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デジカメは電気羊の夢を見るか?【デジカメ】 2002.4.1

上へ下への大騒ぎ

デジカメが人気です。
普及率はほぼ15%と7人に1人が持っている計算です。これは、インターネットブーム前のパソコンの普及率と同じくらいだから、かなりの数です。

逆に言えば、7人中6人が持っていないので、まだまだ伸びる市場です。家電量販店ではパソコンの売上失速のために、主役をデジカメに移しています。

だからといって、デジカメは儲かるかというと、これまた違います。競争が激しく、カメラメーカーだけでなく、フィルム、パソコン、家電メーカーが入り乱れて、各社、乱戦模様です。

1年に2回も3回も新製品を出さなければならない。せっかくの投資や製造設備の回収もできないまま、次の機種を発売しなければならない。価格は次々と下がっていく。メーカーの悲鳴が聞こえてきそうです。

しかも、売れ筋は決まっていません。誰がトップになるのかは見当もつかない。
例えば、今回のデジカメブームの仕掛け人、カシオは当初こそ、売上げナンバーワンの名を欲しいままにしていましたが、今では10位にはいるかどうか。

トップグループを出たり入ったりしながら、会社全体でコンスタントに売れているのがオリンパス。
最近では、富士フィルムが頑張っているか思いきや、これまでまともな機種を出していなかったキャノンが一気にトップに躍り出た・・と思ったら、番外だったソニーが巻き返しを計り、トップの座に。

ふと、気がつくとかつて二番手グループをきっちり走っていたエプソンが精彩を欠き、初期に話題作を排出したリコーがまたまた新製品で頑張ろうとする。

20万円以上の高級一眼レフ機種となると、オリンパスが頑張り、キャノンも評価が高い。普及機では今ひとつだったニコンがデジタル一眼レフではしっかりと売れている。30万円以上もする高価な機種だというのに、下手をするとアマチュアが持っていたりする。

おとなしいのか、やる気がないのは日立や東芝。OEMの覇者、三洋電機は自社ブランドでは全滅。
ミノルタは意欲的だが、今ひとつヒット商品がないし、コニカは脇役のまま。
巨艦松下ですら、参戦はしているものの話題に欠け、外資の雄コダックは「売っている」というだけの静けさ(業務用では別ですが)。

いやはや、この混線、混乱、混迷状況は、かつての電卓(古くて済みません)やワープロを思い出させてくれます。
あの時も、何10ものメーカーが入り乱れてくんずほぐれつの大奮戦を展開しましたが、最終的に勝ち組はシャープとカシオ。
ワープロは知らないうちにパソコンに飲み込まれて、富士通、シャープ、NECの御三家が、全員仲良くあえなく沈没。

そうなると、当然、デジカメも勝ち組、負け組が出てくるのは誰が見ても明らかです。ただ、どのメーカーが生き残るのかは誰にも分からない。
さすがの私も予想がつきません。

少なくともやる気のないメーカーはどこかで脱落するのは間違いありませんが、必死のメーカーが残るかというと、それぞれ各社事情があって、必死にならざるを得ない企業の数が多すぎます。

一方、デジカメの普及によって、犠牲者が出現してしまいました。
プロカメラマンたちです。
私の古くからの友人は40年近くカメラの世界で飯を食ってきましたが、昨年秋、とうとう廃業宣言をしました。現在はタクシーの運転手をやっています。カメラはあくまでも趣味で残すという彼の疲れた表情には、かつて大企業のパンフレット写真を撮りまくり、独立後は毎日のようにキャバクラで1晩10万円を散在した面影はどこにも見られません。

廃業直前の彼の売上げは3万円、0円、8万円、2万円、0円・・
こずかいにもなりません。
元々、バブルが崩壊し、売上げが減っていたとは言いながらも、毎月数10万円の売上げがありました。それが一気に減ったのが一昨年の冬から。
実は丁度、デジカメの普及率が第一基準点の6.8%(クープマンの目標値と呼ばれます)を超えたのが同時期なのです。

ちなみに、彼は職人気質のカメラマンで、デジカメを結局導入しませんでした。
それと符丁を合わせたかのように、唯一残っていたまともな仕事である新入社員採用パンフレット用写真の受注がなくなった。
ネットで情報を収集し、応募までこなすことが当たり前の時代になったからです。

写真需要が少なくなった上に、残った仕事を奪い合い単価が下がってきたところに、それに対応できるデジカメ導入をしなかった。
ある意味、典型的な環境不適合のケースです。

カメラとフィルムという数10年も続いた1つの産業と、それによって生活していた様々な職業が風前の灯火にさらされています。

今回はそんなデジカメという革新的な商品を素材に取り上げます。

テーマは
「生活者の視点から見ていくと、デジカメはこれからどう進化していくのか」
です。

出身地で分かるメーカーの事情

さて、デジカメメーカーを眺めていると、大雑把に言って出身地で分類できます。

●パソコン/パソコン周辺機器メーカー
▼エプソン ▼NEC
●家電・AV機器メーカー
ソニー 三洋電機 松下 ▼日立
▼東芝 カシオ
●カメラメーカー
オリンパス ニコン キャノン リコー
ミノルタ ▼京セラ ▼ペンタックス
●フィルムメーカー
富士フィルム コニカ ▼コダック

【注】▼はやる気があるのかないのか分からないメーカー。森が判断した。

パソコンやパソコン周辺機器メーカー出身企業が多いのは、デジカメは当初、ホームページに掲載する写真を撮る機械として発達したからです。
大ブームの立て役者、カシオはここに分類されます。

家電・AV機器メーカー出身企業が名を連ねているのは、ブーム当初デジカメの主要部品のCCD(デジカメのレンズやフィルムのようなもの)はビデオカメラ用を流用していたからです。
今では家電業界が伸びる可能性のある数少ない市場のひとつですから、攻める側です。

「攻める側」があれば「守る側」があります。
カメラメーカーとフィルムメーカーが「守る側」です。
デジカメはフィルムを使いません。すべて、スマートメディアやコンパクトフラッシュといった、フロッピーディスクの進化系のような電子記憶メディアに記録されます。

すると、もし、8ミリフィルムがビデオカメラに席巻されてしまったように、レコードがCDに取って代わられたように、普通のフィルム・カメラ(銀塩カメラと呼ばれます)がデジカメに世代交代でもされようものなら、カメラメーカーやフィルムメーカーは消滅するしかありません。

従って、彼ら「銀塩組」は必死になって、デジカメ市場で生き残らなければ明日がない。

【以下、小見出しと最初の段落のみをご紹介します】

「画素数の多い」から別のニーズに移った

さて、ここでちょっとデジカメ市場のおさらいです。
デジカメの祖先は遠く20年前にさかのぼります。
ソニーが参考発表したマビカというカメラです。
外見は普通のカメラですが、フィルムの代わりにフロッピーディスクに画像を記録する革新的な商品です。

ニーズ別に銀塩カメラ対デジカメを見る

これまで見てきたのはデジカメは「きれい」一辺倒から別のニーズが出てきたということです。
それは今までのカメラのニーズを見ればよく分かります。
二眼レフから一眼レフ、コンパクトカメラ、レンズ付きフィルムの流れを見ると、カメラのニーズは次の4つであることが分かります。

意外に面倒なデジカメ印刷

印刷だって、デジカメは意外に面倒です。

銀塩カメラの場合は5ステップですが、トータル時間で30分ちょっとで済みます。

●フィルムを抜き取る(10秒)
●DPEショップに行く(ついでなら10分)
●住所氏名などの手続きを待つ(普通で10分)
●DPEショップに行く(ついでなら10分)
●写真を受け取る(2分)

カメラは未成熟商品であるこれだけの理由

カメラニーズ4つの中で「使いやすさ」が大きな問題点だと私は思っています。
なぜか。
カメラの場合「使いやすい」ことと「きれいに撮れる」ことが密接な関係だからです。

頂点がプロではない支流が本流になるか

さて、ここまではデジカメは今までのカメラの延長上、あるいはカメラの代替品としてのお話でした。
きれいにしても何にしても、あくまでもその頂点や目標すべき所は「プロ・カメラマン」です。彼らにどれだけ近づけるかが大きなニーズの方向です。

カメラの革命児デジカメがもたらすもの

デジカメがこれからどのように進化して、どのような使われ方をするのか。
まだまだデータや観察をしてみたい気がします。
しかし、ひなちゃんのような若い人たちが出現するのは間違いなさそうです。そして、そうなると写真という文化が変化するのは確実だろうと考えています。

(残念ながら、それらの写真はありませんが、彼女のホームページ
http://www21.big.or.jp/~feminism/menu.htmlを一度ご覧あれ。)

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