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触覚産業という視点 98.8.15

人間の五感と産業

過去20年近く私が注目しているものがある。
触覚産業である。
実はまだ、その実態は確立されていない。
だから、おもしろいのだ。

人間には五感がある。
視覚、聴覚、味覚、嗅覚そして触覚である。
そして、それぞれの感覚に立脚した産業が存在する。
例えば、視覚産業にはテレビ、映画はもちろんのこと、写真・アート、雑誌、新聞などがある。
聴覚産業は音楽産業が牛耳っている。
味覚産業は言うにおよばず、飲料、食品産業だ。
日本人の嗅覚は欧米人と比較して弱いと言われるが、それでも香水を代表とする産業が成立している。
ところが、触覚産業だけはセックス産業以外に目立つものはなかった、というのが現状だ。

心理学の面から見た触覚という感覚

触覚は精神状態を安定させる働きを示すことが、心理学の研究でわかっている。
イメージカット1こんな実験がある。

産まれたばかりの子猿を母親から、五感すべてをシャットアウトして育てると、ミルクを与え続けても間もなく死んでしまう。

視覚を刺激した場合はどうか。

ガラス越しに母親が見える環境を作る。その中で子猿を育てようとしても、同様に死んでしまう。
聴覚の場合は、スピーカーで母親の声が聞こえる環境。嗅覚は母親の匂いがする毛布、等々、五感の接触を工夫してもダメ。

唯一、金網越しに手が触れる環境、つまり触覚が刺激されてようやく生き残る。ただし、性格は悪くなるが。
もちろん、最も健康的にすくすくと育つのは、母親のスキンシップを十分に受けた子猿ということになる。

人間に対する実験でも触覚が重要なキーを握ることは、図書館での心理実験が証明している。
その実験とは、こうだ。
まず、本の貸し出し係に演技をしてもらう。
ある期間は、ぶっきらぼうな役を演じてもらう。
本を借りる客に対して、まともに受け答えせず、本も乱雑に扱うのだ。

さて、この期間に出口で調査をするとどうなるか。

「館内の照明はいかがですか」
「暗くて本が読みにくいですね」

「カーペットは?」
「毛足が長すぎて、つんのめりそうです」

「天井の高さは?」
「低すぎて威圧感があります」

と散々な答えが返ってくる。

一方、ある期間は友好的な貸し出し係になってもらう。
ニコニコして本を受け取り、その時にちょっとだけ相手の手に触れる。

すると、アンケート調査での評価は一気に変化する。

「館内の照明はいかがですか」
「ちっょと暗いけど、この位のほうが本が読みやすいです」

「カーペットは?」
「フカフカして気持ちがいいです」

「天井の高さは?」
「この位の高さだと丁度落ち着く感じですね」

ストローキングという概念の説明で良く出てくる例だが、それほどさように、触覚という感覚は情緒安定に極めて大きな働きをする。

【以下、小見出しと最初の段落のみをご紹介します】

現代人の触覚充足度

本能レベルで触覚が重要な役割を占めているのはわかった。
では、現代の日本人は触覚を十分刺激しているのだろうか?

触覚産業の息吹

最近、他の産業が触覚という視点を入れて成功し始めている。
例えば、下着産業やアパレル産業である。
付け心地や肌触りが生活者の商品選択の上位に食い込んできており、メーカーはそれに気がつき始めている。

セックス産業の静かなる変革

先ほど、「触覚産業はセックス産業しかない」という表現をした。ところが、日本のセックス産業ほど発達している国はないといっても過言ではない、というのが実情なのだ。

1分間3,300円の天国

さて、この産業(風俗産業と言い替えさせていただく)で、最近おもしろい現象が起きている。射精より単なるおさわりに金を払う生活者が着実に増加しているのだ。

マーケティングからの解釈

この記事は風俗産業におけるマーケティングを扱うものではないし、風俗とマーケティングの融合テーマについては、その道の権威 burt 氏の遠く足下にも及ばないので、これ以上は詳しく述べない。

触覚産業の意外なる突破口

これまでに見てきたように、触覚産業の独立宣言が小さな声ではあるものの、確実に聞こえている。

【補足】リラクゼーション産業の失敗要因

今まで、いや、現在でも、現代人のストレス解消を大きなニーズとして捕らえてきた企業があった。

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