちょっと珍しい記事です。
お楽しみください。

中島さんのぼやき

「森さん、聞いてくださいよ。ひどいんですよ!」

普段は温厚な紳士の中島さんが珍しく激怒しています。
彼は大のカメラ好き。
現在使っているデジタル一眼レフカメラは60万円也。
レンズを入れると軽く100数10万円のカメラをお持ちです。

「どうしたの?真っ赤ですよ。
持病の糖尿病にさわりますから、落ち着いてくださいな」

と私。

「いや、これが落ち着いていられますかってんだ。
聞きねえ、聞きねえ。

先日、有楽町のビックカメラに行ったんです。
森さんもご存じの通り、ここは倒産したデパートそごうの跡地をビックカメラが買い取ったものだから、でかいのなんのって。
だから、滅多に入手できない高速タイプのデジカメ用メモリカードリーダー(読み込み機)を探しに行ったんです。

プリンタやデジカメのような主力商品と違い、カードリーダーのような小さなものは店内表示がないので大変です。
店によって、どこにあるのかがさっぱり分からない。ハードディスクの隣りにある店もあるし、ボード類のような部品売場にある店もある。
「売場」を探すだけで1〜2時間もかかってしまうことも珍しくないんです。

従業員に聞くと話は早いですよ。
でも、人数が少ないから接客中だったり、いないことも多いから聞くに聞けない。
私は「売場」や「従業員」を探すために来ているのではなく、「商品」を探すために量販店に行くのが本来の目的だと思うんですが・・ (笑)

今回も10分以上探し回って、ようやく従業員を捕まえました。
案内されたのは、小さいけれど立派なカードリーダー・コーナー。
さすが、品揃えの豊富な巨艦店・・・って・・・
案の定、高速タイプはありません。

こんなこともあろうかと、わざわざ『高速タイプ(IEEE1394)』と伝えたのに、従業員はあるともないとも言わずに

「自分で探しな。俺は知らんから」

と私に接しただけです。
仕方がないので、他の店員に聞いてみました。また10分探し回る。

ようやく見つけた従業員は自信満々に、こう言うではありませんか。

『IEEE用のカードリーダーなんて、世の中にありませんよ』

げっ、いつものいい加減商品知識が始まったぞ。
私は1台持っているのに (笑)」

「あらら、私も高速リーダーを持っているよ」と私。

「だから続けました。

『いや、ビックカメラの新宿ピーカンで見かけましたよ』
『ピーカンのどちらですか?東口店?東南店?』
『店名は知らないけど、大きな方です』
『ピーカンは2店あるんです。どちらか分からないと確認ができないので・・』

ウソつけ (笑)
2店とも電話すればいいだけじゃないか。新宿店なら当たり前のようにやってくれるぞ。

『新宿南口を出て、青梅街道沿いに歩いて、2つ目の道を左に・・』

言い合いするのも面倒なので、延々と説明しました。

『少々お待ちください』と言い残して彼はその場を立ち去りました。
てっきり私は彼が他店の在庫を調べるためだと信じ込んでいました。
でも、まだまだ修行が足りなかったようです。

20分待ってもなしのつぶてなので、諦めて他の売り場に寄ることにしました。
エレベータに向かう途中、くだんの店員が若い女性客を接客しているのが見えました。
やっぱり!逃げたな (笑)」

「まあまあ、そんなに怒りなさんな、中島さん。
そんなことは家電量販店では良くある事じゃないですか。さすがに最近は見かけなくなったけど」

と慰めようとしました。

【以下、小見出しと最初の段落のみをご紹介します】

中島さんのぼやき−その2

「いえいえ、森さん、まだあるんですよ、続きが。
今度は別の階のカメラ・デジカメコーナーに行きました。
欲しいのはあるメーカーのコンパクトフラッシュ(デジカメ用フィルム)です。
この売場もどこに何があるのかさっぱり分かりません。

中島さんのぼやき−その3

「ということは、中島さんのその1日の災難をまとめると、こんな感じかしら?

流通業の商品知識とは

「森さん、かわいそうですよ。
有楽町のお店の従業員は単に商品知識がなかっただけでしょう。
あんなにたくさんの商品があるのに、いちいち覚えていられませんよ。
私は彼らに同情しますね」

私の後輩です。

生き残るための客層拡大

中島さんは

「商品がどこにあるのかが分かりやすければ、私は従業員など量販店に求めない。だから、接客もいらない」

と言い切っています。

「在庫あります」の不思議

最後の話です。
量販店で不思議なのは「在庫あります」という表示です。
「本日、お持ち帰りになれます」という表示の場合もあります。
スーパーやデパートなどの「まともなお店」では見たことがないものです。

量販店とブランドの冷たい関係

実は、品切れが及ぼす被害は対量販店ではありません。メーカーが損をするのです。

「売れるはずだったものが売れなかったので、販売機会の損失?」

いいえ違います。

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