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ゾウが踏んだら壊れてしまう【文具】 2002.8.1

文具大国ニッポン

私たちビジネスマンやOLにとって、切っても切れないものは通勤、昼食、OA機器、電話などいくつもありますが、そのひとつに文具があります。
日本は書店と並んで文具大国だと言われます。
確かに、私がアメリカにいた頃は、日本に約20,000店も点在する「街の文房具屋さん」に相当する店は皆無でした。

ボールペンもノートパッドもスーパーで買うか大学の生協で買う。生協といっても売り場は小さい。品揃えは日本の「街の文房具屋さん」と大差がないくらい貧弱なものです。
唯一、ショッピングセンターでは「高級文具」を扱う小売店が専門店として細々と経営しているだけです。

いきなり余談ですが、私にとって文具にはかなりこだわるジャンルがあります。
ペンと紙(ノートパッド)です。
私はパソコンを人より長く使い、今ではパソコンなくしては仕事ができないほど使いこなしています。
このメルマガも愛用の東芝Librettoがないと書けなくなってしまうほど、たった1.1kgのウィンドウズ2000マシンを使い込んでいます。

しかし、意外にも仕事での報告書作成はペンと紙です。
この旧来からの組み合わせで原稿を書き、アルバイトや契約社員にパソコンに打ち込んでもらっています。
従って、ペンと紙の相性にはかなりこだわります。
この2つの相性が良くないと、仕事の効率ががぐっと落ちてしまうほど、作業リズムに影響するのです。

現在使っている「パイロットのドローイングペン」と「オキナのプロジェクト・ペーパー」は既に20年間愛用しています(以前使っていたノートパッドは生産中止になったので、現在は2代目ですが)。

さて、私たちに身近で、かつ生活の中でも大きな位置を占める文具業界ですが、元気がなくなったと感じるのは私だけでしょうか。

「ゾウが踏んでも壊れない(サンスターのアーム筆入れ)」「ゼブラ、ゼブラ、ゼブラ、ゼブラ、ボールペン、ゼブラ」と連呼型テレビ広告をしていた時代は遙か昔になってしまいました。ましてや「コクヨのコクヨ」なんてキャッチフレーズは、私ですら記憶の彼方に追いやられるほど昔の話になってしまいました。
このメルマガの読者の大半が「そんな広告、知らないよ」という時代になっています。

「一体、彼らはどうしてしまったのか」

今回のテーマは、ここに置きます。

スーパーと黒船到来

文具業界と新興勢力の競争の歴史を簡単に追うことで、解説してみましょう。
文具業界の最初の試練はスーパーマーケットの台頭でした。
1970年代にスーパーが生まれ、街の商店が次々と淘汰されたのはご存じのとおりです。
そのスーパーが文具を扱いはじめました。

「何がいけないのですか?
文具メーカーだってスーパーに商品を納めればいいじゃないですか」

私の後輩です。
答えを言う前に、文具業界の流通の話をしなければなりません。
長らく文具業界を支えてきたのが文房具店と呼ばれる小さな、しかし無数の店でした。
彼らの多くは地元の顔が広い人たちですから、文具業界の大きな需要のひとつである「学校指定」という特権が与えられていたからです。
店は小さくても大口需要客をがっちりとつかんでいる。
それが文具業界と文房具店の強みでした。

そこに横やりを入れたスーパーが入り込んできた。
しかも定価ではなく安く売る。

文具メーカーは文房具屋さんには頭が上がりません。
最大手のコクヨでは、長らく、優秀な営業マンは店先の掃除係になって、ほうきやチリトリを使って滅私奉公する習わしになっていました。
メーカーは人情で文房具屋さんとお付き合いをする訳です。

そこに定価より安く売る巨大スーパーが現れるのです。
メーカーは文具屋さんを守ろうと必死になります。特に、最大手コクヨにとって仲がよい文房具屋を守ることは自分を守ることになります。
アメリカではスーパーの進出によって、タダでさえ脆弱な文房具店がほぼ壊滅状態になっていたのを見ていないハズはありません。
良くある流通とメーカーとの攻防戦です。

他産業と違ったのは、初戦の結果は文具業界の勝ちだったことです。
スーパーは個人を相手にしています。
文具業界は一部の家庭需要を失ったものの、学校いう最大の市場を守りきったからです。

しばらく大きな波は立たず、着々と進むパソコンの普及に対応すれば良かった文具業界でしたが、1997年に大きな黒船が外国からやってきます。
「オフィスデポ」と「オフィスマックス」という名前の「文具の安売り店」です。

しかも、名前が示すとおり、このアメリカ資本のディスカウント・ストアは、文具業界の大口顧客である法人を狙ってきました。
今まで定価100円だったボールペンが5本で200円(1本40円)といった激安価格。1本1本は安いものの、家庭では5本もまとめて必要ない。
まさに、まとまった大量消費を前提とした法人相手のビジネスです。

実は彼らの本当のターゲットは、法人は法人でも大企業ではありません。
大きな企業は専門の納入業者が価格面でもそれなりに企業をつかんでいます。
文房具屋さんが学校をつかんだように企業に入り込んで、夜を含めたアフターサービスなどをしていたのですから、そう簡単に崩れません。ましてや、法人需要は営業マンを揃えなければ、簡単には入り込めない。激安店を作っただけではソニーや松下は文具を買いに来てくれません (笑)

それでは、彼らのターゲットは誰か。
日本の企業数の90%以上を占めると言われる中小企業です。
文房具屋さんは長らく営業をしてきただけに保守的です。いや、シストラットのような中小企業には冷たいです (笑)

例えば月間数10万円を買うシストラットでも、文房具屋では個人と同じように店頭でしか商品を売ってくれません。10年以上も買っていた東京恵比寿の駅前の文房具屋さんから、伝票による契約のお願いをいとも簡単に断られた経験があります。
友人が経営している小さな会社の事情は皆、似たり寄ったりでした。

そこに、平成9年に登場したオフィス・デポとオフィスマックスです(オフィスマックスは日本市場を撤退済み)。
私、あ、いえ、私のような小さな会社の経営者たち(と一般名称で言ってみる (笑))が飛びついたのは言うまでもありません。

シストラットのオフィスに最も近いオフィス・デポは山の手線で2駅先の五反田にありました。しかし、ほとんどの商品が半額近い価格なので、月間10万円近い節約になります。それだけの差額があれば、わざわざバイトに買いに行ってもらっても十分にペイします。

駅前の文具屋さんへの逆ウラミ (笑) もあって、ほぼ完全に私の需要は新興勢力に移ってしまいました。
外国からの黒船はそんな中小企業が多ければ多いほど驚異になります。
そして、大企業と比べて虐げられてきた、日本企業の90%を占める従業員10人以下の法人市場は一斉に離れそうな構えを見せていたのでした。

【以下、小見出しと最初の段落のみをご紹介します】

法人市場の戦いと100円ショップ

そこに、次のショックが到来します。
アスクルを筆頭とする文具の宅配サービスです。
アスクル以前の宅配サービス会社は最初から文具に進出したのではありません。
重くてかさばり、純正品は異様に価格が高いコピー用紙のディスカウント・ビジネスとして産声を上げたのです。

頑張って欲しいユニバーサルデザイン商品

一方的に防戦ばかりで、目立った「返り討ちがない」といった印象の文具業界です。
唯一、女性新入社員が作ったとの触れ込みの「プラス・チームデミ・シリーズ」や「キングジム・テプラ(ラベルライター)」が話題になったモノの、もはや20年も前の出来事です。

OA化による「ペーパーレス社会」

ユニバーサルデザイン商品がうまく行くかどうかは今後の展開を見守りたいところですが、文具業界が抗うことができない大きな波があります。
「ペーパーレス社会」を標榜するOA化、IT化です。

砂上の楼閣、文具商品のよりどころ

過去記事のお酒の記事の時に多かったように

「なあんだ。長い文章を読まされた結論が『紙の電子化』かい?
陳腐な結論はつまらないよ」

という感想を持たれるのでは、勉強にならずもったいないので、もうちょっとおつきあい下さい。

コピー用紙消費量7倍成長の理由

結論を言います。
一時期的な上昇だと私は思っています。
個人の行動を見ているとよく分かります。
紙とペンの頃は作り直しや修正に手間がかかるので、原稿枚数も少ないコトが多い。

オオカミ少年で鈍感になった業界か

あるいは、もしかしたら、文具業界はオオカミ少年の被害にあったのが原因なのかも知れません。
かつて、OA化と言われた頃は「ペーパーレス社会」と雑誌などで書き立てられ、あたかも紙が一斉に机からなくなってしまうように書かれていました。

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