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コーヒーを飲みながらマーケティングを学ぼう【スターバックス】 2001.5.15

「サービス悪けりゃ、命取り」

喫茶店に中年男女が2人。そこに無愛想なウェイトレスが、コップをテーブルに
叩きつけるように置くと、水がこぼれてしまう。そこで、2人、合唱。

「サービス悪けりゃ、命取りぃ〜。
サービス悪けりゃ、命取りぃ〜。」

ナレシーョン入る。

「苦情、最優先、ニッセン」

あれ?どこかで見たことのあるオープニングでしたね (笑)
手を抜いている訳ではありません。
現在の「いわゆる喫茶店」の典型的なイメージです。
こんな喫茶店はまだまだ残っています。
上野や神田の駅前、新宿歌舞伎町などの繁華街で生息しています。

30年前。
コーヒーがまだ高級品、貴重品だった頃、コーヒーが飲める場所は喫茶店しかありませんでした。
しかし、現在、そんな場所はいくらでも見つかります。
アメリカと同様にファミレスやファーストフード。原宿を中心としたオープンカフェ(路上にイスとテーブルを配置して屋外でお茶を飲む形式)やレストラン。
喫茶店の存在意義のひとつが競合に奪われた格好です。

そして、何といっても喫茶店を直撃したのが、今回のテーマである「低価格コーヒー・チェーン店」です。
今ではちょっとした駅前には必ず1店はありますし、東京四谷や虎ノ門のように通りを挟んで両側にドトールが2店あることもあります。

最初はドトールの独壇場、続いてサントリー系列のプロントが参入。サンマルクが続き、シャノアールのベローチェもビジネス街を中心に頑張っています。独立系(1店しかない個人店)も含めて、あちこちに低価格コーヒーショップが見られます。

そこに、彗星のごとく現れたのが、アメリカからやってきたスターバックス・コーヒーです。価格も高いし、テレビ広告もしていないのに、今では、知らない人がいないくらい有名な存在ですし、おしゃれなイメージもしっかり根付いています。
それに負けじとドトールもエスプレッソを売り物にした高級店、エクシオール・カフェを展開。第2次低価格コーヒーショップ戦争の幕開けです。

今回は、それをテーマに記事を執筆しました。
コーヒーを飲みながらマーケティングを学ぼう!
・・私の愛読メルマガと同じタイトルになってしまいました (笑)

喫茶店の歴史を簡単に

コーヒーは歴史が長いだけに、まともに紹介すると大変なボリュームになるので、喫茶店に絞りましょう。
世界で初めての喫茶店はトルコだと言われています。16世紀のこと。
そこで、飲まれたのは中近東のコーヒーでした。豆をすりつぶしたものを煮立たせ、沈殿した後の上澄みを飲むというスタイルです。

ヨーロッパに渡った時、口に豆が入るのを嫌ったイギリス人が考案したのがドリップ式。コーヒーハウスは大流行りで、思想家や芸術家なども出入りしていたこともあって、市民の議論や交流の場として栄えました。「それを小冊子にまとるた出版社を兼ねるところ出現。「ロイズ」、後の「ロイズ保険組合」が有名です。

日本にコーヒーが初めて渡ったのはポルトガル人からですから、江戸時代です。しかし、当時は「単なる珍しい飲み物」で、大名が口にした程度。
日本ですっかり親しみのある飲み物として定着させた立役者が喫茶店というわけで、大正時代からです。

喫茶店の現代版に近いものが登場したのは大正時代の「ミルクホール」です。
ちなみに、同時に流行った「カフェ」は、その名から喫茶店だと思われがちですが、中身は今で言う「バー・クラブ」です。「カフェの女給」(現代のホステスさん)ということばを知っている方も多いでしょう。

一時期、栄華を極めた喫茶店は様々なバリエーションを生み出しました。
ジャズ喫茶、歌声喫茶、同伴喫茶など、マーケティング理論どおり、成熟産業の典型である市場細分化による進化が見られたものです。

その中でも、もっともマーケティング的に興味深かったし、ライフサイクルが短く、ケーススタディとして理想的だったのがノーパン喫茶でした。
昭和54年に京都に現れたモンローウォークが草分けと言われていますが、本来は福岡のトップレス喫茶が事実上の第1号店と考えた方が良いでしょう。東京進出は翌年の11月。豊島区の長崎という小さな駅前での開業が第1号店でした。

そのブームは大変なもので、後期には虎ノ門の官庁街にまで出現したほどです。もっとも、客は満杯で、かつ禁じられていたおさわりなど、あの場所とは思えないほど客が下品だった・・と友人から聞きました (笑)

ノーパン喫茶が廃れたのは、人気がなくなったからではありません。
女性従業員にとって大敵の夏が来てしまったからです。
屋外から入店する客を考えると、クーラーは必需品です。しかし、薄着(ほとんどヌードの)女性従業員のことを考えると室温はむやみに下げられない。

結果、両方とも中途半端になってしまい、体調を崩して従業員確保はできないわ、暑いので客は来なくなるわ。システムの欠陥といえばそれまでですが、マーケティング上、極めて特異なプロダクト・ライフサイクルの終焉を迎えたのでした。

その後、風俗と合体したり(アイドルのイブちゃんの出身なので覚えている方も多いかも知れません)、ノーパン牛丼や新聞で話題になったノーパンしゃぶしゃぶなど、付加価値をつけたバリエーションが出現したことをご存じの方も多いでしょう。

ちなみに、関西のエッチなおさわりパブは、「ショー喫茶」と呼ばれるだけあって、夜間にはコーヒーを飲む客などいないのに、NTTイエローぺージではなんと「喫茶店」に分類されています。確かに東京のように客の横に座るのではなく、ウェイトレスとしてテーブル間を練り歩くスタイルなので納得といえば納得です。東京ではもちろんバー・クラブの分類です。

【以下、小見出しと最初の段落のみをご紹介します】

ドトールの進出とスターバックスの登場

さて、駅前や繁華街なら1軒は必ず見つかる喫茶店が急に姿を消し始めた最大の原因が、ご存じドトールです。

見る見るうちに勢力を拡大し、現在では全国に700件のフランチャイズ店、売り上げ424億円をはじき出すトップコーヒーチェーンに成長しました。実際、1999年の飲食業ランキングでは、ロッテリア、つぼ八、ピザーラなどを押さえ、堂々の16位です。

スターバックスのKFS(Key Factor for Success成功要因)

それでは、何が成功の理由か。
なんといっても、その価格とおしゃれなイメージです。
ドトールよりも価格は高いけれど、圧倒的におしゃれ。全席禁煙というのも、非喫煙客誘因に一役買っています。
当初は「立ち飲み」がおしゃれだったドトールもスターバックスが進出した頃は「サラリーマンやOLで混雑して、たばこの煙でむせるような」状態でしたから、その差は歴然です。

スターバックスの戦略シナリオを考える

他業界にまで警戒心を抱かせるスターバックスは、快進撃を続けているように見えます。
ドトールにせよ、マックにせよ、守りはできても、スターバックスを脅かす存在ではないからです。

死角シナリオその1:人気過剰による店内混雑

スターバックスの重要な成功要因はおしゃれ感だといいました。
しかし、このことばは気をつけて使わなければなりません。
というのも、20年前ならいざ知らず、最近は「おしゃれ」と一言ではくくることができなくなってしまったからです。
古着もおしゃれですし、シャネルだっておしゃれ。
「おしゃれ」だけでなく、「どんな」おしゃれなのかを定義しないと判断を誤ります。

死角シナリオその2:客層の変化

人気過熱は客の数だけでなく、質も変化させます。
これがスターバックスの足をひっぱる危険要因になります。

死角シナリオその3:接客の質の低下

混雑と客層の急激な変化(と急激な店舗展開)は、従業員の質に大きく影響します。
まず、大量に客をざばかなければならない業種や会社は、鉄道会社に見ることができるように、客を人間だと思わなくなる傾向が出てきます。
次から次へと客をさばくことに主眼が置かれるので、一人一人に気を配る余裕がないからです。

死角シナリオその4:出店数と出店地域の飽和

先ほどの混雑状態と客層は「立地が同じならば」という前提付きでお話を進めました。
3番目の死角はその「立地」の話です。

スターバックスの甘美なる宿命

スターバックスは元々希少性のコントロールが必要な道を選んでいます。
つまり、売り上げを一定以上に上げることができない性質を持っているのです。
売り上げをむやみに上げようとすればするほど、ドトールとの差別優位性が縮まる運命です。

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