昨年12月に予告編を発表して以来、予想だにしないほどの反響があった「サルにもわかるプレゼンテーション&企画書」も初級編の大詰めを迎えました。
お寄せ頂いた数多くの読者からは「参考や勉強になった」とお褒め頂きました。
嬉しかったのは、その大半が学生さんや20代の若手社員だったことです。20代は読者構成比約20% (トップの30代が約50%)
と決して多くない層であることから考えると、記事は成功だったといえます。
また、クライアントと同時に読者でもある方からは
と言われてしまいました。この方は以前、大手外資コンサルティング会社に在籍されていた経歴を持っていますので、尚更そう感じたのでしょう。
もちろん、私には同業者の邪魔をする気はまったくなく、言われた私がびっくりしました。プレゼンテーションは1つの立派な技術ですから、それで飯を食うこと自体は否定しませんが、前回の記事はあくまでも初級編です。それを公開されて困ってしまうようなコンサルタントなら、飯を食う資格すらありません。
そんな反響の元、「予告編 (1999年12月)」「プレゼンテーション編 (2000年2月)」と続いたシリーズはこの記事で一通り完了です。今後、自己啓発シリーズのネタがなくなったら中級編の公開を考えていますが、まずは中締めです。
今回も出血大サービス。惜しみなくノウハウを公開します。
ええい、全部持ってけ、ドロボー (笑)
まずは、ここで取り上げる企画書とはどんなものかを説明しなければなりません。というのも、企画書は名前は同じでも、業界や企業によって内容が全然違うからです。
例えば、私たちのコンサルタント業界では一般的に企画書は、契約の前段の仕様書を指します。
ということを記述した冊子です。
従って、枚数は40枚程度と短いものになります。
しかし、例えば広告代理店でいう企画書は、私たちにとって「報告書」あるいは「戦略策定書」というような名前で呼ばれます。枚数も数100ページにおよぶのは日常茶飯事です。
また、「企画書は1枚でまとめること」といった制限が付いている企業もありますし、例えば雑誌や書籍の編集者が企画会議に提出する企画書も1〜2枚の簡単なものです。
最後に、企画書には文字がびっしりと書いてある「文書原稿」と概念図を多用している「OHP原稿」の2種類があります。
これらすべてを少ないスペースで網羅するわけにはいきません。
従って、ここでは「企画書」を次のものとして扱うことにします。
要するに私が普段提出する報告書や戦略立案書をイメージしています。
なぜなら、私の持っているノウハウは、メーカー時代から「商品開発」「広告開発」「販売促進開発」などのマーケティングに関わるものに限られるからです。
雑誌記事の企画を通すための企画書や、商品アイデアだけを記述している企画書については、申し訳ありませんが、この記事を参考に読者の皆さんが各自で工夫してみてください。
もうひとつ前提があります。
この記事では戦略構想、アイデア、分析などは事前にきちんとできあがっていることを前提とします。
市販の「企画書の書き方」の中には、企画のひねり出し方や分析の仕方を混在させているものも少なくありません。一方、私は企画やアイデアそれ自体は薬、企画書やプレゼンテーションは注射器や錠剤などの薬を飲む方法とそれぞれを分けて考えています。創出する能力と伝達する能力は別々のものだからです。
なお、構成上、前半は本当の意味での初心者向けの3つのノウハウを紹介しますが、後半の5つは中級者に足がかかる感じになってしまいました。プレゼンテーションのテクニックは初心者から上級者まで幅が広いのですが、企画書はどうしても初心者卒業寸前くらいからでないと書けないからです。
実際、シストラットでもプレゼンテーションは早ければ入社半年目くらいからデビューさせますが、企画書のは早くても3〜4年目でないと任せられないからです。
初級編は企画書の中身ではなく、外観に重視が置かれます。
その第1弾がこれです。
100文字というと1行20字の個条書きが5本です。
かなりシンプルなものに仕上がります。
例えば、次の例で大体100文字強です。
書体のサイズが大きいと読みやすくはなりますが、48ポイントのような大きな書体だとA4のOHP1枚に50文字くらいしか入りません。これでは、1ページの説明時間は30秒。つまり、せわしなくOHPをめくっていかなければなりません。
企画書のポイントである「ひと目、ひと言、なるほど」を最も効果的に引き出すには、文字ではなく概念図が効果的です。
単純な図形の組み合わせをうまく利用すると、100の言葉を代弁してくれるからです。また、概念図は1枚のシートをシンプルにするには極めて便利だし、構造も把握しやすくなります。
さて、外観を飾る企画書のテクニックは以上の3つです。
ここから、企画書にとって最も重要な「どう構成するか」という点に移ります。初心者というより「中級者に限りなく近い初心者向け」です。
本業で、企画書を作るに当たって、私が一番神経を使うのは
その1点です。
映画や小説では、いくつかの見せ場を用意し、次の展開への興味を引くことで観客や読者の興味を持続させる構成になっています。また、一方で、興味の糸をあえて緩ませて、次の山場に備えることもテクニックとして多用されます。
ということは、企画書を書く際に、相手の反応があらかじめ予想できていなければなりません。
企画書の上手下手の明確な境目はこの点だと言い切ってもいいでしょう。
企画書の初心者が犯しがちなミスは、自分が知っていることをすべて企画書に盛り込もうとすることです。
その結果、企画書は様々な視点や事実、そして考察がごちゃごちゃに入り組んでしまって、収集がつかなくなってしまいます。起承転結は当然ゼロ。
企画書でかなり頻繁に見かけるのが矢印だらけの概念図です。
四角やだ円で囲った文字や個条書きを、線で結んだものです。
矢印は論理のつながりを示すので、私も良く使います。しかし、頻繁に見かける原稿では、私の原稿の3〜4倍もの数があります。
特に多いのが広告代理店のマーケティング部門が作った企画書ですが、独立したプロのマーケターやコンサルタントでも良くあるパターンです。
私のマーケティングの師匠といえば「ランチェスター戦略」の田岡氏、「マーケティング・マネジメント」のコトラーですが、論理の素晴らしさを教えてくれたのが「広告の科学」のチャールズ・ヤン氏でした。
彼の著書は当然ですが、大変興味深かったのが、ブレーンという広告とマーケティングの専門雑誌にヤン氏とある大手広告代理店のマーケティングの偉いさんとの対談でした。実に20年前のことです。