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映画は栄華を極めたか【映画】 2000.5.15

マイ映画ベストテン

2001年宇宙の旅 メロディ
ウェストサイドストーリー 南太平洋
初恋 時計じかけのオレンジ
さらば友よ

ブロンソンが飛び、猿がこん棒を大空に投げ、「クール!」と叫ぶ。
甘い「バリハイ」の歌声が響いたと思えば、狂気のナイフが「雨に唄えば」を口ずさむ、と同時に金魚売りに見入っているイギリスの少女がほほ笑む。

何が何だかわかりませんが (笑)、これらは、何10回も見た「私の映画ベストテン」です。古いタイトルばかりで恐縮です。
水野晴男ではありませんが、「いやぁ、映画っていいですよね」と思わずつぶやきたくなる気持ちは良く分かります。

さすがに、コンサルタントとして多忙な今、余暇の時間がないのでかつて年間150本の映画を観た私も、今ではせいぜい年間5〜6本がいいところです。救いは、そのすべてを映画館で観たということくらいでしょうか。

現在の日本人の映画鑑賞平均本数の1.2回の4倍を観ているとはいえ、見逃して悔しかった作品がたくさんあります。平成ゴジラはモスラから止まったままですし (笑)、なんとスターウォーズ・エピソード1も観ることができなかったのが心残りでしょうがないのです。

かといって、古い映画ファンですから、ビデオ映画はどうしても物足りない。プレミアム料金を払ってでも良いから映画館で上映してくれないかと願うばかりですが、できる相談ではないでしょうね。

私事ばかりで恐縮なので、データをご覧頂きましょう。
皆さん感動の作品があるでしょうか。

1999年興行成績ベスト5(百万円)
順位 作品名 洋・邦

興行成績

1位 アルマゲドン

8,350

2位 スター・ウォーズ エピソード1

7,800

3位 マトリックス

5,000

4位 シックス・センス

4,300

5位 ポケットモンスター
幻のポケモン・ルギア

3,500

1998年興行成績ベスト5(百万円)
順位 作品名 洋・邦

興行成績

1位 タイタニック

16,000

2位 踊る大捜査線 THE MOVIE

5,000

3位 ディープ・インパクト

4,720

4位 ポケットモンスター
ミュウツーの逆襲

4,150

5位 メン・イン・ブラック

3,500

映画は私たちに勇気を与えてくれます。ほっとした時間をくれます。ハラハラ、ドキドキの興奮を見せてくれます。人の喜怒哀楽に直結して刺激する。これが映画です。

また映画は総合芸術とも言われます。
視覚だけでなく、聴覚や場合によっては触覚まで刺激するからです。最近の技術革新でディズニーランドのように、体感させるアトラクションもありますが、120分もの長時間、別世界に連れていってくれるのは映画だけです。

映画の人気は世界的なものです。
主役はアメリカですが、ほとんどの国で映画が作られています。
日本では早くから人気が出たのが香港。最近では韓国映画「シュリ」が日本で大ヒット。
そして、「踊るマハラジャ」で一躍メジャーになったインドは隠れた映画大国でもあります。絶対数が全世界の1/6にも当たる10億人というせいもあります。中近東でも出稼ぎ人口が多いインド人向けにインド映画専門館があるほどです。

これほどまでに親しまれている映画ですが、その割に見返りが少ないのもまた映画です。日本の映画観客動員数は年々減ってきており、1958年の11億2,000万人をピークに現在はその1/10の1億2,000万人しか確保できていません。
数字だけを見ると典型的な衰退産業。それが映画なのです。

もちろん、映画の人気が落ちたわけではありません。テレビの映画番組の視聴率は好調ですし、 CATV や衛星放送の目玉は映画です。
映画館での映画が不調なのです。
1960年の7,400館をピークに現在は1,800館。1/4です。

今回はそんな映画産業の中でも特に落ち込みが激しい邦画にスポットを当てて、なぜ映画産業が衰退してしまったのか。その原因を探ってみました。

低予算という壁

日本の映画の弱み、いやアメリカ映画以外の弱みは、市場規模が小さいことだと言われています。アメリカ映画は世界に輸出されるので、その売り上げを前提にして製作費をかけることができます。しかし、日本映画は一部のアニメを除き、日本市場にしか流通できない。だから、勢い製作予算が限られてしまう。

予算が少ないと何故おもしろいものが作れないのか。
最近意外な大ヒットを記録した「ブレアウィッチ・プロジェクト」は低予算で有名です。
また、トム・クルーズやメグ・ライアンなどハリウッド映画の主役の出演料が30億円や40億円などという日本での歴代ヒット映画の売り上げと同じ水準だと聞くと、有名あるいは人気のある俳優や女優が出演しているからといって、おもしろい映画とは別物である気がします。

だから、一見予算と面白さは関係がないように思えます。
しかし、予算がない映画の典型であるアダルトビデオを見るまでもなく、映画の予算とは脚本と取り直し(そして編集)に大きく左右されるのです。

映画は一部の作品を除き、ストーリーが重要な要素であることは議論の余地はないてしょう。予算がない場合はギャラの安い脚本家に頼らざるを得ない。また、脚本の練り直しなどに時間をかけることもできません。
アメリカの大作映画では、映画製作にマーケティング手法を利用するのはほぼ常識化しています。それらの調査の中でも最も時間をかけるのが脚本なのです。
予算が潤沢にある作品ならではの金のかけ方です。

2つ目の「撮り直し」とは何か。
黒沢明はこだわりの作品作りで有名です。
彼は、自分が気に入った天候でないと、待機・待機で、結局撮影をしないままロケ地の宿泊所に戻ってきてしまいます。

すると何が起きるか。
カメラマンや照明などのスタッフはもちろん、俳優しかも主役級ですら、その日は何もしない。しかし、人件費だけは嵩みます。
撮影をしないということは、タダで給料やギャラを支払うようなものです。黒沢クラスになると、1日2,000万円は当然の如くふっ飛んでしまいます。

この例を見るまでもなく、NGの連発は無駄になった時間やフィルムを含め、すべて製作費に関わってきます。つまり、予算が少なければ少ないほど、監督が納得が行かなくてもそのシーンは採用しなければならない。シーンひとつひとつの質が下がるというわけです。

余談ですが、誤解を避けるためにひとつお話します。
予算がたくさあれば面白い作品が作れるという短絡的なものではありません。
例えば、1秒あたりの製作費が最も高いのは黒沢映画ではなくテレビ広告です。
30秒の広告を作るのに平均2,500万円。資生堂やトヨタなどの「一部上場企業」クラスだと5,000〜8,000万円。10年ほど前に話題になったいすず自動車のパリで曲芸をする自動車の広告は1本で1億3,000万円でした。

つまり、2時間分で120〜200億円もの製作費が掛かるのと同じです。
トヨタの広告すべてがすべて面白いわけではありません。
資生堂の広告はきれいではありますが、感動するストーリーが用意できるかどうかは別物です。

日本の人件費は今や世界一高額です。
広告の分野では、下手に国内ロケで日本人スタッフを使うくらいなら、ディレクターとプロデューザーなどの中心メンバーだけがアメリカに渡り、モデルやカメラ、グリップ(照明)などのスタッフを現地アメリカ人で固めてしまったほうが安上がりになることもあります。

私のクライアント時代の経験でも日本で外人モデルをオーディションするのと、ニューヨークに集結しているモデルを集めてオーディションをしても金額は変わらないことがままありました。しかも、アメリカの方が豊富な人材から選べるので、モデルのクオリティが上がることを何回も経験しました。

つまり、日本での映画製作は他の国で行うよりも高額になり、その分質が悪化するという悪循環になっているのです。

【以下、小見出しと最初の段落のみをご紹介します】

競争相手の認識不足 - 映画館という名の品質

映画の衰退。その直接の原因はテレビであることは広く知られています。
かつて、1964年の映画の輸入自由化を期に、洋画と邦画が熾烈な争いをしているうちに、新興勢力であるテレビが客を取ってしまった。当時の映画業界の人たちが、自分たちが戦うべき市場は「映画である」と狭くしてしまったために、それ以外のテレビという映画から見れば「異質のもの」にシェアを喰われてしまった訳です。

改善されつつある映画館だが

実は、この映画館対策(別な言い方をすれば映画の流通戦略)は、近年目覚ましく改善されてきています。特に郊外型の新規に登場したシネマ・コンプレックスまたはマルチプレックス(大小の映画館を複数用意する施設)で顕著です。

●狭い・見ずらい
例えば、椅子の幅を従来より20%以上広くする。これは、今までの座席が昔の日本人のサイズに合わせて、かつできるだけ詰め込もうとした結果、現代人の体型に合わなくなったのを見直そうとする動きです。

シネコンという新しい息吹

さて、衰退する一方の映画業界で良く言われるのは、大作主義に対する反省です。
映画製作ではありません。映画流通の話です。
大作映画ばかりを追いかけ、多くの映画館で一気に上映しようとする。しかし、観客数がそれに見合った数とは限りません。いや、見込みと外れることのほうが多いのです。
すると、渋谷パンテオンのような1,000席クラスの映画館では、がら空きという事態が起こります。

勉強をしない産業は衰退するだけ

なぜ、こういうことが起きるのか。
1つは映画業界が需要予測のノウハウの勉強をまったくしていない前近代的なビジネスだからです。アメリカのようにマーケティングを応用するわけでもない。

映画を見放した映画産業

なぜこんなことが起きたのか。
理由は簡単です。
配給会社は一方で有数の不動産会社でもあるのです。
全国の直営映画館や過去にそうだった土地を管理する不動産会社です。

清貧という名の人材流出

「森さん。いくら豪華で居心地が良い映画館でも、作品が面白くなければ行きませんよ」

正解です。
実はもうひとつ、配給会社の罪があります。

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